Be blue (愛理、播磨他) ( No.1 ) |
- 日時: 2005/08/11 06:03
- 名前: によ
−第一章−
頭上に広がる秋晴れの空のように、私の心も澄み渡っていた。 体育祭が終わった頃からずっと悶々としていた私の心。 でも、昨日の後夜祭で八雲とヒゲが付き合ってないことがわかって…… ───っ!! 違うでしょ!? 別にヒゲなんてどうでもいいのよ。 親友の妹があんな野蛮なヤツと付き合っているってのが不憫だと思っただけよ! 決して…嬉しいワケじゃないんだから!! ……って、なに考えてるのよ、私ったら…… それよりも、晶に用事があるんだったわ。 既に放課後。今日は私と吉田山君が日直だったので、その仕事でまだ教室に残っていた。 仕事といっても、吉田山君が「自分が全部やるっすよ」と言いながら全部片づけてくれたので、私はただそれを見ていただけ。 彼なりの優しさなんだろうけど…あの下心丸見えな目は止めたほうがいいわね。 それにあの髪型…シルクハットじゃないでしょうに…… 日直の仕事が終わったあと、その吉田山君が何か言いたさげなのを適当にあしらって、私は晶のいる茶道部の部室へと向かっていた。
「晶、いる?」
部室のドアをノックして、そう言いながら中に入ると、中央にあるテーブルで晶はひとり読書をしていた。
「愛理、いらっしゃい」 「ちょっといいかしら?」 「ええ、どうぞ。今、お茶を入れるわ」
晶はそう言いながら席を立つと、食器棚からティーカップを出して、部屋の奥にある小さなキッチンでお茶の用意をし始めてくれた。 私はそんな晶を一瞥して、晶が座っていた席の隣へと腰掛けた。 しばらくして、紅茶のいい香りがしたかと思うと、晶が「どうぞ」とカップを差し出してくれた。
「ありがと」
晶にお礼を言ってから、さっそく差し出された紅茶を一口含むと、口の中で紅茶の香りが広がるようないい味だった。
「いい紅茶使っているのね」 「ダージリンのセカンド・フラッシュ。特別よ」 「へ〜、ここでこれが飲めるとは思わなかったわ」
予想外な最高級ともいえる紅茶が出てきたことによる、素直な感想。
「ところでどうしたの? 愛理」 「あ…ええ。ちょっと晶に頼みたい事があって」 「珍しいね。愛理が頼み事なんて」 「っさいわね! 私が頼み事をしたらヘンってでも言うの?」
一言多いわよ、晶は…… まあ、いつものコトだけど……
「別に…それで、頼み事って?」 「実はね…期末テストの前までバイトをしたいと思っているんだけど…なにかアテはない?」 「バイト? 愛理が?」 「そうよ。他に誰がするってのよ!?」 「…アテはあるけど、どうして急に?」 「べ、別に深い意味があるワケじゃないわよ…社会勉強ってのをしようと思い立っただけよ」
ひとつ嘘をついた。 本当は自分で稼いだお金であるモノを買いたいからだけど、こればっかりは晶でも話すわけにはいかない。
「そう…まあ、いいわ。それでどんなバイトがいいの?」
微かに晶の目が細くなったのが気がかりだけど、それを指摘すると晶のことだから何か察するかもしれない。 なので、あえてそれは無視した。
「どんなバイトって…そんなに沢山アテがあるの?」 「まあ…色々と。無難なところではウェイトレスやコンビニ。もう少し割のいいバイトになると製薬会社で薬の被検体とか。もっと稼げるのだと……」 「ちょ、ちょっと…もういいわ」
このまま聞いていたら、とんでもないバイトまで進められそうで晶の言葉を遮った。
「えっと…無難なやつでいいわよ」 「そう…残念」 「なっ! 何よ、残念って!? って、そうじゃなくて…その無難なバイトの紹介をお願いできるかしら?」 「いいわよ。他ならぬ愛理の頼みだし」 「ありがと。それでついでにもう一つあるんだけど……」 「何?」 「その…バイト先なんだけど…出来れば矢神から少し離れた場所のを紹介して欲しいのよ。ほら…知ってる人に見られたりしたら恥ずかしいじゃない!?」 「…わかったわ。それで…いつから始めたいの?」
いつから…か。 どうせなら早いことに越したことはないわね。
「そうね…期末テストまで1ヶ月もないし、なるべく早いほうがいいわ。あと、出来れば夕方6時頃から始めるって感じでお願いできる?」 「そう…いくつか思い当たるアテがあるわ。そうね…明日からになるかもしれないけど、いい?」 「えっ!? 明日からバイトできるの?」 「まあ…最終的には確認をしてからだけど。夕方6時から10時までの4時間。週4日ぐらいでいい?」 「ええ…構わないわ。それでお願いするわ」 「わかったわ、愛理。詳しい事は明日にでも伝えるから」 「ホント、助かるわ」 「どういたしまして。それより、愛理はこれから予定でもある?」 「今から? 特にないけど……」 「そう。じゃあ、一緒に帰らない? もう部活も終わる時間だし」 「ええ、帰りましょうか」
相談している途中で飲み干してしまった紅茶のカップを片づけて、私たちは学校をあとにした。 まさかこんなにバイトの話が早く進むなんて思いも寄らなかったけど、さすがは晶ね。 帰り道、私と晶はたわいもない世間話をしながら途中まで一緒だった。 晶と別れたあと、もう陽もすっかり暮れるのが早くなって、周りは既に薄暗くなっていた。 たぶん、晶のコトだから私のバイトは明日からになるんだろう。 短期間だけど、私にとっては初めてのバイト。 少し不安もあるけど、何となく楽しそうでもある。 それに…アレを買うお金は絶対自分で稼いだお金で買いたいし。 そう思いながら私は陽が完全に落ちる前に家に帰ろうと、その足を急がせた。
.....to be
continued
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