Be blue (愛理、播磨他) ( No.2 ) |
- 日時: 2005/08/08 05:52
- 名前: によ
−第二章−
「ごめーん!! 今月はもう予定が…協力してあげたいけど、他を探して!!」
放課後になってすぐ、嵯峨野さんと麻生君、それに1年生の俵屋さんという娘が突然、女子バスケ部を作ったから仮入部してくれないかと頼んできた。 本当に協力してあげたいのはやまやまだけど…昨日晶に頼んだバイトの件が今日からということを今朝メールで知らせてもらっているので、そう断りを入れるしかない。 でも…まだ5人そろってないようだから…… あっ! いるじゃない! ちょうどその時、美琴が通りかかるのが私の視界の端に映った。 美琴ならスポーツ万能だし、なにより背も高い。うってつけじゃない!
「あそこにヒマそーな人がいるわよ」
そう言って、私は美琴のほうを見た。 美琴も私が頼まれていたのを聞いていたのか、ほんの少し身体をビクッとさせると、
「………あ、私はちょっと〜」
と、あまり乗り気ではない言いぶりをした。 でも、面倒見のいい娘だから…事情がわかればきっと入るでしょ。
「ミコちゃんがいれば百人力だよ!! ねーっ、やろうよ、やろうよ!!」
すぐ近くにいた天満も万歳をしながら嬉しそうに誘っている。 …って、天満もメンバーだったのね……
「え、おい、ちょっと待ってくれよ!! 私は道場が……」 「周防さん、私からもお願い!!」 「うーん、でもなー、2年から始めるのも……」
嵯峨野さんにも頼まれているけど、美琴の返事は色よくない。 意外ね…あんなに渋る美琴も……
「ちょうどいいじゃないか。たまには知らない世界に飛び込むのも悪くないぞ」
いつのまにか花井君まで美琴にバスケを進めている。 その花井君の言葉で、美琴の表情に変化があった。 ちょっと憂いのある表情をした後すぐに、その顔をはにかせむと、
「そ……そうだよね。んじゃあ、やってみっか!!」
どうやら、やる気になったようね。 事情があるとはいえ、少しうしろめたくもあったから…美琴が入るって決めてくれて、もう大丈夫そうだった。 それにしても、花井君の説得で決めるなんて…さすが『ミコちゃ〜ん』の仲よね〜! って、いけない! 今日からバイトなんだから、早めに家に帰らないと…… バスケ部のメンバーが集まったことで嬉しそうにしている皆を傍目に、私はそのまま教室を出て行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お帰りなさいませ、お嬢様」
家に帰ると、まるで待ち伏せでもしていたかのようにナカムラがすぐに出迎えてくれた。 待ち伏せといっても、毎日がこうなので特に驚きはしない。
「ただいま、ナカムラ。そうそう、今日からバイトをすることになったの。これから着替えて、すぐ出かけるわね」 「バイトでございますか? お嬢様」 「ええ、そうよ」 「…何かご入り用なモノがございましたら、すぐにご用意致しますが……」
表情こそいつもと一緒のナカムラだけど…私がバイトを始めることに驚いているようね。
「そうじゃないわ。単に興味があっただけよ。それに期末テスト前までの短期間だけだから……」
私は晶にもついた同じような嘘をナカムラにも言った。 当然、ナカムラにも本当のコトは言えない。 これは私だけの秘密。そう…私だけの……
「では、早速お車の用意を……」 「あっ! 必要ないわよ、ナカムラ。自分で行くから。でも…そうね…帰りはお願いできるかしら?」 「わかりました。お時間はいつ頃になりますでしょうか?」 「10時にバイトは終わるらしいから……」 「わかりました。そのお時間にお迎えに伺います」 「よろしくね、ナカムラ」
そう伝えて、私は自分の部屋へと向かった。 部屋に入ってすぐに、制服から私服に着替えた私は携帯を取り出して、今朝晶からもらったメールをもう一度読み返した。
昨日の件、隣町駅前のコンビニ『7am11pm』 時給は850円、時間は6時から10時まで。 火、木、土、日の週4日で話はつけてるから。 今日からだから、よろしく。
隣町の駅前か…たぶん知っている人は来ないと思うけど…駅前なのがちょっとね…… でも、昨日の今日だし、仕方ないわよね。 私は携帯を鞄にしまうと、そのままそのバイト先まで向かった。 矢神駅から電車に乗って隣町の駅で降りると、ロータリーを挟んでバイト先のコンビニが目に入った。 ほんっとに駅前なのね…… 矢神よりは小さな街だけど、人通りはそれなりにある。 今更だけど…知り合いが来ないように祈るしかない。 意を決して私はそのコンビニに入ると、たまたまレジにいた店長さんに晶の紹介でバイトに来たことを伝えた。 その店長さんはとても気さくなおじさんだったこともあって、私は少し安心をした。 どうやら、本当は奥さんと一緒に働いているようだけど…娘さんがお孫さんを出産をしたらしい。 で、その面倒を数週間みなければならないから、その期間の代理としてバイトを探していた、と幸せそうな笑顔で教えてくれたりもした。 なんだかアットホームな感じで私を迎えてくれたのがなによりも嬉しい。 早速、店長さんに言われるがままに制服に着替えると、お客さんがレジに来ていない時にレジの打ち方とか色々と仕事について教えてもらった。 バイトを初めて暫くすると、仕事帰りのサラリーマンの姿が多くなって、初日から結構忙しい。 気さくな店長さんに迷惑をかけたくもないので、私は必死になって頑張った。 そうこうしているうちに、あっという間に10時になって…こんなに時間が過ぎるのが早く感じるのは初めてかも。 普段は客としてしかコンビニには来ない私だけど、こうやって店員として働くのはなんだか新鮮な感じだった。 色々不安もあったけど、これなら楽しみながらやっていけそう。 紹介してくれた晶に明日、改めてお礼を言わないとね。 そう思っていた時にポケットに入れていた携帯が震えた。 画面を確認するとナカムラからのコールだったので、すぐに出た。
「もしもし」 『お嬢様、ナカムラでございます。お仕事のほうは終わられましたでしょうか?』 「ええ、今終わったところよ」 『わかりました。それでは駅のロータリーでお待ちしております』 「ありがとう、ナカムラ」
電話を切った後、店長さんに挨拶をして、私のバイト初日が終了した。 そのまま待機していた車に乗り込んだ私は、ナカムラに今日バイトで教えてもらったことや出来事などを話ながら家路にとついた。
.....to be
continued
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