2話目(播磨、教師たち) ( No.1 )
日時: 2005/09/24 04:04
名前: くらんきー

 ―――物理の授業中―――

「・・・となるわけである。では、今の例題を踏まえて次の問・・・・・  (ん?)」

 そこまで言った絃子はとんでもない事実(少なくとも彼女にとって)に気付く。


 バサッ・・・


 (け、け、け、拳児君が勉強しているーーー!?!?)

 教科書を落としても気付きもせず・・・

「・・・・・?? あの、先生?教科書 落ちましたよ?」

 学級委員の大塚 舞が話しかけるが、それも絃子の耳には届かなかった。
 この男、播磨 拳児という男は彼女の予想を大幅に超えるような行動をしてしまう時が稀にある。 (マグロ漁船とかがまさにそれ)
 いかに数字に強かろうが、機械に強かろうが、何を考えているか読めないときは読めないのである。 (実際は何も考えてないのだが)

 (し、しかも私の授業をこれほど真剣に・・・)  ←実際は数学の勉強中(一学期の)

「あの・・・先生?」

 舞が教科書を拾って持ってきてくれた。・・・が、いまだ気付かず。
 そして、その時舞は見てしまった。絃子の目に涙が浮かんでいるのを・・・

「ああ、すまない・・・目にホコリが入ったようだ。・・・・・さあ、授業を再開するとしようか」
 (拳児君・・・遂に私の想いに気付いてくれたんだな・・・)

 その日、絃子は終止ご機嫌だったという。




 ―――美術の授業中―――

「ええっと、じゃあ今日は・・・・・!?!?」

「???」

 葉子はそこまで言っていきなり石化してしまった。その理由は・・・

 (け、け、け、拳児君が!何故か教科書を開いてやる気満々ーーー!?!?)

「あの・・・先生? (さっきも同じことがあったような・・・)」

 舞が話しかけるが返事は無い。因みに屍でもないが。

 (私の授業は副教科なのに・・・)  ←数学を勉強中。耳栓 装着済み。

 彼女の目にも涙が浮かんでいた。勉強するだけで皆にここまで感動を与えられる人間、播磨 拳児はある意味凄い。

「先生! 先生!! ・・・どうしたんですか?」

「・・・は!  ご、ごめんなさい・・・花粉症で・・・」
 (そう、拳児君・・・私を尊敬して美術の道を・・・ あなたには才能があると思っていたわよ!!)

 その日、葉子は終止ご機嫌だったという。




 ―――体育の授業中―――

「今日はグランドをランニングだー!温まるぞー!」

「「「「「「ええぇーー!!」」」」」」

 体育の授業は『ゴリ山』こと、郡山先生。
 いつもの様に竹刀を片手に大声で、今日の授業内容を生徒たちに告げる。

 ヤダよ!面倒くせえ!やってられっか! ・・・などと皆 口々に文句を言っていたが、彼の竹刀 一振りで渋々グランドを走り出す2−Cの面々。

 全く・・・何時もながらコイツらは・・・と思っていた郡山先生。・・・が、次の瞬間もの凄い事に気付いてしまう。

 ん?

「な、なにぃーーーーー!!!」
 (は、播磨が勉強しながら走ってるーーー!?!?)

 播磨は今、単語帳で英語を勉強しながら走っているのだ。
 播磨としては体育をサボってでも勉強に費やそうと思ったが、最低限の出席日数だけは授業に出ないとどうしようもないので、仕方なく両方を選んだ結果こうなったのである。

 (そうか・・・問題ばかり起こしていたアイツが・・・文武両道という訳だな!授業中に他の科目を勉強することは関心せんが、遂に分かってくれたのか・・・)
「ふっ、目が汗かいてやがる・・・」

 その目にはやっぱり涙。


 その他の授業でも・・・

「何ぃーーー!!」

「は、播磨が!」

「やっと分かってくれたのか!?」

 ってな具合だった。



 ―――放課後、職員室―――

「いやー、驚きましたね」
「先生の授業もですか?」
「あの播磨が・・・」

 放課後、全授業が終わった後、職員室では播磨の話題で持ちきりだった。
 播磨が勉強に目覚めただの、遂に教師の熱意が伝わっただの、吉田山や天王寺にテストで負けたくないからだの、播磨の知らない所でそんなことが話されていた。

 (皆 今頃気付いたのか?当然じゃないか!なんたって『私の』拳児君だからな!)
 (そう・・・『私の』拳児君は他の授業も頑張っていたのね・・・)

 女教師が約2名ほど妄想にふけっていたが・・・


 (播磨が真面目になった??・・・そんな訳ないだろう!)

 殆どの教師が感心している中、この人だけはいつも通りだった。


 ―――嫌われ者の加藤先生、こんにちは。


「2−Cの生徒が考えそうな事だ。真面目に勉強してる振りをして教師に気に入られ、留年を免れようって考えてるんだろう?・・・フン!この私はそんな事で騙されんぞ!・・・って、な、何ーー!!」

 他の教師が播磨の事(2−Cの生徒)を褒めているのが気に入らず、職員室を後にした加藤先生。
 だが、2−Cの教室の前を通りかかった時に、播磨が花井に勉強を教わっているのを、彼は見てしまった。

「あ、あいつ等は仲が悪かったはずなのに・・・まさか本当に・・・」
 (そうか、本当にあの播磨がやる気になったとは・・・フッ、私もやる気になった生徒の志を汚すような事はしない。・・・だが私は甘やかしたりはせんぞ!!)


 ・・・なんて、殆どの教師が勘違いしていたりする。


続く・・・


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