Be blue (愛理、播磨他) 【完結】 |
- 日時: 2005/09/19 05:45
- 名前: によ
- −序章−
なじみの深い喫茶店で、なじみの深いクラスの皆がバカ騒ぎをしている。 クラスにいるときと変わらない喧噪の中、私はただひとりの様子を盗み見ていた。 ヒゲ…もうヒゲはないけど…… 播磨拳児。悔しいけど、初めて気になっている男の人。 たぶん、私の初恋。でも…それはまだ認めたくもない。 その彼はクラスの皆とは馴染まず、ひとりジュースを飲んでいる。 そして、その視線は───今日の主役、親友の天満をずっと見ている。 期末テストも終わった今日はクラスの皆で天満の誕生日を祝うため、メルカドを貸し切った誕生日パーティで騒いでいる。 嵯峨野さんが天満に女王様ごっこを提案したものだから、苦手な納豆を食べるハメにもなったけど…結構盛り上がっている。 でも、私の心はそれに少しついていけてない。 楽しくない、という訳じゃない。 ただ、彼の姿を見ていると心が沈んでしまう。 ちょっと前まではむかつくことはあっても、落ち込むことなんてなかったのに……
『知らないほうが幸せな時もある』
誰が最初に言ったのか、名言かどうかもわからないけど、今の心境にぴったりの言葉。 彼は天満のことが好き。たぶん。 本人から直接聞いたってコトじゃないけど、状況からほぼ確定と思っている。 そんな彼は、じっと無表情で天満を眺めている。 好きな子の誕生日なんだから、もう少し楽しそうにしなさいよ! と、言ってやりたい気もするけど、彼の性格からして…… 自分の気持ちに気付き始めて、今までわからなかったコトが少しずつわかってきている。 野蛮で粗野で品がないのは最初からわかっていたけど、恋愛のみに限定すると、結構不器用だ。 その不器用さは私に似ている。 素直にその気持ちを伝えられない不器用さ…いえ、違うわね。 気持ちを伝えようと思っても、何かしらが邪魔して伝えることが出来ずにいつも有耶無耶になってしまう。 ホント、私と同じよね……
「あ、あの…播磨さん……」 「おお、妹さん」
ひとり佇んでいた彼に八雲が声をかけた。 その手にはかわいくラッピングされた袋を抱えている。
「…播磨さんの誕生日って、たしか姉さんと1日違いですよね…これ…よかったら……」 「いーわよ、八雲。そんなヤツにプレゼントなんて」
八雲が彼にプレゼントを渡そうとしていたのを思わず止めてしまった。 別に嫉妬からじゃない…いえ、少しはあるかもしれない。 でも…八雲も私と同じように虚しくなるだろうと思い、思わず口から出てしまった言葉。
「…沢近先輩……」
たぶん、この娘も彼のコトが好きなんだろう。 同じ女として、なんとなくだけどわかる。 体育祭の時にもそう感じたけど、その時のとはちょっと違う。 あの時は単純に無性に苛ついて、ついそう思ってしまったけど…… やっぱり…認めなければいけないのかしらね…彼のコトが好きなんだって。 じゃないと、なんでそう感じるのか説明出来ない……
「別にジャマするつもりはないけど、もう十分祝ったわよね、ヒゲ?」
そう。彼は天満の笑顔をずっと眺めてる。 これだけで幸せなんだろう。 もし私がそうだったら…きっと幸せだろうから。
「え……」
私の言いたいことがわからないのか、八雲は首を傾げるだけだった。
「いいんだ妹さん…俺はもう十分にもらったよ」
ほら、やっぱり。思っていたとおりの答え。 そう思った時、沈んでいた心が更に沈んでしまった。 そして、ふいに鞄の奥底にしまっているプレゼントのことを思い出した。 でも…こんな気持ちだと…もう渡せそうにない。 やるせない気持ち。自分のキャラじゃないわよ、こんな気持ちを抱くのは。 私は辛くなって、視線を彼から外してしまった。自然と八雲からも外れることになる。
「でも…今日の姉さん…少しだけ…さびしそう……」
視線を外しても近くにいるので八雲の声は耳に届いた。 その言葉を耳にした私は思わず天満に視線を向けてみたけど、私には思いっきり楽しんでいるようにしか見えない。 でも…きっと八雲の言っているコトは正しいんだろうと思う。 血を分けた実の妹が言うことだから。 もし…天満が寂しいんだとしたら、その理由は私にでもわかる。 天満の想い人、烏丸くんがここにはいないから。それしかない。 ねえ…ヒゲ…あなたはそれを知っているの? もし、知っていたら…自分の気持ちは敵わぬものじゃないの? それに、八雲も…… 彼の好きな人が自分の姉だってことを知っているとしたら…あなたの気持ちはどうするのよ? 私なら…私ならどうするの? きっぱりと諦める…無理ね。 振られるのを覚悟で告白する…絶対ダメ。プライドが許さないし、そもそもなんで私がヒゲに…… 結局、何も出来ないじゃない…… だから今みたいに傍観することしか出来ない。
『後悔だけはしないほうがいいよ』
つい先日、晶から言われた言葉が頭をよぎった。 後悔…したくないわよ、私だって。 でも、どうしたらいいのかわからない。 まったく。最近、これしか考えてないわね…私って。 いつからこんな風に…と考えると、数週間前からの出来事が鮮明に思い出された。
.....to be
continued
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