3話目(播磨、絃子、葉子) ( No.2 )
日時: 2005/09/19 13:02
名前: くらんきー

 ―――絃子のマンション―――


 ピンポーン


「はい・・・って、なんだ、葉子か」
「こんばんわ。拳児君 頑張ってます?」

 絃子の家に遊びに来るのはいつもの事なのだが、播磨の様子がいつもと違ったので様子を見に来た葉子。

「ああ、今は数学の勉強をしているんだ。基礎からきっちりとやっている。彼は本気だよ!葉子!」

 播磨は今、一学期の数学を勉強中。よって、絃子には『基礎からしっかり』と見えたわけである。

「流石、『私の』拳児君ですね!」



 ―――笹倉 葉子、勘違い中。



「・・・葉子??」
「ああ、気にしないで。なんでもないですから」

「ところで、何か用かい?」
「それはですね、頑張ってる拳児君に晩御飯を作ってあげようと思って」

「何でまた?いきなりどうしたんだ?」
「拳児君は勉強をしてる。先輩はそれを教える。・・・ってことは晩御飯作る人居ないじゃないですか。だから私が作ってあげる為に来たんですよ!」

 それに・・・と言って右手に持った買い物袋をヒョイとあげる。

「お魚を食べると頭が良くなるんですよ?どっかの歌で聞きました」
「・・・分かったよ。じゃあ、お願いしようかな?」

「はい♪」



 ―――播磨の部屋―――


「えーっと(1)で出した値をXに代入して・・・ここが・・・こうで・・・」

 もう一度確認。播磨は今、一学期の数学を勉強中。
 ・・・って言うか、一学期の補習でやっていた問題である。それを必死にやっているところを見るとやはり晶が教えていた『アレ』は(3巻参照)頭に入ってなかったようだ。

「こうか?・・・出来たぜ!!」


 コンコン・・・


「拳児君、晩御飯が出来たが・・・どうする?」
「ああ、すぐ行くぜ」

 ちょうど数学の勉強が一通り終わった播磨。
 勉強道具をそのままにリビングへ行くと、同居人の親友でもあり、矢神高校の美術教師でもある人物がいた。

「あれ?笹倉先生?」
「ふふふ・・・今は葉子さんでいいわよ? ・・・て言うか葉子でいいわ!!」

「葉子?」  ←絃子
「ああ、ゴメンなさい。頑張ってる拳児君のために晩御飯を作ってあげたの。食べてくれる?」

「へー・・・ 笹倉せん・・・葉子さんが?勿論頂くぜ!」

 知らない間にかなりの時間が経っている事を、播磨の腹時計が教えてくれた。
 絃子があまり手料理を作ってくれないので、葉子の行動は感涙物の播磨。


 しばらくは「うめえ!うめえ!」と料理をがっついていた播磨だったが殆どの料理を食べつくした後に、最近の行動について絃子からお褒めの言葉を貰う。

「最近 拳児君、頑張っているじゃないか(私のために)。他の先生方も『私の』拳児君を褒めてたぞ?」
「ん?ああ・・・そろそろ勉強しださねーとマジで留年しちまうだろ?」

 播磨、『私の』は 聞こえてない。

「自分で気付くなんてエライじゃない(流石、『私の』拳児君)」

 因みに、自分で気付いた訳じゃない。強制的に気付かされたものである。

「・・・ご馳走様。旨かったぜ!笹く・・・葉子さん、料理得意なんだな」
「ふふふ、ありがと♪ ・・・ご希望なら毎朝、味噌汁を作るわ!!」

「・・・葉子?」



 ―――播磨 拳児、余計な言葉は聞こえない。



「さて・・・と、そろそろ勉強に戻るかな。・・・次は物理だ」
「む・・・物理なら任せたまえ。テストを作るのは私だからな」
「え?いいのか? 不公平だからダメなんじゃ・・・」

 教師としてやっちゃいけねえ事だ。それに、こういう曲がった事は絃子は嫌いだったはずだ。等と考える播磨だったが返ってきた答えは・・・

「一向に構わん。色々と教えてあげよう。イ・ロ・イ・ロ・と・・・」

 だった。目が妖しく輝いているように見えるのは気のせいか・・・?



 ―――保体でも教える気か?



「仲良いですねー、羨ましい」
「・・・葉子?」

「ああ、何でもないんです。さてと、私はそろそろ御暇しますね」
「もう帰っちまうのか、ゆっくりしていけばいいのに」

 家賃もろもろ折半だが、事実上、ここのマンションの支配者は絃子。播磨の言える台詞ではない。

「ううん。勉強のお邪魔しちゃ悪いし・・・(名残惜しいのね・・・『私の』拳児君も)」
「夕飯、悪かったな・・・それに何か無理矢理 帰ってもらうみたいで・・・」

「そんな事ないですよ。『私の』拳児君の為ですから」
「・・・葉子?」

「いえいえ、こっちの事です。それじゃ、オヤスミなさい」
「ああ、オヤスミ・・・」


「・・・・・・・・・」


 (まあいい、それより今は拳児君と・・・)
「ふふ、ふふ、ふふふふふ・・・」


 そうして夜は更けていった。

続く・・・



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