12話目(播磨、八雲、谷先生、絃子) ( No.11 ) |
- 日時: 2006/01/29 23:00
- 名前: くらんきー
タイトル:ハリケーン ランブル
作者:播磨 拳児
語り手:塚本 八雲
200X年、あるところ(矢神町)に、ちょっぴり不良でサングラスをかけたお兄さん(ケンジ)と、一際美しいちょっぴり天然ボケのお姉ちゃん(テンマ)が住んでいました。 この二人は恋人同士で、とてもとても幸せに暮らしていました・・・
しかしある時!
「塚本さんは貰っていくよ。播磨君」 「塚本ーー!!」
とても悪い男(カラスマ)が審判を装ってテンマに近づき、彼女を攫っていきました。
怒ったケンジは、カラスマを倒しテンマを取り戻すため、旅に出ました。
中略
遂にカラスマを発見したケンジは、カラスマに戦いを挑みました。
「あの日、お前に塚本を攫われて以来、一時もあの苦しみを忘れた事は無かった・・・」 「それで、塚本さんを取り返しに来たの?」 「そうだ! 行くぜ! 鳥丸(とりまる)!!」
カラスマは漢字で『烏丸』と書きます。よく似た漢字なので、怒りに我を忘れたケンジが『鳥』と『烏』を間違えるのも無理はありません。
「烏丸だよ」 「うっせー! どっちでもいいんだ! お前はココで俺に倒されるんだからな!」
逆ギレしたケンジは更なる怒りを懐きます。最早、爆発寸前です。いや、爆発してます。
「だったら、僕の真の姿を見せよう」
カラスマは凄まじいまでの闘気を放つケンジに危険を感じ、最初から本気で戦いを挑みました。 カラスマが手をかざすと、如何した事でしょう。鎧が彼の元に飛んできました。 そして、何処からとも無く飛んできた鎧がカラスマに装着されます。
カシーン カシーン!
「な、なにぃ!」 「これぞ伝説の鎧、河童アーマー」
なんと! カラスマは、あっという間に河童になってしまいました。 実は彼は、河童星の王子でした。王家に伝わる伝説の鎧を身に着けた彼の力はどれ程のものなのでしょうか? ちなみに河童アーマーとは、お皿、くちばし、甲羅、水かきです。
「これを装備すると、すばやさが150下がるんだ」 「呪われてんじゃねーのか?」
「・・・・・・」
何か言って下さい。
でもカラスマは、セリフの内容とは裏腹にやる気満々です。 そんな彼を見てケンジは不敵に笑い、こう言いました。
「ふふふ・・・ トリマルよ・・・ お前の負けだ!」 「・・・!?」
ケンジの自信たっぷりのセリフに、カラスマは思わず身構えてしまいます。
「俺は・・・ 満月を見る事で巨大なお猿さんになるんだ! ちなみにその時の強さは普段の十倍だぜ!」 「そ、そんな・・・ 播磨君、き、君は・・・」
「そう・・・俺の正体は、スーパーサムラ(イ)人・・・ 万 石(まん ごくう)だ!」
それは私も初耳です。 ちなみに、時間は子猫も眠る丑三つ時で、場所は矢神高校のグランドです。
「超播拳龍襲(スーパー・ハリケーン・ドラゴン)!!」 「ぐはっ!」
大きなお猿さんになったケンジは、勝負を決めるべく最初から究極奥義を放ちました。 それがカラスマに直撃し、彼は吹き飛ばされてしまいます。
「な、なぜ・・・それ程までに強く・・・?」 「・・・時代劇・・・『三匹が斬られる』が俺を変えた・・・」
・・・・・・
「僕の・・・負けだ・・・」
ガク・・・
なんだか釈然としませんが決着がつきました。 そして暫くして、ケンジがお猿さんから人間の姿に戻りました。
ザッ・・・
しかしそれをテンマに見られてしまいました。 テンマは、ケンジの正体が巨大なお猿さんだという事は全く知りません。
「播磨君・・・? 播磨君なの・・・?」 「・・・!! て、天・・・塚本!」
テンマは一瞬、何が起こったのか理解できず、混乱の極みです。 ケンジも、テンマに見られた事に気が動転しているようです。
暫くの沈黙の後、まず口を開いたのはテンマの方でした。
「キリンさんが好きです・・・」 「???」 「・・・でも、お猿さんの方がもっと好きです!」
ダッ・・・
テンマはケンジのもとへ駆け寄り、そのまま抱きつきました。
「お猿さんだよ・・・播磨君」 「塚本・・・」 「好き・・・」 「俺もだ・・・」
―完―
「えっ・・・と・・・ この展開はちょっと・・・」
「なっ! 力作だと思ったんだが・・・」
八雲の率直な意見にショックを受ける播磨。 自分では自信作だと思っているので、何処がダメだったかが見当の付かない播磨は、八雲に意見を聞いてみる。
「主にドコがダメだったと思うよ?」 「・・・えっと、それは・・・」
播磨の様子をチラリと伺う八雲。
「是非、キタンなき意見を言ってくれ!」
八雲が意見を言うのを戸惑ってると感じたのか、播磨は遠慮なく言って欲しいと意見を促す。
「えっと、じゃあ・・・ まず、一話読み切りの話で『中略』はよくないと思います」
―――『中略』と書いたのは播磨。
そりゃ、ダメだ。
「あと・・・」
八雲は、それはそれは丁寧に、播磨を傷つけないように、尚且つ的確に、一から十まで説明しながら意見を述べた。 これも編集者のバイトをして培ったものなのか?
「こんなところです・・・」 「う〜む・・・ 毎度の事ながら妹さんの意見は素晴らしく的確だぜ。流石だな、妹さん!」 「いえ・・・そんな・・・」
播磨に褒められたことにちょっと気恥ずかしくなり、頬を赤くして下を向いてしまう。
「じゃあよ、コレ書き直して来るぜ! ・・・で、完成したらまた見せるからさ、感想・・・聞かせてくれるか?」 「は、はい! 喜んで!」
そんなやり取りに、八雲の頬は一段と赤くなっていた。
ガチャ・・・
「あの〜、漫画持ち込みに来たんですけど・・・」
「「「あ・・・」」」
そこに現れたのは、今日漫画を完成させたばかりの谷先生。3人とも驚きを隠せずにはいられなかった。 最初に我に返ったのは谷先生。『元』生徒二人に疑問を投げかける。
「二人とも・・・何してんの・・・?」 「持込だ」 「・・・バイトです」
―――ここは談講社。確認。
「そー言う谷さんは何してんだよ?」 「いや・・・漫画を・・・ ひょっとして担当の塚本って・・・?」 「あの・・・私です」
漫画を書き上げた谷先生はとりあえず談講社に持ち込みにきたのだ。 そして、谷先生の担当は八雲だったりする。
「んじゃ、早速 見せてみろや」 「お、お前も見るのか!?」 「当たりめーだ! さっさと見せろ!」
播磨が漫画を見せろと催促する。何故彼が仕切っているのかは不明。 初めは嫌がってた谷先生だが、諦めたのか 渋々漫画を見せる。
原稿を受取った八雲がそれに目を通す。八雲の斜め後ろに原稿を覗くように播磨。 それを見ている谷先生は、そわそわしまくっている。
「「・・・・・・」」 ←読んでる。
ぱさ・・・ ←読み終わった。
「なかなかの力作じゃねーか! 初めて描いたにしては上出来だぜ」 「ホ、ホントか? 播磨!?」 「あ、あの・・・」
すっかり担当者気取りの播磨は、自分が初めて持ち込んだ時に言われた事をそのまま言い放った。
「ああ、細けー事はこれから ちょっとずつやっていきゃいーんだ。まだ若―んだしよ」 「そ、そうか・・・」 「・・・・・・・・・」
友情が深まっていく(?)播磨と谷先生。八雲はかなり 二人の間に割り込みにくいらしく、割り込むタイミングを伺っている
「それはそーと、何で漫画を描こーなんて思ったんだ?」 「・・・・・・そ、それは・・・・・・」
自分は答えられなかった事を平然と聞く播磨。 そして彼もまた、描き始めた理由は播磨と同じようなものだったりする。 谷先生は『あの事件』の事を思い出しただけで泣きそうになったが、それを堪えて重い口を開こうとした。
「あ、あの・・・」
答え辛そうな谷先生の様子を見て、今しかないと思った八雲は思い切って話を切り出した。
彼女は如何しても、気になって気になって仕方ない事が一つあった。 それは 播磨の漫画の内容や、何故か晶が持っていた 愛理や絃子の漫画の原稿に目を通していた八雲にとって、内容が・・・特にエンディングが似すぎているという事だった。
・・・このストーリー、流行ってるのかな?
「おお、妹さん。 この新人に何か言ってやってくれよ」 「えっと・・・ この展開はちょっと・・・」
「「なっ!?」」
―――やっぱりな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――その夜、絃子のマンション―――
「ただいまーーっと」 「オウ、お帰り。拳児君♪」
すこぶるご機嫌な絃子。そんな従姉弟の様子に不安になる播磨。 大体、絃子が機嫌のいい時は決まって 怒っているのを気付かれまいとして、油断したところを銃弾の雨あられ・・・というのが何時ものパターンである。 そんな播磨は、機嫌がいい時ほど警戒をする事が習慣化されていた。
「アノー イトコサン。ワタクシガ ナニカ アナタノキゲンヲ ソコネルヨウナコトデモ シマシタノデショウカ?」 「ははは・・・ 何を言ってるんだ拳児君。めでたい事があったから機嫌がいいんじゃないか」
「めでたい事??」
播磨は当然、意味が分からない。彼が分かったのは絃子は怒っていないということだけ。 しかし彼にとっては、それだけ分かれば 自分に危害が加えられないという事なので十分だったりする。
「ああ、君の進路が決まったのだよ。 ・・・なんと! 一流大学の○○大学だぞ?」 「ああん? んな頭のいい大学なんて逆立ちしたって行けるワケねーだろ!?」
播磨にとっては当然の抗議。しかも播磨は、卒業後はプロの漫画家を目指す予定。大学へ行くつもりは毛頭ない。
「ちゃんと根回しはするから大丈夫だ。安心したまえ」 「大体! んな遠いとこ行ったらアパート暮らしだろ? 家賃、一人で払わなきゃならねーじゃねーか!」
「!!?」
「そんなに俺を追い出してーのか? 絃子・・・」 「いや、そんなつもりは・・・」
私が拳児君を追い出したいだと? そんな訳ないじゃないか! この私が・・・ 拳児君を愛するこの私が・・・
「お前と二人で暮らす方が助かるんだよ。俺は」 「!!!」
お前と二人で暮らす方が助かるんだ! お前と二人で暮らしたいんだ! お前が必要なんだ! お前無しでは生きられないんだ!
(け、拳児君・・・ なんと嬉しい事を・・・)
絃子の脳内に残る播磨の言葉が、微妙に怪しい方向へグラデーションされていく。 最早、彼女を止める事なんて不可能DEATH!
「け、拳児君・・・ すまなかった・・・ 君がそこまで(私の事を)考えてくれてたとは・・・」 「いや、(俺が漫画家になりたいって事を)分かってくれりゃー いいんだけどよ・・・」
「それに・・・目を覚まさせてくれた事に感謝するよ。私はもう少しで間違いを犯すところだった・・・」 「絃子・・・」
そうだ・・・ もう少しであの小娘にハメられるところだった・・・
学校の近くにマンションを借りておいて、「家賃が高いなら ウチに来なさい」とか言って拳児君を誘い込み・・・ 一つ屋根の下 共同生活なんて!(絃子の想像。でも、間違ってなかったりする)・・・甘いぞ! 沢近君!! 『私の』拳児君がそんな事に引っ掛かるとは思えんが、危険要素の芽は刈り取らせてもらう!!
「拳児君・・・これからもヨロシク頼むぞ♪」 「??? おう」
続く・・・
〜おまけ〜
「さて、本日の授業を始めますぞ。25ページを開いてもらえますかな?」
ぱらぱら・・・
「って! 何なんだ! アンタは!?」 「英語の教師は沢近さんじゃなかったのかよ!?」
「申し遅れました。本日付でやって参りました、執事の・・・もとい、英語教師のナカムラと申します」
「「「「「ナ、ナンダッテーー!!」」」」」
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