Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.11 )
日時: 2005/09/26 23:50
名前: ACE

播磨とハリーの熱い握手が終わる。
「さて、俺は戻るけど、お前は?」
「私モ戻ロウ」
二人が戻ろうと動きだした瞬間、近くの茂みから何か動く音がする。
「何ダ?」
「気になるな、お前はそっちから回ってくれ」
「アア…」
二人で挟むようにして茂みの中に入るとそこには…
「や、やあ…」
デジカメを構えた冬木がそこにはいた。
「ど、どうかしたの?二人して…」
「冬木…こんな所で何してんだ?」
「べ、別に二人のキスシーン何て撮ってないよ」
「何ダッテ?」
「テメェ、やっぱり隠し撮りしてたのか」
デジカメを奪おうとして冬木に近づく播磨。しかし冬木は全力で逃走する。
「チッ、追うぞハリー」
「アア!」


冬木を追って角を曲がるとそこには、播磨に告白した八人の女性が冬木の足を止めていた。
「お、丁度よかった。冬木からそのデジカメをとって俺に渡してくれ」
「な、冗談じゃないよ。これは俺のデジカメなんだから」
「ウルセェ、大体お前が隠し撮りしてたのが原因じゃねえか!」
じりじりと冬木に近づく播磨。すると、後ろから晶がすっと冬木のデジカメを奪う。
「よくやった高野、俺に渡せ」
しかじ播磨の私事に従わずにデジカメをいじり始める晶。そしてあるところで晶が固まる。
「ねぇ、どうしたのよ…………」
晶からデジカメをとって画面を見た愛理が固まる。それを後ろから覗く美琴と八雲。そして固まる二人。
「お、おい…」
固まったままの愛理からデジカメをとる妙。その後ろから画面を覗く絃子と葉子。そして固まる三人。
「何ガアッタ?」
固まったままの妙からデジカメをとって画面を覗くララ。そしてデジカメを握り潰すララ。
「俺のデジカメ…」
嘆く冬木だが誰も聞いていない。
「ハリー、お前走れるか?」
「マダ足が痛ムカラ無理ダ」
「すまないな、こんな事になってよ」
「…気にスルナ…」
しかし、混乱しているのかいつまで経っても動く様子のない八人。
「ハリー、今のうちに逃げるぞ」
二人が逃げようとすると八人が動きだしてあっという間に二人を囲む。
「ま、待て。これは…」
しかしよく見ると涙目になっている八人。
「…拳児君はこういう趣味なのかね?」
「…ハ?」
どうやら思いっきり勘違いされているようだ。
「待て、それは事故なんだ」
事の成り行きを説明する二人。

「……と、言う事なんだ。だから俺たちはこんな状態なんだよ」
「ソウカ、ハリーが悪いノカ」
指をバキバキと鳴らしながらハリーに接近するララ。
「マ、マテ…」
逃げようとするハリーだが周りを囲まれているので逃げられないハリー。
「ハ、話せバ分カル……」
ララがハリーに襲い掛かる。ララの攻撃によって吹っ飛んだハリーが播磨に激突する。播磨の意識はそこで途絶えた…


「…ん、んん…こ、ここは」
気が付くとベッドに寝せられていた播磨。周りを見渡すとどうやら保健室に運ばれていたようだ。
「そうか…何時だ?」
時計の針は二時十分を指していた。
「とりあえず教室に戻るか」
まだふらふらした足取りでベッドから出る播磨。
「あ、ハリオ。目が覚めたんだ」
「え、ええ…」
「ゴメンね」
「いや、気にしないで下さい。それよりもハリーは?」
「もう戻ったよ」
「そうっスがじゃあ俺も戻ります」
保健室を出て教室に戻るが誰もいない。
「何だ、美術か」


美術室に入ると皆がスケッチをしていた。
「遅れてスイマセン…」
「いいのよ、今日中に提出だからちょっと急いでね」
遅れて始めた為時間内に終われなかった播磨。
「じゃあ、ここに提出しておいてね。播磨君は放課後に完成させて出しておいてね」


そして放課後。
「俺は先に美術の課題を終わらせてから練習に参加するからな」
そう言って美術室に向かう播磨。


美術室に入るとそこには誰もいなかった。
「アレ…葉子さんがいない」
周りを見ると書きかけの絵が置いてあった。
「へぇ、やっぱり葉子さんの絵はすげえな」
もっとその絵を近くで見ようと近づくが、足元に置いてあった画材につまずいて葉子の絵に思いっきり突っ込む。
「ヤ、ヤバイ…」
その時美術室に葉子が戻ってくる。
「よ、葉子さん。これは…」
「播磨君…」
「スイマセンでした!許してください」
「別に怒ってないよ。でも、どうしよう…」
「俺に出来る事なら何でも協力しますよ」
播磨はこの台詞をすぐに後悔することとなる。
「そう?それじゃあ絵のモデルになってくれるかな」
「そんな事でいいんスか?」
「ええ、でもヌードだから」
「ヌ・ヌード…」
「あ、脱ぐのは上だけでいいよ」
「もしかしてまたキュビズム…」
「違うよ。今度は普通に描くよ」


結局、自身の課題と葉子のモデルを終えた頃には時計の針は八時を指していた。
「ごくろうさま。おかげでいい絵が描けたよ」
「いいえ、それよりもその絵はどうするんです?」
「明後日にでも学校に飾ろうと思ってたんだけど」
「学校に?」
「もともとそのつもりだったから」
「そうっスか。じゃあ俺はこれで」
美術室から逃げるように出ていく播磨。


そして次の日の昼休み。周りを晶・愛理・美琴・八雲・ララに囲まれて昼食を取っている播磨。
「…何かスゲー食べづらい…」
たぶんそれは気のせいじゃない。播磨がそう嘆いたその時、西本が教室に入ってきて
「…新しい情報仕入れたよ」
西本がそう呟くと二−Cの教室が静まり返り机を動かして西本のエロ会議が始まった。
「さっき職員室で仕入れた情報なんだけど、笹倉先生が刑部先生とヌードの話をしていたんだな」
「フン、またどうせキュビズムだろ?」
「イヤ…話の内容からすると今度はセミヌードで普通絵なんだな」
唾を飲み込む西本一派
「そ、それでその絵は…」
「明日、美術室の前の廊下に飾るんだな」
「うぉぉぉぉぉ!」


「なあ播磨、今の話本当か?」
今の話を聞いていた美琴が話し掛けてくる。
「ああ、そうだけど」
「やっぱり気になる?」
愛理も気になっているようだ。
「何でそんな事を気にするんだ?」
「その…播磨さんは気にならないんですか?」
播磨の返答が気になって聞いてくる八雲。
「何で気にするんだ?毎日見てるってのによ」
播磨は自身の体を見ていると言うつもりで言ったが周りはそう受け取らなかった。
「飽きてる?まさか、毎日見てるの?」
「そうだよ高野、それがどうかしたのか?」
「毎日見てルノカ?」
「ああ、そうだよ。って言うかイヤでも見えるだろ」
播磨の今の一言にショックを受ける五人。
「どうかしたのか?」
お互いが勘違いしたまま問題の時を迎える。


カバーのかけられた絵を壁に飾る葉子。その絵を早くみたい男たちが唾を飲み込む。
「何か沢山集まったね…」
そう言ってカバーを取る葉子。
それを見た男共は
「…………播磨ぁ!?」
砂の柱となって崩れ去る
「何をそんなに驚いてるんだか…」
「あ、あのよ。もしかして昨日の話はアレの…」
「そうだよ。自分の裸なんて毎日風呂でみるだろ」
こうして当人以外を巻き込んだヌード事件は幕を閉じた。


どうもかなり久々投稿のACEです。別にさぼっていたわけじゃありません。(信じて)PCが壊れたのが原因です。これからは携帯での投稿になっていくと思うので誤字があると思いますが、あったら感想にでも文句を書いてください。
次回は播磨デート編を予定しております。
意見・感想待ってます。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.12 )
日時: 2005/09/26 23:51
名前: ACE

播磨のヌードを皆に発表した次の日の昼休み、職員室にて
「そういえば絃子先輩」
食後のコーヒーをすする絃子に話し掛ける葉子。
「何だい?葉子」
「いつだったか播磨君を探していたときに、一番最初に捕まえた人は彼とデート出来るって言ってましたよね」
「そ、そんな事言ったかね…」
明らかに目が泳いでいる絃子。
「あの時一番始めに彼を捕まえたのは私ですよね」
「…」
何も言えない絃子。
「それなら私が今度の休みに彼を誘っても文句はありませんよね」
「それは、拳児君が…」
「OKしたらいいですよね」
「ま、まあ…」
こうして葉子は播磨をデートに誘うこととなった。


同日夜。播磨の自室にて
「疲れた、演劇の練習があんなに疲れるもんだったとはな。それに、周防には襲われかけたし」
ちょうどその時播磨の携帯が鳴る。
「葉子さん?どうしたんだ…まさか」
恐れつつも電話に出る播磨。
「もしもし…」
「あ、播磨君。この前壊しちゃった画材の事なんだけど」
「べ、弁償…」
「それはいいよ。あそこに置いてた私も悪いから。ただ、次の休みに買いに行こうと…」
「荷物持ちますよ」
「本当?」
「もちろんスよ。もともと壊したのは俺だし」
「そう?それじゃあ時間だけど十時頃に私の家に来てもらえるかな」
「わかりました。十時前には着くようにしますよ」
そう言って電話を切る播磨。
電話を切った直後部屋のドアをノックしてくる絃子。
「ん、どうした?」
「ちょっと入っていいかい?」
「ああ、いいよ」
部屋に入ってくる絃子。
「今、誰から電話がかかってきたんだい?」
「ああ、葉子さんだよ。この前俺が壊した画材を次の休みに買いに行くことになったんだ」
顔が引きつる絃子。
「そ、それは本当なのかい?」
「本当だよ。嘘ついてどうなるものでもないし」
「そ、そうか…」


そして問題の休日。
播磨は十時前に葉子の家に到着した。
付けられているとも知らずに…
葉子の家のチャイムを押す播磨。
「はーい、本当に早かったわね」
家の中からただ画材を買いに行くとは思えない服装をした葉子が出てくる。
「そ、その格好…」
「変かな?」
「似合ってますよ」
「ありがとう。それじゃあ行きましょうか」
播磨の手を引っ張っていく葉子。
こうして播磨の苦難?の一日はスタートした。


最初に画材屋に入る二人。葉子が自分の買うものを選んでいる間播磨はトーンを眺めていた。
「…もう漫画を描くこともないのか。どうせアレだって落選してるだろうし」
それでもやはり未練があるのかなかなかそこから離れられない播磨。


五分ほどすると葉子は、買い物を終えたらしく後ろから播磨に話し掛ける。
「どうしたのかな?」
「な、何でもないっスよ。ただちょっと」
「…漫画描きたいの?」
「別にそういうわけじゃ…」
「でも、さっきからトーンを眺める目は描きたそうに見えたけどな。絵の才能はあるんだから続けてみたほうが自分の為にもなると思うよ」
「でも、漫画は告白の為だけに描いていたようなものだから今更…」
「そう…」
少だけし残念そうに答える葉子。
「ま、少し落ち着いたらまた書き始めるかもしれないっすから」
「本当?描いたら私にも見せてね」
うれしそうにそう言う葉子。
「もちろんいいっスよ」
そんな会話をしながら画材屋を出る二人。

「荷物持ちますよ」
そう言って葉子の荷物を持つ播磨。
「これでもう終わりっスか?」
「画材はこれで全部だけど、播磨君は優しいからもう少し付き合ってくれるよね?」
質問というよりは脅迫に近い聞き方をする葉子。
「そ、その…」
「私の事嫌いかな?」
悲しそうな顔をしてそう言う葉子。
「そ、その…嫌いじゃないけど…」
「じゃあいいよね?」
葉子に口では勝てないと思いながら
「まあ…」
そう力なく答えたのだった。
「本当?」
うれしそうに播磨の腕に抱きつく葉子。
「な、何を!?」
「迷惑?」
「そういう事じゃ…殺気?」
後ろから複数の殺気を感じて後ろを振り向くが特に異状はなかった。
「どうしたの?」
「何か殺気を感じて…」
「そう…」
そう言ってさらに強く抱きつく葉子。
「葉子さん!?」
「今くらいこうさせて…今だけ…」
「今だけっスよ」
そのままの状態で少し歩きながら
「次は何処に行くんです?」
「服を買おうと思ってたんだけど、いいかな?」
「ええ、もちろん」
服を買いに店に入って行く二人。


そして、播磨が葉子の服を選んでいき、全てを終えた頃には播磨の両腕は服の入った袋で完全にふさがっていた。
「こ、これで全部っスか?」
「ええ、そういえばそろそろお昼だけどどうしようか」
「今日みたいに天気のいい日は何処か外で食べたいっスね」
「じゃあ、何処かで何か買ってお昼にしようか」
都合よく近くにワスバーガーがあったのでそこで買う事にして中に入る二人。
「いらっしゃいませ、ご注文は…」
「お、一条」
「播磨さんと笹倉先生」
どうやら一条がバイトしている店であったようだ。
「えーと、ワスセットを二つ、テイクアウトでお願いね」
「ご注文ありがとうございます。少々お待ちください」
播磨が少しでいいから座って休もうと空いている席がが無いか探していると今鳥を見つける。
「よう今鳥。どうしてお前がここに?」
「あと少しでかれんのバイト時間が終わるから、それを待ってるんだよ」
「そうか、ちゃんとうまくいってそうでよかった」
「ま、それも全部播磨のお陰だ。感謝してるよ、本当にさ」
「気にするなって、俺は後押しをしただけだから」
今鳥とそんな会話をしているうちに注文していたものがくる。
「じゃあ、俺は行くわ」
「おう、じゃあな」
ワスバーガーを出て近くの公園に向かう二人。


公園に到着するとベンチではなく芝のうえに座って昼食をとる二人。
「今日は色々突き合せてごめんね」
「気にしないで下さい。元々の原因が俺にあったんだから」
「それでも、服を買うのに付き合ってくれたよ」
「まあ、気にしないでください」
何だか少しばかり良い雰囲気になっていく二人。


十分程で昼食を食べ終える二人。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「そうっス…うおっ!」
立ち上がった際にバランスを崩して葉子を押し倒す形になる播磨。
「…その…」
顔を赤くしながら
「ま、まだお昼だよ。こういう事は夜になってから…」
何て事を言いだす葉子。
「ちがーう!」
立ち上がる播磨。
「と、とにかく…早く帰りましょう」
こうして播磨のデートは幕を閉じた?


播磨デート(播磨)編です。
えっと、本当はこの後も続きますが、容量の関係上次回にさせていただきます。本当にスイマセン。
次回は播磨デート(追跡)編です。
意見・感想待ってます。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.13 )
日時: 2005/09/26 23:51
名前: ACE

少し時間を戻して葉子が播磨をデートに誘った次の日の昼休み2−Cにて。
一人考え込んでいる晶。
「どうしたの晶?そんなに考え込んで」
晶を心配した愛理が晶に話し掛けてくる。
「ちょっと播磨君の事で…」
晶の一言に反応する愛理と美琴。ちなみに播磨は2−Cには居ない(むしろ逃げた)。
「何があったんだ高野」
「実は昨日、播磨君が笹倉先生からデートに誘われたらしいの」
何処でその情報を仕入れたんだ?と言う突っ込みは無しで。
「えっ、本当?」
「で、でも…何で?」
「前に播磨君を学校で探していたときに彼を一番始めに捕まえた人がデートできるって言う話があったでしょ?」
「ま、まあ…」
「まさか、それでデートに…」
「その通り」
はっきり言い放つ晶。
「で、でも播磨がOKするとは…」
「もうしたらしいの」
晶よ、何でそこまではっきり知ってるんだ?って突っ込まないで
「何ダッテ?」
何時の間にか播磨と一緒に昼食を食べようと2−Cに来ていたララが晶の後ろで驚いていた。
「で、でも…何で晶がそこまで知ってるのよ」
みんなが思っている事を聞く愛理。
「それは昨日、刑部先生からメールが来たの」
どうやら絃子が連絡していたようだ。
「それ知ってたのか」
「で、どうするの?」
「それでみんなに相談があるんだけど…」


同日放課後、茶道部部室に播磨を狙う葉子以外の七人が集まっていた。
「では、これからデート対策会議を始めます」
司会進行は晶。
「あの部長…」
「八雲、発言の時は挙手してちょうだい」
手を上げる八雲。
「どうぞ」
「その…対策といっても具体的には何をするんですか?」
「それを今から決めるのよ」
手を上げるララ。
「どうぞ」
「簡単ダ、行かセなけれバイイ」
「残念だけどそれは無理ね」
「何故?」
「では、その理由を今から話します。そもそも今回のデートの原因は播磨君にあります。それは、数日前に笹倉先生が発表した播磨君のセミヌードが一番の原因となっています」
手を上げる愛理。
「何であの絵が関係あるのよ」
「私の調べによると、本来なら別の絵が飾られるはずだったのに彼がその絵をダメにしてしまったらしいの。その際に彼が壊した画材を買いに行くのを口実にデートに誘ったらしいの」
「笹倉先生ったら、ハリオの優しさに付け込んで」
たぶんここにいる全員がそうなのでは?と思う。
「でも…それなら播磨さんに行くなとは言えないんじゃ…」
「やっかいなのは八雲の言う通りで彼を止められないことです、そこで当日彼を追跡したいと思うんだけど…どう?」
無言で頷く全員。
こうして播磨のデートを追跡する事が決まった。



そしてデート当日。九時半頃に家を出た播磨をつけ始める。
「ねぇ、バレないかしら?」
播磨の後ろ二十メートル前後の距離でつける一行。
「ま、いざとなったら逃げれば済む事だよ」
「そうですよね、たまには刑部先生も良い事言いますね」
「たまにと言うのが気になりますね、姉崎先生」
火花を散らす二人。
「そんな事してると彼に気付かれますよ」
晶の一言で静かになる二人。
「さ、張り切って行きましょうか刑部先生」
「そ、そうですね姉ケ崎先生」
思いっきり動揺している二人。
十分程歩いて葉子の家の前に到着する播磨。そして中から葉子が出てくる。
「葉子の奴、何だあの格好は」
「あからさまにデートって感じですね」
播磨と手を繋いで歩きだす葉子。
「葉子…後で覚えて…」
少し歩いて、播磨の腕抱きつく葉子。
それを見たララが、走りだそうとするが美琴が止める。
「…モウ無理ダ…」
「落ち着け、ララ。今出ていったら播磨に何ていわれるか」
「ク…分かッタ」
「とにかく、画材さえ買えば終わるハズだから」
そう言って二人を宥める晶。
そんな事をしている間に画材屋に入っていく二人。



十分程して画材屋からでてくる二人。しかし、帰る様子の無い二人。
「葉子の奴、本気でデートをするきだな。もう、我慢できない」
葉子の携帯に電話をかける絃子。
「…………お客さまのおかけになった…」
最後まで聞かずに電話を切る絃子。
「葉子の奴、電源を切ってたよ」
そんな絃子の気持ちを知ってか知らずか、播磨の腕に抱きつく葉子。
そう、あの時播磨が感じた殺気は播磨に向けられたものではなく葉子に向けられたものであった。
イライラしながらも二人を追跡する七人。
どうやら服を買うらしく店に入っていく二人。
「晶、あれじゃあ本当のデートじゃない。どうするのよ」
「まさか、播磨君がOKするなんて…それ以上に笹倉先生があそこまで口が巧かったなんて…」
「葉子はもとからああだよ」
「そ、そんな事よりもどうするんだ?」
「邪魔すればイイ」
「でも…播磨さんに何て言われるか…」
結局、播磨に何か言われるのを恐れて何も出来ずにただ見ているだけの七人。



葉子が服を買っている間、近くのカフェで二人のことを見ている七人。
「もう、ずるいよ。ハリオに服を選んでもらうなんて」
「でも、葉子よりも先に拳児君に服を選んでもらった裏切り者が居たはずだが?」
そう言って愛理の事を見る絃子。
「な、何ですか刑部先生。先生だって彼と同居してるじゃないですか」
みたいにお互いに文句を言っているうちに、二人が店から出て言ってしまうが誰も気付かない。



そして五分後…
「…って、播磨がいないぞ」
「あ、本当…」
「と、とにかく探しましょう」
全員カフェを出て播磨を探すが何処に行ったか全く分からなかった。
すると向こう側から一条と今鳥がやってくる。
「あ、みなさんお揃いでどうしたんですか?」
「イチ・ジョー、ハリマを知らないカ?」
「播磨さんなら、さっきワスバーガーに来てましたけど…」
一条がすべてを言い切る前に走り去ろうとするが、今鳥に止められる。
「でも、テイクアウトだったから何処か近くの公園ででも食ってるはずだと思う」
この辺りに公園は一つしかないのでそこに向かう一行。



その播磨がいると思われる公園に到着して、播磨を探して辺りを見渡すと、播磨が葉子を押し倒している所だった。
完全に固まる七人。
しかし、播磨は違うと叫んで立ち上がる。そして葉子の荷物を持って歩き始める。
「何だったの?」
「でもハリオ…確か温泉の時も笹倉先生を押し倒してたし…」
「そんな事よりも今は追うのが先よ」
二人を追う。



葉子の家に到着する二人。玄関に荷物を置いて帰ろうとする播磨を引き止めようとする葉子。
「…そうだ、どうしてこれに気付かなかったのか」
そう言って播磨の携帯に電話をかける絃子。


葉子をなんとかしなければ、と困惑しているときに誰かから電話がかかってくる。
「ま、待ってください。電話が」
「誰から?」
「絃子さんから…」
「切っちゃえば?」
とんでもないことを言う葉子。
「そんなことしたら後でどうなる事か…」
電話に出る播磨。
「もしもし…」
「拳児君、今キミは何をしているのかね?確か買い物が終わったらすぐに帰ってくるはずだが」
「そ、その今から…」
そう言い掛けたときに葉子が播磨の携帯を奪って
「絃子先輩。彼は今日、私の家で晩ご飯を食べていきますから」
そう言って一方的に電話を切る葉子。



「よ、葉子…」
怒りで体がぷるぷる震えている絃子。
「ど、どうしたんですか?」
「みんな聞いてくれ、葉子が拳児君を晩ご飯まで招待するそうだ」
それを聞いて動きが止まる六人。
「殴り込みましょう、あそこに…」
「めずさらしく意見が合いますね姉ケ崎先生」
七人で葉子の家に向かう。



「…どうしよう、もう帰れないかも」
「そうなったら私の所に来なよ…」
チャイムが鳴る。
「誰かな?ちょっと見てくるね」
玄関に向かう葉子。
「ハーイ、どちら…」
とドアを開けると一斉に七人が問答無用で突入してくる。
「な、何でココに…」
七人の姿を見て驚いている播磨。
「もう、勝手に入ってこないでくださいよ」
「葉子が抜け駆けしたのが悪いのだよ」
「やっぱりつけていたんですね」
表情を変えずにそう言う葉子。
「つけてたのか?何でそんな事を…」
「それよりも播磨。さっき笹倉先生の事…」
「アレも見てたのか?アレは違うんだ。俺が…」
播磨の台詞に葉子が割り込んで
「私はまだ早いって言ったんですけど」
「待ってくれ、違うんだ。アレは転んだ拍子にああなっただけなんだ。信じてくれ!」
「私は播磨さんを信じます」
「本当か?ありがとう妹さん」
「と、とにかくみなさん帰ってください」
「それでは私は拳児君を連れて…」
『ダメ』
絃子と播磨以外の声がハモった。
「じゃあ、俺が一人で帰るってのは…」
言いかけてやめる播磨。なぜなら八人の無言のプレッシャーに耐えられなかったから。
「…帰りません」
結局そのまま葉子の家でみんなと夜まで過ごすこととなった播磨。




播磨デート(追跡)編でした。
次回は縁結びの播磨様?編を予定しております。
それで久々にクイズを実施したいと思います。
問題
播磨は誰と誰をくっつけるように動くでしょう。
ヒントはその男女にある共通点があります。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.14 )
日時: 2005/09/26 23:52
名前: ACE

葉子とデートした次の日の朝、目が覚めた播磨は普段と状況の違うことに気付いた。
(な、何だ?今日の枕はずいぶん暖かくて柔らかいな…)
その枕?を抱き寄せようとすると後ろの方は前に比べて硬かった。
(…まさかな)
その枕?から顔を放してみると、枕と思って抱いていたのは絃子だった。
「な、何で…」
目をゆっくりと開ける絃子。
「…おはよう、拳児君」
「どうして絃子が俺のベッドに…」
「何を今更。私と拳児君の仲じゃないか」
「な、な…」
何も言えずに狼狽える播磨。
「それに拳児君の方から私の胸に抱きついてきたのだよ」
「いつから、俺のベッドに…」
「拳児君が寝たのを確認してからだったから、二時頃だったと思ったが」
「で、俺はいつから抱きついてたんだ?」
「私がベッドに入ってからすぐに抱きついてきたかな?」
どうやら五時間近く絃子の胸に顔を埋めていたらしい。
普段なら夜に一度は目が覚めるか、何度も夢を見たりするのだが、この日は一度もそういうことが無かった。つまり、安心して熟睡していたらしい。
「と、とにかく…俺は準備始めるからな。絃子も遅刻するなよ」
絃子と目を合わせないようにそう言ってベッドから逃げていく播磨。



その日の昼休み、麻生が菅と昼食の為に食堂に向かおうとしたその時、2−Cにサラがやってくる。
「先輩、一緒にお昼にしましょう。お弁当も作ってきました」
「あ、ああ…でも」
少し照れた麻生の反応を見た菅は、泣きながら麻生の制服をつかんで
「羨ましいぞ、この野郎!」
「そ、それなら俺よりも播磨のほうが…」
「羨ましくねえ!」
力一杯否定する菅。
「何でだ?」
「だってコエーよ」
確蟹…
「まあ、高野は…」
言いかけて晶に睨まれてたじろぐ麻生。
「どうしたんだよ麻生」
「う、後ろ」
麻生に言われたとおりに後ろを見て固まる菅。
「…さ、三人で仲良く食べてくるか」
「そ、そうだな菅。サラも…」
「も、もちろんいいですよ…」
ぎこちなく教室から逃げていく三人。



そんな状態で昼食が終わり、雑談を始めようとすると結城が播磨に話し掛けてくる。
「播磨君、ちょっと話があるんだけど…」
播磨を囲む女性達の視線が集中する。
「その…ここじゃ少し話しづらい事だから」
「じゃあ屋上に行くか」
とにかくこの空気から離れたい播磨は結城の話を聞くために屋上に行くことにした。


屋上に到着する二人。
「何だ?話って」
「その、一条と今鳥くんを…」
「ああ、アレね。まあ、一応な」
「それで…」
少し言い辛そうな結城。
「ああ、メガネの事か」
「ど、どうして…」
何故?と言う顔をする結城。
「だって、俺とアイツが喧嘩してる時に、アイツの事を心配そうに見てたからな」
「でもクラスの皆が見てる…」
「大体、他の奴らは呆れてるか、面白そうにしてるかの二択になるけど、お前はずっとアイツのだけ見てるから」
播磨に言われた通りだったので何も言えない結城。
「ま、協力はするけど俺一人じゃどうしようも無いな。なぁ?」
そう言って扉の方を見る播磨。
「そこに居るのは分かってるんだ」
「え、え?」
まだ状況が飲み込めていない結城。
「どうせ分かる事だから、いいから出てこいって」
播磨にそう言われて、晶・愛理・美琴・八雲・ララが出てくる。
「え、何で?」
まだよく分かっていない結城。
「まあ落ち着げさっきも言ったが俺一人じゃどうしようも無い。これは高野と妹さんに協力してもらわないと、まず無理だな」
そう言って二人を見る播磨。
「私にどうしろと?」
「どうせ分かってるくせによ。で、協力してくれるか?」
「私は…協力します」
八雲がそう答える。
「そうか、まあ…妹さんが協力してくれればどうにかならない事も…」
「誰も協力しないとは言ってないわ」
「そうか、それじゃ…」
「待って、私も協力するわよ」
「気持ちはありがたいけど、周防と違ってあまり接点がないからな…」
「そ、それはそうかもしれないけど」
「気持ちは貰っておく。それで具体的な作戦だが…花井には妹さんに告白してもらう」
播磨のこの一言に晶以外の全員が驚く。
「まあそれが一番妥当な所ね」
「やっぱり高野は分かってたか。花井は良く言えば生真面目。悪く言えばバカ。それは分かってるな?」
「う、うん」
うなずく結城。
「今のアイツには妹さんしか見えていない。けど、完全にフラれれば多分妹さんの事を諦めるだろ」
「でもよ、今までだって…」
「妹さん。今までに花井からはっきりと告白されて、はっきりと断った事あるか?」
「…無いです」
「つまり、はっきりすればアイツも納得するしかないわけだ。それが良い結果でも悪い結果でも」
「さすがにな…」
「まあ、そこで落ち込んでるアイツをお前が慰めるってわけだ」
「それってすごくずるい女のような…」
「でも、そうでもしないと一生アイツに気付いてもらえないと思うぞ?」
播磨の一生という言葉に反応する結城。
「私はどうすればいいの?」
「まず、高野に花井が妹さんに告白するようにしてもらう。それで妹さんが断って、そこを…」
播磨の言いたいことを理解してうなずく結城。
「まあ俺が出来るのはココまでだな。後はお前次第になる」
「うん…」
「それで、いつにする?なるべく早いほうがいいんだろ?」
「ま、まあ…」
「高野、準備にどれくらいかかりそうだ?」
「そうね、二日もあれば十分よ」
「そうか、じゃあ明後日に実行するとして…少しはアイツを焦らせたほうがいいな。妹さん」
一人で勝手に納得した播磨は八雲に話し掛ける。
「何ですか?播磨さん」
「明日何処かに遊びに行くか」
播磨の一言に驚く結城以外の女性。
「何故ソウナル?」
「だって、焦らせたほうが効果的だと思うが…」
何か問題でもあったか?と言おうと思ったが八雲と結城以外の女性のプレッシャーに耐えかねて言葉をつまらせる播磨。
「じ、じゃあ皆で行くか…」
自分の言動を思いっきり後悔した播磨だった。



次の日の夕方
結局八人全員と遊びに行くことになった播磨。
(遊びに行くなんて言わなきゃ良かったぜ。別にイヤじゃないけど、これじゃあ俺の体が保たない。でも、それは俺がはっきりしてないから悪いのか)
そんな事を考えながら歩いていると
「おい播磨。ずいぶん沢山と女をつれやがって、いい度胸してんな」
「今日こそテメェをブッ殺してやるよ」
播磨達の前に十人の不良が立ちはだかる。
「アン?何だお前等、やるの…」
播磨が全てを言い切る前にララが無言で不良の群れに突進して、前の二人にラリアットを決めて二人を沈める。
「な、何だコイツ?」
「とにかく…ぐおっ!」
美琴によって更に二人があっさり沈む。
「くそっ、なめやがって…」
不良の一人が八雲に襲い掛かるが、見事な一本背負いであっさりとやられる不良。
「な、何なんだ?コイツ等は…ぐはっ!」
絃子の改造モデルガン攻撃で三人があっさりとやられる。
その様子を見ていた一人が晶に向かうが、晶の人中に対しての急所攻撃によりあっさりと気絶する。
※人中とは鼻と上唇の間にあるみぞの事です。本当に人体の急所の一つなので友達には絶対にやらないでください。マジに入ると本当に倒れます。
その間に美琴とララが一人ずつ倒して、一分もたたないうちに十人を倒してしまう。
その光景を見た播磨は
「あの…俺の出番は…」
「無いみたいね、イヤね全く。乱暴な人は」
播磨にそう言う愛理であるが、愛理自身もそれは言えない立場だと思う。
「……行くか」
とりあえずその場を離れることにした播磨。
最初にこんな事はあったが、ほかには何事もなく?終わった。



そして次の日の昼休み
この日は播磨の作戦により、八雲と一緒に屋上で昼食を取っている播磨。
その事をしった花井は妙に落ち着かない。
「そんな気になる?」
「!何だ、高野君か」
「悪かったわね、八雲じゃなくて」
慌てる花井。
「まあ、それはいいわ。それよりもいつまで八雲に付きまとうの?」
「な、何を…」
「そんなに気になるならさっさと告白したら?じゃないと本当に手遅れになるわよ」
タイミングよく花井のかたをたたく美琴。
「そうだよ、言わなきゃただ泣くだけだぞ」
「周防…」
「どうするの?」
「高野君、僕に協力してくれないか?」
「ええ、それじゃあ八雲を放課後に屋上に呼んでおいてあげるし、邪魔も入らないようにしてあげる」
「すまない、高野君。播磨、キサマには負けん」
しかし花井は気付いていなかった。自分が播磨の手の上で踊っていたにすぎない事を…



そして放課後、屋上にて
八雲と向かい合う花井。
「八雲君…君に大切なことを伝えたい事がある…」
「はい…」
「僕は…僕は君のことが誰よりも好きだ。僕と付き合ってくれ!」
「ゴメンなさい、花井先輩とは付き合えません」
「播磨の事が…」
「ハイ…」
「そうか、いや…すまなかった」
「気にしないでください。私の方こそ本当にすいませんでした」
そう言って屋上から去っていく八雲。
「ハハハ…フラれたよ。結局僕の独り相撲だったわけだ…」



それから少し時間が経った2−Cに八雲がやってくる。
「あの…」
「終わったんだな?」
「ハイ…」
「妹さんは気にするな」
「ありがとうございます、ではまた…」
自分の教室に戻っていく八雲。
「さて、少しは一人にしておいてやらないとな」
それから三分ほどして結城に声をかける播磨。
「屋上にいるから行ってこい」
「でも何て言えば…」
「同じパートなんだから、それを理由にすればいい。後はアイツが何か話すと思うからタイミングをはかって慰めてやれば大丈夫だ。頑張ってこいよ」
そう言って結城の肩をたたく播磨。
「うん、分かった」
2−Cを出ていく結城。
「さて、俺の役割はこれで終わり」



それから二十分程して花井と結城が2−Cに戻ってくる。
「ありがとう播磨君」
「気にするな、以外にあっさりしてただろ?」
「え…もしかして見てたの?」
「見てねぇよ。でも、結果は最初から分かってたからな」

こうして花井と結城は付き合うこととなった。



えーっと、縁結びの播磨様?編でした。
クイズの正解は花井と結城でした。自分的にはb22が印象が結構強かったのでこうなりました。
またまた問題です。
この話のなかに少し前に流れていた某CMの某キャラクターの名?ゼリフがあります。それは何でしょうと言うのが今回の問題です。
次回はドタバタ演劇練習編を予定しております。
久々?に播磨が爆走しまくる予定です。
皆さんの意見・感想待ってます

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.15 )
日時: 2005/09/26 23:53
名前: ACE

何だかんだやっているうちに本番まであと一週間を残すのみとなっていた
「本番まであと一週間しか残っていない。今日から夜は時間ギリギリまでやって朝練も始めたいと思う。特に播磨」
「何で俺なんだよ」
播磨の反応に花井は当然と言う顔をして
「お前は主役なのにまだ一度も最後まで通せたことが無いんだぞ」
「…分かったよ」


そして放課後
同じシーンでかならず台詞が詰まる播磨
「おい播磨、もう五回目だぜ?そろそろ勘弁してくれよ」
何て事を言って播磨を責め立てる男達
「本当に…!?」
膝をついて腹を押さえる播磨
「何だ?腹が…」
その様子をみた男達が
「おい、腹なんか押さえてないでさっさと始めてくれよ」
「そうだよ、本当に早くしてくれ」
またまた播磨を責め立てる男達
その光景に耐えられなくなった愛理が播磨に駆け寄り、播磨をかばうように自分の胸に抱き寄せる
「チョッド播磨君を責めても何も変わらないでしょ?それよりも協力して早く終わらせようって思えないの?」
いつもなら播磨がこの辺りで愛理を引き離してこれは終わるハズであったのだが、今日は違った。なんと播磨が愛理に抱きついたのである
「え?」
播磨の思わぬ反応に手を放す愛理
(お嬢の胸結構デカくて、やわらかくてなかなかいいな…)
その場の空気が凍り付き三十秒ほど経過すると
「しまったぁぁ!違うんだ、これは違うんだぁ!」
そう言って走って逃げていく播磨


2−Cから屋上まで全力で走る播磨
「はぁ、はぁ…何で俺はあんな事を…」
先程自分がしたことを思い出す播磨
「でも何か無意識のうちにやってたな。俺は一体どうしちまった?」
その時屋上の扉が開く音がする
「播磨君」
「高野…」
そこには晶がいた
「その…」
「何も言わなくても良いわ」
そう言って播磨に近寄って来るる晶
「戻りましょう、早く練習を始めないと…」
播磨は晶の言葉を遮るように
「戻れねえよ、あんな事したんだから」
と言う
「愛理は気にしてはいなかったわよ」
「それもあるが、周りの野郎共がな…」
「安心して、私が何も言わせないから」
少しほほ笑みながらそう言う晶
「そうか、高野に言われると妙な安心感があるよ」
「そう…」
それだけ言うと播磨の目前まで接近する晶
「播磨君」
「ん、何だ…!?」
播磨を自分の胸に抱き寄せる晶
「私のは大きくないけど、ダメ?」
(…大きいわけじゃないけど、何だか不思議な安心感があるな)
無意識のうちに晶を抱き締める播磨。その播磨の頭を静かに撫でる晶


その状態が二分ほど続いて自然と離れる二人
「その…悪い」
「気にしないで」
沈黙する二人。見つめ合う瞳、近づく唇…
「いや…その…」
狼狽える播磨を無視して顔をゆっくりと近付けてくる晶
二人の唇があと三センチで触れ合うというところで屋上の扉が勢い良く開く
「高野っ!」
乱入した美琴は二人の間にダッシュで割り込み、二人を引き離す
「全く…戻ってくるのが遅いと思えばこんな事になっとるし、播磨も播磨だ」
「その…悪い」
「高野なんかに頼まなくても、私がいつでも甘えさせてやる」
「それはどういう…」
播磨が全てを言い切る前に、美琴が自分の胸に播磨を抱き寄せる
(本当にデカいな。これもまた包まれるような安心感が合っていいな)
美琴に抱きつく播磨。
だが二十秒ほどすると
(い、息が出来ない…)
苦しそうに美琴の胸から離れる
「はぁ、はぁ…苦しかった」
「大丈夫か?播磨」
「ああ…と、とにかく戻るか…」
その日の練習で播磨がミスをすることはなかった


次の日、とりあえず学校に来たが腹が異様に痛くなったので保健室で薬をもらって寝ることにした播磨
「どうも」
「あ、ハリオ。どうかしたの?」
「その、腹が痛いんで薬もらって寝ようと…」
「朝ご飯はしっかり食べてきた?」
「ええ」
「じゃあ、ちょっと待っててね」
妙が薬を取っている間、立って待つのも何なので座って待っている播磨
播磨が座るとすぐに薬と水を持って妙が戻ってくる
「はい、薬と水」
「どうも」
薬を一気に飲んでコップを妙に渡す
「どうしたの?ハリオ。私の胸の部分をずっと見てて」
「な、何を…」
顔を真っ赤にする播磨
「ハリオが甘えたいならいくらでも甘えていいよ」
そう言いながら播磨に近づく妙
「ねぇハリオ…?」
妙の胸に抱きつく播磨
「ハリオ…」
(お姉さんは大きいな。それに何だか甘えたくなるような安心感がある…)
播磨を抱き締める妙
その状態が十分程続いた時、保健室に誰かがやってくる気配がして慌てて離れる二人
「じ、じゃあ俺はベッドで寝てます」
ベッドに入ると薬が効いたのかすぐに熟睡する播磨


気が付くと寝る前は明るかった空が暗くなり始めていた
「今、何時だ?」
時計の針は四時を指していた
「ずっと寝てたのか」
ベッドから立つ播磨
「アレ…誰も居ない。まぁいいか」
練習に参加するために教室に戻る播磨


2−Cに入ると皆の視線が播磨に集中する
「大丈夫か播磨。皆お前を心配してたんだぞ」
「ああすまない、練習始めるか」
練習に参加する播磨だが、何度も腹を押さえて屈み込んでなかなか練習に身が入らない
「大丈夫?播磨君」
「あ、ああ…」
「今日は帰って休んだほうが良いんじゃない?」
「でもよ…」
「本番前にアナタが倒れたらどうするの?自分の為にもクラスの為にも今日は休んだほうが…」
「悪い…明日からはちゃんとするからよ…」
苦しそうに教室をでていく播磨


校門付近でララの後ろ姿を見つける播磨
「よう…」
播磨に呼び止められて足を止めるララ
「ハリマ、ドウシタ?練習ハ…」
「体の調子が悪くて帰って寝るんだ」
播磨の傍まで来て、播磨の荷物を持つララ
「お、おい…」
「家マデ運んデヤル」
「助かる…」
普通の速度で歩くララだが、播磨の歩く速度はかなり遅かった
「待ってくれ、歩くの早いって」
「普通ニ歩いてルガ…大丈夫カ?」
播磨を心配して播磨のもとに寄ってくるララ
「イヤ、何か胃が痛くてよ、歩くのも結構つらいんだ…」
それを聞いたララは播磨の荷物を下ろして播磨をおんぶする
「ララ?」
「病人ハ黙ッテ言ウ事ヲ聞いてれバイイ」
播磨と播磨の荷物を持って歩きだすララ
「何だ、その…」
「デート一回デイイゾ」
「まあ…文化祭が終わってからな…」
そんなやりとりをしているとすぐに到着する


「助かったよ、もう…」
「良いカラ、無理ハスルナ」
そう言って播磨を担いだ状態のままでリビングまで入るララ
「そこのソファーに下ろしてくれ」
播磨をソファーに下ろすララ
ソファーに座った播磨は目の前にいるララの胸の辺りを無意識のうちに見つめていた
「ハリマ…何処ヲ見テル…」
(ララもデカいな…)
「ハリマ…」
ハリマに近づくララ
「ハリ、マ?」
ララの胸に抱きつく播磨。その播磨の行動に固まるララ
(デカいのに締まってていいな。それに安心できる…)
一分もするとララの硬直も解けて播磨を引き離す
「ハリマ…」
(ヤ、ヤバイ…キレてる…今度こそ殺される…)
ララが播磨の頭を両手で鷲掴みにする
(きっと俺の頭は冬木のデジカメみたいにつぶされる…)
ララの腕に力がこもる
(俺の人生たったの十七年位だったけどまぁ、好き放題にやってきたんだ…仕方ないさ…)
しかし播磨の予想とは裏腹に、ララは自分の胸に播磨を抱き寄せて本気で抱き締める
「ハリマ…私デイイナラ好きなダケ甘エロ」
(ラ、ララ…絞まってる…絞まってる…)
ララの肩をバンバン叩いてタップする播磨
それで播磨を離すララ
「スマナイ…」
「何だ…気にするな、もともと俺が…く、薬飲んで寝るからさ…」
「ア、アア…」
「悪いな、また明日学校で…」
帰るララ
「さて、何か薬はあるか?」
薬箱から胃薬を発見する播磨
「コレしか無いのか、まぁいいか」
とりあえずその薬を飲んで寝ることにする播磨


寝てからしばらくすると誰かが部屋に入ってくる音がする。俯せに寝ていたので誰が入ってきたかわからない
(誰だ?そういえば鍵閉めた記憶が無いし…もしかして泥棒か?)
寝たフリをしたまま音のするほうをこっそり見るとそこには…
「妹さん?」
「す、すいません。鍵が開いていたもので…」
「そんな事よりもどうしてココに?」
「姉さんから聞いて」
ベッドに近寄る八雲
「大丈夫ですか?」
しかし播磨には八雲の声は届かない
「播磨さ…ん?」
八雲の胸に無言で抱きつく播磨
(何でだろうな?年下なハズなのに安心できる。それに結構デカい…)
播磨のこの心の声は八雲には視えていた
播磨の心の内をしった八雲は播磨を抱き締める
「播磨さん、私で安心出来るなら…」
八雲がそう言いかけたその時にチャイムが鳴る
それを聞いた播磨は八雲から離れて
「ちょっと見てくるな。妹さんはここで待っててくれ」


自分の部屋を出て玄関に向かう播磨
「どちらさ…」
言いかけた所でドアが開く。そこに立っていたのは葉子であった
「アレ…葉子さん?」
「大丈夫?倒れて帰ったって聞いて…」
「ま、まあ休んでれば善くなると…」
「そう、中に入っていいかな?」
「その…」
目をうるうるさせる葉子
「お、俺の家じゃないし…」
「半分は君がお金を払ってるんだよね?」
「ま、まあ…」
「じゃあ入っても良いよね?それとも私が入ると何か困ることでもあるのかな?」
「な、何を言ってるんですか、何を…」
実際は困るのだがとりあえず嘘を言った播磨。それを聞いた葉子は勝手にリビングまで入る
「今から寝るところ?」
「ま、まあ…」
そう言いながら葉子に近寄る播磨
「添い寝してあげようか?」
「な、何を…!?」
気を失って倒れる播磨


気が付くと目の前は真っ暗でなにやらやわらかくて暖かいものが顔にあたっていた
とりあえず顔をあげてみると、どうやら葉子をソファーに押し倒す形で気絶していたようだ
一方、押し倒されたと勘違いしている葉子は
「そんなに慌てなくても…それにいつ絃子先輩が帰ってくるか分からないのに…」
顔を真っ赤にしながらそんな事を言う
「ま、待ってくれ…これは…」
後ろの方から視線を感じて見てみるとそこには、隙間からこちらの様子を覗く八雲がいた
「い、いや…だから…その」
その時再びチャイムが鳴って
「播磨、入るぞ」
そう言って晶・愛理・美琴・ララが入ってくる
「な、何でお前らが?」
「そんな事よりも、どうしてココに笹倉先生がいるの?それもソファーに横になった状態で」
「それにどうしてアナタの部屋に八雲がいるのかしら?」
それを言われた八雲は、すぐに播磨の部屋から出てくる
「どういう事かな?播磨君。さっき私を押し倒してくれたのはどういうつもりなの?」
葉子のその台詞によって場の殺気が濃くなる
「だからアレは…うっ」
腹を押さえて屈み込む播磨。それを心配して近づいてくる女性達
それにより包囲が解けた一瞬の隙をついて玄関にダッシュする播磨
(と、とにかく今は逃げ…)
播磨が玄関に差し掛かろうとするとき玄関のドアが開く
「ですから姉ケ崎先生、勝手に付いてこないでください」
「いいじゃないですか、未来の旦那さまが心配なんですから」
絃子と妙の二人がいた
(完全に囲まれたか、終わったな)
「拳児君、大丈夫…後ろの君たちはどうしてココにいるのかね?」
「そ、その…」
「とにかく中で話しましょうよ」
「どうして姉ケ崎先生かそれを言うんですか?」
「まあまあ…」
そのままリビングに戻る全員。



ドタバタ演劇練習編改め播磨爆走(前半)編。どうでしたか?遅れて本当にすいません。
さて、皆さんにスルーされていたクイズの答えですが、一応正解は
菅が出てくるシーンで
「だってコエーよ」
の後の確蟹が正解です。
これはカップヌードルのCMでタシカニ君が言っていて自分的に気に入っていたので入れました。
次は後半を予定しております。
ああ、もう容量が…皆さんの感想待ってます…

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.16 )
日時: 2005/09/26 23:54
名前: ACE

「で、どうしてここに君達がいるのかね?私の許可もなしに」
イライラする絃子の問いに葉子は冷静に
「私は彼に断わりましたよ」
「ここは私の…」
絃子の台詞を晶がさえぎって
「家賃を半分播磨君が払ってるので半分は彼の家になると思いますが」
「ハリオ可哀想、私の所ならタダでいいのに」
「保護者のフリしてお金をとるなんて…」
皆で絃子を責め立てる。しかし当の播磨が
「いいんだ、家賃は払う。自分で金を稼いでるんだからよ」
「そ、そうか…それよりも君はどうして沢近君に抱きついたのかね?」
「な、何でそんな事…」
絃子のいきなりの質問に狼狽える播磨
「どうしてだい?」
絃子の放つ重圧に耐えられなくなった播磨は
「そ、その…体が勝手に…」
「ほう…君は女性なら誰でもいいのかね」
「違う!好きな女じゃなきゃ“皆に”抱きついたりしねぇよ!」
叫んで否定する播磨とは対照的に固まる女性達
『皆に?』
「い、いや…その…」
女性達の視線が播磨に突き刺さる
「だ、だからさ…」
言いかけて止める播磨
「分かったよ…全部話す…」


「…と言う事なんだ」
説明を終えた播磨だが、その時すでに播磨は蚊帳の外に置かれていた
「あ、あのー…」
女性達は自分が一番だとお互いに言い合って播磨のことはすっかり忘れていた
「逃げよう…」
ゆっくりと立ち上がるが誰もそれに反応しなかったのでそのまま静かにその場を脱出?した


とりあえず、あの場から逃げた播磨だが特に行くあてもなかったのでとりあえず歩くことにした
「さてと、どうするか」
適当に歩いていると向うから花井と結城が並んで歩いていた
「よう」
「播磨…体の方は大丈夫なのか?」
「あんまり大丈夫じゃないが、家にいるともっとマズイ事になりそうでよ」
「そうか…」
「ま、明日以降は俺も練習頑張るから。それよりも二人が上手くいってそうでよかったよ、じゃあな」
それだけ言って二人と別れる播磨


一方女性達が播磨がいなくなってる事に気付いたのはそれから約一時間後の事であった
「アレ?ハリオがいない…」
「逃げたナ…」
「早く捜しに行ったほうが良いと思います」
そう言って播磨を捜しに行く女性達。捜索は夜の九時を過ぎるまで行われた。しかし何処を捜しても播磨が見つかることはなかったのである。それもそのはず、播磨は誰も捜しに来なかった学校の教室で演劇の練習をしていたのだから…


練習を終えた播磨。玄関前にて
「さすがにもう皆帰ってるよな、まあ…絃子には帰ったら謝って皆には明日学校で謝ればいいよな」
そう言ってドアを開ける播磨。しかしなぜかリビングの明かりは付いていなかった
「何処に行ったんだ?」
暗い中、リビングまで進んでリビングの電気を付けると八人の女性達全員が酔い潰れて寝ていた
「何でこんな事になってるんだ?」
播磨の嘆きは女性達の寝息によってかき消された。三十秒ほどで我に返った播磨は
「と、とにかく皆を起こさないとな」
とりあえず一番近くで寝ている美琴から起こすことにした播磨
「おい、周防…周防!」
美琴の体を揺らす播磨
「ん……変な所触ってんじゃねぇ!」
寝呆けた美琴の見事なアッパーをまともに顎にくらい、仲良く皆とおねんねすることになった播磨


数時間が経って気が付く播磨
「く…周防のヤツ…?」
部屋のなかの光景は気絶前と何一つ変わっていなかった。播磨が時計を見ると時間の針は二時頃を指していた
「何だ、まだ二時か。二時なら間に…?」
よく部屋を見渡してみるとカーテンの向こう側から微かに光が漏れていた
「まさか…」
恐る恐るカーテンに近づきゆっくりと開けてみるとそとは明るかった
「もう昼過ぎか…って!皆起きろ」
大声をあげながら皆を起こしていく播磨。しかしそれにより起きたのは美琴一人であった
「あ…播磨」
「あ、じゃない。もう昼過ぎてんだ、早く学校に行かないと。とりあえず周防も他のヤツ等を起こしてくれ」
「分かった」
しかし他の七人は起きる気配が全くない
「く…どうすれば」
「…簡単な方法があるけど…」
「よしっ、その手で行こう」
全部聞く前に美琴の提案を受け入れる播磨
「本当だな?」
そう言って播磨にじりじりと近づく美琴
「で、どうするんだ?」
播磨の質問に美琴はにやりと笑って
「こうするんだよ!」
播磨を押し倒して顔を近付ける美琴
「な、何を…」
「何をって…“キス”に決まってるだろ?」
美琴の言ったキスの一言にピクリと反応する残りの七人
「このまま続けようとすれば止めようとして皆起きるから」
「起きなかったら?」
播磨の質問にしばし沈黙する美琴だが
「…気にするなって、男だろ?」
「マジ?や、止めろ…」
美琴両肩を掴んで何とか押さえるがじりじりと近づく美琴の顔
「いいだろ?どうせ本番にするんだから」
「そ、そういう問題じゃないし、本番でもしない」
「じゃあ、今しよう」
さらに近づく美琴の顔
「…こうなったら」
腕の力を抜いて美琴に抱きつき、逆に美琴を押し倒す形となる播磨
「これならキスはできないだろ」
「ま、まあ…そうだけど、キスより問題あると思うんだがまぁ、私はこっちのほうが…」
「…」
美琴の一言により黙り込む播磨。今の音で次々と起きだす女性達
「なぁ、周防…」
「いやだ」
播磨に抱きつく美琴
「た、頼む…」
「だって折角播磨から私に抱きついてきてくれたのに離したらもったいないじゃん」
今の一言により場の空気が緊張する
「ねぇ美琴、今何て言ったの?」
「だから、播磨の方から私に抱きついてきたって」
反論をしようとする播磨だが美琴の胸に抱き寄せられて何を言っているのかよく分からない。しばらく抵抗していたかと思うと急に動きを止めて美琴に抱きつく播磨
「播磨…」
播磨の頭を優しく撫でるみこと。それから十秒ほどすると頭を抱えて何かを言い出す播磨。しかしそのうち息が続かなくなったのか床をバンバン叩いてタップする播磨だが美琴は離そうとはしない
「美琴、早く彼を離しなさいよ!じゃないと苦しそうでしょ」
愛理の文句にも美琴は動じないで播磨を抱き締め続ける。そのうちぐったりとうなだれる播磨。
播磨が気付いたときには女性達に引っ張られたり、抱き締められたりして結局その日は全員学校に行けなかった…




どうも播磨爆走(後半)編でした。本当ならば前の分とコレで一つだったのですが容量の関係で分かれる形となりました。
次回は文化祭編を予定しております。
さて、ここで問題です。文化祭本番の演劇、眠れる森の美女のラストのキスシーンの結末はどうなるでしょう?
ヒントは無しでいきたいとおもいます。正解・不正解問わずに感想なんかで書いていただけると皆さんの考えがわかって私としてもうれしいです。
強いて言うならば衝撃的な結末です。皆さんの感想・意見・回答をお待ちしております。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.17 )
日時: 2005/09/26 23:54
名前: ACE

何だかんだやっているうちにとうとう本番当日を迎える。本番までの時間が無いと言う事で、それ以来表面上では女性達は播磨に何もしなかったので、本番を何事もなく迎えることができた。
「いいか皆、僕達は今日という日の為にここまでやってきた。全力で行こうではないか!」
『おー!』
2−C全員が花井に答える。
「前のクラスが今終わったようだ。皆、心の準備はいいか!」
『おー!』
2−Cの士気は高まっていた。ちょうどその時アナウンスが入る。
「次は2−Cによる眠れる森の美女です」
「さて、時間のようだ」
各位立ち上がり自分の配置に移動を始める。
「さて、俺は始めの方は暇だから最後に台本読んでおくか」
台本を読んでいると誰かが後ろから播磨の肩を叩いてくる。振り返るとそこには…
「あ、お姉さん」
「ハリオ、本番頑張ってね」
「え、ええ…」
「最後のキスシーンなんだけど…」
「フリだけっスよ、本当にはしないっスよ…」
「信じていいのね?」
「たぶん…」
力なくそう答えた播磨。


劇の方は順調に進んでいた。その光景を体育館の二階から双眼鏡でその光景を見守る影が一つ、絃子である。
「さて、とうとう始まったか…」
その時通信機に連絡が入る。
「ああ、私だ」
「絃子先輩、舞台占拠完了しました」
「そうか、では引き続き頼む」
そう言って通信を切る絃子。何で通信機が?と言う皆さんの為に説明いたしましょう。
本番中は壇上に上がることが出来ないのでそれぞれ役割を分担し、裏から美琴の暴挙を止めることに合意した七人の女性達が役割を果たすための通信機なのである。
再び通信が入る。
「刑部先生、放送と照明のジャック完了しました」
「そうか高野君、それはずいぶんと早かったな」
「私と刑部先生の名前をだしたらすぐに黙りましたよ」
「まあそうか、それじゃ引き続き頼むよ」
そう言って通信を切る絃子。
「これでもしもの事があっても何とかなるか…」
そこに妙と八雲がやってくる。
「ハリオに盗聴器付けてきましたよ」
「そうですか姉ケ崎先生。彼に気付かれては?」
「大丈夫ですよ。念を押すついでに付けてきましたから」
「そうですか、塚本君」
「はい、ララさんの準備終わりました。ちゃんと後始末をしたので誰も気付かないと思います」
どうやら妙の役目は盗聴器を播磨に付けること。では八雲は?
「ララ君は大変だろうが、周防君と純粋に力比べをして負けないのは彼女だけだからね、まぁ、時間までベッドの中で我慢してもらおうじゃないか」
どうやら八雲の役目はララの入った入り口を見た目では分からないように塞ぐ役割。そしてララは美琴をベッドの中から抑える係。
「さて、後は沢近君が周防君をベッドの定位置にドレスに仕込んだフックに固定すれば準備は完了と言うわけか」
当初の予定ではそのフックで美琴を抑えるはずだったのだが、美琴のパワーでそれが破られる可能性がでてきたので、念のためにララに抑えてもらうことになった。と言うわけである。
しかしそれも失敗したらどうするのであろう?答えは…
「まあ、仮にそれも失敗したら、後は私が周防君と拳児君をここから狙撃すればいい。舞台と放送はこちらで抑えてあるしまさに三段構えと言うわけだよ」
と言う事らしい。って言うかマジで恐いんですけどこの人たち…


そして問題のシーンがそろそろやってくる。ララを除いたメンバーが播磨の声を拾う。
「はあ、はあ…」
呼吸が荒い播磨。
「な、何か興奮してません?」
双眼鏡でみていた妙がそう言う。それに対してスナイパーライフルのスコープで眺めている絃子が
「と、言うよりは苦しそうに見えるな…」
確かに絃子の言う通りに肩で息をしている播磨。
「はあ、はあ…うっ…」
口を手で押さえて倒れる播磨。その手は深紅に染まっていた。
「な、何が…」
「とにかく…今すぐ劇の中断を」
そう言って葉子に通信を入れる絃子。
「葉子、とにかく今すぐ幕を…」
「分かりました」
幕が降り始めるとすぐに演劇の中止を伝える放送がかかる。この辺りはさすが晶と言う事であろうか。
「とにかく先生方、早く行きましょう!」
八雲の一言により壇上に向かう三人。


三人が壇上に到着した頃には播磨の周りに晶・愛理・美琴・葉子・ララがただ茫然と立ち尽くしていた。
その様子を見た妙が素早く播磨の元に駆け寄り播磨の脈を取る。一応(失礼)保健医の事はある。
「大丈夫?ハリオ」
播磨は僅かに意識があるだけで朦朧としていた。
「悪い…劇が…」
「気にしないでハリオ、ハリオのせいじゃないから…」
脈を取っている妙が播磨に答える。
「本当に…す…」
そこで播磨の意識は途切れる。
「…脈はちょっと早いけど、呼吸は安定はしてるから命に別状はないと思うけど…誰か、救急車を!」
妙に言われて電話を掛ける絃子。
「アナタ達もただ立ってないで、ハリオを励まして。それが今の私たちに出来る唯一のことだから」
妙の指示通りに播磨を励ます女性達。救急車は五分程でやってきて、絃子がそれに同乗していった。
こんな事件があったので2−Cの演劇が中止になったのは言うまでもあるまい。


播磨が気が付いて目を開けると、そこには八人の女性達が播磨の事を心配そうに見ていた。
「…ココは?」
播磨の質問に対して播磨の左手を握っていた妙が
「ここは病院。ハリオはさっき倒れてココに運ばれて来たの」
「そうだった、劇の途中で倒れたんだった。それでこの原因は?」
唯一医者から病名を聞かされていた絃子が
「AGMLだそうだ」
「何だ?それは…」
絃子の言った病名は妙以外は理解していないようだった。まあ、無理もないが…唯一理解した妙がぽつりと口を開く。
「急性胃粘膜病変…」
「急性…何だって?」
「つまり急性胃炎の総称の事よハリオ」
全員急性胃炎の事は分かったようだ。
「で、でも…何でそんな病気で血を吐くのよ…」
落ち着かない様子で愛理が妙に質問する。
「急性胃炎と一言で言っても症状がひどければ血を吐くこともあるの」
それを聞いて驚く皆だが、冷静な晶は
「で、その原因は何だったんですか?刑部先生」
晶の一言で絃子に視線が集中する。
「まだ検査結果が出てないから…」
絃子の台詞に妙が割り込んで
「一般的な原因は、暴飲暴食、お酒の飲みすぎ、ストレス、沈痛薬の長期服用が挙げられるけど、何か思い当たる?ハリオ」
播磨は特に原因が思い当たらなかった。
「うーん、分からん。で、俺はいつまでココにいればいいんだ?」
絃子は冷静に
「最低でも一週間はココにいてもらうよ。その間君は絶食もしててもらう」
「そうか…その間は暇になりそうだな」
播磨のぼやきに対してすぐに美琴が
「安心しろ播磨、毎日来るから」
「他の患者に迷惑になるだろ?」
「ここは個室だからその点は安心したまえ」
「個室って料金高いんじゃ…」
「君はその事は気にしなくていい。だから早く元気になってくれ」
「あ、ああ…」
結局面会時間ギリギリまで播磨と過ごした女性達。



一人夜の病室にて…
「…原因は分かってるんだ。でも…どの答えが一番皆を悲しませずにすむんだ?一体俺は…」
播磨はその事ばかり考え、眠りに就けたのは明け方の四時をすんでからであった。


八時少しを過ぎた頃に医者と看護士が病室にやってくる。
「播磨君だったね?」
「はい…」
「検査の結果、血液からは特に何も出なかったよ。それで考えられる原因だが、肉体的ストレスか精神的ストレスによるものだと私は判断した。思い当たる節はあるかね?」
医者の言ったことに対し播磨は
「ちょっと悩み事があって…」
「あまり考えすぎてもいかんよ。誰かに相談することで楽になるはずだ。そう言う人はいないのかね?」
「この問題は自分で答えを出さないといけないことですから…」
「そうか…でも、あまり考えすぎないように」
そう言って病室を出ていく医者。残った看護士は播磨の脈を計り、点滴薬の入ったパックを新しいものにかえて病室を出ていった。
「考えすぎるな…か、無理な話だよな」
眠かったのでとりあえず今だけは何も考えずに寝ることにした。




どうも文化祭編です。
って言うか、演劇の描写が一行もないだろ!というツッコミは無しでお願いします。
皆さんにスルーされていたクイズの答えですが、読めばお分りの通り、播磨が血を吐いて倒れるでした。
次回は決断編を予定しております。
やっとこのHARIMA“World”にも終わりが見えてきました、今思えば私が、だらだらと続けてこれたのは沢山の読者様のおかげだと思います。
しかしもう次回作の話は出来てます。その内容はこのHARIMA“World”の別の話です(またかよ、ってツッコミはご遠慮ください)。最初の一話はあまり変わらないと思います。(マジでスイマセン)ただ播磨を好きになる人は今回よりも増やしますし、笑いは取れるように努力します。
皆さんの意見・感想待ってます。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.18 )
日時: 2005/09/26 23:55
名前: ACE

最初にお断わり。
今回の話は容量の都合で前後に分かれていますが話の内容から二つ一気に乗せています。








九時になり面会時間が始まるとすぐに絃子が一人で病室にやってくる。
「アレ?絃子一人か?」
「ああ…皆で来るとうるさくなるからね」
そう言ってベッドの側の椅子に座る。
「そうか…」
「どうかしたかい拳児君?もしかしてどこか…」
「いや、そうじゃないけど…」
「私でよければ何でも相談にのるよ」
「その…絃子はどうして俺のことをそんなに気に掛けてくれるんだ?」
播磨の一言に対し一瞬驚いたようだが、すぐに理解してこう答えた
「君のことを愛しているからだよ、一人の男性として」
「どうしてだ?俺の方は…」
絃子は播磨の頭を撫でながら
「君のことだ、どうしていいのか自分でも分からないのだろ?」
糸の言う通り播磨はどうするのが一番いいか分からなかった。
「拳児君、私の事を選んでくれれば私は嬉しいが、君がいいと思える答えを出してくれた方が嬉しい」
「絃子…」
俯く播磨。
「拳児君、君が誰を選んでも私は君の事を恨むことはないよ」
「すまない…」
「気にするな拳児君」
そう言って播磨を自分の胸元に抱き寄せる絃子。
「でも…今だけは私に甘えてほしい…」
何も言わずに抱き締め返す播磨。二人が抱き合った状態が二十分程続き九時半頃になると、病室に美琴が入って来る。
「先生、交替です…」
「そうか…」
絃子は名残惜しそうに播磨を離すと何も言わずに病室を出ていった。


「何だ?交替って」
「あ、ああ…三十分交替で一人ずつ見舞いすることになって…」
「何だ、そんな事か」
ベッドの隣の椅子に座る美琴。
「播磨、あまり考えるな。私は播磨が誰のこと選んでも播磨を恨むようなことはないからさ」
恥ずかしそうに頭を掻く美琴。
「何でだ?何でそこまで…」
「んー、私、播磨の事本当に好きだからな。できれば私の事を選んでほしいけどさ」
「周防…」
「気にするな。ただ…今だけは私の事を名前で呼んでくれ。それと…恋人みたいに抱き締めてほしい…」
無言で美琴を抱き寄せる播磨。それに応じて美琴も抱き締め返す。
「拳児の胸の鼓動が聞こえてくる…」
「美琴だって」
「私、こんな事初めてだから…」
「そうなのか、美琴はモテるからてっきり…」
「何て言うか、皆して私の胸ばかりみてきてさ…でも拳児は違った…」
「正直に言うと俺だって美琴の胸は気になる、男だし、でもそれは美琴の沢山の魅力の一つだと思う」
何も言わない美琴。
「軽蔑するか?でも…俺は美琴の事も好きなんだ、美琴の事がって言えないのは最低だと思うけど…」
「分かってる、拳児はやさしすぎるんだ…まぁ、選んだ相手と喧嘩でもしたら不倫相手になってやるから安心しろ」
「ハハハ、それは安心だな」
そんな会話を続けているうちに時間が経過して十時を迎える。
「じゃあ、交替時間だから…」
それだけ言って病室を出ていく美琴。



美琴と入れ替わりに八雲が病室に入って来る。
「播磨さん…」
「どうした?妹さん」
何かを言いたそうに考えたまま椅子に座り下を向く八雲。
「本当にどうした妹さん、俺に出来る事なら何でもするぞ?」
播磨の一言に何かを決意した八雲は
「その…せめて今だけは八雲と呼んでください…」
「何だ、そんな事か。八雲…これでいいか?」
固まってしまい何も言わない八雲。
「あ、いきなり呼び捨てはまずかったか?」
「そ、そのままでお願いします」
「そうか、所で八雲」
「何でしょうか?」
「八雲はどうして俺なんかの事を?」
「それは…」
八雲は播磨に、自分の能力の事、自分にとって心が視えない男性は播磨が初めてだったと言う事。そして漫画のことで会ううちに異性として意識し始めたことを全て話した。
「そうか…それは悪い事をしたな。俺はそんな事にも気付けないバカだったのかよ…」
「いえ、気にしないでください」
「今でも俺の心は視えないのか?」
「今は…視えます」
「なら何で…」
「その…播磨さんは純粋に私の事を考えてくれてるのが分かるから…」
恥ずかしそうにそう言う八雲。一方播磨は顔を真っ赤にして
「そ、そうか…何かそう言われると照れるな…」
「その…もう一つお願いが…」
「何だ?何でも言ってくれ、八雲」
「その…時間まで私の事を抱き締めてください…」
「そんな事か…」
八雲を抱き寄せる播磨。
「播磨さん…大好きです…」
何も言い返せない播磨。
「何も言わなくていいんです。私は播磨さんの答えを待つだけですから」
「八雲…悪い…」
そして交替の時間となり、何も言わずに播磨から離れる八雲。
「播磨さん…さようなら…」
「あ、ああ…」
病室を出ていく八雲。


八雲が病室を出て一分ほどすると葉子が病室に入ってきて椅子に座る。
「大丈夫?播磨君」
「まあなんとか」
「それはよかった」
そう言って播磨の顔をじっと見つめる葉子。
「俺の顔に何かついてますか?」
葉子は首を横に振って
「ううん、もう今だけだから…」
播磨は首を傾げて
「今だけ…それは…」
「気にしないで…」
「じ、しゃあ…何で葉子さんは俺の事…」
「始めは君の事を弟みたいに思ってた。でもだんだん君が男らしくなってきて…それで温泉の時に抱きついてみたの。でも、あの時は半分冗談だった…本気になったのは君が夜の美術室に入ってきた時かな。君の話を聞いているうちに側にいてあげたいなって思い始めて…」
「そうっスか…」
いきなり播磨に抱きつく葉子。
「今だけでいいから甘えさせて…」
「ええ…」
そして交替の時間がやってくる。
「播磨君、君が納得出来る答えを出してね…さようなら」
それだけ言って病室を出ていく葉子。


入れ替わりにララが入ってくる。
「大丈夫か?ハリマ」
「ああ、大丈夫だよ」
「そうカ…」
椅子に座るララ。そして何も言わずにただ播磨の顔をじっと見つめる。
「何かついてるか?」
「イヤ…もう今しカ…」
「なぁ、それはどういう意味だよ、皆して」
「ソレは…言えなイ…」
「そうか…ララはどうして俺の事なんか?」
何かを思い出すように上を向くララ。
「ハリマの事ヲ意識しタのはオンセンの時だっタ」
「あの時か…ってなにかあったか?」
「イヤ…直接は何も無かっタ。デモ…」
顔を真っ赤にして下を向くララ。
「それがきっかけで?」
「イヤ…その後学校の廊下デ…」
「廊下…思い出せないな…」
「ソノ時ハリマは私の事を綺麗と言ってくレタ」
「それが?」
「私はこんなのダカラ男かラ女らしク扱われタ事ガ…」
ララの台詞に播磨が割り込んで
「それは違うと思う。ララは綺麗だと思うし、女っぽいとも思う。皆もそう思ってるが言い辛いだけなんだよきっと。だから自分に自信を持てララ」
しかしララは下を向いたまま何も言わない。
「ララ?」
「意味が無イ!ハリマ以外の男にドウ思われテモ…意味が無イ…」
また下を向くララ。
「ララ、本当にすまないと思ってる…」
「私の方コソ…一つダケ頼みガ…」
「何だ?何でも言ってくれ」
「私ヲ…ソノ…」
言い辛そうなララを見兼ねた播磨はララの事を無言で抱き寄せる。
「ハリ…マ?」
「違ったか?」
「イヤ…違ってナイ…」
何も言わずに抱き合う二人。そして時間がやってくる。
「ハリマ…farewell」
そう言って病室を出ていくララ。
「どういう意味だ?」


ララが出てすぐに晶が病室に入ってきて椅子に座る。そしていきなり播磨の顔を写真に収める。
「な、何してんだ?」
「もう、今しかないから…」
「なぁ、それってどういう意味なんだ?」
「ごめんなさい、私の口からは言えないの。でも最後の人が説明してくれるはずだから…」
そう言って下を向く晶。
「そうか…その、高野はどうして…」
播磨の言葉を全て聞く前から話始める晶。
「今から十年くらい前なんだけど…公園の近くの迷子で何か思い出せない?」
少し考えてみるが何も思い出せない播磨。
「悪い…」
「別に気にしないで、今だけはアナタの側にいられるから…」
「そうか…すまない。でも高野ってさ…表情変わらないよな?どうしてだ?」
晶は返答に困った。ただ表に出ないだけだと答えていいものか悩んでいると
「考えてみたら俺、高野の笑顔も知らないんだよな…なぁ、イヤじゃなければ今くらい笑ってみせてくれないか?」
播磨の今くらいという言葉に反応する晶。そして五秒ほど悩んだ末に、今までに誰にも見せたことの無いような特上の笑顔を播磨に向ける。
晶の笑顔を見た播磨は目を見開いたまま固まる。
「へ、変だった?」
「いや…何だその…高野の笑顔…カワイイぞ。もっと自分に自信を持って、皆の前で笑顔になってもいいと思う」
「ありがとう、その…私からも一つお願いが…」
「おう、俺で出来ることなら何でも言ってくれ」
播磨の返事を聞くと何も言わないで播磨に抱きつく晶 。
「私の事を選んでくれなくてもいい…でもアナタには幸せになってほしいの」
晶を抱き締め返す播磨。
「すまない本当に…」
そして時間が経過し、交替の時間になると
「さようなら…」
それだけ言って病室を出ていく晶。


晶と入れ替わりに妙が病室に入ってくる。
「元気?ハリオ」
「まあなんとか…」
椅子に座る妙。
そしてどこか寂しそうな目で播磨の事をじっと見つめる妙。
「どうかしたんスか?何か皆して…」
播磨の言葉を遮って播磨に抱きつく妙。
「お姉…さん?」
「今だけでいいから恋人みたいに妙って名前で呼んで…」
播磨は妙の事を抱き締め返して
「妙…」
「拳児…大好き…」
何も言えない播磨。
「何も言わなくてもいいよ、拳児が一番いいと思える答えを出してくれるのを私はただ待だけだから…」
「すいません…今思えば始めて会った時から面倒ばかりかけて…」
「気にしないでいいの、私が好きでやったことだから…」
「そう言えばまだあの時のお礼を…」
妙の播磨を抱き締める力が強くなる。
「それじゃあ…必ず幸せになってね」
「え…」
「絶対だよ?」
播磨は十秒程考えて
「はい」
「よかった…」
「でも…俺はいつも妙に心配かけて…」
「気にしなくてもいいのよ」
「ありがとう…妙」
無言で抱き締め会う二人。そして交替の時間がやってくる。
「じゃあね、ハリオ」
病室を出ていく妙。
「ハリオか…」

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.19 )
日時: 2005/09/26 23:55
名前: ACE

妙が病室を出てから五分程経過するが誰もは入ってこない。
「アレ…次はお嬢のはずだけど…なにかあったのか?」
播磨がそんな事を考えていると愛理が下を向いたまま病室に入ってくる。そして何も言わないで椅子に座る。
「お、おい…何があった?」
顔を上げた愛理の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「どうしたお…」
播磨の言葉を遮り播磨に抱きつく愛理。
「播磨君…」
「何があった?」
だが何も答えない愛理。
「もしかしなくても今日の皆の態度と何か関係あるんだな?」
愛理の体がビクッと反応する。
「やっぱりか…なぁ、話してくれないか?」
「何で…」
愛理の体が震え始める。
「何でよ、どうして私がこんな事…他の誰かが言えばいいじゃない…」
愛理の体の震えが強くなる。
「どうして私はいつも…こんな役目なのよ…」
今度は声までもが震え始める。
「お嬢…いや、愛理」
愛理の頭を優しく撫でる播磨。
播磨の言葉と行動に驚いた愛理は、播磨の胸から顔を話して播磨の事を見上げてくる。その両目は真っ赤になっていた。
「播…磨君?」
「言いたくないなら無理に言わなくてもいいぞ」
優しい口調でそう言う播磨。すると愛理は播磨から離れて
「そんな事言われたら話すしかないじゃない…」
「ありがとうな…」
「アナタが倒れた日の夜だった…」
愛理が語ったのはこんな内容であった。


播磨の見舞いを終え、皆で刑部邸にて話し合いをすることになった。
「やはり心配だ。私も病院に泊まって…」
「ダメですよ絃子先輩、今から皆で彼の病気の原因について話し合うんですから」
抜け駆けしようとする絃子を制する葉子。
「まあまあ二人共、とりあえずこれでも飲んでからゆっくりと話しましょう」
冷蔵庫から勝手にビールを取り出して皆に配っていく(いいのか?)妙。
そしてそれぞれが座って話し合いが始まる。
一番始めに意見を出したのは妙であった。
「私はやっぱり、刑部先生の手料理だと思うんだけど」
そう言って絃子の方を見る妙。それに乗じて愛理が
「そうですよね、何たって特技が全校の男子生徒にに手料理を食べさせて腹痛のあまり前かがみにさせる。でしたものね」
確かに結果は間違っていなかったような気がするがその理由が違うような気がする。
「沢近君に料理の事で言われたくないが」
火花を散らす二人。
そんな中八雲が
「その…原因は…」
「分かっているよ、塚本君」
八雲の言葉を遮る絃子。
「私だって…私たちが原因だって事くらい…分かってるわよ」
場の空気が重くなる。
そんな中沈黙を保っていたララが
「私達ハ…ハリマノ何なんダ?」
ララの質問に誰も答えることが出来ない。
「私達ハ、ハリマに嫌われテルのカ?」
「それは違うぞララ」
美琴がやや興奮気味のララの肩を叩く。
「美琴さんの言う通り」
「なラ何故!何故ハリマハ…」
下を向き黙り込むララ。
「確かに私達の行動にも問題はあったろうね、しかし強いて言うならば拳児君の性格にあると思うよ」
その沈黙を絃子が破る。
「今時ハリオは珍しいですからね、私と同棲していた時も一切手を出してこなかったし」
「播磨君は真面目すぎるのよ。告白されたからには自分が責任持って…って考えてるんじゃないかしら」
晶の発言に皆が納得する
「それじゃあ…このままだったらまた播磨君が倒れる事だって…」
「そうね愛理」
「私…また播磨さんが倒れるなんて…耐えられません」
「それは皆同じよ八雲」
「高野君、何か君には考えがあるのかね?」
絃子の質問に戸惑う晶。すると沈黙を保っていた美琴が
「なぁ…やっぱり播磨自信に選んでもらうのがいいと思うんだ、私は」
美琴に視線が集中する
「私だってそりゃ出来れば播磨の側にいたいけどさ…また播磨が倒れるところなんて見たくないしさ…」
「私は…ハリオが出した答えに従うだけかな?」
「姉ケ崎先生はそれでいいんですか!?アナタだって彼のこと…」
妙の言葉に過剰に反応した愛理だったが、それに対する妙の答えは
「だって、私が好きになったハリオが出した答えなら…ハリオの為にも私はそうするだけ…」
「私は…姉ケ崎先生と同じ意見です」
最初に発言したのは八雲であった。
「ふむ、私も同感だ」
「私も絃子先輩と同じですよ」
次は絃子と葉子の教師二人組。
「私もダ」
「私もそれでいいわ」
次はララと晶。
「私はもちろんそれでいいけど…」
愛理の方を見る美琴。
「私もそれでいいわよ!!」

その後は一人三十分の面会時間とその順番。そして最後の人がこれを説明することが決まり、今日にいたるわけである。


「…と言う事なの」
愛理の説明にたいして播磨は愕然としていた。
「だから…皆してあんな事を…」
「ええ…」
「で、でも明日も…」
「ゴメンなさい、もう来ない事になってるの。それがアナタの為だから…」
「来てくれないって事なのか?」
播磨の質問に愛理は首を横に振って。
「ううん、呼んでくれれば来るよ…もう時間…行かなきゃ」
椅子から立ち上がりドアに向かう愛理。
「お、おい…」
「播磨君…ゴメンなさい、そして…さようなら」
病室を出ていく愛理。







決断編でした。
いよいよ?次回は最終回の結果編を予定しております。ここまでやってこられたのも全ての読者様のおかげだと思っています。どうか最後まで付き合ってやってください。
意見・感想待ってます。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.20 )
日時: 2005/09/26 23:56
名前: ACE

愛理が去った病室にて
「俺はなんて事を…女を泣かせるなんて…最低の男だな」
播磨は悩んだ。しかし自分がどうするのが善いのか全く見当が付かなかった。
考え続けて何時の間にやら夜中の三時になっていた。その時播磨に一つの考えが浮かんだ。
「大体…俺に女を選ぶような…選ぶ?そうか…この方法で行こう。これなら最低の男にはならないですむ。まぁ…かなり情けない男にはなるが最低よりはましだ…」
播磨は皆にメールを打った。その内容は(病院なのに携帯OKなんです…)
『俺の中で答えが何とか出た。それで今日皆で、面会時間が始まったら全員で病院の屋上に来てほしい…来る気が無いときだけ返事をくれ』
この無いようのメールを皆に送る播磨。
「これでやっと眠れるな…」
疲れがたまっていたので考え事をやめたらすぐに深い眠りにつく播磨。



目が覚めると時計の針は八時半を指していた。たいした時間寝ていたわけではなかったがぐっすり眠れたせいか十分に疲れはとれていた。
「さてメールは…」
携帯電話を見てみるがメールは一件も来ていなかった。
「皆来てくれるのか…よかった」
特にすることも無いので精神を集中して時間を待つことにする播磨。
そして面会開始時間十分前になる。
「さて…行くか」
ふらふらとした足取りで屋上に向かう播磨。


屋上に辿り着く播磨。
「さて…皆が来るまであと少しだ…心の準備だけはしておこう」
目を瞑ってフェンスに寄り掛かり女性達が来るのを待つ播磨。
そして屋上のドアが開く音が聞こえる。
「来たか…」
播磨が目を開けるとそこには女性達が立っていた。
そして何も言わずに播磨の側までやってくる。
「皆…メールでも伝えたが俺なりの答えが出た」
息を呑む女性達。
すると播磨は土下座して
「やっぱり俺は誰か一人を選ぶなんて出来ねぇ、皆が好きなんだ!出来ることなら皆で一緒にいたいんだ!!」
(これで俺は全員に呆れられて捨てられるな。それで俺が退院して戻ると。あ、モテてたのに八人の女に捨てられたヘタレ播磨だ…って馬鹿にされるんだな。まあ…最低の男よりはましだがもう学校にはいられないな)
そんな事を考えながらいつまでも頭を下げているが何の反応も返ってこない。それを不思議がって頭を恐る恐る上げてみると女性達はお互いに顔を見合わせて笑っていた。
「な、何笑ってるんだ?って言うか…怒ってないのか?」
絃子が微笑んだまま播磨の所に歩み寄り肩をぽんと叩く。
「拳児君…」
「な、何でしょうか…」
汗があふれ出る播磨。絃子にビビリまくって何も言えない。
絃子の肩を掴む力が強くなる。
「拳児君…」
「そ、その…」
絃子は格別の笑顔で
「これからも宜しく頼むよ」
「…ハイ?」
状況がよく飲み込めない播磨。そんな播磨を無視して妙と葉子が播磨に歩み寄る。
「宜しくね播磨君」
「でもハリオも大変ね」
播磨の肩を叩いてすぐに離れる二人。
その二人と入れ代わりに晶・愛理・美琴・八雲・ララが歩み寄ってくる。
「これからも宜しくね、播磨君」
「あの…宜しくお願いします」
「宜しく、播磨君」
「宜しくな」
「宜しク頼ム」
次々と肩を叩いて挨拶していく女性達。播磨は状況を今だ飲み込めていない。
「な、何なんだ?」
播磨の疑問に絃子が
「だって君の方から皆で一緒にいたいと言ったではないか」
「そ、それはそうだけど…普通に考えておかしいだろ?」
「まあ普通はそうだろうだけどね…実は君が昨日沢近君から聞いた話には続きにあってね…」



絃子の話ではこうである。それは愛理が播磨に話した後の事…
「でも…播磨君のことだから、女を泣かせるわけにはいかないとか考えて自分が捨てられればいいとか考えるんじゃない?」
「そうだよな。沢近の言う通りに考えるかもしれないな。でも…どうするんだ?」
「普通にこの状況からそうなるには…皆に告白する…ってのが一番妥当だと思うわ」
晶の意見に妙が
「うーん、ハリオを独り占め出来ないのはアレだけど、0よりは1/8の方がましだものね」
「そうですね姉ケ崎先生。絃子先輩はどう思います?」
「それには私も賛成だね。そうなれば毎日一緒に寝られるからね」
「刑部先生…ずるいです…私だって…」
「八雲の言う通りですよ、刑部先生」
「もしそうなったら私は毎日ここに通わせてもらいますから…何なら家に連れてきてもいいし」
「あっ、ずるいぞ沢近。それなら私だって…」
「スオウの言う通リダ」
どうやら全員が、仮に播磨が誰も選ばずに皆に告白してきても自分的にはOKだという答えになった。
「でも…拳児君がどういう答えをだすのか分からないからな…」
「そうですね、はぁ…」
全員が深いため息をついたのであった。
その後は全員で自棄酒(気が早い)をしてそのままリビングで一夜を明かして見舞いに行ったのである。



「と言うことだよ。分かったかい?」
「マ、マジで?」
「それよりもここは寒いから病室に行こうぜ。さあ播磨」
そう言って返事も聞かずに播磨を背負って歩きだす美琴。



そして病室に到着する一行。播磨を囲むように座る女性達。するとそれぞれが何かを話しだす。
「でもハリオもこれからいろんな意味で大変ね。まあでも、私達はほとんどの領域を網羅してるから安心して」
何を安心するんですか?
「でも姉ケ崎先生。私とアナタ少し被ってませんか?」
葉子が妙によく分からない質問をする。
「そうですね…そうだ、私が眼鏡をかければいいんですよ。そうすれば武器がもう一つ増えますし、笹倉先生とも被りませんから」
「そうですね」
二人で何かを勝手に納得する。
「ちょっと待ってください。眼鏡は私がつけようと思ってたのに」
美琴が二人の間に割って入る。
「それから周防さんもかければいいじゃない。もしダメなら皆で外せばいいんだし」
「そうですね」
何故か美琴までも納得する。そんな中、晶・愛理・八雲・ララはと言うと
「その点、私達は皆被ってないからよかったわね」
「そうね私達なら眼鏡かける必要もないし」
「そうだナ。私達はこノままデモ問題ナイな」
「で、でも…ララさんの眼鏡はアリだと思います」
「それもそうね。ある意味一番いいんじゃないかしら?」
「白衣なんかも結構似合いそうでね」
こっちはこっちで何か盛り上がっていた。
一人話に付いていけない播磨は近くで何やら独り言を言っている絃子に話し掛けた。
「な、なあ…何話してるんだ?」
絃子は顔を真っ赤にして
「何って拳児君…。全く…女の私にこんな事を言わせて…」
「な、な…」
固まる播磨を余所に女性達は盛り上がっていた。
「お姉さん…これは何かの冗談ですよね?」
「もー、本当は好きなくせに」
何て播磨をつついてくる妙。
「な、何を言って…」
「まあ、播磨君は若いから大丈夫よね」
「拳児君の体力は底無しだから問題ないだろう?」
「マ、マジで?」
播磨嘆きは誰にも届くことはなかった。


Fin?





どうも結果編でした。まあ最後何でこれくらいは勘弁してください。
今回でこのHARIMA“World”はとりあえず終わるわけですが、次回作の話は何となくですがもう出来ています。
タイトルはHARIMA“World”ACE(Another Chance Episode)です。次回作も宜しくお願いします。みなさんの意見・感想待っています。
追伸:個別エンディングも出来たら載せたいなぁ…

 


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