4話目(播磨、天満、愛理、絃子、葉子) ( No.3 )
日時: 2005/09/29 20:23
名前: くらんきー

 播磨 拳児は勉強した。かつてここまで努力したことはなかったほどに。そこまで一心不乱に勉強をしたのだ!!

 ・・・ところで今日は2月14日。バレンタインデーと言ふやつである。

 そして彼は、自分の想い人からチョコレートを貰った。

「はい、播磨君。バレンタインのチョコだよ♪」

「あ、あの、播磨さん・・・これ、チョコレートです」

 そして、八雲からも・・・

「え?いいのか?あ、ありがとよ!塚本!妹さん!」
 (うおおおおぉぉぉーーーー!!!!て、天満ちゃんからバレンタインのチョコ貰えるとはーー!!)

 今の彼ならば、気合だけでナイアガラの滝を逆流させるどころか、その体を巨大なお猿さんに変えて星の一つや二つ消滅させられるだろう。
 しかし、そんなことをしてしまった日にゃー 憧れの人に「お猿さんだよ!播磨君!」って言われるのは目に見えている。

 むしろそんな事より、浮かれすぎて留年なんぞしたら話にならーん!!って事で浮かれ度はかなり控えめ。


「最近 播磨君、勉強頑張ってるよね?何だかよく分からないけど応援するよ!」

「ああ、ありがとよ!ところで塚本は大丈夫なのか?もうすぐテストだろ?」
 (て、天満ちゃんが応援・・・ くうぅ〜〜!感激だ! 今なら東大入試の問題も解ける気がするぜ!!)

 気がするだけ。現実はそんなに甘くない。



 ―――夢と、現実と。そして、生と死と・・・



 生も死も関係なさそうだが・・・

「大丈夫だよ!今月の射手座の運勢は10点満点だもーん♪」
「姉さん、それは違・・・」

 (つーか、俺だけ進級して天満ちゃんが留年なんて事は・・・)

 ないよな・・・

「あ、八雲。今日 ミコちゃん達と遊んでから帰るから遅くなるね」
「・・・勉強しなよ、姉さん」

「・・・・・・・・・」

 果てしなく不安になる播磨だった。


 ―――その頃、沢近家―――

「うう〜ん・・・ こんな事になるなんて・・・」

 金髪のお嬢様こと、沢近 愛理は本日学校を休んでいた。

「せっかくのバレンタインなのに〜・・・」

 愛理は昨日、播磨のためにバレンタインのチョコを作っていたのだが、それを味見してしまい 食中毒で倒れてしまったと言うわけだ。



 (まあ、いいわ)



「ヒゲ・・・バレンタインのチョコ、ホントは14日に渡したかったんだけど・・・渡せなかったの・・・ゴメンね・・・」
「お嬢・・・」

「でも安心しなさい!ちゃんとあげるから! ・・・受取ってくれる・・・?チョコじゃなくて・・・私を・・・」


 ・・・なぁ〜んて。

「ふふ、ふふ、ふふふふふ・・・」



 ―――沢近 愛理、妄想。



 ―――同時刻、美術室―――

 (うーん、『私の』拳児君のためにチョコ作ったけど・・・私からチョコ貰ったのが嬉しくて、浮かれすぎで勉強が進まなくなるかも・・・)

「今日は渡さないほうがイイか・・・」

 右手に持った笹倉 葉子作『特製ガラナチョコすっぽんエキスMIX』を眺め、イ・ロ・イ・ロ・と考えていた葉子がポツリと呟く。



 (テストが終わってからでもイイか・・・)



「拳児君、バレンタインのチョコなんだけど・・・今更ゴメンね。ホントは当日に渡したかったんだけど、拳児君 勉強で忙しかったでしょ?だから遅れちゃったの・・・」
「葉子さん・・・」

「貰ってくれる?・・・私ごと・・・」
「葉子さん・・・いや、葉子!いただきます!!」


 ・・・なぁ〜んて。

「ふふ、ふふ、ふふふふふ・・・」



 ―――笹倉 葉子、妄想。



 ―――その夜、絃子のマンション―――

 絃子は今、ビールを飲みながらボケーっと播磨の勉強している様を眺めている。
 彼女は考え事をしていたのだ。それは・・・

 (拳児君にこの『特製赤マムシチョコ』をあげようかと思ったが・・・『私の』拳児君のことだ。浮かれすぎて勉強に身が入らないだろうからな・・・)

 って、アンタもか・・・



 (そうだな・・・進級が決まった時にでも・・・)



「進級おめでとう、拳児君!・・・け、拳児君のために手料理を作ったんだが・・・」
「絃子・・・」

 がしっ

 その時、拳児君が私の左手を掴む。左手にはバンドエイドが貼られているのに彼は気付いたからだ!
 料理を作るときに怪我でもしたのか?そう思い彼は優しく こう声をかけてくる。

「普段料理なんてしねーくせに・・・無理しやがって・・・」
「拳児君・・・食べてくれるかい?・・・デザートの私ごと・・・」

 すると拳児君は私を抱き寄せ、こう言うんだ!

「絃子・・・デザートだけでいいぜ?」


 ・・・なぁ〜んて。

「ふふ、ふふ、ふふふふふ・・・」



 ―――刑部 絃子・・・ってアンタら皆、同レベルだ!



 ビクゥ!!

 何か今日はやたらと悪寒がするぜ。・・・って、まあいいや。
 進級試験まで後一ヶ月ほどか・・・ここ最近は信じられんほど勉強の進みが速いぜ!これもマイ・エンジェル天満ちゃんの応援のおかげだな!

 それにしても勉強し始めてもう一ヶ月ほど経ったわけだが・・・天満ちゃんと共に過ごせる一年間を思えば短いもんだぜ!

「俺は・・・俺はヤルぜ!!(天満ちゃん、君のために・・・)」


「な!!拳児君!やっと分かってくれたのか!?私はいつでも良かったんだ!」

 播磨の言葉に反応した絃子が播磨に語りかける。
 ・・・が、播磨は意味が全く分かっていない様子。

「ん?どうした?絃子?」

「拳児君、バレンタインのプレゼントだ!受取りたまえ!」
「・・・って、おい!服を脱ぐなーー!!」

 ・・・播磨がどうなったかは不明。

続く・・・

 〜おまけ〜

 怪我はしなくてもバンドエイドは貼る!

 BY 刑部 絃子



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