13話目(播磨、八雲、愛理、絃子) ( No.12 ) |
- 日時: 2006/02/05 00:17
- 名前: くらんきー
好き なんてフシギな言葉
播磨は勉強に次ぐ勉強をした。 ・・・が、彼は屈辱的にも留年してしまったのだ。 留年したという事実は、好きな子と違う学年になってしまうという事だった。 しかし彼は諦めなかった。学年が違うようになったからといって、諦めてしまうようなハンパな想いじゃなかったから・・・
そして、流石に二回目の二年生だけあって、赤点を一つも取る事が無いまま迎えた四回目の春。
「よし・・・ さー、今日から新学期だ・・・ ガンバルゾー・・・」
天満が卒業してしまった矢神高校。それを考えると、頑張ろうにもテンションが下がってくる。 100まで溜めたテンションが『凍てつく波動』で消えてしまった時のよう・・・ って、何を言ってるんだ、何を!
それはともかく、彼はバイクに跨り学校へ向かうのだった。
―――学校、校舎前―――
はぁ〜〜・・・
去年、一昨年とは違い、播磨アイなんて稼動するわけもなく『何組になってもいいや』的な感じでクラス分け名簿の前へと向かっていった。 いるはずも無い天満を探している自分が少し情けなくなる。
塚本・・・天満ちゃん―――!!
一緒に卒業したかったぜ・・・
心の底から強くそう願ってみても、それは最早 叶わぬ夢。 そんな彼はボケーっとクラス分け名簿を眺めている。そんな中一つの名前に反応する。
塚本――!?
って・・・妹さんか・・・
そーいや去年一年間、二回目の二年生をやってて一人も仲良くなったヤツはいなかったよな・・・ 登校初日に「播磨先輩」って言いやがったヤツをぶっ飛ばしたからか? 肝っ玉の小せえヤツ等だぜ。
そんな訳で俺がフツーに仲良く喋るのは妹さんと阿出増(あでます)だけなんだよなー・・・ そーいや、阿出増は未だに「播磨先輩」って呼びやがるが・・・わざとか? まあ、どーでもいいが・・・
―――恐らく、わざと。
ちなみに妹さんは――
3−Cか・・・
阿出増も3−Cかよ。
(・・・・・・まあ、何組でもイイって言やイイけど・・・ 例によって念でもこめてみるか・・・)
俺も3−Cになれと・・・ ま、無理ならいいけどよ。
10 9 8 7 6 5
「3−C 3−C 3−Cになれ・・・ 無理ならいいけど・・・3−Cになれ・・・」
4・・・3・・・2・・・
「3−C 3−C 3−Cになれ・・・ 無理ならいいけど・・・3−Cになれ・・・」
・・・・・・1
「あ、ケンヂさん チィース!! 俺もダブったんすよ! 留年仲間っすねケンヂさん!! ちなみにケンヂさん、3−Dっすよ」
突如現れた吉田山がそんな事を大声で叫びながら播磨に近づいてきた。三年連続、時間が止まる播磨。
彼は時間が動き出した瞬間に吉田山をボコボコにした。
「な・・・何スか?ケンヂさん・・・」 「デケェ声でしょーもねー事言ってんじゃねー! ・・・それ+行き場を失った俺の念だ」
(ち! 3−D? 今年もかよ・・・)
あまりガッカリもしていない様子で3−Dのクラス分け名簿を見てみる播磨。そこで彼が見たものは・・・
ハリマ☆ハリオ
「気のせいだ! しかも手書きじゃねーか! 馬鹿にしてんのか? オメーは!?」
ゴッ
何とか起き上がった吉田山に播拳殴(ハリケーンパンチ)をお見舞いする播磨。
ちなみに3−Dのクラス分け名簿の一番下には、達筆な字で『ハリマ☆ハリオ』と書かれた紙がでかでかと貼ってあった。 その影には、私服姿のショートカットの口数少ないお姐さんがいたとかいなかったとか・・・
―――ハリマ☆ハリオ、ペンネーム。
「毎年毎年、凍てつく波動みたいな真似してんじゃねー!」 「スミマセン!! 早トチリで・・・」
「ったく・・・ アタマ悪いヤローだな 俺を見習え!!」
ザッ・・・
そう言い、再びクラス分け名簿に向き直り、一歩を踏み出す。
(んで、俺のクラスはどこかなーーっと・・・)
・・・・・・あれ?
「フ〜〜・・・」
3−Cに播磨の名前が無かった事で思わずため息が漏れる。
(3−Cじゃねーのか・・・ま、いっか)
「じゃあ俺は何組なんだろーな・・・」
去年と全く違い、3−Cに名前が無かろうが冷静な播磨は、A組から順番に自分の名前を探し始める。 そして、F組まで見終わった播磨はあることに気付いた。
あれ・・・・・・・・・ないよ? 俺の名前・・・
『播磨 拳児』という名前が見つからない。
「播磨!」
おっかしーなー と呟きながらもう一度確認しようとした時に誰かから声がかかる。 なんだ? と思い振り向く播磨。するとそこには・・・
「何しとるこんな所で、お前留年だろうが」
留年先生がいましたとさ・・・
「な、な、なにぃーーーーーーー!!!!」
―――またかよ。
当然、驚く播磨。むしろ性質の悪い冗談だと思っている。 そりゃそーだ。だって一学期から三学期までのテストで赤点を取った事が無かったんだから。
―――少し離れた場所―――
播磨のあまりの声の大きさに大勢の人間が注目していた。 それは、塚本 八雲とサラ・アディエマスも例外ではなかった。
「ねえ、八雲。あれ、播磨先輩じゃない?」 「え・・・? ホントだ・・・」
「播磨さん、何組になったのかな?」 「やっぱり気になるんだ? うっひょーラブラブだね♪」 「え!? 違っ・・・・」 「も〜 またまた〜〜♪」
八雲は からかうサラから逃げるように、完全石化している播磨のところへ向かった。 サラもまた、そんな八雲を追いかけて播磨のもとへ向かう。
「おっはよーございまーす♪ 播磨先輩、何組だったんですか?」 「おはようございます・・・播磨さん」
「あ、ああ・・・」
「おはようございます・・・・・・先輩方・・・」
「「え???」」
―――沢近邸―――
(ヒゲが留年ってどーゆーことよ!? 一体どの教科だって言うの!?)
・・・・・・物理・・・・・・
「そこ! 心の声を読まない!」 「いいじゃない、教えてあげたんだから」
沢近家の騒がしい一室、愛理の部屋。心の声に律儀に答える晶にツッコミを入れるお嬢様。 ちなみに愛理の部屋には 愛理一人しかいなかった筈なのに、いつの間にか晶姐さんが居座っていらしゃる。 いつもの事なので それはスルーする愛理。
(あの人・・・ 一体どういうつもりなの!?)
「それはね・・・」 「・・・っ! 知ってるの!? 晶!?」
「モチのロン」 「・・・この際、何で知ってるかは聞かないわ! 刑部先生はどういうつもりなの?」
「それは・・・」
―――絃子のマンション―――
「いや〜〜、留年してしまって残念だなあ。拳児君♪」 「ナンデソンナ アカルインスカ? イトコサン・・・」
なんとも明るい声で話しかける絃子さん。とても自分で留年させたとは思えない。
「いやいや、明るくなんて無いゾ? 拳児君♪」 「・・・・・・」
拳児君・・・ 何も言わなくても分かっているよ・・・ ホントは君が嬉しくて仕方が無いという事が・・・ 一回留年すれば、一年間 私と一緒に過ごせるからね。
君は なんていったって『私の』拳児君なんだから♪
そういえば・・・この手段を思いついたのも『あの人』のお蔭だな・・・ 感謝していますよ・・・
谷元先生・・・
―――正確には、谷『元』先生。
―――再び、沢近邸―――
「・・・という訳」 「な!?」
晶の解説に驚きを隠せない愛理。
「ふ、ふふふ・・・・・・」 「・・・・・・」
ギラッ
「あの年増!! 絶対に許さないわ!!」
続く・・・
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