HARIMA“World”(播磨メインと女性達)
日時: 2005/09/26 23:38
名前: ACE

それはいつもと何も変わらない朝のはずであった。あの音がするまでは・・・・・・
ゴンッ!!
彼の同居人(自称保護者)である刑部絃子も学校へ出勤する準備をいつものようにすすめていたのであるが、同居人の播磨拳児の部屋からとんでもない音が聞こえてきたので準備の手を休めて播磨の部屋の前まで行った。
「何をしているんだ拳児君。早くしないとまた遅刻してしまうぞ」
絃子が播磨の部屋のドアを開けると、そこには床に倒れている播磨の姿があった。
「大丈夫か?拳児君」
頭をさすりながら起き上がる播磨
「ん・・・・・・、あ・ああ。大丈夫だ絃子さん」
播磨自身は何事も無く答えてはいたが、それとは対照的に固まる絃子。そう、彼が催促も無いのに彼女の事を絃子さんと呼んだのである。
「拳児君、頭は大丈夫か?」
「朝から何を言ってるんだ絃子さんは、早くしないと学校に遅れるって」
あまりのショックに刑部絃子は頭を抱えてうずくまる
「大丈夫か絃子さん。俺は遅れたくないから先に行くな」
そして彼は部屋に残る絃子を後にして自転車で学校へと向かった。

彼は本日非常に機嫌が良かった。そう頭が非常にスッキリしていたのである。
「おっアレは・・・・・・おはよう沢近!」
「アラおはよう・・・・・・?あんな知り合い居たかしら」

そして彼は学校に着く。そして2−Cに元気よく入って
「おはよう、今日はいい日だな」
2−Cの面々は固まった
(あんなやついたか?)
しかし播磨はそれに気付くことなく自分の席に座る。

その日の2−Cの授業はいつもと根本的に何かが違った。
「・・・・・・、ここまでで何か質問はあるか?」
「先生!さっきの部分をもう一度説明してくれ」
凍りつく教師、しかしそれは無理の無い事であろう。なぜならその質問をしてきたのが校内一の不良の播磨拳児なのだから。
「何だよ、質問あるかって言ったのはそっちだろ。全く・・・・・・」
そしてその教師は何とか復活(瀕死だけど)して無事に授業が終わると、周防美琴の席に向かう播磨。
「よう周防、お前確か古典の成績良かったよな。ココを教えてくれ」
凍りつく美琴。しかし何とか復活(こっちは重症)して恐る恐る聞き返す美琴。
「あ・あのよ、チョット言いづらいんだけどいいか?」
「おう、何だ?」
教室中の視線が播磨と美琴に注がれて2−Cとは思えない雰囲気になる。
「何か、今日のお前変だぞ?それにサングラスはどうした」
言った。とうとう言った。美琴さん、アンタは偉い!!しかし播磨は冷静にこう返す。
「変?別に普通だろ。それにサングラスは学校にかけてくるもんじゃねえし。それよりもココを教えてくれ、俺の頭じゃサッパリ分からん」
「コ・ココはだな・・・・・・。分かったか?」
「周防の説明は分かりやすいな。ありがとよ」
そう言って彼は自分の机に勉強道具を置いてから廊下へと出て行った。

「何なんだ今日の播磨は」
「そうよあのヒゲ無し、朝なんか私に挨拶してきたのよ。ねえ晶あなたはどう思う?」
「・・・・・・何か言った?」
「珍しいわね晶が考え事なんて」
「チョットね・・・」
その時教室に戻ってくる播磨。すぐに自分の席に着いて次の授業である英語の教科書を開くが、すぐに悩み始めて、ペンと教科書を持って愛理の元へやってきた。
「よう沢近、英語の勉強をしたかったんだが俺の頭じゃあ全く分からん。ココの分の意味を教えてくれ」
再び教室が凍る(特に愛理が)。
「ア・アナタ、私が誰かもちろん知ってるわよね?」
「?確かハーフでイギリスにも居た事あるんじゃないのか。だから英語は簡単だろ?早くココを教えてくれ」
彼は本気で沢近愛理に質問しているのである。
「私とアナタがどういう関係か忘れたわけじゃないでしょうね?」
彼は不思議そうな顔をして首をかしげるがすぐに答えは返ってきた。
「クラスメートだろ?それとも俺みたいなバカには教える気が無いのか?」
かつてないほどのショックを受ける愛理
(アイツが、あのヒゲ無しが・・・・・・どうして?)
「・・・・・・、ならいいわ。花井!」
彼はとうとう切れるのか?それはある意味期待と不安であったろう。教室の誰もがそう思ったが、彼が次に発した言葉は全く意外なものであった。
「ココを教えてくれ!!」
教室の皆が派手にコケる。何とか立ち上がった花井は(コイツは軽傷)。
「まあ良いだろう。しかしどうしたんだ?本当に、昨日までの君とは大違いだな」
「大違い?言っている意味が良く分からん」
「いいか?昨日までの君は勉強はおろか、毎日遅刻して、授業をサボって、なぜか常にサングラスの不良だったんだぞ!!」
言った。言っちゃったよ、とうとうこのメガネは・・・・・・と誰もがそう思うが、播磨の答えはそれ以上に凄いものであった。
「スマン、昨日までの事をよく覚えていないんだ」
そう、彼は朝に頭を強打した祭に記憶喪失になっていたのであった。
「記憶喪失だぁ?でもそれなら納得もいくけどよ」
「チャンスね・・・・・・」
「何か言った?晶」
「すごーい播磨君。記憶喪失なんてドラマみたい」
2−Cの教室は大騒ぎであった。そして彼が記憶喪失と言う話はその日のうちに全校中に広がったのは言うまでも有るまい・・・・・・。


播磨拳児が記憶喪失である事が全校に知れ渡ったその日の夜。
「聞いたよ拳児君、君が記憶喪失だという事を」
台所に向かって料理をしている播磨に対してビールを飲みながらそう言う絃子。
「でも絃子さん、実際のところ良く分からないんだよな。記憶喪失って言ってもよ」
食卓に皿を並べながらそう答える播磨。
「確かに不思議では有るな。日常の事や人の名前は覚えているのに不良の自覚がない。何とも不思議だよ」
「まあ、そのうちに思い出すだろ。・・・・・・。よしっ、準備出来たぜ絃子さん」
「そ・そうか・・・・・・」
やっぱり慣れない絃子であった。

そして、次の日の学校は大騒ぎであった。なんたって校内一の不良の播磨が記憶喪失で、グラサンを取るとお決まりのごとく美形で結構優しい奴だと知れば大騒ぎになるのは当然であった。特にも女子が・・・・・・。
2−C前の廊下は女子であふれ返っていた。播磨のウワサを聞いた女子達が彼を一目見るために集まってきたのである。
「見た見た?本当にかっこいいね播磨君」
「しかも、聞いた話だと記憶喪失で結構優しいらしいよ」
などと言う話が飛び交っていた。が、播磨本人は大して気にしていなく(この辺りはさすが)自分の席で勉強をしていた。
「わ・分からん・・・・・・、サッパリ分からん」
どうやら英語の勉強をしているらしいが自分の頭では手におえないらしく前日同様に教科書とペンを持って愛理の席に向かったのである。
「沢近さん、俺にココを教えてください。俺の頭じゃサッパリ分からん」
「・・・、昨日みたく花井君に聞いたら?」
機嫌が悪い愛理は(何で悪いかは推して知るべし)あっさり断るが、播磨はすかさずこう返した。
「いや、あんなメガネでゴツイ男に聞くよりも、金髪美女に聞くほうが俺としてはやる気が出るんだが・・・」
今日もやっぱり凍りつく教室。その中でも特に愛理はダメージが大きかった。
「なあ、頼むよ。俺の頭じゃどうにもなんないんだよ」
深々と頭を下げる播磨。逆に驚いたのは愛理である。
「教えるから頭を上げて、ドコなのよ」
「ココからココなんだけどよ」
ほんの数十秒のやり取りの後
「サンキューな」
自分の席に戻って勉強し始める播磨。
(な・何なのよ・・・金髪美女ってどういう意味よ)
まあ、言葉そのままなのであるが相手が播磨拳児とあれば事情が変わってくる。愛理自身も美人の自覚は有るし大抵の男の評価もそうではある。しかし、播磨がそんな事を言う事が愛理には信じられなかった。
「なあ、やっぱり播磨の奴おかしいって、沢近に向かって金髪美女だってよ、信じられるか?」
「何よ美琴、それじゃあまるで私が美女じゃないみたいな言い方じゃないのよ」
「そう言う意味じゃなくてよ、他の男ならまだしもあの播磨だぜ?いくら記憶喪失って言ってもよ」
「そ・そうよね」
「刑部先生なら詳しく知ってるかもね、放課後茶道部室で聞いてみる?」
晶の提案に全員が乗った。

放課後に茶道部室に集まったのは、絃子・妙・愛理・美琴・晶・天満・八雲・サラの8人。まあ要するにいつもの女性陣である。
絃子は2日前の事を語り始めた。
「二日前の朝の事だ、いつものように支度をしていると拳児君の部屋からものすごい音がしてね、彼の部屋に入ってみたら彼が倒れていたんだよ。それで心配になった私は大丈夫かと聞いたんだ。そしたら拳児君はすぐに起き上がってこういったんだ。『大丈夫だ絃子さん』と・・・」
その言葉の意味が良く分かっていない7人。
「彼が私を呼ぶときは必ずといって良いほど絃子さんとは呼ばない。普段はさん付けしないのだよ。それからと言うもの彼は必ずさんを付けて呼ぶようになったのだよ」
「そして昨日のあの発言か・・・でもどうして私たちのことは覚えてるんだ?」
「うーん、私は脳の専門じゃないからな何ともいえないんだけどぉ、記憶喪失と一言で言っても色々種類があるのよ。それに、普段の生活に支障が無いならゆっくり治るのを待てばいいじゃないですか」
「私の生活にはすでに十分に支障が有るのだが」
「・・・・・・、じゃあ私がハリオの面倒を見ますよ。刑部先生?」
「いや、私は拳児君の保護者だからね、私が面倒を見るよ」
なにやら火花が散っていた。恐ろしい・・・・・・。
こうして女達の会議?は無事(じゃ無いような気がする)終わった。
一方その頃播磨本人は何をしていたかと言うと。
「ヘックシ、うーん・・・何か大切な事を忘れているような気がする・・・ま・いいか。忘れてるくらいだからあんまり大事じゃ無いんだろうけどな」

女性陣の会議(じゃないよ)が終わってみんなそれぞれ帰宅を始める。
が、いまだに戦っているこの二人。
「ですから私がハリオの面倒を見ますよ」
「いやいや、彼の保護者は私ですから姉ヶ崎先生に迷惑を掛けるわけにはいきませんよ」
この二人はこのまま茶道部室に置いていこうと誰もが心の中で思った。

他の六人は全員でメルカドに行く事にした。だって会議とは名ばかりの絃子と妙のバトルだったから。
しかしそこにはすでに播磨が来ていた。記憶をたどると足がそこへ向かっていたのである。
「うーん、何かココでいつも大切な事をしていた気がする・・・・・・何か後ろの席の奴らうるせえな」
後ろの客がうるさいので文句を言ってやろうと目をやると。
「・・・・・・あいつらか」
そこには天満―以下略が座って話をしていた。
「結局会議にはならなかったね。刑部先生と姉ヶ崎先生の睨み合いで終わったし」
「でもよ、播磨が記憶喪失だって事はまず間違いなくなっただろ」
「分からないわよ、あのヒゲ無しが何か企んでるのかもしれないし」
「でも播磨君が嘘を言ってるとは思わないよ、私は」
「私もそう思います」
「沢近先輩はどうして播磨先輩に対してああいう態度を取るんですか?高野部長」
「それはただの照れ隠し」
なんて話を聞きながらメルカドを出て行く播磨。
「俺は何で隠れるように出てきたんだ?あの中の誰かには絶対聞かれちゃ困るって事だけはわかるんだけどな」


そして次の日、2−Cの教室に一番乗りで来る播磨
「なんだ、俺が一番乗りか。しゃあねえ、掃除でもしてるか」
何と、あの播磨拳児が自ら掃除をし始めたのである。明日は空からサーペントが降ってくるかもしれない・・・・・・
彼の掃除が一通り(というよりはほぼ全部)終わる頃に花井が教室に入って来る。普段は彼が最初なので驚いていたが、その相手があの播磨と知ってさらに驚く。
「なっ・・・・・・播磨、何をしている」
「何って・・・見れば分かるだろ?掃除だろ」
「播磨・・・僕は君を誤解していたようだ。すまない」
「なんだか分からんがあまり気にするな」
男の友情はこうして深まったのである。

そして彼女も播磨の変化を目の当たりにするのである。
それはその日の昼休みに起こった。姉の天満が両方カレーを持っていってしまったのでご飯を届けに2−Cの教室に友人のサラと共にやってきたときの事である。
「お姉さん、今日はどっちもカレーのほうを持って行っちゃったね」
「うん・・・」
「やっぱり2−Cはいつ来ても緊張するね」
「よう、妹さんじゃないか」
「あ・播磨さ・・・ん?」
彼女が驚くのは無理も無い。なぜなら播磨の心が視えたから。
(相変らずボーっとしてるな妹さん。でも、そこが結構かわいいところなのかもな)
クビをかしげる播磨。
「塚本なら教室に居るぜ、じゃあな」
何処かへ去る播磨。
「どうしたの?八雲」
「・・・・・・な・何でもない」
2−Cに入る二人
「姉さん、これ」
「助かったぉ八雲。どっちもカレーだったからビックリしたんだよ」
もちろん詰めたのが天満であることは言うまでもあるまい。
「ねぇ八雲、播磨君がどこに行ったか知らない?」
「わ・分かりません」
「そう・・・まぁだいたいいる所の見当はついてるけどね」
「晶がどうしてそんな事を気にするのよ」
「誰かさんが知りたいかと思って」
そう言って愛理のほうを見る晶。
「な・なんで私があのヒゲ無しの事を!!」
耳まで真っ赤にして反論する愛理。

一方その頃播磨は水飲み場で空腹をごまかしていた。
「さすがに月末は厳しいか。こういうときは黙って寝るか」
教室で寝ようとする播磨だが、2−C前の廊下で足止めを食う事になる。
「頼む、どいてくれ。腹が減ってるから今から寝るところなんだ」
「じ・じゃあこれ食べてください・・・キャッ」
播磨に何か包みを渡して走り去る女子。それをきっかけとして次々何かを手渡される播磨。
「なんだかよく分からんがラッキーだ」
その辺りは相変らずの播磨である。両手一杯の包みを持って2−Cに入る播磨。
「おっ、播磨じゃん。どうしたんだ?それ」
「なんだか分からんがそこで貰った」
「何よデレデレしちゃって」
「何怒ってるの愛理ちゃん」
「怒ってないわよ・・・別に」
「でもさあ、播磨君ってモテるんだね」
「そうか?よくわからんがこれで空腹から脱出できるからありがたい。そこをどいてくれ沢近」
「イ・ヤ、どこか別のところで食べなさいよ」
「じゃあ、お前の席で食うから。本当ならそこは俺の席なんだからよ」
愛理の席で食べ始める播磨。
「彼、サングラスはずしてからモテ始めたわね」
「フン、あのヒゲ無しのどこがいいのよ」
「おっ沢近、ヤキモチ妬いてんのか?」
再び耳まで真っ赤になる愛理。
「あー、愛理ちゃんまた真っ赤だ」
「じゃないと私が貰っちゃうよ」
「今何か言った?晶」
「別に、独り言」
「だいたい、あのヒゲ無しの本性を知ったらみんな逃げ出すに決まってるんだから」
「でもなあ、花井の話だと、今日の朝に早く来て教室の掃除をしてたってよ。嘘でそこまでするとは思えないんだよな」
一方人とは思えない速度で貰った弁当を消化している播磨の元に今鳥がやってくる。
「なあ合コンいかね?お前が来るなら来るって言う子が多くてよ。頼むって」
「メンドそうだから行かない」
「えー、頼むよ。お前の好きな子も呼んでやるから」
頭を抱えて考え込む播磨。
(俺の好きな子って誰だ。家の引出しに入ってたマンガは塚本に似てたが、携帯を見る限り妹さんとよく会っていた。でも実はただの照れ隠しで他の誰かかもしれないが・・・分からん。誰なんだ一体、でも笑顔がかわいい事は覚えてるんだがな)
「なあ、一応聞くけどよ。今鳥の中で一番かわいい子って誰だ?」
コイツに聞くなよ播磨・・・。
「そんなのもちろん決まってるだろ!!絶対ミコちん。なんたってデ!!」
言い切る前に美琴の蹴りで沈む今鳥。ああ、哀れ。
じっと美琴を見つめる播磨。
「な・何、人の顔をずっと見てるんだよ」
「おっ、スマン」
播磨はいつまでたっても播磨のままであった。




ええっと、自分の話はかなり多いので2・3話をまとめて投稿して行きます。(これまでの分)。
意見感想待ってます!

 

  Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.1 )
日時: 2005/09/26 23:41
名前: ACE

人を好きになるというのはその人の意外な面を見たときであろう。周防美琴の場合もそうであった。



メルカドで友人達と話し合っていつものごとく道場で練習を終える美琴。
「ふう、終わった。帰って・・・そうだ今日は誰も家にいないんだった。仕方ないジョギングもかねてなんか買ってくるか」
ランニング用の服装に着替えた彼女はコンビニへ向かったのであるが、途中の公園で人だかりを見た。
「なんだ?カツアゲかよ。どうすっかな、助けたほうがいいんだろうけど結構多いしな」
一対一なら勿論楽勝であるが、相手が複数で、まして武器まで持っているとなると話は変わってくる。

「よう播磨、最近てめえが丸くなったのは本当らしいな」
「そうそう、俺にかまうなだってよ。信じられねえよな」
その様子を少しはなれたところで見ている美琴。
「私はどうして隠れてるんだ?でも何か見ていなくちゃいけない気がする・・・」
一方の播磨はやれやれという感じで
「家で待ってる従姉妹が心配するからさっさとそこをどいてくれ。疲れてるんだこっちは」
「何言ってやがる播磨。ここでテメェをぶっ殺してやる」
「全く・・・どうなってもしらねえぞ」
播磨の表情が豹変して同一人物とは思えない殺気を放つ。
それは離れてみている美琴にも感じられた。
「な・なんだよあのは殺気は・・・」
それからの勝負はあまりにもあっけなかった。彼が全員を片付けるまで3分と掛からなかった。

「終わった・・・ヒッ!!」
播磨が美琴の事を見つけて、ゆっくりと近づいてくる。
「こ・殺される、逃げなくちゃ・・・」
走って逃げる周防。しかし播磨の足から逃れる事は不可能であった。
「ち・近づいてくる・・・逃げなきゃ、逃げ・・・」
足がもつれて派手に転ぶ美琴。
「く・来る、立たなくちゃ・・・」
そして播磨は美琴の目の前にやってくる。
「お前、さっきの奴らの・・・って、周防か」
「だ・誰だ・・・もしかして播磨か?」
「悪いな、さっきの奴らの仲間だと思ってよ」
「い・いや、私も悪いんだよ」
「立てるか?」
手を差し出す播磨。
「あ・サンキューな。イテテ」
さっきまでは気付かなかったが足の怪我が相当痛む事に美琴は気付いた。

「さっき転んだので立つのだけでもちょっとよ・・・」
「じゃあ俺が家まで運んでやる」
「そ・そのよ、今日は私一人でさあ、まだ飯も食ってないし・・・」
「じゃあ家に来るか?飯くらいなら出すしベットもあるぞ」
播磨は親切のつもりで言ったのであるが、美琴は顔を真っ赤にする。
「その、明日も学校あるし・・・」
「じゃあ俺がお前の家に泊まってやる。これでいいだろ?」
「なんでそこまでするんだ?」
もしも下心が有るならぶっ飛ばしてやろうと思った美琴だが、播磨の答えは美琴の顔をさらに赤くするのであった。
「ん?困ってる女をほっておけ無いだけだ。俺はどっちでもいいぜ?」
「私の家で・・・」
そう言うと播磨はしゃがんで背中を向ける。
「ホレ、乗れ」
しかし美琴は躊躇する。当たり前であろう、男におんぶされるというのは恥ずかしいものなのである。この年頃の女の子は。だが、そんな事を知るはずも無い播磨は。
「早く行くぞ、ホレ」
そう言って播磨は美琴を俗に言うお姫様抱っこで持ち上げる。
「は・播磨?」
自分でも声が裏返ってるのが分かった。
「お前の家が分からん。どっちだ?」
頭がパニック状態の美琴は自分でも良く分からない事を言っていた。
「お・重いだろ?私」
「いや、全然軽いよ。本当に飯食ってんのか?」
「そ・そうか・・・」
「なあ、お前の家はどっちだよ」
播磨の声で我に返る美琴。
「あっちだ」
「オウ」
美琴を抱えてゆっくりと歩く播磨。その間お互いに何を言うわけでもなく時間が過ぎていった。


(播磨か・・・そういえば塚本が私に告白する練習をしたって言ってたな。でも沢近と付き合ってるとか、塚本の妹とも付き合ってるとか・・・なんで私がこんな事考えるんだよ。確かにコイツは結構かっこいいかもしれないし優しいかも知れないけど・・・)
「・・・防、おい周防!」
「な・なんだ!?」
播磨の声で我に返る美琴。
「どっちに曲がれば良いんだ?」
彼は分かれ道の所で周防の事を呼んでいたのだが、気付かれないのでつい大きな声を出したのである。
「ひ・左だ」
「そうか」
再びゆっくり歩き出す播磨。

(何でだろうな、このままずっとこうしていたいな)
「あ、私の家はココだ」
「ん?そうか、鍵はそっちで開けてくれ。俺は両腕が塞がってるからな」
「そ・そうだよな・・・」
播磨の腕の上から鍵を開けて家の中に入る二人。
「どこに運べば良いんだ?」
「すぐそこのドアを開けたとこに頼むよ」
言われた通りにする播磨。ソファーに美琴を降ろした播磨は何かを探し始める。
「な・何を捜してるんだ?」
「ん?ああ、救急箱は無いのか?まず足の手当てが先だからな」
「そこのタンスの一番右の二段目に入ってる」
言われた場所から救急箱を持ってくる播磨。
「ホレ、怪我したところを見せてみろ」
「い・良いって、自分でやるから」
耳まで真っ赤になる美琴
「遠慮するなって、早く見せてみろって」
渋々傷口を見せる美琴
「こりゃあ酷いな。本当に痛かっただろ?」
「そんなんでもないって」
播磨に心配掛けまいと嘘をつく美琴。本当の事を言えば播磨が困ると思ったから。
「嘘つくなって、顔が引きつってるぞ。消毒するから染みるけど少し我慢しろよ」
「っつ!! 」
「わ・悪い・・・」
「い・いや大丈夫だ」
てきぱきと傷口に包帯を巻いていく播磨。
「これでよしっと。飯はどうする?」
「何か作れるのか?播磨は」
「まあ、かんたんなやつならな。味の保証はねえけど」
「じゃあ、2人分頼むよ」
「何?俺も食って良いのか」
「当たり前だろ?ここまで運んでくれたんだし、怪我の手当てだって・・・」
「そうか、10分位で作るからすこし待ってろよ」
台所で食事の準備を始める播磨。

「おっとそうだ、そこの俺の携帯で絃子さんに電話してくれないか。俺の口から言っても変な誤解しか生まないからな」
「わ・分かった」
播磨の携帯を手に持つ美琴。そして刑部絃子を見つけてコールする。
「・・・・・・、もしもし拳児君か。君は一体今どこで何をしているのだね?」
「あ・あの刑部先生・・・」
「・・・、君は2−Cの周防君か?」
「そうです」
「なぜ君が拳児君の携帯から私に電話しているのだね?」
「実は播磨は今、私の家にいるんです」
電話の向こうで缶を握り潰す音が聞こえる
「誤解しないで下さい。怪我して歩けないから播磨に家まで送ってもらったんです」
「ほう、それならばもう拳児君が君と一緒に居る事は無いわけだ」
「それが、今日は家に私しか居なくて、播磨が居ないと何も出来ないんです・・・」
電話の向こうから再び缶を握りつぶす音が聞こえてくる
「じ・じゃあそう言うことなんで播磨を怒らないでやってください」
そう言って電話を切る美琴
「ふう・・・」

台所で料理しながら播磨が
「絃子さん何か言ってたか?」
「別に何も言って無かったよ・・・」
「ふーん、そうか」
それから数分ほどでテーブルに料理が並ぶ
「まあ味のほうはあまり期待しないでくれ」

10分ほどで作ったにしてはなかなかの料理が並んでいた。
「じゃあ頂きます」
料理を口に運ぶ美琴
(そんなに不味くは無いな。でも良く考えたらこれ・・・播磨の手料理なんだよな)
「あまりの不味さで何も言えないか・・・」
「い・いや言うほど不味くないよ。むしろなかなか美味いって」
「本当の事言って良いよ」
「ほんとだって!!」
つい大きな声を出してしまった美琴
「あっ、ゴメン・・・」
「いや、別に気にしてねえよ」
「そ・それよりも播磨ってどんな子が好みなんだ?(何言ってんだ私は)」
「んー、そうだな・・・まずは一緒にいて楽しいやつかな?それと笑顔が最高に可愛い子だな」
「ふ・ふーん、何か外見的なものとかは?」
「特にねえな。人を好きになるのって外見だけじゃないだろ?」
「そ・そうだよな外見だけじゃないよなハハハ・・・」
その後食事は会話も無く終わって、播磨が片付けをし始める
「そこに置いておいて良いよ、明日私でやるから」
「いや、今やっちまうよ」
てきぱきと片づけを終える播磨
「これからどうするんだ?」
「そうだな・・・本当は風呂に入りたいんだけどこの足だし・・・今日はもう寝るよ。私の部屋は二階だから」
「そうか」
また美琴を抱えて二階に上がる播磨
「ここが私の・・・ちょっとタンマ」
(まずい・・・部屋の中は散らかってるんだった・・・でも私一人じゃ歩けないし)
「入っても何も言わないでくれよ」
「あ・ああ」
よく分からないといった様子の播磨。
だが部屋に入ると一瞬固まる播磨。まあ無理も無いであろう、なぜなら部屋の中は脱いだものが床に散らばっていたのである。勿論下着も。
「そ・そこのベッドに連れて行ってくれ」
美琴をベッドに降ろす播磨。
美琴は非常に悩んでいた。
(どうしよう・・・パジャマはあそこにあるから良いけど、下着はどうするかな、汗も結構かいたから変えたいけどその為には・・・でもチャンスかもしれないな)
「あのさあ、そこのパジャマを取ってくれ」
パジャマを持って美琴に手渡す播磨。
「あ・あとよ、そこから私の下着を取って欲しいんだけど・・・」
耳まで真っ赤になる美琴。しかし無理も無いであろう。
「ほ・本当に取るのか?」
「ほ・本当だよ・・・頼むって」
耳まで真っ赤にして美琴の下着を取る播磨。無理も無かろう学年一のスタイルを持ち、学校中の男が羨む周防美琴の下着である。
「ほ・ほらよ」
美琴に下着を手渡す播磨
「サンキューな、着替えも手伝ってみるか?」
「バ・バカな事をいってるんじゃねえ」
そう言って部屋を出る播磨
「ま・アレが播磨だな」
ドアの外で待つこと数分

「着替えたから入ってきて良いぜ」
美琴の部屋に入る播磨
「なんだ?」
「今日だけどさ、泊まって行ってくれよ」
「な・何言ってる。俺は帰る」
「で・でもよ、鍵かかってないしさあ。誰か入ってくるかもしれないだろ?」
「・・・じゃあ鍵を貸せ。それを持って俺は帰る。泊まるよりはいいだろ?」
播磨の返答に慌てる美琴
「で・でも、明日に足が治ってるか分かんないし・・・」
「じゃあ明日の朝も来てやる。それで良いだろ?」
「うん・・・」
「また明日な」
そう言って帰っていく播磨
「私は泊まるほうが良かったんだけどな・・・」


そして夜が明ける。
美琴はあまり眠る事が出来なかった
「こんな夜はあの人が帰ってくるのが分かって以来だな・・・でもあの時よりも胸が苦しい・・・」
美琴はこの感情の答えは知っていた。なぜなら前に一度体験していたから。
「播磨拳児か・・・よし、今度は後悔したくないから頑張ろう!」

同じ頃播磨は自分の家で登校の準備をしていた。
「どうした拳児君、ずいぶんと早い準備ではないか」
「ああ、周防を迎えに行くんだよ絃子さん」
「な・なぜだね?拳児君」
「足の怪我が思っていたよりも酷くてよ、それも昨日言ったとおりに俺のせいだからな。だから自転車で迎えに行くんだよ」
「そ・そうか・・・」
刑部絃子は自分でも顔が引きつっているのが分かった。

自転車で美琴の家に向かう播磨。家の距離はさほど無くすぐに到着した。
「なんだ、結構近いじゃねえか。さてと」
玄関の鍵を開ける播磨。近所の人間から見たら泥棒に間違えられても仕方ないであろう。
「おーい、周防。起きてるか?」
足の痛みが大分良くなり、自分で制服に着替えた美琴はベッドの上で播磨のことを待っていた。
「起きてるから、部屋にきてくれ!」
美琴の声を確認した播磨は美琴の部屋に入る。
「結構早かったな、播磨」
「まあな。朝飯はどうする?」
「何かは食べたいけど時間がなあ・・・」
「安心しろ、おにぎりなら持ってきた」
「本当か?じゃあ下で食べようぜ」
「そうか、よっと」
美琴を抱える播磨
「は・播磨?もう自分で何とか歩けるって・・・」
「無理すんなって、結構痛いんだろ?まだよ。学校じゃ流石に無理だけど今くらい俺が運んでやる」
「アリガト・・・」
「気にするな。もともと原因は俺だからな」
美琴を抱えて下に降りる播磨。
「なあ、どこに座る?」
「そこのソファーでいい」
美琴をソファーに降ろす播磨
「ホレ、これだ」
おにぎり二個を美琴に渡す播磨
「ど・どうも・・・播磨は?」
「俺の分も持ってきた」
黙っておにぎりを食べ終える二人
「よし、行くか」
「そうだな・・・」
美琴に肩を貸す播磨
「そ・その・・・学校には・・・」
「ああ、自転車できたから後ろに乗れ」
それを聞いた美琴は顔を真っ赤にする。朝から自転車で二人乗りで登校・・・そう恋人同士が普通はするものであるから
「ほれ、乗れ」
「う・うん」
自転車の後ろに乗る美琴。それを確認した播磨は自転車を漕ぎ出す。
そして、周防美琴の恋が始まったのである。



人を好きだと自覚するのはその相手が他の女性と仲良くしているところを見たときであろう。沢近愛理の場合はそうであった。



愛理は機嫌が良かった。なぜなら最近アイツと喧嘩をせずにすんでいるから。しかし彼女はそれを素直に認めようとはしない。ただ、アレを見るまでは・・・
「今日は髪のセットがうまくいったのよ、フフフ。アイツはなんて言うかしら?」
ハッキリ言おう。播磨は絶対にそんな事は言わないと。

愛理が矢神坂の手前に差し掛かる頃、アイツが愛理に挨拶してきた。
「よう沢近、おはよう」
やった!その瞬間愛理は今日は良い日だと思った
「おはよう播磨く・・・ん」
愛理が横を向くとそこには自転車に乗っている播磨とその後ろに乗っている美琴の姿。
しかし、一番愛理が堪えたのは美琴の顔であった
(勝った!!)
美琴はそんな顔をしていたのがハッキリと愛理は悟った。
「な・何なのよ・・・」
最高の気分から一瞬で最低な気分にまで落ち込んだ愛理であったのである。

その頃播磨は
「お・おい、あんまりきつく腕を回すな。折れるからよ」
「あ・ゴメンゴメン」
播磨は播磨だった。
矢神坂を登りきった自転車は程無くして学校に着く。

「ホレ着いたぞ」
美琴に肩を貸す播磨
「さ・サンキューな・・・」
耳まで真っ赤な美琴。
しかしこんな事をして何も無いわけが無い。それは教室に入ったときに起こった。
「オハヨー」
「何だ播磨、今日は・・・!!貴様、何をしている」
「ま・待て花井。これは私が悪いんだ」
「む、周防がそう言うのならば本当なんだろう。悪かったな播磨」
「別にいいって」
美琴を席に座らせて自分も席に座る播磨。

それからまもなく愛理が教室に入って来る。
愛理は自分の席に道具を置くとすぐに美琴の隣にやってくる。
「ねえ播磨君、少しの間他のところに行っててくれない?」
「ま・いいよ」
教室から出て行く播磨

「ねえ、美琴」
「なんだ、沢近」
「朝のアレは何なの?」
「播磨が私の家に迎えに来たんだ。それで自転車で一緒に」
確かに美琴は嘘をついてはいなかった。が、言葉は足りてなかった。
「嘘でしょ?何で彼が美琴の家に迎えに来るのよ・・・」
「本当だって、それなら何で一緒の自転車に乗ってたんだ?」
「う・・・それは」
「昨日だって私の部屋にも入れたし」
「え?い・今なんて」
「だから、昨日私の部屋に播磨が来たんだよ」
ショックを隠せない愛理。だって、これからアプローチと言う時に先手を取られていたから。それも思わぬ?伏兵に。
愛理に耳打ちをする美琴
「下着だって見せたし」
これも本当。でもやっぱり言葉足らず。
「う・・・嘘よ」
前言撤回。先手どころでなく、すでにトラック半周は差をつけられていた。

心の中ですでにノックアウトの愛理に救いの神(というか、邪神か魔神)の高野晶がやってきた。
「あ・晶・・・」
「どうしたの?愛理」
晶は朝の播磨を見ていなかったのである。
そして二人から事情を聞いた晶は固まる。
「晶?どうしたのよ」
「・・・・・・、何でも」
しかし美琴は晶の異変に気付いていた。

ちょうどその時播磨が戻ってくる。
「なあ、もう良いか?」
首をかしげる播磨。無理も無かろう、愛理と晶(分かりづらいが)が絶望的な顔をしていたから。
「どうしたんだ?沢近に高野」
「ね・ねえ播磨君、昨日美琴と何があったの?」
「そ・それはココではチョットな」
確かに彼の判断は正しかったが、それがさらに二人へのダメージを与える。
「昼休みに屋上でなら話せるが・・・」
この言葉で復活(ほぼ全快)した二人は
「お願い、話して」
「そ・その時な」

しかし、その後の播磨の態度で美琴にそこまで差は付けられていない事が分かった。なぜって?それは・・・

「なあ沢近、さっきの所なんだけどよ」
「あ・そこはね・・・・・・分かった?」
「おうサンキューな。相変らず分かりやすくて助かるぜ」
自分の席に戻って、次の化学の準備を始める播磨。

そして、化学の時間が始まり刑部絃子が教室に入ってきて授業が始まる。だが数分立つと普段の授業とは全く違う事が判明した。
「・・・・・・では黒板の問題を周防君」
「はい・・・・・・です」
「正解だ」
それからさらに5分後

「ではココの問題を周防君」
刑部絃子の連続攻撃は良くある事であった。ただし標的はいつでも播磨であったが。
「はい・・・・・・です」
「まあ、正解だ」
さらに雲行きが怪しくなってきたのはそれから五分後である。一時間の授業で二度当てることは何度か有った為に、それまではいつもの事であったのかもしれないが・・・

「じゃあココを周防君」
流石に三度目ともなると教室でざわめきが起こり始める。
「刑部先生,私三回目なんですけど・・・」
「ココを周防君」
今日の刑部絃子は何か違った。そう、普段なら放っていない緊張感を放っていたのである。その原因を知るのは教室中でただ一人・・・いや二人。
「・・・・・・です・・・」
「・・・正解だ」
そしてこの授業最後の一番の難問を黒板に書く絃子

「じゃあこれを・・・周防君」
仏の顔も三度まで、もっとも彼女は仏ではなかったが
「・・・・・・分かりません・・・」
「そうか、じゃあ次までの宿題にしておこう。私が来るまでに答えを黒板に書いておくように」
ここでチャイムが鳴って授業は終わる
「何で私ばっかり・・・」
まあそれはアンタにも原因はあるよ
「ねえ美琴、刑部先生を怒らせるようなことしたの?」
「なんとなくならだけど・・・」
「美琴、播磨君に酷いことしたのなら許さないから」
「するわけ無いだろ。私が播磨にさ」
恋する相手に酷い事をする乙女は居ないだろう。
そして、化学の授業は4時間目。つまり待ちに待った昼休みである。
「播磨君、さっきの話しだけど」
「じゃあ行くか」

三人で屋上に向かう。そして屋上のドアを開ける播磨
「昨日美琴と何があったの?」
「それはな、昨日の夜の事だった。知らない奴らに絡まれてな(本当は会った事ある)喧嘩になってよ、相手は瞬殺したんだが誰か人の気配がしてよそいつを追いかけてたらそいつが転んでこっちを向いてよ、なんだか凄く恐がってこっちを良く見たらそいつが周防でよ。転んだ時の怪我が結構酷くて歩けなくてよ、周防を抱き上げて家まで連れて行ったんだよ。でも家に誰もいないって言うから、晩飯作って部屋まで運んで・・・そ・その・・・」
顔を赤くする播磨
「ねえ、何があったのか教えてよ。何も言わないから」
「そ・そのよ、下着を替えたいって言うから・・・新しい下着を周防に渡して、部屋から出て着替えが終わるのを待って中に入ってよ。周防は泊まって行けって行ったけど考えてみたらまずいから鍵を借りて家に帰った」
「ま・待って?何で鍵を借りたの?」
「あ・ああそれは、その日は一人だって言ったよな。だから俺が鍵を掛けないと鍵をかける奴がいないんだよ。だから鍵を持って帰ったんだ」
「じゃあ、何で今日は一緒に登校してきたのよ」
「それはな、俺が原因で歩けなくなったわけだからよ。迎えにいったんだ。本当だ!信じてくれ。俺は何もやましい事はしてねえ」
土下座をする播磨
「信じるわよ、好きな人の 言葉だし 」
「なんか言ったか?沢近」
「何でもないわよ、ありがとうね」
ここで初めて晶が口を開く
「じゃあ後でね」
非常に機嫌がいい愛理
「美琴は嘘は言ってなかったし、そんなに差はつけられて無いみたいだし。頑張らなくちゃ」
彼女の初恋はこうしてスタートしたのである。


決断した彼女の行動は早かった。
その日の放課後
「ねえ播磨君、買い物に行きたいんだけど着いてきてくれない?」
「んー、でもな周防を送っていかなくちゃいけないしな」
「それは花井君に頼みなさいよ」
「でもなあ、やっぱり原因は俺だしな」
「ねえ花井君?」
愛理に呼ばれてこちらを向く花井
「何だね?沢近君」
「美琴を家まで送ってあげて欲しいの」
「まあ良いだろう。でも僕は歩きだぞ?」
「播磨君、彼に自転車の鍵を貸してあげて」
花井に自転車の鍵を投げて渡す播磨
「すまんな周防。今日は沢近に付き合うことにするわ」
好きな男に反論しにくいのも乙女心です
「じゃあ行きましょう、播磨君」
播磨の腕を引っ張って教室を出ていく愛理。
「な・何を買うんだ?」
「服を買いたいの」
「たくさん有るんじゃないのか?」
やはり乙女心が分かってない播磨
「いいのよ、そろそろ新しいのが欲しいの」
「ふーん・・・まさか俺って、荷物もち?」
「正解。でもいまさら逃げようたって遅いから」
「ま・約束したしな」
一件目の店に入る二人。
なにやら真剣な目つきで服を選んでいる愛理。五分を過ぎた辺りで声を掛ける播磨。
「な・なあ、まだか?」
「チョット待ってよ」
「なあどうしてそんなに悩むんだ?お前なら何を着ても似合うと思うぜ。だからそんなに悩む事ねえだろ」
愛理は播磨のその言葉を聞いたときに耳まで赤くなったのが自分でもわかった。
「そ・それ本気で言ってるの?」
「こんな事嘘で言っても仕方ねえべ」
「じ・じゃあ、播磨君はこれとこれのどっちがいいと思う?」
二着の服を播磨に見せる愛理
「うーん、俺としてはこっちがいいが、こっちのほうが似合うと思うんだが」
播磨が愛理に服を見せる
「これ?」
「あ・ああ。まあ俺のセンスなんて悪いから気にしないでくれ」
「ご・ごめんね、この服良いわよ。気に入ったわ」
「そうなのか。まあ気に入ってくれたなら良いんだけどよ」
「ねえ、他にもどんどん選んでよ」
「か・金は・・・まあ大丈夫か」
「うん、だからお願い」

着々と愛理に似合う服を選んでいく播磨。
全部選んだ頃には播磨の両腕は荷物で埋まっていた
「なあ、もしかしてこの荷物をお前の家まで運ぶのか?」
「当たり前でしょ。それとも薄情な播磨君は私にこんなに持たせて帰っちゃうんだ」
「薄情って、もって行きますよ」
播磨のペースでゆっくりと愛理の家に向かう二人
「なあ、何だか雲行き怪しくないか?」
「そうね」
空は黒い雲で埋まりかけていた
「チョット急いだほうが・・・あっ」
「降ってき・・・たな」
一気に本降りになる雨
「い・急ぐわよ」
「急いでるって、これで限界だって」
ずぶぬれになりながらも何とか沢近邸にたどり着く二人
「な・何とかついたわね」
「あ・ああ・・・」
扉を開けて中に入る二人

「タオルを私の部屋に持ってきて頂戴ね」
そう言って自分の部屋に播磨を入れる愛理。
部屋に入るとすぐにバスタオルを持ったナカムラがやってくる
「ありがとうナカムラ」
頭を下げて部屋から出て行くナカムラ
「これ使って」
「サンキューな」
(今はかなりのチャンスね)
愛理はわざと制服の上を脱いで体を拭く
「な・何してんだ・・・」
耳まで真っ赤にして後ろを向く播磨
「あっ、ゴメン」
「いや、誤る事じゃねえけどよ。その・・・おっ、雨が止んだみたいだな。俺帰るわ。じゃあな」
慌てて部屋を出て帰っていく播磨
「効果ありだったみたいね」
沢近愛理の恋はこれから


人を一瞬で好きになることも有るであろう。高野晶の場合はそうであった。
時をさかのぼる事10年程前・・・


彼女は泣いていた。なぜなら家に帰れなくたっていたから。
「ヒック・・・ど・どうしよう・・・」
彼女が迷子になってからすでに2時間ほど経過していた。
しかし悪い事は続けて起こるものである。いつの時代も・・・
下を向いたまま歩いていたので前に人が居るのに気付かなかった。
「・・・!!ご・ごめんなさい・・・」
彼女がぶつかったのは中学生くらいの不良男子
「ん?・・・おっ、結構可愛いじゃんお前」
「どうした?」
「コイツが俺にぶつかってきてよ」
「結構可愛いじゃねえかコイツ」
「ああ、そうだな。一緒に遊ぼうぜ?」
彼女は非常に恐かったであろう。10歳にも満たない女の子一人に対して、中学生の男が三人
「あ・あの・・・私・・・」
「良いじゃん良いじゃん。どこか行こうぜ?」
晶を囲む男達
「ご・ごめんなさい。ごめんなさい」
しゃがんで泣き出す晶
「おい、何してんだ?男三人で女泣かすなんてよ」
「なんだ?テメエは」
「失せろ。ガキが」
「殺すぞ。ボケが」

しかし、この三人は二十秒後にこの言葉を後悔する事となる。
「フン、口だけか。大丈夫かお前」
彼女はさっき以上の恐怖を感じていた。だって三人を一人で片付けた時点でまともな人じゃない事だけは分かっていた。
「ホラ、立てるか?」
彼女に手を差し出す少年
「ごめんなさい・・・」
「何もしねえよ。ホラ、とりあえず立て」
晶を立たせる少年
「家はどこだ?」
「分かんない・・・」
「何だよ,ただの迷子か。どうっすかな・・・助けちまったしな・・・よし、俺が家まで送ってやる」
「で・でも、家が・・・」
「俺も捜してやるから。それでいいだろ?」
「う・うん」
このとき彼女がなぜ彼を信用したのかハッキリ分からない。でも、彼の目は真剣そのもので嘘を言ってるふうには見えなかったから。

「家の方向はどっちだ?」
「たぶんあっち・・・」
「迷って何時間くらいなんだ?」
「2時間くらい・・・」
「そうか、でもココからそんなに離れてないな。近くの店の名前とかは覚えてないか?」
「・・・・・・商店・・・」
「うーん、聞いたことねえな。交番で聞いてみよう」
彼女の手を引っ張って交番に向かって歩き出す少年
「あっ、これで涙を拭け」
ポケットティッシュを渡す少年
「ありがとう・・・」

それから数分後、交番にたどり着く
「いま聞いてくるからチョット待ってろ」
交番に入って警官になにやら質問している少年だが、すぐに戻ってくる少年。
「その店の場所、わかったぞ。行こう」
彼女の手を引っ張って歩き出す少年
「よかったな、ここからそんなに遠くないってよ」
「う・うん」
「でも、どうして迷子になったんだ?」
彼女は迷った。理由があまりにもばかばかしかったから・・・
「何も言わないからよ。助けたんだから理由くらい教えてくれたって良いだろ?」
「そ・その・・・猫を追いかけてたら」
その少年は彼女の手を離して震えだす
「ご・ごめんなさい・・・」
「ククク、い・いや。悪い・・・猫ね、ククク」
少年は笑っていた
「そんなに笑わなくても・・・」
「ゴメンな、じゃあ行こうか」
彼に連れられていくうちに彼女の知っている風景が少しずつ現れだす
「なあ、見覚え有るか?」
「少し・・・」
「そうか、もう少し行ったら。お前のさっき行った名前の店があるはずだから」
「あ・あの、今日はありがとう・・・」
「そのよ、まだお前の家に着いてないからな。着いた時にそれを言ってくれ」
「そ・その・・・」
「おっ、アレじゃないか?」
「う・うん・・・」
「ココからどこだ?お前の家は」
「あっち・・・」
彼女の手を引っ張って彼女の指を差した方向に歩く少年
「でも良かったな。で・どっちなんだ?」
「そこを右に・・・」


彼女の指示通りに進んでいくと、格好立派な家が現れる
「ここが・・・」
その家を見て驚く少年
「こ・ここか?でかいな。じゃあ俺はこれで行くな」
走り去っていく少年


それから彼女は変わった。次にあの少年にあった時のために・・・
まずはいい女になるために努力した。勉強も沢山した。自分のお金を沢山持つためにバイトも沢山した。料理を作ってあげたいから一人暮らしで腕を磨いた。それでも彼女は満たされなかった。なぜなら、その少年に会えなかったから。


だが出会いはいつでも突然だった。その少年はクラスメートだった。それも今までは何とも思ってなかった不良だった。
その衝撃は今でも忘れない。
「おはよう、今日はいい日だな」
彼女が十年間捜していた男が教室に入ってきたのである。クラスの面々の殆どは『アイツ誰だ?』って顔をしていたが彼女だけは違った
(あの人・・・?まさか播磨君だったなんて・・・)
彼女は絶望していた。だって、彼の気持ちを知っていたから。でもその不安は数時間で消え去った。なぜか知らないけど記憶喪失になっていたから。


彼が記憶喪失になってから数日が経った日。
その日は愛理が彼を連れて行ってしまったので、対策を練るだけで明日以降に行動を起こそうということで素直に帰ることにしていた。
趣味のガンプラ購入のためにいつものプラモ屋に行く事にした。天気予報で夕立があるかもしれないといっていたので傘を持っておいて正解であった。
「今日は何を買おうか・・・!!」
ふと向こうを見るとずぶ濡れの播磨がやってきていた
「よお、高野」
「は・播磨君。どうしたの?そんなに濡れて」
「さっきの夕立でよ。そんな事よりそっちは何をしてるんだ?」
晶は迷った。ガンプラ作りが趣味の女は変に思われるのでは?と
「ふーん、もしかして何か買うのか?確か趣味はガンプラだったか?」
「ど・どうしてそれを・・・」
「だって、前に自分で言ってただろ」
迂闊だった。晶とあろうものがこんな初歩的なミスをするとは・・・
「今から買いに行くなら俺も連れて行ってくれよ、結構好きなんだよ」
意外なチャンスが回ってきた
「そうなの。あまり邪魔しないでね・・・」
二人でプラモ屋に入る
「へえ、こんなところにこんな店が有ったなんてな」
「播磨君は何が好きなの?」
「そうだな、SEEDシリーズは嫌いじゃないがやっぱり一番はΖだな」
「そ・そうなの。私もΖは好きなほうね」
意外であった。播磨は自分と同等かそれ以上の知識を持っていた。
「高野は作るの上手いのか?」
「結構自信はあるわ」
「そうか、俺も作りたいんだけど従姉妹と一緒に住んでて場所がな・・・」
チャンス到来。彼女は今しかないと思った
「今度家に見にこない?」
「本当か?ジオラマとかは作れるのか?」
「え・ええ・・・」
「じ・じゃあガレキは?」
「何とか・・・」
播磨は尊敬の眼差しで晶を見ていた
「何かリクエストはあるかしら。今なら格安で作ってあげるけど」
「マジで?・・・でも金無いしなあ」
「後払いでも分割でも良いわ」
「じ・じゃあさ、X1のガレキを頼んで良いか?」
「ええ、いいわよ」
内心彼女は焦っていた。まさか、メジャーでないモノを頼まれるとは。それもガレキを・・・
「金だけどよ・・・」
「出来てからで良いわ」
「そうか・・・」
彼女の恋もここからスタートした



しばらくアップが遅れます。御了承ください・・・・・・
Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.2 )
日時: 2005/09/26 23:42
名前: ACE

その感情が恋であったとしても、その感情に気付かなければ恋ではない。だが気付いた時には積極的になるであろう。
塚本八雲の場合はそうだった。


彼の異変にハッキリと気がついたのは彼が記憶喪失だと言うウワサを聞いて初めて接触した時。

「よう、妹さんじゃないか」
しかし普段の彼とは違っていた。彼の心が視えたから。
でもそのときはただの偶然だと思った。前にも視えた事があったから。

でも次は違った。
それはその次の日にたまたま廊下であった時
「あ・播磨さん」
「おう、妹さんも職員室に用事か?」
(ボーっとしてるけど大丈夫なのか?)
「え?あ・はい・・・」
「そうか・・・放課後は何か用事有るか?」
「い・いえ・・・」
「それなら、授業が全部終わったら教室に迎えに行くな」
「はい」
走り去っていく播磨
「・・・そうだ、刑部先生に呼ばれてたんだ」
職員室に入って絃子の元に行く八雲
「来たか塚本君、次の授業は化学室だと伝えておいてくれ」
「はい、その・・・播磨さんの事なんですけど」
「拳児君がどうかしたのか?」
「やっぱり記憶喪失と言うのは・・・」
「その話なら昨日話し合ったではないか」
アレは話し合いとは言わないよ
「もし、気になるのなら放課後に茶道部室で話そうじゃないか」
「そ・その・・・放課後は播磨さんとの約束が。じ・じゃあ私は行きます」
職員室から逃げるように出て行く八雲。それは絃子の顔が恐かったから
「フフフ、そうか。君も敵と言う事か」

そして、化学室での授業が始まると絃子は淡々と授業を進める
「・・・・・・であるからこうなる。ではここの問題を塚本君」
「・・・・・・です・・・」
「ふむ、正解だ」

それから数分後
「ではこの問題を塚本君」
「・・・・・・です」
この光景何処かで・・・

またまた数分後
「じゃあこの問題を塚本君」
「先生・・・その・・・」
「何だね?早く答えたまえ」
「・・・・・・です」
絃子さんアナタはここでもやってたんですか・・・

そしてラスト二分。今日一番の難問を黒板に書く絃子
「ではこの問題を・・・・・・」
クラス全員に緊張が走る
「塚本君」
流石の八雲でも難しい問題だった
「・・・・・・です・・・」
「チッ 正解だ」
刑部絃子、一応教師
ここでチャイムが鳴って授業が終わる

「ねえ八雲、刑部先生・・・」
「うん、でもなんとなくだけど理由は分かってるから・・・」
「播磨さんでしょ?」
「う・うん」
この時間は6時間目、つまり授業はもう無いわけで

「でもさあ、刑部先生も大人げないよね。八雲も今のうちに播磨さんにアタックしたら?」
「え・でも・・・」
「じゃないと、他の人に取られちゃうよ。播磨先輩大人気だから」
確かに、今の播磨は女子に大人気であった。
「でも八雲なら大丈夫、頑張りなよ。応援してるからさ」
「でも私なんか・・・」
「うーん、じゃあ私も播磨先輩にアタックしちゃおうかな?」
「え?サラ・・・」
サラの言葉を聞いた瞬間八雲の胸は締め付けられたのであった
「・・・ヤ、イヤ。私・・・播磨さんが」
「うんうん、それでいいのよ八雲」
サラに励まされた八雲であった

HRが終わって帰る準備をしていると、播磨が1−Dの教室にやってくる
「妹さん、準備はいいか?」
「は・はい」
何を話すわけでもなく自転車に乗る二人

そして、メルカドに着いて、播磨が周りをやや気にしながら口を開く
「妹さん、マンガの事なんだが・・・」
「何でしょうか・・・」
しかし八雲は薄々感づいてはいた
「あのマンガのヒロインのモデルは君のお姉さんだ。でもいつも君に相談していた。でもマンガは妹さんくらいしか知らない。俺が好きだった子は君のお姉さんなのか?」
(でも、俺は妹さんのほうが好みだけどな)
彼女は迷ったが、自分の気持ちに正直になることにした
「すいません、私も何も知りません・・・」
「そうか・・・それならいいんだけどよ」
(良かった。知られてたらこれから話しづらいからな・・・)
「あ・あの、これから何か予定は有りますか?」
「ん?特にねえけど」
「一緒に、動物園に行きませんか?」
「お・良いな。あいつらにもたまには会ってやらないとな」
八雲は播磨と動物園に行く約束を取り付けた。言ってみれば初めてのデート

「ピョートルは元気にしてるかな」
「そうですね」
八雲はかつてないほど緊張していた。今までにも何度か播磨と何処かへ出かけた事はあったが、その時は播磨の心は視えなかった。でも今日は視える・・・
「金は俺が払ってくるな」
二人分の入場券を買いに走る播磨。すぐに購入して戻ってくる
「ホラ、券だ」
「どうも・・・」

「久しぶりだな、ピョートル」
播磨の存在に気付いたピョートルは二人の元へ寄って来る
「・・・そうか、元気でやってるのか。俺達?俺は元気だ。妹さんはどうだ?」
「私も、元気です」
「・・・本当か?妹さん、こっちを向いてくれ」
じっと八雲を見つめる播磨
「え・え?」
(顔が真っ赤だな。熱あるのか?やっぱり)
「妹さん、チョット失礼」
八雲の額に手を当てる播磨
「播磨さ・ん?」
「やっぱり少し高いな。本当は具合悪いんじゃないか?」
「そんな事はないです」
「本当か?悪化してからじゃ遅いからな」
(本当に大丈夫か?妹さんは)
「だ・大丈夫です。ですからもう少しだけ一緒に見ていたいです・・・」
「分かった。じゃあ、次行こうか」
結局二人は閉園時間一杯まで園内を回る事となった。


「うーん、もう真っ暗だな。家まで送っていくよ」
「そ・その、お願いします」
八雲は今やっと走り出したのである。



人を愛していると気付くのは、その相手が他の女。まだ、その男が好きな相手なら我慢できるが・・・そうでない女に取られそうな時である。
刑部絃子の場合はそうであった。

刑部絃子は悩んでいた。その原因は同居人の播磨拳児が原因であった。
「どうしてこんな事に・・・」
買い物に行かせたまま帰ってこない彼に嘆くように呟いた絃子であった。

事の始まりはこうであった。
職員室で塚本八雲が彼と用事があるといった事。それもすぐに帰ってくると思ったら、帰って来たら空が暗くなり始める時間だった。
その事を問いただすと素直に答えたので、晩御飯の準備と後片付けをすべてやらせて冷蔵庫を開いた時に起こった。
「拳児君」
「何だ?絃子さん」
「ビールが切れた。おつまみも切れた。買って来てくれ」
「俺が買ってくるのか?分かったよ、金をくれ」
意外だった。反論せずに素直に従ったことがやはり考えられない。
「五千円で、ビール二ダースと残りはおつまみを頼む」
「おう、じゃあ行ってくるな」
しかし彼はすぐに帰ってこれるはずであったのに帰ってはこなかった。
そんな時に彼の携帯から電話がかかってきた。
「・・・・・・、もしもし拳児君か。君は一体今どこで何をしているのだね?」
「あ・あの刑部先生・・・」
「・・・、君は2−Cの周防君か?」
「そうです」
「なぜ君が拳児君の携帯から私に電話しているのだね?」
「実は播磨は今、私の家にいるんです」
彼女は手にもっていたビール缶(ほぼ空)を握りつぶした。
中身が少しこぼれたが気にしない。
最後のビール缶を手に持つ絃子。
「誤解しないで下さい。怪我して歩けないから播磨に家まで送ってもらったんです」
「ほう、それならばもう拳児君が君と一緒に居る事は無いわけだ」
「それが、今日は家に私しか居なくて、播磨が居ないと何も出来ないんです・・・」
残っていた最後のビール缶(未開封)を握りつぶす絃子。
中身が沢山こぼれたが気にしない
「じ・じゃあそう言うことなんで播磨を怒らないでやってください」
一方的に切られた。絃子の苛立ちは最高潮に達していた
「さて・・・どうしてあげようか拳児君」
部屋中のモデルガンを集め始める絃子。でもビールの後片付けはしていない。

それから三十分ほどで播磨が荷物を抱えて帰ってくる
「ただいま」
玄関からリビングに入ると固まる播磨
「絃子さん?」
「拳児君、さっきの電話はどういうことかね?」
違法ギリギリまで改造した電動ガンを両手で播磨に向けている絃子
「電話・・・もしかして周防に頼んだ奴か。何か有ったのか?」
「何か有ったか・・・なぜ君が直接電話しなかったのだ?」
「そうか・そうだよな」
周防との出来事を包み隠さず話す播磨。その間珍しく一度も弾は発射されなかった。

「今話したことが全部だ。本当だ絃子さん、信じてくれ!」
「それが嘘であったらどうする気だね?」
「嘘って、そうか俺は絃子さんには信用されてないのか・・・好きなだけ撃ってくれ」
無防備な状態になる播磨

「撃たないのか?絃子さん」
「いや、信じよう。この銃の威力を知っていればそんな事は嘘では出来ないからね」
「ありがとう絃子さん。カーペットが濡れてるけど何か有ったのか?」
「ああ、ビールをこぼしてね・・・」
「急いで拭かないと」
てきぱき片付けを始める播磨

しかし、その次の日はさらに苛立つ事となった
その日は夕立があり傘を持たない彼の心配をして風呂を沸かして待っていたときである。
「拳児君はまだか・・・」
その時、愛しの播磨が帰ってきた
「ただいまー」
リビングに入って来る播磨
「おかえり拳児君。お風呂が沸いてるよ」
「おっ、本当か?じゃあ入って来るわ」
風呂場に向かう播磨
「さて、どうしてやろうか。酔わせて同じベッドで寝るとするか」

しかし絃子の企みは失敗する事となる。
播磨が風呂から上がってきたので、手料理を食べながら晩酌する事にした。
「で・今日は何をしてきたんだね?」
「沢近の買い物に付き合って・・・」
「何を買ったのだね?」
「服なんだよ。沢山持ってるのに、今日も両腕が塞がるだけ買ってビックリしたぜ」
「それで、君は荷物もちだけをやったのかね?」
「最初はそのつもりだったんだけどよ、俺が選んだのを気に入ってな。それでどんどんアイツに似合うのを選んでいったんだ」
彼女は驚愕した。周防美琴だけでなく、沢近愛理にまで差をつけられていた。沢近が積極的に行動するとは考えられなかった。
しかし、彼女は冷静を保ったような顔をして
「そ・そうか。で・その後はまっすぐ家に来たわけか」
「いや、帰りに高野に会ってよ。それがちょうどプラモを買うところにバッタリでよ。面白そうだから着いて行ったらこれまた話せる奴でよ。しかもガレキまで造ってくれるってよ。いやあラッキーだったな。X1が手に入るなんてよ」
よく分からない絃子
「ガレキ?X1?何の事だ・・・」
絃子の記憶では高野晶の趣味はガンプラ造りが趣味だったはずなので恐らくそれが関係しているのであろう。
「そのX1というものはそんなに高いものなのかね?」
「それ自体だったら。二・三万だけど、完成にはさらに一・二万位はかかるし技術と道具も必要だからな。俺じゃあ無理だからあきらめてたんだけどまさかな・・・」
まさか高野晶にまで差をつけられていたとは・・・
だが、この作戦で挽回できると信じていた
「そうか拳児君。飲みたまえ」
ビールを勧める絃子。播磨は酒に弱いので一本目でダウンするはずであった
「おう、乾杯!」
一気に一本を飲み干す播磨。この瞬間に絃子は心の中でガッツポーズをするのであるが・・・・・・
「ふう、もう一本くれ」
「・・・大丈夫なのか?」
「ああ何ともないぜ絃子さん」
彼は酒に強くなっていた

飲み始めてから何時間が経ったであろうか
「・・・、君に分かるか?この気持ちが・・・うう・・・」
「とにかく、飲みすぎだって絃子さん。もう寝よう?」
「断る。まだ飲む・・・」
「ほら、もう無いから。な?寝ようぜ絃子さん」
「拳児君と一緒なら寝る・・・」
「冗談言ってないで、ホラ」
「冗談ではないよ。私は本気だよ」
「・・・・・・からかってるんだろ?」
「本気だ。それとも私は君に信用されていないのかね?」
「そうじゃねえけどよ。でも流石にそれはな・・・ああっ、もう。行くぞ」
絃子を抱え上げる播磨。まあお姫様抱っこをされたわけで、絃子の顔は酒+恥ずかしいで真っ赤であった。
「け・拳児君?」
「寝るまでそばに居てやるから。それで良いだろ?」
「う・うん・・・」
刑部絃子の恋はここから

彼女は男に恋をしていた。しかし、その彼には好きな相手が居たので自分は我慢していた。でもその彼は今、記憶喪失・・・
「ハリオ♪待っててね。今お姉さんが・・・・・・」
彼女の名前は姉ヶ崎妙・・・

その日は彼と親しい?女性が集まって会議(自称)を開いていた
「二日前の朝の事だ、いつものように支度をしていると拳児君の部屋からものすごい音がしてね、彼の部屋に入ってみたら彼が倒れていたんだよ。それで心配になった私は大丈夫かと聞いたんだ。そしたら拳児君はすぐに起き上がってこういったんだ。『大丈夫だ絃子さん』と・・・」
その言葉の意味が良く分かっていない7人。
「彼が私を呼ぶときは必ずといって良いほど絃子さんとは呼ばない。普段はさん付けしないのだよ。それからと言うもの彼は必ずさんを付けて呼ぶようになったのだよ」
「そして昨日のあの発言か・・・でもどうして私たちのことは覚えてるんだ?」
「うーん、私は脳の専門じゃないからな何ともいえないんだけどぉ、記憶喪失と一言で言っても色々種類があるのよ。それに、普段の生活に支障が無いならゆっくり治るのを待てばいいじゃないですか」
「私の生活にはすでに十分に支障が有るのだが」
「・・・・・・、じゃあ私がハリオの面倒を見ますよ。刑部先生?」
「いや、私は拳児君の保護者だからね、私が面倒を見るよ」

この時点で生徒組はすでに帰っていた
「でも刑部先生」
「なんですか姉ヶ崎先生」
「刑部先生とハリオは従姉妹同士でしたよね。でも日本の法律では結婚できるんですよ」
「まあ、そうだね」
「ってことは。私と刑部先生の立場はあまり変わらないわけなんですよ」
「何を!私は彼とずっと暮らしていたのだよ」
「でも少しの間ですけど、私も一緒に住んでいましたよ」
「だが彼は結局私のところへ戻ってきた」
「うっ、でも私のところに居る間は手料理を毎日作ってあげてました」
「うっ、そ・それは・・・」
勝った!妙はそう確信した
「じゃあ私はこれで・・・」
茶道部室を去る妙

2−C六時間目。体育・・・
その日の授業は男女混合バレーだった
「よーし、体育だ。気合を入れるか・・・でも男女混合って・・・なんで?」
まあ普通は分けるだろうが・・・
「なあ播磨。私と組もうぜ」
「別にいいけどよ、怪我は大丈夫なのか?」
「あ・ああ。もう普通に運動は出来るから大丈夫だ」
「そうか、それなら良かった」
「残りの四人は・・・」
「ねえ播磨君。私も入れてくれない?」
「おう、俺は良いぜ」
「私も混ぜてくれない?播磨君」
「俺は良いぞ」
四人のうち播磨を除くと、周防・沢近・高野。と、学校中の男子が羨むメンバーであるが、播磨はそんなに気にしていない
「おおっ!!播磨。俺も混ぜろ。ミコちんと同じが良いっ!」
コイツも来たか
「俺は別に良いぞ」
「あ・あの・・・私も入れてください」
今鳥につられて一条も入ってきた。このチームは今鳥さえいなければ恐らく最強。まあいても最凶(最恐)には違いないが・・・

そんな中チーム分けが終わって試合が始まる。
そして、天満チームの試合を観戦中の播磨チーム
「む、塚本君。今だ!!」
天満に絶妙なトスが上がる
「行けー!! 」
天満渾身のスパイクがネットの向こうでなく播磨めがけて飛んでいく
「な・・・」
天満のスパイクが播磨の顔面にクリーンヒットする。
「な・何で俺が・・・」
結果播磨は保健室送りとなった

彼女は暇であった。まあ彼女の仕事はそちらのほうがいいのであるが・・・
「うーん、暇だなあ」
その時保健室に生徒が入って来る
「いらっしゃい・・・ってハリオ?」
振り返ると周防が播磨を背負っていた
「何があったの?」
「そ・それよりもベッドに」
「そうね」
播磨をベッドに寝かせる美琴
「で・何があったのかな?」
「バレーのボールが顔面に当たって・・・」
「そう・・・」
「じ・じゃあ私は」
逃げるように保健室を出て行く美琴
「ハリオは大丈夫かな?」
ベッドの上の播磨は静かに眠っていた
「誰がやったのかは知らないけど感謝しなくちゃね」
播磨とお姉さんの二人きりの時間はあまり長くは続かなかった

一時間ほど経つと保健室に刑部絃子がやってきた
「あら刑部先生。どうかしましたか?」
「いえ、拳児君がココに居ると聞いてね」
「大丈夫ですよ。ハリオは私に任せてください」
「いえ、私も暇ですから大丈夫ですよ」
なにやら火花が散っていた
「う・うーん・・・ココは?」
どうやら播磨が目を覚ましたらしい
「ハリオ、起きたんだ。どこか痛む?」
「いや、何ともないけど・・・二人ともどうしたんだ?」
「いや、拳児君が心配できただけだ。元気そうで良かったよ」
「俺は大丈夫だ」
「もう少し休んでいかない?ハリオ」
「もう大丈夫ッスよ。それじゃ俺はこれで」
保健室を出て行く播磨
「おやおや姉ヶ崎先生。残念でしたね」
保健室を出て行く絃子

彼女は決心した。これからは積極的(今までも十分にだと思う)にアタックしようと心に決めた。




Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.3 )
日時: 2005/09/26 23:43
名前: ACE

この辺りでそろそろ視点を播磨拳児に戻してみよう。

彼は考えていた
「うーん、何だか最近いつも誰かに見られている気がするな・・・」
彼は授業中に複数の視線を感じる事が多くなった。視線を感じたほうを見ても何も無いこともしばしば
「何か恨みを買うようなことでもしたっけ?」
播磨は播磨だった。その視線の正体はお分かりであろうが、周防・沢近・高野である
「ま・寝よう」

次の日の朝、彼は驚くべきものを目の当たりにする
「おはよう、絃子さん」
「おはよう拳児君。私は先に行くよ」
「そうか、行ってらっしゃい」
「そうだ、そこにお昼を置いておいたから」
何と、テーブルの上に手づくり弁当が置いてあった
「あの、絃子さん・・・コレ・・・」
「ああ、安心してくれ。私の手づくりだから」
そう言って出て行く絃子
「絃子さんが俺に昼飯を?何か有るのか?」
播磨拳児鈍感王・・・

その日の昼
「うー、腹減った。やっぱり月末はつらい・・・何か忘れてる気が・・・そうだ」
絃子が弁当を作ってくれたことを思い出す播磨
「そうだったよ。ラッキー・・・ん?何だ周防」
播磨の席に顔を赤くした美琴が立っていた
「あ・あのよ、コレ・・・食べてくれ!!」
弁当を差し出す美琴
「マジか?いやあ、絃子さんからも貰ってたんだけど味が恐いからな、お前の弁当なら安心できるよ」
「そうか、サンキューな」
自分の席に戻っていく美琴
「さーて、どっちから食うかな・・・ん?どうした沢近」
「そ・その・・・コレを食べて欲しいんだけど・・・」
弁当を差し出す愛理
「食っていいのか?いやあ正直量が足りないかもしれなかったから助かるぜ。サンキューな」
「べ・別に気にしないで・・・」
自分の席に戻る愛理
「いやあ、昼にこんなに食べれるなんてな・・・どうした?高野」
「コレ・・・貰ってほしいんだけど」
その手に有るのはやはり弁当
「コレを俺に?じゃあ遠慮なく貰うよ」
「じゃあ・・・」
自分の席に戻っていく晶
「それにしてもずいぶん増えたな・・・さてと、どれから・・・」
2−Cのドアが開かれる。そこに立っていたのは・・・
「八雲君!!その手に有るのはお弁当!!まさか僕のために作って・・・」
「違います・・・」
あっさり否定した八雲。あ・花井が真っ白だ
「どうしたの八雲。私、今日はちゃんと持ってきてるよ?」
「違うの。これは播磨さんの分・・・」
クラスの野郎達が騒ぎ始める。まあ無理も無かろうが・・・
「播磨さん、コレ・・・」
「お・おう・・・」
2−Cから出て行く八雲
「何だか、皆の目が恐い・・・」
再び2−Cのドアが開かれる
「ハリオ♪お昼持ってきたの。食べてね?」
播磨に弁当を手渡して去っていくお姉さん
「六つも食えるかな・・・俺」

そして、放課後にも波乱が起こった
「よし、帰るか・・・そうだ。なあ高野」
「どうしたの播磨君」
「ガレキの件だけどよ・・・いくら位かかりそうだ?」
「そうね・・・四万円くらいかしら」
「そうか・・・金のほうだけど・・・」
「考えてみたら12月1日はアナタの誕生日だったから。その時のプレゼントにしてあげる」
「本当か?いやあ助かるぜ」
「なあ播磨。瓦礫って何だ?」
「そうよ、何で瓦礫がプレゼントになるのよ。それも四万円も」
「ああそれか。ガレージキットの略であってゴミの方じゃないぞ」
「へ・へえ(ガレージキットって何だ?)」
「そ・そう(晶・・・結構高いものをプレゼントするのね)」

「じゃあそれじゃあ俺は帰るな」
「播磨ちょっと・・・」
帰ろうとする播磨を止める美琴
「なんだ?周防」
「何も予定ないなら、私とどこかに行かないか?」
「いや・・・特に予定は・・・うっ・・・な・無いけど・よ・・・」
美琴の後ろの二人の気迫にたじろぐ播磨
「そうか、じゃあ行こ・・・」
「播磨君?私と遊びに行きましょう」
「おい沢近!私が最初に誘ったんだぞ」
「何よ、まだOK貰ってないじゃない」
口論を始める二人
「お・おい・・・高野?」
「二人はこのままほっておいて私と行きましょう」
「晶!!」
「高野!!」
二人の声がハモった
「お・俺は・・・じゃあな!」
脱兎のごとく教室から去っていく播磨
「お・おい!」
「ちょっと!」
「あ・・・」

廊下を全力で走りながら
「クソッ、何でこんな事になってるんだよ」
「コラコラ、廊下は走るなと言っているだろう?」
「おっ、スイマセ・・・って絃子さんか」
「どうして走っていたのかね?」
「そ・それが・・・き・来た・・・」
播磨に追いつく三人
「ふむ・・・そう言う事か。君達、『私の』拳児君にちょっかいはやめていただこうか」
「ま・待ってくれ絃子さん。私のってどういう意味・・・」
「言葉の通りだが・・・待ちたまえ拳児君!」
再び逃げ出す播磨

「じ・冗談じゃねえ・・・あの三人、目が本気だった。アレはヤバイ」
いつの間にか下駄箱までやってきていた播磨
「・・・帰るか・・・!!」
背後に気配を感じる播磨
「・・・って、妹さんか」
「どうかしたんですか?播磨さん」
「いや、何でもねえよ」
「そうですか。これから私とどこかに行きませんか?」
「え・・・そ・そのよ、今日はチョット・・・ま・また来たっ!」
本日三度目の逃走を計る播磨

「な・何とか振り切ったけど・・・明日も学校あるしな。うーん、どうすればいい・・・そうか!皆で遊べるところに遊びに行けばいいのか」
播磨・・・自ら波乱を呼んでどうする・・・


播磨は悩んでいた・・・
「どうすっかな・・・何か良い方法は無いか・・・これだ!!」
丁度テレビのCMで温泉旅館の映像が流れていた
「これなら皆で楽しめるし、温泉にも入れるし・・・善は急げだ」
さっそく、CMに出ていた旅館に電話する播磨
「あのー、CM見て電話したんですけど、今度の土日って部屋有りますか?」
「団体様のお部屋しか残っておりませんが」
「何人以上で団体扱いになるんでしょうか・・・」
「十五名様以上になります」
「そうですか・・・また電話します」
「お待ちしております」
「十五人か、俺を除けば十四人・・・厳しいな。あんまり親しくない奴を呼んでも駄目だしな・・・ええい、とりあえずやってみるか」
播磨の作戦がスタートした

その日の夜。絃子と夕食を食べながら
「なあ絃子さん。今度の土日なんだけど何か予定は有るか?」
「ん?別に何も無いよ拳児君」
「そうか、温泉に行こうと思うんだけど」
顔を赤くする絃子
「気持ちはうれしいが少し気が早いぞ、拳児君」
「チョット待ってくれ、それが団体用の部屋しか残って無くてな」
「なんだ、そう言うことか。では参加しよう」
あと十三人・・・

次の日の昼休み。この日も六つの弁当を食べ終えた播磨は雑談しているいつもの四人組に話しかけた
「よう、今度の土日なんだけど何か予定有るか?ないなら皆で温泉でも行かないか?」
「ねえ播磨君。それって・・・私はいいわよ」
「そのよ、団体用しか残ってないって言われてな。最低でも十五人は必要らしいんだ」
「なんだ、でも私も参加するよ」
「それって、他の人も誘っていいの?播磨君」
「おう、でもあまり知らない奴はかんべんな」
「うん!」
烏丸の席へ行く天満
「高野はどうする?」
「もちろん行くわ」
「そうか、じゃあな」
教室を出て1−Dに向かう播磨
あと九人・・・

1−Dに到着し、教室内に入る播磨
「よう、妹さんとサラちゃん」
「あ・播磨さん」
「二人とも、今度の土日なんだけど何か予定は有るか?無ければ皆で温泉でも行こうと思ったんだけどよ」
「・・・姉さんは・・・」
「もう誘ったけど、もしかして来れないのか?」
「いえ、行きます」
「そうか、サラちゃんは?」
「行きます。他の人も誘っていいんですか?」
「知ってる奴ならな」
「はい!」
あと七人・・・

1−Dを出た彼は保健室に向かっていた
「あと七人かお姉さんがOKなら六人か」
保健室に到着する播磨
「どうも・・・」
「あ・ハリオだ♪」
「今度の土日なんですけど何か予定は有りますか?ないなら・・・」
顔を赤くして答える妙
「え・・・ハリオ。私はいつでもいいぞ♪なんなら今からで・・・」
「チョット待ってくれ!皆で温泉に行こうと思ってたんだけどよ・・・」
「なんだ残念、でも勿論行くからね」
残り六人・・・

播磨は考えていた
「あと六人か・・・塚本が烏丸を誘ってたからそれがOKなら残り五人。あと、花井は来るか?ま・誘ってみるか」
2−Cに戻る播磨
「えーと、いたいた。花井、お前今度の土日暇か?」
「何か有るのか?」
「皆で温泉に行こうと思ってるんだけどよ・・・」
「八雲君は来るのか?」
「ああ、来るって言ってたが・・・」
「行こう!!勿論行かせて貰う」
「おおそうか。うーん、あと五人・いや四人か?」
天満の元に行く播磨
「烏丸は何だって?」
「え・どうして知ってるの?」
「いや、分かりやすいからな。で・どっちなんだ?」
「うん、良いって」
「おお、そうか」
残り四人。頑張れ播磨?
「そうだ・・・いた。おい、今鳥」
「もしかして、俺も行っていいの?」
「おう、来るか?」
「勿論!」
「残り、三人か・・・そうだ。確か麻生は・・・いた」
播磨の顔を見ると走って逃げる麻生
「な・逃げやがった。逃がすかっ!」
播磨と麻生の勝負が始まるがそれはあっさりと決着がついた。
麻生が急に止まったのである
「おい、麻生・・・」
「考えてみたら断るだけでいいんだよな・・・!」
「先輩は来てくれないんですか?」
麻生の後ろにはサラが居た
「何か用事でもあるのか?」
「ま・まあ・・・」
明らかに目が泳いでいる麻生
「先輩、嘘はいけませんよ」
「何だ嘘かよ。じゃあ来てくれ、人数が欲しいんだ」
「別に他の誰かでもいいだろ?」
「あんま知らない奴を呼んでも意味ねえよ。お前はサラちゃんと知り合いだろ?」
「そうですよ、ね?行きましょうよ先輩」
「けどな・・・」
なにやら麻生に耳打ちするサラ
「な・・・分かったよ、俺も行こう」
「おお、そうか」
残り二人は誰が来る?

2−Cで悩む播磨
「あと二人か・・・誰が居る?お・どうした?一条」
「あ・あの、わ・私も行きたいです・・・」
「そうか、よし!残り一人」
「そ・その、ララさんも誘っていいですか?きっと温泉に行った事無いと思うし」
「ララって、D組みの奴だよな、たしか同じアマレス部だったか?」
「そ・そうです」
「よし、早速誘いに行こう」
一条と共にD組みに行く播磨
「えっと、あ・ララさん」
「ドウシタ、イチ・ジョー」
「今度の土日なんですけど・・・何か予定は有りますか?」
「特にナイが、ドウカシタのカ?」
「ああ、それは俺からいうよ。皆で温泉行こうと思ってたんだけどよ、一条がお前は温泉に行った事ないだろうからって・・・」
「オンセン?フロのコトか」
「そうです。一緒にどうです?きっと楽しいですよ」
「イチ・ジョーが・・・イク」
「そうか、それは良かった」
何とか十五人の定員を確保した播磨。しかしこの面子・・・絶対波乱が起こるような・・・
播磨がD組みを去ろうとした時
「待ちたマエ」
「ん?何だ。ハリーかよ」
「私も、連れテ行ってクレ」
「何で?もう必要人数は確保したからな・・・」
「私も、オンセンの経験ハナイ」
「そうは言ってもな、俺とお前はそんな仲良くないだろ」
「ソレは体育祭マデのハナシダ」
「うーん、まあそうだよな。いいぜ」
十六人に増えた面子。でももっとややこしくなるような・・・

同じ頃2−Cでは西本達のエロ会議が開かれていた
「・・・という状況ダス」
「さ・最悪だ。しかも今鳥は裏切ったし・・・」
「ちょっと待て、俺は裏切ってない。播磨が誘ってきたんだよ」
「待つダス。内輪もめをしても状況は変わらんダス」
「俺も行きてえ」
「俺だって!」
「でも主催はあの播磨。何か弱点はないのか?」
「いや、あの播磨だろ?弱点なんてねえよ」
「ほう、俺がどうかしたか?」
「播磨!」
会議参加者(一部除く)の声がハモる
「いや、そんなに驚かれても困るんだが・・・一体何の話しだ?」
「その・・・温泉の事だけど、俺も行きたいなーって」
「悪い、もう定員は確保したから。どうしても行きたいなら他の奴の許可も貰ってくれ」
「そ・そんな・・・」
彼らは絶望した。参加するのは事実上不可能になってしまったのだから・・・

放課後、職員室へ向かう播磨
「葉子さんも誘わないとな・・・後が恐いし」
播磨・・・ソレを言うな
「えっと・・・いた」
葉子は職員室にいた
「あの、笹倉先生・・・」
「ねえ播磨君、どうして私は誘ってくれないのかな?」
「い・いや・・・その・・・忘れてて」
「播磨君はいつからそんなに冷たい人になっちゃったの?」
「だ・だから、今誘いに・・・」
「本当?じゃあ楽しみにしてるからね?」
「あ・はい・・・」
こうして参加者が決定した温泉旅行。



旅行の準備であっという間に当日となる。
一泊二日という温泉に行くにはゆっくり出来ない。ややハードスケジュールな為。始発の電車で向かう事となっていた。
「よし、揃ったな。出発!!」

「よーし、早速席を決めようか。クジを作ってあるから皆引いてくれ。A〜Eまで分かれて、AとBが四人で残りは三人がけだから」
クジを引いていく面子。クジによって席はこうなった
A席:麻生・サラ・播磨・美琴
B席:晶・愛理・花井・八雲
C席:烏丸・天満・ハリー
D席:今鳥・一条・ララ
E席:絃子・妙・葉子
(名簿順)
こうして様々の考えが交錯するなか、『一泊二日・ドキドキ・ワクワク・温泉旅行』がスタートしたのであった。

「腹減ったな。何か食うかな・・・」
自分のバッグからポテトチップスを取り出して食べようとする播磨。
「ねえ播磨君。それ頂戴」
何と、未開封のポテトチップスを袋ごと要求する愛理。
「・・・、コレ俺の・・・、まだ一口も食べてないんですケド」
「じゃあいいわよ・・・え?」
愛理の手にポテトチップスの袋を渡す播磨。もう片方の手には中身が一枚だけ中身が握られていた。
「これなら文句はないだろ?」
「う・うん・・・」
下を向いて赤くなる愛理。
場の空気がピリピリしたが播磨は気付かない。
「ん・・・何か寒気が・・・。俺チョット、トイレに行ってくるな」
トイレに立つ播磨。そのときに電車が駅に止まる。
このときトラブルメーカ天満がジュースを派手にこぼす。
「ああ!やっちゃったよぉ」
しかしコレは更なる波乱への布石に過ぎなかった・・・
「姉さん、コレ・・・」
箱ティッシュを天満に渡す八雲
「ありがとう八雲。うう・・・やっぱり私はドジだよ〜」
「塚本さん、大丈夫だよ拭けば」
ティッシュで一通り拭くがやはり濡れている床。

一通り拭き終わった時にちょうど戻ってくる播磨。
「結局何も出なかった・・・」
「あ・播磨君、そこ濡れてるから気をつけて」
「ん?あ・ああ。おおっ?」
播磨がそのゾーンを通過中にちょうど電車が発車する。結果播磨は前のめりに転ぶこととなる。その先には・・・周防美琴の・・・胸。ああお決まり・・・。
播磨は殴られる覚悟をして目を瞑った。
(まあ・・・ココは素直に殴られようか・・・く・来る・・・?ムギュ?も・もしかして・・・)
播磨を胸で抱きとめる美琴。抜け出そうとする播磨だが美琴が抱きしめている為に抜け出せない。
「ん・んんん、んんんん」(や・やめろ、苦しい)
「照れるなって播磨」
「ん・んんんっん」(ち・違うって)
「いいからいいから」
「ん・んんんんん。ん・んんん」(も・もう駄目だ。お・落ちる)
ぐったりする播磨。
「播磨!大丈夫か?今私が人口・・・」
起き上がる播磨。
「ふ、危なかったぜ。あと十秒遅かったら本当に落ちてたぜ・・・」
「だ・騙したな?播磨」
「騙してねえよ。落ちかけてたのは本当だからな」
自分の席に座る播磨。場の空気がさらにピリピリしたが播磨は気付かない。
「播磨さん、コレ食べませんか?」
八雲が播磨におにぎりを勧める。
「ワリイ、今はそんな気分じゃ・・・」
「可哀相に播磨君。誰かさんのせいで食欲が無くなったじゃない」
「あ・・・、ま・沢近のじゃ息苦しくならないもんな。悪いねデカくて」
コ・コエーよこの二人。
「二人共、せっかくの旅行なんだからケンカは止めてくれ」
「ま・播磨が言うなら・・・」
「そうね、播磨君の言う通りね」
場の緊張感がさらに緊迫する。
「く・・・こうなったら。本当は夜にでもとっておきたかったが・・・まあいい。播磨主催第一回王様ゲーム!ルールは知っての通り。基本的には命令に従う事な!」
こうして波乱の教師公認(許したのか?)王様ゲームが始まった。

「王様誰だ?」
「どうやら私のようだな」
最初の王様は絃子になった。
「ふむ、拳児君は私の隣に来る」
「あの・・・絃子さん?ルールは・・・」
「では、六番が十二番に十秒間アイアンクローを決める」
憂さ晴らしのつもりがまさかこうなるとは思ってもいなかった。
「私ガ六番ダ」
「俺・・・十二番・・・」
六番がララ。十二番が播磨となった。
「デハ行くゾ・・・」
「ああ、一思いにやってくれ・・・」
播磨にアイアンクローを決めるララ。
「ぐぉぉぉぉぉぉ・・・、き・効いたぜ」
こめかみを押さえながらふらふらと自分の席に戻る播磨。
「よ・よし、次だ」

「王様誰だ?」
「やったー、今度は私だ。じゃあ・・・二番が七番に十秒間抱きつく」
トラブルキング天満。これにより播磨は更なる苦難?を味わう事となる。
「俺・・・七番・・・」
「アラ、ごめんなさい絃子先輩。私が二番です」
葉子が二番。播磨が七番。普通ならオイシイ場面であろうが・・・
「私が播磨君に抱きつく・・・」
顔を赤くする葉子。殺気を感じるのは気のせいではない。
「じゃあ行くね、播磨君」
播磨に抱きつく葉子。しかし、十秒経っても離れようとしない葉子。
「そ・その・・・もう十秒・・・」
「いいじゃない。減るもんじゃないし・・・」
「俺の寿命が減ります・・・」
まさにその通り。それを聞いた葉子は播磨を離す。
「か・体に悪い・・・。よし、次だ」

「王様誰だ?」
「どうやら私のようダナ」
今度はハリーが王様のようだ。
「おいハリー、頼むぞ。お前はニュータイプなんだろ?」
「違うナ。私はナイト・・・。デハ・・・十番ガ一番ニ十秒間コブラツイストを決めル」
「十番は私です」
「・・・俺・・・一番」
技をかけるのが一条でかけられるのは播磨。
「あ・・・あの・・・」
「一気に決めてくれ」
播磨の目に涙が浮かんでいるのは気のせいではない。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・、た・耐えた・・・な・何とか生きて・・・た。つ・次だ・・・」

「王様誰だ?」
「俺か・・・さて」
今度の王様は麻生となった。
「まあ軽めに行くか。三番と九番の席を交換。これなら誰も被害は・・・」
「僕が三番だ」
「俺が九番・・・って・・・マジ?」
結果的に花井がA席。播磨がB席に移ることとなった。
「ありがとうね、麻生君」
「麻生、お前・・・」
「俺に文句を言われてもな」
その後も何故かバツゲームは播磨一人に集中して播磨が力尽きたため、第一回播磨主催王様ゲームは終了した。



温泉旅行編前半です。
思えば播磨の苦難はココから始まったような・・・・・・

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.4 )
日時: 2005/09/26 23:44
名前: ACE

何とか無事に(一名除き)目的の駅に到着した一行。
「ここに、送迎バスが・・・おっ、あったあった」
バスには『播磨御一行様』と書かれていた。
「あれだな、皆乗ろうぜ」
バスに乗る面々。
「席は適当に座っててくれ。俺は・・・ここで寝る・・・」
「では拳児君の看病は私が・・・」
「あらあら〜、私がハリオの看病しますよ」
「・・・、イヤ・・・だからその・・・ハリー、一緒に座ろう」
無理やりハリーの隣に座る播磨。
「ナゼ私の隣なんダ?」
「お前が一番妥当だからな」
「そうカ。まあいいだろウ」
「じゃあ、俺は寝るから」
眠りにつく播磨。

「ん・・・ん?俺・・・寝てたのか。・・・?何でこうなってるの?」
いつの間にか隣はララになっていた。
「起きたカ」
「何でお前が隣に?」
「ハリーと交換シタ。他の女でハ騒ぎになるから私になっタ」
「そうか、助かった」
バスが目的の旅館に到着する
「おー、着いた着いた」
「ようこそとう旅館へ。播磨様御一行でございますね」
「ああ、そうだけど」
「部屋にご案内させていただきます。お荷物はこちらに」
荷物をロビーに置いて、案内について行く一行。
「こちらが部屋でございます」
感嘆の声が漏れる。
「す・すげー部屋・・・」
「何かわからないことがありましたらばいつでもスタッフにご相談くださいませ」
部屋を出て行く仲居。

「さてと・・・俺はチョット疲れてるから寝る」
「まて拳児君。せっかく温泉に来たんだ、せめて入ってからにしてはどうかね?」
「んー。それもそうか。じゃあ先に俺は温泉に入って来る。・・・いや、先に男共で行った方が良いな。行くぞお前ら」
男達を引き連れて風呂場に向かう播磨。

脱衣所にて。
「なー、どうして俺たちだけなんだ?俺はどうせならミコちんと・・・」
「どうせお前は覗くつもりだろ?」
「なんだよ花井。お前だって八雲ちゃんの見たいくせに」
「な!!それは・・・男・花井春樹。断じてそんな事は・・・」
「そんな事をするのカ?」
「分かってないなハリーは。コレは日本の伝統行事なんだ。ホラ・・・郷に入っては郷に従えって言うことわざもあることだし・・・」
「使い方が間違っているぞ。それに覗きは伝統行事では無いし、犯罪行為だ」
「なあ、そんな事よりも早く入ろうぜ。俺さみーよ」
「そ・そうだな。ここでこんな事をしていても仕方ない」
「な・なんだよ、こんな事って!」

温泉につかりながら
「やっぱ温泉はいいな。体が暖まるぜ」
「ふむ、そうだな。やはり温泉はいい」
「コレがオンセンか・・・」
「あーあ、これで隣にミコちんがいたらな・・・」
「またそれか・・・」
「花井だって八雲ちゃんが居たほうが良いだろ?」
「そ・それは・・・そうだが」
「ほらやっぱり」
「それなら二回目以降を一緒に来ればいいだけだろ?」
「播磨!キサマ・・・」
「なんだよ、お前だってそうしたいんだろ?」
「う・・・」
「よーし決定。次はミコちんと・・・」
「八雲君・・・」
自分の世界に入ってるコイツらは置いておいて。
「そうだ烏丸」
「何?」
「お前さ、付き合ってる奴とかいるのか?」
「いや、居ないけど」
「じゃあさ、お前は塚本の事どう思う?あ・妹さんのほうじゃないぞ」
「塚本さんはいい人だと思うけど、それがどうかしたの?」
「いや、それならお前、塚本と付き合ったらどうだ?」
なんと播磨自ら天満の恋を後押しした。まあ記憶が無いからだと思うが・・・
「僕と塚本さんが?でも塚本さんは・・・」
「いや、塚本は絶対お前が好きだ。お前はどうなんだ?」
「僕も多分塚本さんの事が好きなんだと思う・・・」
「じゃあ、お前から告白してやれって。絶対上手くいくし、お前のためにもなるって」
「で・でも・・・」
「俺がセッティングしてやるから。な?」
「播磨君はいいの?僕と塚本さんが付き合っても」
「なんで俺に聞くんだ?」
「だって、君は塚本さんの事が好きだったんじゃ・・・」
「うーん、正直記憶がないからな。それに俺が塚本の事を好きだったとしても、塚本の幸せを考えるとそれが一番良いんだ」
「そう・・・じゃあお願いするよ」
「おおそうか。お前達も協力してくれよ」
「まあそう言うことならば僕も協力しよう」
「フ、いいだろウ」
「俺も協力はするが・・・」
「そうか、麻生もサラちゃんとの仲を取り持って欲しいんだな?そうかそうか、お前は不器用みたいだからついつい冷たくなるんだろ?俺に任せろ」
「お・おい・・・俺は・・・」
「安心しろ。サラちゃんはお前の事が好きだ。お前から告白してやれば泣いて喜ぶって」
「だから・・・」
「お礼は気にするなって。お前達が幸せになればそれでいいから」
「く・・・もういい」
「そうかそうか、それは良かった」
播磨拳児・恋のキューピッド。
播磨拳児・自爆王。
「ハ・ハリマ、頭がフラフラしてきたんダガ・・・」
「なんだハリー、もうのぼせたのか。しかたない、上がるか」

浴衣に着替えた男達は部屋に戻る。
「結構いい湯だったぜ。お前達も行って来いよ。荷物は俺たちが見ててやるから」
「それでは拳児君の言葉に甘える事にしようか」
風呂に向かう女性陣。
「さてと、どうやって告白のタイミングを作るか・・・やっぱりみんなの協力が必要だな」
「それはいいが、具体的には何か有るのか?」
「それは任せろ。ここは向こうと違って空気がすんでるから、夜の星はすげえ綺麗なんだ。そんな状況での告白なら誰も嫌な気分にはならないだろ?」
「ソレハ言えてるナ」
「播磨にしちゃかなりいい考えだな」
「ま・いまの発言は無視して、どうやって呼び出すかだ」
「素直に自分で行けば良いんじゃないか?」
「分かってねえな。誰が呼んだか分からないほうがドキドキしてくるだろ?」
「素直に手紙で呼び出すのはどうだ?」
「でも、どうやって目標の相手だけに渡す?その方法だと確実性が無い」
「それなら他の奴にも協力してもらえばいいじゃん」
「それも考えたが、それだと何かぎこちなくなってかえってやりにくくなると思うんだが」
「なあ、偶然を装って二人きりになるのはどうだ?それなら直前まで誰にも知られないし・・・」
「麻生・・・お前やっぱりサラちゃんと・・・」
「ああそうだよ!悪いか?」
顔を真っ赤にする麻生
「いや、こういうときは自分の気持ちに正直にならないとな。よし、それで行こう。それなら何とかなりそうな気がする。この話はもう終わりだ。後は実行するだけだ」
播磨のドキドキ告白大作戦の作戦会議はこうしてあっさり終わった。

風呂から女性陣が戻ってくる。
「お・戻ってきたか。あそこに何故かカラオケがあるから、チョット早いけど宴会を始めようぜ」
「それはいい提案ねハリオ。でもお酒は程ほどにね(許すのか)」
ここで教師公認(許したんだ・・・)宴会がスタートした。
「さてと、最初は俺が歌うぜ。曲は・・・スクラ○ブル!」
この面子ならばこの曲になるだろうが・・・お前が歌うのか?それよりは・・・
「まって播磨君。それは私が歌うわ!」
播磨を制して愛理が歌いだす。まあ当然だろうが・・・(ネタです)
そして愛理が歌い終わる。
「ありがとう!」
「いや、沢近は上手いな。次は誰だ?」
次々と曲を入れていく面々。
「なあ播磨。次、私とデュエットしようぜ」
「ん?俺とか?やめておくよ。周防は一人で歌った方が上手いって」
「残念ね美琴。私とどう?」
「んー、誰ともデュエットはやらねえわ」

宴会(酒抜き)が続く中、夕食が部屋に運ばれてくる。
「お・飯か。食おうぜ」
豪勢な料理が並ぶ。
「じゃあ・いただきます!」
宴会(酒有り)がスタートする。
「これハどうやって食べるんダ?」
「ああ、それは尾頭付きっていってな。刺身と同じだよ」
「そうカ。アリガトウ」
「良いって、気にするな。お前も飲め」
ハリーに酒を勧める播磨。
「播磨!高校生のくせに酒など・・・」
「花井も飲め。だって、みんな飲んでるぞ?」
すでに殆どの面々が酒盛りを始めていた。
「ほらな?お前も飲んで妹さんにいいところを見せろって」
「!!そうか。よし」
コップを持って立ち上がる花井。
「一番、花井春樹。一気飲みをします!!」
コップのビールを一気に飲む花井。
「よくやった花井。よし、二番、播磨拳児行きます!!」
一気に飲み干す播磨。
「ああ、ハリオはお酒に弱い・・・え?どうして」
「それが、何故か酒に強くなってしまったのだよ」
夕食(というより宴会)が一段落する。

「さーて、皆が潰れる前に風呂に行こうぜ?」
播磨の提案に皆が頷く。

播磨の提案によって、全員で風呂に入る事となった。
「ミコちん・・・」
「でもよ、今鳥。他の客もいるんだし・・・」
何故か男湯には播磨達しか居なかった。
「ま・こういう事もあるか・・・」

早速露天風呂へ行く今鳥。それを追う花井。
「走るなって、ガキじゃないんだしよ」
「フ、それが若さと言うものサ」
「いや・・・同い年だろ?」
ソコはツッコんじゃ駄目だよ・・・
「ま・・・精神年齢は違うと思うが」
麻生まで・・・ま・そうだけど。

本日二度目の入浴。
「さっきは時間も早かったから分かったけど、この時間に俺たちだけってのはな・・・」
「いいじゃんそれで、この方がやりやすいし」
「でも向こうは分からんぞ?」
「そうか・・・ミコちーん!」

ここで少し時間を戻して女性陣のほうを覗いて見よう。
「さてと、今度は念入りにしないとな・・・」
「そうですね。今日はハリオと・・・」
「あらあら二人共、駄目ですよ。そんなあからさまに言っちゃ」
隠してならいいのか?
「ふむ、それもそうか」
大人の女は恐い。一方高校生組は。
「ねえ、早く入ろうよ」
「ちょっと待ってろ塚本。まだ下着を・・・」
「そうよ天満。だいたいアナタ、ちゃんと畳みなさいよ」
「うう・・・分かったよ」
女性は男と違って時間がかかるのである。

そして、ちょうど露天風呂に入った時に
「ミコちーん!」
「何だ?今鳥か」
「ど・どうしたんですか?今鳥さん」

「アレ?何で一条が」
「一緒なんだろ?」
「そうか、まあいいや。そっちに他の客はいるか?」

「アイツ・・・絶対覗く気だな・・・」
「フン、私ガ成敗してヤル」
「待って下さい。まだそうと決まったわけじゃ・・・」
「いや、絶対アイツは覗く気だ」
「ただ、お話したいだけかもしれないですし・・・」
弥勒菩薩一条かれん。
「こ・こっちは私たちだけです!」

「アレ?また一条だ。でも他の客はいないみたいだな。実行する絶好の状況だ」
「待て今鳥。本当に・・・その・・・覗くのか?」
「お前だって見たいだろ?花井」
「ぐ・・・見たいけど、それはいけないことで・・・」
「お前らが覗きに行くのは勝手だけどよ、死ぬぞ?間違いなく」
「分かってねえな播磨は。コレは男のロマンなんだ!でも・・・塀が高いな」
「肩くらいなら貸してやるぞ」
「よし播磨!頼む」
今鳥を肩に乗せる播磨。

しかし今の会話は殆ど女湯に筒抜けであった。
「アイツ・・・やっぱり来る気か・・・」
「任せろミコチン。私がヤル」
「だ・駄目ですよララさん」
「コラコラ君たち。今はせめて桶にしておきなさい」
「それもそうか・・・よし・・・」

「播磨、早くしろ」
「そうは言っても結構この体制は・・・ぐぐぐ」
播磨が今鳥を持ち上げる。
「よし、これで・・・ぐはっ!」
今鳥の顔面に見事桶がヒットする。
ドバァァァァァン!
見事なダイブを決める今鳥。
「ま・コレが現実だな」

「見事だナ、ミコチン」
「だからな、ミコちんは止めてくれ」
「分かった・・・デモ名前を知らナイ」
「周防美琴。周防でいいよ」
「宜しくナ、スオウ」
「よろしく、ララ」
女の友情が生まれた。

「く・俺は諦めないぜ」
「そんなに覗きたいのか?」
「勿論だ!」
「そうか、それじゃあ確実に覗ける方法があるって言ったらどうする?」
「やってくれ!」
「でも、俺に文句は言うなよ」
「ああ!」
「そうか、じゃあ俺の手に乗れ」
しゃがんで今鳥を手に乗せる播磨。
「コレで、どうするんだ?」
「俺が合図したら一気に上れ」
「分かった」
「行くぞ・・・今だ!」
「よし!」
播磨の合図とともに一気に塀を登る今鳥。同時に播磨は今鳥を押し上げる。

ドバァァァァン!!
本日二度目のダイブ。今度は女湯
「イテテ、アイツ・・・」
「ほう、今鳥。ずいぶんと大胆だな」
指をバキバキと鳴らす美琴。
「遺書ハ書いてきたカ?」
「ま・待ってくれ。これは・・・」
「待って下さい二人とも。今鳥さんだって・・・」
「一条・・・お前」
「今鳥さん、今返してあげます」
「え?一条!」
今鳥を持ち上げて男湯に投げ飛ばす一条。

ドバァァァァン!
今鳥、本日三度目のダイブ。
「お・帰ってきたか」
「は・播磨・・・お前騙したな?」
「いや、俺の計算通りだ。一条に助けられたんだろ?」
「な・どうしてそれを・・・」
「一条ならお前を助けるのは分かってたからな。あの状況でもお前を庇ったろ?」
「あ・ああ。でも何で・・・」
「分かってるんじゃないか?お前は」
「け・けど・・・なんで俺なんだよ。それに俺はミコちんが・・・」
「本当に好きなのか?別に胸が全部ってワケじゃないだろ。ま・本人に聞かれたら殺されると思うが、周防より一条のほうがよっぽど可愛いんじゃねえか?あ・外見的なものじゃなくて性格のほうがな」
播磨、お前は多分助かる。
「そ・それは・・・」
「確かにそれはいえてるな。周防は男っぽいところがあるからな」
花井、お前は助からない。
「それにお前だって本当は一条の事・・・」
「な・なんで俺があのアマレス女の事・・・いつもバカみたいに練習して、女なのに力持ちで・・・」
「それは・・・、周防も同じじゃないか?アイツだって確か何か武道をやってたろ?」
「そうだ。僕と同じ道場だ」
「それにお前はずいぶんと一条の事見てるんだな?周防よりも知ってるんじゃないか?」
痛いところを付かれる今鳥。
「で・でも俺はDが・・・」
「お前も麻生みたいに正直になれって!」
「待て!何でそこで俺が出てくるんだ?」
顔を真っ赤にして立ち上がる麻生。あ・タオルが・・・
「まあ・気にするな。それよりもタオル落ちてるぞ」
「く・・・」
大人しく湯船につかる麻生。
「今鳥、お前は一条が嫌いか?」
「べ・別に嫌いって分けじゃ・・・」
「じゃあどこが駄目なんだ?一条は周防と違って凶暴じゃないし」
「それは言えてるな。あいつはすぐにカッとなるところがあるからな、はっはっは!」
「でも一条は胸が・・・」
「いや、アマレスやってるから取った栄養が全部消費されてるだけで、アマレス止めたら意外にデカくなるんじゃないのか?もともとスタイルは良いみたいだしよ」
「う・・・」
「な?それでも一条が嫌か?」
何かを決意する今鳥。
「播磨・・・どうすればいい?」
「何を?」
知ってて聞き返す播磨。
「そ・その・・・一条の事だよ」
「それでいいんだよ。簡単だ、お前から告白すれば上手くいく。風呂を上がったら誘ってみろ、さっきのお礼がしたいって」
「わ・分かった」
「それにしても播磨。お前・・・なんでそんなに他の奴の心配ばかりしてるんだ?」
「何でだろうな?でも見てて可愛そうだろ?」
「なら播磨。僕と八雲君の・・・」
「それはムリ。だってお前の場合は一方的な片思いだし」
「そ・そんな・・・」
「私ハ、そろそろ上がらせてもらウ」
「そうだな、ずいぶんと長くなったもんな」
露天風呂を後にする男達・・・


少しばかり長すぎた風呂を上がる男達。
「よし、今から早速一条にアタックだ」
「な・マジで?いくらなんでもそれは・・・」
「イヤダメだ。お礼はしっかりとしないとな。それにちょうどいいチャンスじゃないか」
「わ・分かったよ。でもどうすればいい?」
「俺に任せておけ!お前はそこの休憩所みたいなところで待ってろ」
「あ・ああ」

部屋に戻る男達(今鳥抜き)
「さてと、あ・一条!今鳥がお前の事呼んでたぞ」
「え・今鳥さんが私を?」
「ああ、風呂の近くの休憩所にいるから行ってみな」
「ハ・ハイ!」
部屋を出て行く一条。
「じゃあ、俺もちょっとトイレ」
一条の後を追って部屋を出る播磨。

ばれないように尾行する播磨。そして目的の場所で二人の様子をうかがう。
「あ・あの・・・」
「き・来たか。その・・・さっきはサンキューな」
「い・いいえ、私はただ・・・」
「本当に助かったぜ。一条のおかげでさ。で・でだな・・・」
固まってしまう今鳥。
(アイツ、何やってんだよ。ホラ、行け!今がチャンスだ!)
今鳥にGOサインを出す播磨。
(くそっ、播磨の奴、人事だと思って・・・)
「あ・あの・・・今鳥さん?大丈夫ですか?」
「ああ・でも一条はどうして俺の心配をするんだ?」
(バカヤロウ、今鳥の奴、何てこと言ってんだ)
「それは・・・その・・・私・・・・・・」
うつむく一条。
(一条・・・俺がバカだったぜ。サンキューな播磨)
「一条!」
「は・はい・・・」
「そ・そのよ・・・俺と付き合ってくれ!」
「・・・・・・」
固まる一条。
「一条?」
(播磨の奴、一条固まっちまったじゃねえか)
「いちじ・・・」
「今鳥さん・・・今の言葉・・・もう一回言って下さい」
「俺と付き合って・・・?」
泣き出す一条。
「一条?な・泣くなって・・・」
「ゴ・ゴメンなさい・・・私、うれしくて・・・」
「一条・・・」
「そ・その・・・名前で呼んでください・・・」
「・・・か・かれん・・・」
「は・はい!今鳥さん」
「そのよ、俺の事も名前で・・・」
「え・・・き・恭介さん・・・」
(よし、今だ今鳥。一条を抱きしめろ!)
再び今鳥に指示を出す播磨。
それにしたがって一条を抱きしめる今鳥。
「恭介さん・・・うれしい・・・」
抱きしめ返す一条。(本気で)
「ぐぉぉぉぉぉ・・・か・かれん・・・お・折れる」
「ご・ごめんなさい!」
「いや、気にするなってかれん」
「恭介さん・・・」
見詰め合う二人。
「さて、俺はここで退散するか」
部屋に戻る播磨であった。

「よーやってるか?」
部屋に入って最初のセリフがこれである・・・
「二人ハ上手くいったカ?」
「そりゃもちろんOKだったぜ、俺のおかげでな。さあて、俺も飲むかな」
麻生の隣に座って飲み始める播磨。
「なあ播磨・・・」
「安心しろ麻生。お前の事はもう考えてある。その為にも少しでも飲んでおけ」
「そうか・・・それじゃ・・・」
酒を飲む麻生。
「さてと、次は・・・」
その時部屋に今鳥と一条が入って来る。
「皆に話がある!俺・今鳥恭介は一条かれんと付き合います!!」
ざわつく女性達。

「あ・あの・・・播磨さん。ありがとうございました」
「気にするなって、俺は背中を押してやっただけだからな。それよりも今鳥と一緒に飲んで来い」
「はい!」
今鳥の所へ行く一条。
「さて・・・麻生」
「何だ播磨」
「今ので何杯目だ?」
「三杯目だが・・・」
「よし・・・」
麻生に耳打ちする播磨。
「気持ち悪くて吐きそうなフリして、サラちゃんと一緒に中庭で酔いを覚ますフリをして告白して来い」
「な・そんなうまく・・・」
「行く・・・安心しておけ、今鳥だって成功したんだから」
「そ・そうだな・・・うっ・・・吐きそう・・・」
口を押さえて気持ち悪そうにする麻生。
「大丈夫か麻生。サラちゃん、悪いんだけどコイツの酔い覚ましに付き合ってやってくんねーか?」
「ええ、私はいいですよ。大丈夫ですか?麻生先輩」
「あ・ああ・・・確か中庭があったはずだからそこで夜風に当たりたい」
「分かりました。中庭ですね?」
麻生に肩を貸して部屋を出て行くサラ。
「さて・・・またトイレに行ってくるわ」
サラの後をつける播磨。

サラに気付かれないように慎重に尾行する播磨。
二人が中庭に着くのを確認すると、二人が良く見える位置に待機する。
「大丈夫ですか?麻生先輩」
「ああ、少し楽になったよ。悪いな、こんなのにつき合わせて」
「いいですよ私は。それよりも先輩が・・・」
(く・・・何か悪い事してる気がしてきた・・・)
立ち上がって少し歩く麻生。
「先輩、まだ・・・」
「いや、大丈夫だ。どうして俺をそんなに心配するんだ?」
(麻生のバカヤロウ。そんな事言ってどうするんだ)
「だって、私と先輩の仲じゃないですか!」
「そうだよな・・・同じバイトだしな・・・」
「違います。そう言うことじゃなくて・・・私は先輩事をいい人だと思ってますよ?」
「そうか、俺もサラの事は嫌いじゃない」
(バカヤロウ・・・そこは俺はお前が好きだって言うところだろうが・・・な・何か良い手は無いか?お・・・アイツは)
播磨の目線の先には野生のフクロウがいた。
(オイ、そこのお前・・・)
(・・・、何だ人間)
(お前に頼みがある)
(どうして私が人間の頼みを聞かなくてはいけない?)
(た・たしかに・・・それじゃ肉をやろう。それも牛だ)
(肉か・・・)
(そうだ。それにお前が普段食ってるネズミとは違ってとろけるように美味いぞ)
(・・・いいだろう。で・何をすればいいのだ?)
(金髪の方の女の子を襲って欲しい。でも怪我はさせるなよ。恐がって振り払ってきたらすぐに逃げるんだぞ!)
(分かった。では行くぞ)
サラに向かって飛ぶフクロウ。しかし二人揃ってフクロウの接近に気付かない。
(し・しまったぁ。フクロウの羽ばたきは殆ど無音だったぁ!)
フクロウがサラに襲い掛かる。
「え・イ・イヤー!」
「大丈夫かサラ!」
サラを庇うようにして抱き寄せる麻生。約束通りに飛び去っていくフクロウ。
「大丈夫か?サラ」
「は・はい・・・って、先輩?」
抱きしめられている事に気付くサラ。
「そ・その・・・」
(麻生、もっと強く抱きしめろ!)
麻生にもっと強く抱きしめるようサインを出す播磨。
「サラ・・・」
サラを更に強く抱きしめる麻生。
「え・・・先輩?」
(よし、今だ!告白しろ)
播磨は麻生に告白の指示を出す。
「サラ・・・俺はお前の事が嫌いじゃなくて・・・す・好きなんだ」
「ほ・本当ですか?先輩」
「嘘でこんな事は言わないさ」
「先輩・・・私も先輩が・・・」
お互いに抱きしめあう二人。
その様子を見た播磨は
「さてと、戻るか。・・・冷えるな」

播磨が部屋に戻ると宴会はさらにヒートアップしていた。ちなみに現在時刻は約九時。
「えっと・・・お・残ってた。これ貰ってくぞ?」
肉を持って部屋を出る播磨。
途中で二人に会う。
「よ、お二人さん。仲良くな」
「は・播磨!」
「いいだろ別に。じゃあ俺は用事があるから、じゃあな」
二人と別れ、中庭に着く播磨。
「さて・・・いるか?」
播磨の頭の上に乗ってくるフクロウ。
「ホレ、食え」
フクロウに牛肉を渡す播磨。
(コレが牛なのか?ずいぶんと小さいが・・・)
「これでも高級なんだ。文句は食ってから言ってくれ」
牛肉を食べるフクロウ。
「どうだ?」
(美味いな。人間はいつもこんなに美味い肉を食べているのか?)
「イヤ、本当にたまにだよ。ここまで美味い肉はな。ま・人間もフクロウも肉の好みはあまり変わらんって事か。今日は助かったぜ」
(礼を言うのは私のほうだ。あんな事でこんなに美味い肉を貰って)
「そうか、それは良かった。元気でやれよ、じゃあな」
飛び去っていくフクロウ。
「さてと、残るは烏丸と塚本だけだな」
播磨拳児自爆まであとわずか・・・

部屋に戻る播磨。そして烏丸の隣に座る。
「さて、烏丸。お前は酒は強いほうか?」
「うん」
「よし、それじゃ軽く飲みつづけてろ」
「うん、分かった」
「さて、ここが今日一番の正念場だな」
いつもの四人組+八雲・花井・ハリー・ララ・烏丸・さっきのカップル二つ(以降高校生組みと表記)が集まっている所に行く播磨。
「ほら、飲むぞ。皆もっと飲めって、めでたいんだからよ」
「私?私はもう良いよ。これ以上は・・・」
「私も遠慮しておくわ」
「私もこれ以上は・・・」
「わ・私も・・・」
「なんだ、せっかく楽しく飲もうと思ってたのによ・・・」
「播磨、飲もうぜ!」
「私も飲むわよ。美琴に負けてられないわ」
「わ・私も飲みます」
「私は・・・」
「飲むよな?高野」
「う・うん・・・」
高野晶本当は下戸。
「よし、みんなグラスは持ったな。それじゃあ、今鳥と一条。麻生とサラちゃんの明るい未来に乾杯!」
「乾杯!」
一気にビールを飲み干す播磨。
(さて、どうするか・・・酒に強いのが多いな・・・こうなったら)
「俺、酒貰ってくるわ」
厨房に向かう播磨。

「スミマセーン・・・」
「どうかしましたか?」
「あの・・・酒の追加が欲しいんですけど」
「ビールでよろしいでしょうか?」
「イヤ、出来ればもっと強い酒が欲しいんですけど」
「強いのはこれだけしかありませんが・・・」
『鬼祓い』アルコール度数四十三、五度。強すぎないか?コレ
「コレ、もって行って良いですか?」
「ええどうぞ。でも強いですからほどほどに」
「分かってますよ」

鬼祓いという切り札を持って部屋に戻る播磨。
「さてと、最初の標的は・・・教師から攻めるか」
教師三人組の近くに座る播磨。
「おお、飲んでますね三人とも。ホラ、もっと飲んで飲んで」
三人のコップに鬼祓いを注いでいく播磨(自分にはビール)。
「じゃあ乾杯!」
乾杯して一気に飲む四人。
(どうだ?まだダメか。こうなったら)
「じゃあもう一杯」
また三人のコップに鬼祓いを注ぐ播磨。
「やっぱり、酒に強い人は尊敬するぜ」
それを聞いた三人は一気に飲み干す。
(さすがにこれで大丈夫だろ。次は・・・)
次の標的は高校生組。
「さて、今日はめでたい日なんだから、もっと飲め」
自分から注いで行って、天満の所で空になる(というかした)
「ワリイ、もう無いわ。お前達はこっちだ」
烏丸と天満にはビールを注ぐ播磨。
「じゃあ、乾杯!」
一気に鬼祓いを飲む播磨。見ると、他のメンバーのコップも空になっていた。
(さ・さすがにコレはきつい・・・って分けでもねえな)
そして、次々とダウンするメンバー。辺りを見回すと播磨と烏丸以外は全員酔いつぶれていた。
「さてと、とりあえず準備はOKだな。烏丸、中庭で塚本に告白しろ!」
「うん、そうするよ」
「俺も寝たフリをしててやるから」
「ありがとう」
「いいって」
寝たフリをする播磨。それを確認した烏丸は天満を起こす。
「塚本さん、塚本さん」
「う・うーん・・・え?烏丸君?」
「話が有るんだ。ついて来てくれない?」
「う・うん・・・」
部屋を出て行く二人。
「さてと、俺も行くか」

二人の後を追う播磨。
一言も話さないまま中庭に着く二人。
「塚本さん・・・夜空が綺麗だね」
「う・うん・・・」
「今日は塚本さんに大切な話があるんだ」
「な・何?」
「僕は塚本さんと一緒の時間が楽しいんだ。塚本さんの作るカレーも美味しいし」
「私も・・・烏丸君と一緒だと楽しいよ・・・」
「僕と・・・付き合ってくれないかな?」
「え・・・ほ・本当に?」
「うん、もっと塚本さんと一緒に居たいし、もっと塚本さんの笑顔が見たいんだ・・・ダメかな?」
「ゆ・夢じゃないよね」
「これは現実だよ、塚本さん」
「本当に私なんかでいいの?烏丸君」
「塚本さんじゃなくちゃダメなんだ」
「・・・宜しくお願いします」!」
「ありがとう、こちらこそ宜しく」
烏丸に抱きつく天満。烏丸も抱きしめ返す。
その光景を見ていた播磨は
「烏丸は他のヤローと違って手間がかからなかったな・・・え?何で涙が出てるんだ?多分感動したんだな・・・もう少し飲むか」
部屋に向かってゆっくりと歩き出す播磨。



温泉旅行告白編でした。
おそらくこの辺りが一番の自爆所でしたね・・・

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.5 )
日時: 2005/09/26 23:45
名前: ACE

部屋に向かって歩く中
「そういえば、他の奴らは酔いつぶれてたんだったな。確か・・・二日酔いにはラーメンが効いたはずだったような。頼んでくるか」
目的地を部屋から厨房に変更する播磨。

「あのー、すいません」
「あ・どうかしましたか?」
「ラーメンが欲しいんですけど、大丈夫ッスか?」
「ええ大丈夫ですよ。一つで良いですか?」
「いえ、十七個頼みます」
「十七個ですね?二十分ほどでお届けいたします」
「そうっすか、どうも」

部屋に戻る播磨。
「ま・予想していたとはいえ、この光景はな・・・さて、起こしていくか」
花井から起こすことにした播磨。
「おい、花井。起きろ・おい、起きろ!」
「・・・ヤクモン・・・」
「ダメだコイツは・・・じゃあ、おい麻生!起きろ」
「ん・・・なんだ?くっ頭が・・・」
「起きたか。お前はサラちゃんを起こしてくれ」
「あ・ああ。それはいいが、俺たちに何を飲ませた?」
「ん?ああそれはな・・・コレだ」
鬼祓いの瓶を見せる播磨。
「な・・・強すぎだろ・・・」
「ま・コレのおかげで誰の邪魔も入らなかったんだ。結果オーライだろ」
「ま・そうだな」
「じゃあ、頼むぞ」
麻生はサラ、播磨は今鳥をそれぞれ起こしに行く。
「おい、今鳥。起きろ」
「な・なんだ、播磨か。何だよ」
「何でもいいから、お前は一条を起こしてくれ」
「あ?分かったよ」
教師三人組の所へ行く播磨。
「この三人がここまでとは・・・飲ませすぎたな。おい、絃子さん。起きてくれ」
ゆすってもなかなか起きない絃子。
「ダメか、無反応だ。じゃあ、お姉さん起きて」
妙をゆするが起きない。
「こっちもダメか。笹倉先生、起きて」
葉子をゆする播磨。
「ん・うん?播磨君・・・」
播磨に抱きつく葉子。バランスを崩した播磨は結果的に葉子を押し倒す形となった。
「な・ちょっと!」
ちょうど絃子と妙が目を覚ます。
「ん・・・拳児君?」
「ハリオ?」
「いや、待ってくれ。コレは事故だ・・・な?笹倉先生」
「え?その、こういうのはもっと人気の無いところで・・・」
なんて事を言って顔を赤くする葉子。
「ち・ちょっと待て、何言ってんだよ」
「拳児君・・・コレはどういうことかな?」
「ハリオ、覚悟は出来てる?」
「く・・・くそっ!」
葉子を無理やり引き剥がす播磨。
「はあ・はあ・・・話は全員が起きてからにしてくれ」
高校生組の所へ行く播磨。どうやら烏丸と天満はすでに戻ってきていて、他の人を起こしていた。
「お・起きてるか、あとは・・・ハリーとララだけか」
ハリーを起こす播磨。
「ハリー、起きろ」
「ん・ナンダ、もう朝カ?」
「いや、さてと・・・残るララか」
ララをゆすって起こす播磨。
「ララ、起きろって」
「ん・・ココハ・・・!!」
「な!」
播磨の顔面を殴るララ。殴られた播磨は三メートルほど吹っ飛ぶ。
「な・何をするんだよ」
「お前こそ、何をしようとしていタ」
「ただ、起こしてただけだよ・・・も・もうだめ・・・だ」
気絶する播磨。

「ん・・・えっと、俺は確か・・・」
「さっきハ、すまなかッタ」
播磨のそばにはララがいた。
「いや・・・それは別にいいんだけどよ・・・どれくらい寝てた?」
「ほんノ、一・二分ダ」
「そうか・・・さてと、飲むか」
一人酒盛りを始める播磨。

「さて・・・さっきはどうして泣いたんだろうな。でも烏丸の言った事を考えるとな・・・一人で考えても仕方ねえな」
高校生組−烏丸・天満の所へ行く播磨。
「なあ、一つ聞いていいか?妹さん」
「な・何ですか?播磨さん」
「俺が・・・ああ、記憶を無くす前の話な。俺が好きだったのはお姉さんだったのか?」
「え・・・」
「沢近は分かるか?」
「そ・その・・・」
「じゃあ周防は?」
「だ・だからよ・・・」
「じゃあ高野」
「・・・・・・ええ、そうよ」
高野に非難の声が集まる。
「まて、もうすんだ事だし、この結果が一番良かったんだ。ま・失恋って言ってもあんまり実感は無いからな」
また一人酒盛りを始める播磨。
「お・おい、播磨。飲みすぎだって」
「いや、大丈夫だ。一応失恋したんだから酒くらい飲ませろ」
「播磨・・・」
「何でお前が落ち込むんだよ。お・来たか」
部屋にラーメンが運ばれてくる。

「ああ、俺が頼んだんだ。酔い覚ましにはラーメンが効くからな。食おうぜ」
それぞれラーメンを食べ始める面々。
「美味いな、このラーメン」
すぐにラーメンを食べ終える播磨(所要時間二分ほど)
「じゃあ、俺は風呂に入って来るな」
一人風呂に向かう播磨。

「何か一人になりたい気分だぜ。やっぱり塚本の事が好きだったんだな、俺は」
ボーっとした頭で露天風呂まで向かう播磨。
「なんだか風呂にばかり入ってる気がするぜ。まあ・温泉に来たんだから普通かもしれないがな」

湯船につかってからどれくらいの時間が経ったであろうか
「ふう、さてと・そろそろ上がるか・・・?」
露天風呂に誰かが入って来る。
「そりゃあ、他の客もいるか・・・な・・・」
入ってきた客は何と女。
そう、播磨は女湯に入っていたのだ。ああ、お決まり。
「や・ヤバイ・・・女湯に入ってたのか・・・とりあえず隅っこでチャンスを・・・」
「播磨の奴、まだ入ってるのかな?」
「会わなかったから、まだ隣にいるんじゃない?」
「そうね・・・」
「ハリオ♪そこにいるんでしょ?」
妙が呼びかけるが隣からは返事は無い。
「あ・あの・・・」
「どうしたかね?塚本君」
「あそこに・・・誰か・・・います」

(ヤ・ヤバイ。いま見つかったら間違いなく殺される。こうなったら潜って逃げるしかねえ)
潜って泳ぐ播磨。
(くそっ、濁ってて方向が分からん)

「あれ?今なんか足にぶつかった」
(ん?何かにぶつかった。とりあえず方向転換するか)
別方向に泳ぐ播磨。
「私にも何かぶつかったわよ」
(く・また何かにぶつかった。また、方向を変えるか)
次々とぶつかっては方向を変えていく播磨。
最終的に囲まれて動きが取れなくなる播磨。
(まずい・・・このままじゃ溺れる。でも、出たら殺される・・・い・息が続かない・・・覚悟を決めるか)
「ぶはあっ!は・は・はは・・・その、ゴメンなさい」

「何だよ、播磨だったのか」
「あれ?怒ってない?」
「ハリオ、どうしてこっちにいるの?」
「いや・・・その・・・間違えて・・・」
「で・アナタは何で隠れたの?」
「そりゃあ・・・バレたら殺されると思ったからよ・・・」
「ふむ、普通に考えるとそうなるな」
「だ・だから・・・ゴメンっ!!」
一目散に逃げ出す播磨。

急いで着替えて、女性陣が上がってくるのを待つ播磨。
「く・・・いくらなんでもアレはまずいよな。お・来たか・・・」
上がって来る女性陣。
「さっきは本当にすまなかった」
土下座する播磨。
「播磨君・・・顔を上げて」
「・・・許してくれるのか?」
「許すも何も最初から怒ってないわよ私たちは」
「そ・それじゃあ・・・」
「まて拳児君。まだ話がある・・・」
「な・何だ?絃子さん」
「誰の体が一番綺麗だったかね?」
「な・・・か・からかってたな・・・うぉぉぉぉぉ」
走って部屋に逃げる播磨。

絃子の一言により部屋までダッシュする播磨。
「くそ・・・からかわれただけかよ・・・」
そうぼやきながら部屋に入る播磨。

「お・戻ってきたか。どうしたんだ?そんなに慌てて」
「ちょっと、トラブルがあってよ」
「何があったんだ?」
「そのよ・・・ボーっとしてたら女湯に入っててよ。あいつ等とばったり・・・」
「キサマ!」
「ち・ちゃんと謝ったし、許してくれたしよ・・・だいたいお前が怒る所じゃないだろ?」
「それはそうだが・・・」
女性陣が部屋に戻ってくる。
「拳児君、さっきの答えをもらってないが?」
「バ・バカヤロウ・・・ま・また王様ゲームやろうぜ」
再び播磨主催王様ゲームが始まった。

「王様誰だ?」
「わ・私です・・・」
「え・えっと・・・、三番の人が八番の人に十秒間抱きつくで・・・」
最初の王様は一条。
「僕が三番だ。八番は誰だ?」
「・・・俺だ・・・」
三番花井、八番播磨。
「マ・マジで?」
「僕だってイヤだが仕方あるまい。覚悟はいいか?播磨」
「あ・ああ・・・」
播磨に抱きつく花井。
そして十秒経つ。
「フ・・・耐えた・・・。次行くぞ」

「王様誰だ?」
「あの・・・私です」
次の王様は一条。
「じゃあ・・・十四番の人が三番の人に・・・キスを・・・、場所は顔ならどこでも・・・」
一条なんと大胆発言。
「三番は私だ♪相手は誰かな?」
「・・・・・・、俺ッス」
三番妙、十四番播磨。
場の空気が冷たくなったのは気のせいではない。
「相手はハリオか、口でもいいぞ♪」
「イヤ・・・その・・・ちくしょー!もうヤケだ!」
妙の頬にキスをする播磨。
「く・・・次だ。次」

「王様誰だ?」
「・・・俺か・・・」
今度の王様は麻生。
「じゃあ、九番が十五番を十秒間抱きしめる」
「私が九番だ」
「マジで?俺が十五番」
九番絃子、十五番播磨。
「拳児君、こっちへおいで」
「な・・・なんか果てしなく嫌な予感がするんですけど・・・」
「コレはゲームなんだ。もっと純粋に楽しもうではないか」
絃子に恐る恐る近づく播磨。
「では行くぞ、拳児君」
自分の胸元で播磨を抱きしめる絃子。
「ん・んんんんん!」(な・何すんだ!)
「別に抱きしめているだけだが?」
そして十秒経過する。
「ハアハア・・・つ・次だ・・・」

「王様誰だ?」
「私ですね」
今度の王様はサラ。
「じゃあ十二番が三番を昼を“ずっと”膝枕するで・・・」
「・・・、俺三番」
不運?播磨。気になる相手は・・・
「私よ!播磨君どうぞ」
十二番は愛理だった。
「そ・そのよ・・・せめて何秒とかよ・・・」
「そうですか、えーっと・・・・・・」
睨まれるサラ(被害者)
「じ・じゃあ、五分で・・・」
「播磨君、早く来て・・・」
「あ・ああ・・・」
愛理に膝枕してもらう播磨。
普通に考えれば嬉しい罰ゲームなのであろうが・・・
(コエーよみんな。お姉さんといい絃子さんといい沢近といい。でもそれ以上に高野と妹さんと周防のほうがコエーよ)
「じ・じゃあ次・・・」

「王様誰だ?」
「よっしゃあ!俺だ」
やっと播磨が王様になった。
(よし、やっと開放される。肩が凝ったからマッサージしてもらおう!)
「じゃあ・・・これが終わったら、八番が俺の肩を五分間マッサージする」
「私ね・・・」
八番は晶。
自ら波乱を生んでしまった播磨。
「ハ・ハハハ・・・次な・・・」
力なくそう言った播磨。

「王様誰だ?」
「フフ、私が王様ね」
次の王様は葉子。
「じゃあ・・・七番が二番にお姫様抱っこを三分間してもらう」
「あの・・・私が七番です・・・」
どうやら八雲が七番のようだが。
しーん・・・二番が名乗り出ない。
「・・・・・・、俺だよ・・・」
播磨は力なくそう言ったのであった。

「王様誰だ?」
「私だな。さて・・・」
対の王様は美琴。播磨をじっと見つめて・・・
「えと、十三番が私を五分間マッサージする」
しーん・・・また誰も名乗り出ない。
「ふう・・・、播磨なんだろ?」
「・・・・・・、ああ・・・」
力なく答えた播磨。

そして、愛理の膝枕が終わると、晶が播磨の後ろにやってくる。
「な・何なんだ?」
「肩をマッサージしろと言ったのはアナタでしょ?」
「そ・そうだった・・・」
マッサージを始める晶。最初は何も無かった。そう最初は・・・
「ち・ちょっと息が・・・耳に」
「ゴメンなさい」
数秒経過すると・・・
「な・なんでそんなにくっつくんくんだよ・・・」
「あ・・・ゴメンなさい」
晶は耳に息かけ攻撃と体密着攻撃を五分間繰り返す。
そして、なんとか五分間耐え切った播磨は
(キ・キツイ・・・さっきからキツ過ぎる・・・)

晶のマッサージ攻撃もつかの間に、次は八雲をお姫様抱っこする番となった。
(つ・次は妹さんか・・・)
八雲をお姫様抱っこする播磨。
(女ってのはずいぶんと軽いものなんだな・・・)
播磨に身を寄せる八雲。
(コレは本格的にマズイ・・・無だ。無になって・・・なって・・・なれん)
次は播磨に抱きつく八雲。
(な・・・ヤバイ・・・播磨拳児、コレに耐えてこそ本当の漢だ・・・)
今度はそのまま播磨の胸に頬をすり寄せる八雲。
(げ・限界だ・・・・・・俺はもうダメだ・・・・・・、・・・・・・)
何かを悟った播磨。そして、三分間を耐える。

(次は周防か。だが悟った俺にはもう意味はねえ・・・)
播磨拳児、実は悟ってない。
「じゃあ、腰の辺りを頼むよ」
「腰?何で・・・」
「凝ってるんだよ、ホラ」
「分かったよ・・・」
無心で美琴の腰をマッサージする播磨。
(・・・・・・、何か感触が変わったな。そう、なんかムニュっとしてて・・・ムニュ?)
「って!何してんだ!」
「何って・・・胸もマッサージしてもらおうとして」
播磨の手を取って自らの胸に導いていた美琴。
「く・・・もう腰はやらねえ・・・」
「何だよ、じゃあ太ももを頼む」
「な・・・やるかー!」
「じゃあ、ふくらはぎ」
「く・・・仕方ねえ」
しぶしぶ美琴のふくらはぎをマッサージする播磨。
(く・・・どうして俺ばっかり・・・)
そして、何とか五分のマッサージを終える播磨。
その後も王様ゲームは続くが播磨への攻撃はピタリと止む。まるで嵐の前の静けさのように・・・

「さてと、もう寝るか」
現在時刻十一時半。寝るにはちょうどいい時間であろう。
「さて、ここの部屋は二つに区切るようになってるから九人と八人に分けよう。クジはもう作ってある」
播磨はまさかあんな事になるとは思ってなかった。

クジの結果は・・・
九人部屋:晶・絃子・愛理・妙・播磨・美琴・八雲・葉子・ララ
八人部屋:麻生・一条・今鳥・烏丸・サラ・天満・花井・ハリー
(名簿順)となった。
「マ・マジですか?」
彼が嘆くのも無理は無い。だって九人部屋の女性は全員フリーで播磨に対して何かしらの好意を持っている。
ちなみにこうなる確率は二万四千三百十分の一。交通事故に遭うよりも難しい。
「イヤ・・・その・・・この部屋割りはまずいんじゃ・・・」
誰も播磨の声を聞いてはいなかった・・・

そして運命の就寝時間となった。
「この配置はなんですか?」
布団は何故か播磨を囲むように八つ敷いてあった。
配置は、上から絃子・ララ・妙・愛理・葉子・八雲・美琴・晶
となっていた。
まさに四面楚歌・・・イヤ六面楚歌か。え?敵じゃないって?イヤイヤ、敵ですよ。彼の理性の・・・

彼は寝ることが出来なかった。
(イ・イカン・・・緊張してきた・・・今何時だ?)
時計は十一時四十分を指していた。
(全く進んでない・・・こうなったら心を無に・・・・・・)
しかし全く集中できない播磨。
(ム・ムリだ・・・な・何だ?この音は)
足元から何か音がする。音のするほうを見ると愛理が播磨に接近してきていた。
(な・なー!に・逃げよう・・・何っ!)
横からも誰かが接近してくる。
(ヤバイ、横からも・・・こうなったら上に・・・!)
周りからもどんどん接近してくる。
(ダ・ダメだ。もう逃げられん。神サマ・・・どうか耐えられますように・・・)
今夜は眠れそうに無い播磨だった。

(あれからどれくらい経ったんだ?・・・空がもう明るくなってきてるな・・・)
周りを見渡すと両サイドにそれぞれ美琴と妙が。両腕にはそれぞれ晶と絃子が。両足にはそれぞれ愛理と八雲がくっついていた。
(い・今・・・何時だ?・・・六時半か・・・よく耐えたよな・・・俺)
結局一睡も出来なかった播磨。
(早く起きてくれないかな・・・)
体をゆすってみる播磨。すると周りが起き始める。
(起きたか・・・ダメだ。もう・・・・・・)
眠りにつく播磨。

「・・・磨。おい、播磨!」
(ん・・・誰だよ、まだ眠いってのによ)
「播磨、朝食の時間だ」
「・・・朝飯?今何時だ・・・」
「八時半だ」
「まだ・・・二時間くらいしか寝てないのか。ま・大分楽になったぜ。飯にするか」
朝食のために起きる播磨。

どうやら播磨以外はすでに朝食を取り始めていた。
「あ・やっと起きたな、ハリオ♪」
「誰のせいだと思ってるんですか・・・」
「全く拳児君の言う通りですよ、姉ヶ崎先生」
刑部絃子、説得力なし。
「・・・・・・、ま・いいや。さっさと食おう。じゃあ・いただきます!!」
睡眠を全く取れなかった分を食欲で満たす為に、すぐに食べ終える播磨。
「ふう、美味かった。確かこの部屋は十時半までに出れば良いんだよな、花井」
「ああ、そうだ」
「そうか、じゃあ俺は向こうで寝てるから九時半の少し前に起こしてくれ」
「分かった」
「じゃあ、寝てくる・・・」
自分の布団に戻る播磨。

なにやら少しばかり騒がしかったが、眠たいのでかまわずに寝ている播磨。
(・・・・・・うるせえな。こっちは寝てるってのに・・・ん!顔に何か落ちてきた。い・息苦しい・・・)
顔に落ちてきたものを投げ捨てる播磨。
「ぶはっ!何なんだ・・・・・・」
播磨が見た光景は・・・
「あ・ゴメンなさいね、播磨君」
教師組が着替えているところであった。
「ダメだぞハリオ♪。笹倉先生を見たら。代わりに私を・・・」
「姉ヶ崎先生。拳児君を誘惑するのは止めていただきたい」
その格好(下着)じゃあ説得力が無い。
「オ・オレは何も見てねえ!」
布団に潜る播磨。
「ま・それが賢明だな。今出て行かれてもこっちが困る」
(くそ・・・俺は寝ることも許されないのか・・・)

それから数分が経って、教師組が出て行く。
(よし・・・今のうちに)
しかし、また誰かが入って来る。
(ヤ・ヤバイ・・・また誰か入ってきた)
「なあ、播磨の奴寝てると思うか?」
(周防か・・・)
「昨日は一睡もしてないみたいだから寝てるんじゃない?」
(お前が言うな。沢近)
「そうね、でもさっき播磨君の声が聞こえた気がしたんだけど」
(マズイ・・・高野までいるのかよ・・・)
「ねえ、起こしてみない?この格好で」
自分でもビクッと動いたのが分かった播磨。
「それも面白そうね」
(な・面白くねえよこっちは)
「じゃあ、一・二・三で一気に布団を取るぞ」
「ええ!」
「分かったわ」
(ヤバイ・・・俺はあの三人から寝たフリを押し通す自信が無い・・・)
「行くぞ、一・二・三!」
布団が一気に取られる。
(あ・・・あぶねえ。うつぶせに寝ててよかった。これで何とか表情はごまかせるが・・・)
「播磨君・・・時間よ・・・」
耳元でそっと呟く晶。
(ぐ・・・ヤバイ、もうバレたかも・・・)
「起きないわね。ねえ播磨君、時間よ」
今度は愛理が耳元で呟いてくる。
(か・神様。どうか俺に力を・・・)
「だめだな二人共。起こすときはドーンと起こすんだよ。ドーンと」
(ドーン?ま・まさか・・・イヤ、周防ならやりかねん・・・くそっ!)
「ったくお前ら。何やってんだよ。そんな格好で・・・・・・え?」
播磨が振り向くとそこには浴衣姿の三人が居た。
「なんだ播磨、やっぱり起きてたのか」
「・・・・・・、エッチ」
「お・お前ら・・・」
「あら?何でそんな残念そうな顔をしてるのよ。なんならこのまま見ていっても・・・」
「見るかー!」
ダッシュで逃げる播磨。

「ヒ・ヒドイ目にあった・・・」
「どうしたんだ?播磨」
「いや・・・言わない」
どうやら、さっきの三人が最後のようであった。
「なんだ、みんなもう着替えてたのか」
「そろそろ時間だからな」
時計を見ると九時四十分を指していた。
「花井、何で起こしてくれなかった?」
「いや、女性達が着替え始めてな・・・」
「そうか・・・じゃあ俺もアイツ達が出てきたら着替えるとするか」
数分で三人が出てくる。
「じゃあ俺、着替えてくるから」
三人と入れ替わりに部屋に入る播磨。
「さて、着替えるか・・・ん?」
視線を感じたので振り返ると隙間から数名が覗いていた。
「・・・・・・、バレてるぞ」
それでも逃げる気配が無い。
「・・・・・・、ま・いいか」
浴衣を脱ぐ播磨。視線が熱くなったような気がする。
「・・・・・・、何かやりにくいな・・・」
さっさと着替え終える播磨。
「ふう、じゃあ帰るか」

送迎バスに乗り込む面々。
「じゃあ、席は適当に座っててくれ。俺は寝る」
再びハリーの隣に座る播磨。
「何デ、マタ私ノ隣に座るんダ?」
「何でだよ、良いじゃねえか」
「視線ガ恐いのダガ」
「・・・、スマン」
「気にするナ」
「ああ・・・・・・」
眠りにつく播磨。

「・・・リマ、ハリマ」
「ん・・・、アレ?何でララが俺の隣にいるんだ?」
「ハリーが交換してクレと、私に頼んできタ」
「そうか・・・で・どうした?」
「そろそろ着ク」
「そうか・・・でもどうしてハリーはお前と交換したんだ?別にほったらかしててもいいんじゃ・・・」
「私に聞くナ」
ララの顔が赤いのは気のせいじゃないかも知れない。
「そうだよな。お・着くな」
駅に到着するバス。
「じゃあ、行くか」

ホームで電車がくるのを待つ一行。
「帰りの席だけどよ、クジも用意はしてるが適当に座ってくれ。俺はとにかく寝たいから」
「そうか、お前は何でそんなに眠そうなんだ?」
「花井・・・その話は勘弁してくれ」
「す・すまない」
「まあ、気にするな。電車が来たな」
電車に乗り込む一行。

「じゃあ、そこら辺に座ってくれ」
それぞれが適当に座り始める。
席はそれぞれ
烏丸・天満・ララ。
麻生・一条・今鳥・サラ。
絃子・愛理・播磨。
晶・花井・美琴・八雲。
妙・ハリー・葉子。
(名簿順)
となった。
なにやら播磨の隣を争ってなにやら一騒動あったようだが播磨が席を二つ使って寝てしまったため収まったようだ。

(・・・・・・何か頭のところの感触が変わったような・・・)
「ん・・・」
目を開けると誰かが膝枕していた。
「どうやら起きたようだね、拳児君」
「あれ・・・なんで?」
「つらそうに寝ていたからね、こうして交代で膝枕をしていたわけだよ」
「そうか、あとどれくらいで着くんだ?」
「そうだね・・・あと二分くらいかな?」
「そうか・・・さて・起きるか」


温泉旅行後半編でした。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.6 )
日時: 2005/09/26 23:46
名前: ACE

もう文化祭の本番まで三週間を切ったというのに、今だ2−Cは演劇と喫茶店の両方をやる事以外何も決まっていなかった。
「いいか、もう本番まで三週間も無い。それなのにウチのクラスは何も決まっていない。これでは何も出来ないぞ」
さすがに今の一言で静かになる教室。
「まず先に演劇のほうから決めていこう。まず演目のほうだが・・・眠れる森の美女にしようとするが反対のものはいるか?」
反対意見は無かったので演目は決定した。
「次は王子役と王女役だが・・・立候補でも推薦でも言いから手を上げてくれ」
「俺・・・王子役やる」
なんと最初の立候補者は播磨。
「お前がか?」
「だって、面白そうだし。それに大変そうだけど達成感も有りそうだしよ」
「そうか、他に立候補はいるか?いなければ播磨で決定したいと思うが」
誰も播磨の主役には異存はないようだ。
「では王子役は播磨に決定するとして、相手役は・・・」
多数の立候補者が出る。どうやら播磨の相手役とあって競争率が高いようだ。
(へー、結構王女をやりたい奴は多いんだな。まてよ、確か眠れる森の美女の最後って・・・しまったー!)
播磨は最後のキスシーンをすっかり忘れていた。

何度かの抽選によって候補が、晶・愛理・美琴の三人に絞られる。
まあ、この中の誰が相手でも播磨の苦労は決定済みである。
「この三人から一人を選ぶのか・・・厳しいな・・・」
花井が嘆くのも無理は無い。
おそらく、投票による結果では必ず文句が出るであろう。
まあ、他の方法でも同じであろうが・・・しかし唯一文句が出ない(言えない)方法があることに花井は気付いた。
「播磨、お前の相手役なんだ。お前が決めろ」
「え・・・マジで?」
「マジだ」
(あの野郎・・・俺に押し付けやがって。く・・・あの三人の視線が恐い。何か穏便に済む方法は・・・コレしかねえ)
「分かった、クジで決めよう。ここに一〜六まで書いた紙がある。適当に一人二枚持ってくれ」
言われた通りにする三人。
「そしてここにサイコロがある。もう分かったな?出た目が俺の相手役になる。行くぞ・・・」
サイコロを転がす播磨。出た目は・・・・・・四。
「四だな、誰だ?」
「よっし、私だ」
王女役は美琴に決定した。
「決まったか、では他の役を決めていこう」
主役の二人が決まったので、他の役はスムーズに決まった。

「よし、演劇のほうはとりあえず決まったな。次は喫茶店の方だが、まずは作るのと売子に分けよう」
ここまでは何事も無く決まった。
「では、それぞれでの担当時間を話し合ってくれ」
(何時頃にするか・・・でも午前は演劇のほうでムリだから午後からか。でも・・・暇になったら暇になったでやばいような気がする。いや、絶対ヤバイ。こうなったら・・・)
「あ・俺、ずっと売子やってるわ」
こうして、播磨の文化祭での役割は決まった。

文化祭の役割が決まった日の夜。
リビングのドアが開く。
「おかえり、絃子さん」
「ただいま拳児君」
「今、飯が出来たところだから」
「分かった、着替えてこよう」
自分の部屋に入っていく絃子。
すぐに着替えて出てくる絃子。
「さて、食べようか」
「ああ、いただきます」
「いただきます」

食事が始まり数分が経つ。
「ところで拳児君」
「何だ?絃子さん」
「2−Cの文化祭はどうなったのかね?」
「ああ、演劇は眠れる森の美女に決まった」
「そうか、主役は?」
「ああ、俺が王子で王女が周防」
手の動きが泊まる絃子。
「・・・・・・、今何と言ったかね?」
「だ・だから・・・主役は俺と周防って・・・」
「・・・拳児君」
「な・何だ?」
「君はキスをした事があるかね?」
「な・何でそんな事・・・」
「そうか、した事は無いのか」
絃子の言う通り、彼はキスをした事は無い。
「私としてみないかね?」
「い・絃子さん。もう酔ったのか?」
「私は素面だよ」
「ご・ごちそうさま・・・」
そそくさと部屋に逃げる播磨。

「何で絃子さんはあんな事を・・・とにかく嫌な予感がするな・・・」
彼の予感は的中する事となる。

彼の予感は次の日の昼食時に当たった。
「さーて、飯にするか」
「ねえ、播磨君」
「何だ?沢近」
「二人でお昼食べましょう、屋上で」
「え・・・」
「ちょっと沢近。播磨、私と・・・」
睨み合いを始める二人。
「播磨君、私と行きましょう」
晶に引っ張られる播磨。
「お・おい、何だよ・・・」
「私とじゃ、イヤ?」
「イヤとかじゃなくて・・・」
二人が晶の行動に気付く。
「晶!」
「高野!」
なにやら火花が散っている。
「・・・・・・、じゃあ!」
走ってその場から逃げる播磨。

「くそ、予感が当たったし・・・とにかくあそこに居たらヤバイ・・・うおっ!」
誰かにぶつかる播磨。
「す・すまねえ、前見てなくて・・・ってララか。大丈夫か?」
「・・・大丈夫ダ。コレ位」
「本当にすまねえ」
「何デ謝ル?」
「だって、怒ってるじゃねえか」
「怒ってナイ」
「そうは言ってもよ、顔が怒ってるぜ?」
「ソウ見えるカ」
「ああ、怒ってないならなるべく笑った顔のほうが良いぜ?」
「笑ウ・・・」
「そうだよ、せっかくキレイな・・・ヤベェ、じゃあな!」
再び走り出す播磨。

逃げながら
「くそ、どこか安全な場所は・・・無いような気がする学校には・・・そうだ、あそこなら逆に」
彼が向かった先は2−Cの教室。
「よし、居ないな」
播磨の予想通りにさっきの三人はいなかった。
「我ながら完璧だ。これでゆっくり召しが食えるぜ・・・」
自分の席に目をやるとそこには弁当が五つ置いてあった。
「・・・悪い事したな」

昼休みが終わろうとする頃に三人は教室に戻ってくる。
「お・ずいぶんと遅かったな」
三人ともやられたという顔をする。
「あのよ、皆で仲良くってのじゃダメなのか?」
この人たちの辞書には多分載ってない。
「ま・播磨がそう言うなら私は」
「そ・そうよね・・・」
ばつが悪そうな顔をする二人に対して、晶だけは何か企んでいるようだった。


そして次の日の朝・・・
「拳児君、私は先に行ってくるよ」
「ああ、いってらっしゃい、絃子さん」
「ああ、行って来くるよ」
部屋を出て行く絃子。
「さてと、俺もちょっと早いけど行くか。忘れ物は・・・おっといけね。教科書忘れるところだったぜ」
自分の部屋に教科書を取る為に入る播磨。
「・・・、よし。さて行く・・・?」
何かを踏んでバランスを崩す播磨。
「お?・・・・・・」
机の角に突っ込む播磨。
彼の意識はそこで途絶えた・・・


「・・・・・・、痛い・・・。なんだか凄く長い夢を見ていたような気がする・・・まあいいか」
彼は学校へ向かった。サングラスをかけて・・・

(なんだよ、さっきから皆してじろじろ見やがって。ま・いつもの事か。それよりも天満ちゃん・・・早く君に逢いたいぜ・・・)
2−Cの教室に入る播磨。
(アレ?天満ちゃんがいねえ・・・しゃあねえ、待つか)
自分の席に座る播磨。
「播磨、どうしたんだ?そんなものかけて」
花井が播磨に話し掛ける。
「あ?なんだよメガネ。俺がサングラスかけてるのはいつもの事だろ」
「・・・いや、最近はずっとかけてなかったぞ」
「何言ってんだ?そんな事あるはずがねえ」
静まり返る2−C。
「播磨・・・覚えてないのか?」
「何を」
「お前はここ何週間か記憶喪失だったんだ」
「メガネ、とうとうお前の頭もおかしくなったか」
「信じられんかもしれないがこれは本当の事だ。じゃあ、今日は何日だ?」
「そんなもん・・・・・・」
黒板の日付を見て固まる播磨。
(あれは夢じゃなかった?いや・・・そんなはずある分けがねえ)
「み・皆して俺をからかってるだけだろ?」
いっせいに首を横に降る2−Cの面々。
「ま・まさか・・・俺は信じねえ」
(そ・そうだよ、あんな事が現実な分けがねえ)
「そ・そういえば塚本は・・・」
「塚本君なら烏丸と一緒に弁当を持って教室を出て行ったが」
「な・なんであの二人が一緒に?」
「あの二人は付き合ってるだろ?それにお前があの二人をくっつけたじゃないか」
固まる播磨。
(・・・俺が?天満ちゃんと烏丸を・・・アレは現実?)
「・・・・・・そうか・・・本当なんだな?」
「ああ」
(夢じゃなかったのか・・・サラバ俺の初恋・・・)


播磨苦難と記憶復活編です。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.7 )
日時: 2005/09/26 23:46
名前: ACE

ここで少しだけララの視点で見てみたいと思う。
播磨とぶつかった日の部活休憩時。
「・・・ふう・・・」
今日何度目か分からないため息をつくララ。
そのせいか先ほどから練習に集中できない。
「大丈夫ですか?ララさん」
その様子を心配した一条が話し掛けてくる。
「イチ・ジョー・・・何でもナイ」
「ララさん、私でよければなんでも相談に乗りますよ」
本気で心配する一条の姿を見たララは相談してみる事にしてみた。
「イチ・ジョー、私の顔は何時モ怒っているカ?」
「え・・・」
ララの質問に戸惑う一条。
「正直に言ってクレ」
「その・・・そう見えます」
少し悪そうにそう答える一条。
「そうカ・・・怒っているカ・・・」
「あの・・・ララさん?何か有ったんですか?」
「別に・・・何もナイ」
それを聞いた一条はくすっと笑って。
「播磨さんの事が気になるんですね?」
「な・何ヲ・・・」
「隠さなくてもいいですよ。温泉のときにずっと播磨さんの事を楽しそうに見てたじゃないですか」
一条の言う通りであった。
「何でそれヲ・・・」
「分かりますよ。でも、どうして悩んでいるんですか?」
「それハ・・・」
「ララさんみたいに強い人が何を恐れるんです?」
いつか一条に言った言葉をそのまま返されたララ。
「イチ・ジョー、アリガトウ」
「いいえ、私は何もしてませんよ」
「助かっタ。練習を始めよウ」
集中できたララであった。

その日の帰りに
「そういえばアイツと始めて話しタのは・・・オンセンの時だったナ・・・」

ララと播磨の始めての物理的な接触は行きの電車での事だった。
王様ゲームの命令でララが播磨にアイアンクローを決めた時だった。
別にそのときは何とも思っていなかったので本気でやった。
「デハ行くゾ・・・」
「ああ、一思いにやってくれ・・・」
それでも播磨は文句も言わずにただ耐えた。

次の接触は行きのバスのとき・・・
ララが一人で窓の外を眺めていると
「ララ・・・」
通路の向こうに座っていたハリーが急に話し掛けてきた。
「何だ?ハリー」
「席を交換してクレ」
「何故?」
「・・・モウ視線ニ耐えられナイ」
ハリーは女達の殺気のこもった視線にビビッていた。まあ、無理もないか・・・
「イイゾ」
ハリーが可哀想だったので交換したララ。
「・・・・・・」
後ろから殺気のこもった視線を感じるララ。
「・・・、コイツが起きてモ良いのカ?」
後ろに向かってそう言い放つララ。すると殺気は無くなる。
「フン、コンナ男ノどこガ・・・」
隣の播磨は無防備に寝ていた。
それでもララはなぜか播磨から視線をはずせなかった。
それは播磨を起こすまでずっと続いた。

次の接触はかなり衝撃的だった。
酒を飲んでいたら急に眠たくなったので寝てしまった。
そして誰かに起こされる。
「ん・・ココハ・・・!!」
気が付くと目の前に播磨の顔があった。何かいたずらされたと思ったので本気で殴った。
「な!」
殴られた播磨は三メートルほど吹っ飛ぶ。どうやら後ろに飛んでダメージを軽減したらしい。
それでも一応
「な・何をするんだよ」
何をするんだという顔で聞いてくる播磨。
「お前こそ、何をしようとしていタ」
そして、こっちからも聞き返した。
「ただ、起こしてただけだよ・・・も・もうだめ・・・だ」
そう言って気絶する播磨。
さすがに悪いと思ったので起きるまでそばにいた。
「ん・・・えっと、俺は確か・・・」
「さっきハ、すまなかッタ」
素直に謝った。それで返ってきた答えは文句ではなくて
「いや・・・それは別にいいんだけどよ・・・どれくらい寝てた?」
「ほんノ、一・二分ダ」
「そうか・・・さてと、飲むか」
そう言って一人で飲みに言った。
自分の行動に非があるならともかく、何もしていないのに一方的に殴られても文句の一つも言わない男はララにとってはじめてであった。
その日は無意識に播磨のことをずっと見ていた。

その日の夜。幸か不幸か播磨と同じ部屋になる。
夜中の二時頃に目が覚めたらそばで唸り声が聞こえたのでそちらを見ると播磨が全身を六人の女に抱きつかれてなにやら唸っていた。
「・・・、た・耐え・ろ・・・」
「・・・・・・」
少しだけその六人に殺意を覚えたララ。

帰りのバスでララはずっとハリーの奥にいる播磨を見ていた。
「・・・ララ」
「何ダ?」
「変わるカラ、睨むナ」
どうやら睨んでいたらしい。
「・・・・・・分かっタ」
こうしてハリーとララは席を交換した。
そして播磨を起こすまでの約十五分間ずっと播磨のことを見ていた。
「ハリマ、ハリマ」
「ん・・・、アレ?何でララが俺の隣にいるんだ?」
まだ眠たそうな播磨。
「ハリーが交換してクレと、私に頼んできタ」
嘘は言っていないが本当の事でもない。
「そうか・・・で・どうした?」
それも気にしていない様子の播磨。
「そろそろ着ク」
「そうか・・・でもどうしてハリーはお前と交換したんだ?別にほったらかしててもいいんじゃ・・・」
「私に聞くナ」
本当は隣に居たかったなんて絶対に言えない。
なぜなら播磨のその態度を見て自分は異性として見られていないと思ったから。

でもそれは勘違いだと気付いたのは今日の昼。
廊下を歩いていると播磨が急にぶつかってきた。
「す・すまねえ、前見てなくて・・・ってララか。大丈夫か?」
「・・・大丈夫ダ。コレ位」
実際にたいした事は無かった。
「本当にすまねえ」
「何デ謝ル?」
「だって、怒ってるじゃねえか」
実際に怒ってもいなかった。
「怒ってナイ」
「そうは言ってもよ、顔が怒ってるぜ?」
自分でも薄々感じていたが播磨に言われるとショックだった。
「ソウ見えるカ」
「ああ、怒ってないならなるべく笑った顔のほうが良いぜ?」
「笑ウ・・・」
「そうだよ、せっかくキレイな・・・ヤベェ、じゃあな!」
「・・・・・・キレイ・・・」
逃げる播磨をただ見送るララ。そのすぐ後に晶・愛理・美琴の三人がやってくる。
「お・ララ、播磨を見なかったか?」
播磨がこの三人から逃げているのはすぐに分かった。
「向こうニ行ッタ」
三人に嘘の方向を教えた。播磨が逃げられるようにと・・・

「・・・・・・ハリマ・・・」
気が付くと彼の名前を呼んでいた。
「フ、私とシタ事ガ」
ララは恐かった。でもそれは皆同じなんだと分かった。
ララの恋はここからスタートした。



ララの憂鬱編でした。
これだけ1つですが話の関係上こうなりました。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.8 )
日時: 2005/09/26 23:48
名前: ACE

播磨の視点に戻してみよう。
呆然としながら六つの弁当を食べ終える播磨。(よく食ったな)
「・・・なんか食欲ねえな・・・」
お前がそれを言えるのか?
その時烏丸と天満が教室に戻ってくる。
(ああ・・・天満ちゃん・・・)
「あれ?どうしたの皆」
「・・・塚本、大切な話がある。付いてきてくれ」
「うん、いいよ」
「誰も付いてくるなよ。さ・行こう」
天満と共に屋上へ向かう播磨。

そして屋上に着く。
「塚本、実は・・・俺は二年前の・・・」
「うん、気付いてたよ」
「そうか・・・でもそれは塚本の誤解で・・・」
「それも分かったよ。だって、本当の変態さんだったらこんなにいい人なはず無いもん」
「ありがとう・・・」
「別に気にしないで、悪いのは私なんだから」
「そうか・・・話はまだ有るんだ」
「もしかして、八雲の事?」
「それも関係ある。俺は妹さんとは付き合ってねえ」
「でもどうしてそれなら八雲と二人で会ってたの?」
「その事だが、実は俺・・・漫画描いてたんだ」
「漫画?でもそれがどうして八雲と・・・」
「ああ・・・妹さんには漫画のアシスタントをしてもらってたんだ」
「・・・・・・」
黙って播磨の話を聞いている天満。
「そのよ・・・相談できるのが妹さんしか居なくてよ。ずっと付き合せてたんだ」
「うん・・・でもなんで漫画を・・・」
「それは・・・俺は塚本天満の事がずっと好きだった。二年前のあの日から・・・」
「!!でもそれがどうして・・・」
「最初のきっかけは・・・・・・」
漫画を描き始めた経緯から全て天満に話す播磨。

「・・・・・・と言う訳だ。分かってくれたか?」
「う・うん。でもそれならどうして私と烏丸君の仲を・・・」
「それは塚本の幸せのために一番いいと思ったから」
「ありがとう播磨君」
「気にするな。それよりも絶対に幸せになってくれよ」
「うん。それから八雲の事なんだけど、これからはちゃんと一人の女の子としてみてあげて」
「ああ・・・」
ちょうど昼休みの終了を告げるチャイムが鳴る。
「あ・行かなくちゃ。播磨君も早く」
「ココに居る。ありがとうなこんな話を聞いてくれて」
「いいの。正直嬉しかったよ。それと、ありがとう」
「何度も言うな。テレる」
「ゴメンね。じゃあ私は行くから」
走っていく天満。
「俺の初恋よサラバ・・・・・・でも不思議とそんなに悲しく・・・」
五時間目終了のチャイムが鳴るまで播磨は屋上でずっと泣いていた。

六時間目の始まりを告げるチャイムが鳴る。
「・・・戻るか」
ゆっくりとした足取りで教室に戻る播磨。
「・・・もうコレは必要ないのか」
サングラスをはずす播磨。
そして2−Cの教室に到着する。
「アレ・・・誰もいない。そうか、体育か。着替えて行くか」
ジャージに着替えて体育館に向かう播磨。
今日の体育はバレーボール。
「バレーか。そういえば塚本のスパイクを顔面にくらったこともあったな」
なんとなく天満のほうを見る播磨。
(やっぱり塚本はこのクラスの中で一番カワイイ・・・・・・く見えない。確かにカワイイが隣のお嬢とか周防。まして高野のほうが可愛く見えるのは・・・・・・イヤ、理由は分かってるか)
自嘲気味に笑いながら体育館の中へと入っていく播磨。
「どうしたの播磨君。そんな顔して」
「高野・・・何でもない。塚本からさっきの話は・・・」
「何も聞いてないわ。聞いたけど秘密だって」
「そうか・・・」
(頼んでないのに秘密にしてくれたのか。やっぱり塚本は優しいな)
「どうしたの?笑って」
「何でもねえ・・・」

そしてその日の放課後。波乱が起こる・・・
2−Cにララがやってきたのだ。
「ハリマ・・・話がアル」
「ん?何だ」
「ココでは話ヅライ」
「じゃあ屋上に行くか」
ララと共に屋上に向かう播磨。

そして屋上に着く二人。
「何だ話って」
「・・・ハリマお前が好きダ」
突然の告白。ララの顔は真っ赤だ。
「何だって?」
「お前ガ好きダ。付き合ってクレ」
「・・・、ララ。悪いけどそれは出来ない」
泣きそうな顔をするララ。
「私が嫌いカ?」
「違う。嫌いだからとかじゃなくてよ。俺は多分お前の事は好きだぜ。友達としても女としても」
「何故?・・・」
「自分でも最低だと思うけど他にも好きな女が居るんだ。だからその気持ちをハッキリさせるまでは誰とも付き合えないんだ。でも嬉しかったぜ。こんなこと言われたのは初めてだからな。そんな悲しそうな顔するな、別に嫌いって言ったわけじゃないんだし」
「アア・・・分かっタ。私ハコレデ・・・」
「ああ、また明日な」
屋上から去っていくララ。

入れ替わりに晶・愛理・美琴が入って来る。
「聞いてたのか・・・」
何も言わずに愛理が播磨のそばに寄って来る。
「私もあなたの事大好きだから。じゃあ」
それだけ言って去っていく愛理。
「お・おい・・・」
うろたえている播磨に近づいてくる美琴。
「私も播磨が大好きだから」
美琴もそれだけ言って去っていく。
「ハ・ハハ・・・高野は・・・」
「・・・私も好きよ」
それだけ言って去っていく晶。
「マ・マジ?」
ただ呆然とする播磨。

(いったいどれだけの時間が経ったんだ?)
実際には五分も経っていないが播磨には何時間にも感じられた。
「・・・・・・、妹さん。どうした?」
そばに八雲が居た事に気付かなかった播磨。
「その・・・、私も播磨さんが誰よりも好きです!」
顔を真っ赤にしながらそれだけ言うと去っていく八雲。
再び固まる播磨。そして三分間考えた後に出した答えが
「・・・そうか、コレは夢に違いない。こんなに都合がいいはずがねえ」
「何が夢なの?ハリオ」
いつの間にか妙が目の前にいた。
「お姉さん。ビックリするじゃないッスか」
「ゴメンね、一応話し掛けたんだけど。それよりも何が夢なの?」
「いやあ、何か皆して俺に告白してくるんスよ」
「ハリオ、コレは夢じゃないよ。夢だと思うならどこかつねってみたら?」
妙の言う通りに腕をつねる播磨。
「イテテテテ・・・夢じゃない・・・」
「これが現実だとわかったところで、ハリオ」
「何スか?」
「私もハリオのことが大好きだからね。じゃあ私は仕事が残ってるから」
屋上を去っていく妙。
「夢見たいな現実か・・・・・・帰るか」
ゆっくりとした足取りで帰る播磨。

リビングに入ると絃子が料理を並べて待っていた。
「お帰り拳児君。そこに座ってくれ、大切な話がある」
絃子の言う通りに座る播磨。
「何だ?」
「姉ヶ崎先生から話を聞いてね」
「そうか・・・」
「拳児君、この際だから私も覚悟を決めるが。私は拳児君の事が好きだ。話はコレだけだ」
それだけ言って自分の部屋に入っていく絃子。
「ハハハ・・・・・・」
ただ笑うしかない播磨。
無理も無かろう。一日で七人の女性から告白されたのだから・・・

次の日の朝。2−Cでは異例の西本による早朝(八時)エロ会議が行われようとしていた。
「皆に重大な話が有るんだな。騒がずに最後まで聞いて欲しいんだな。実はワスの情報によると昨日播磨が告白されたらしいんだな」
「だ・誰だ?相手は・・・」
「相手は・・・」
息を呑んで西本の答えを待つ西本一派。
「なんと昨日一日で七人が告白したらしいんだな」
騒ぎ始める西本一派。
「な・七人だって?」
「六人まではなんとなく分かるが・・・あと一人は誰だ?」
「残りの一人は・・・D組のララさんなんだな。しかも彼女が最初に告白したらしいんだな」
「D組のララ?何で・・・」
「くそ、俺好みだったのに・・・」
なんて声もちらほら。
「な・何か対策は・・・」
「残念ながら無いダス」
「く・・・今鳥。お前播磨と仲いいだろ?何か無いのか?」
「悪いけど俺は播磨には逆らえないから。恩もあるし」
今鳥、ちゃんと恩義を返した。
「う・裏切り者ね・・・」
「裏切ってないし。あ・かれん。じゃあな」
一条の元へ行く今鳥。
「くそ・・・冬木は何か無いのか?」
「播磨一人ならまだしも相手の中に高野さんや刑部先生まで居るからな・・・」
「そうね」
いつの間にか冬木の真後ろに立っている晶。
「た・高野さん・・・」
「初めに言っておくけど、何かしたら・・・・・・分かってるわね?」
無言で頷く西本一派。
「それがわかればいいの。じゃあ」
がっくりとうなだれる西本一派。
だって、これで播磨には手も足も出なくなったのだから・・・。
でもこれは播磨の知らない話。

その日の昼。
「腹減った・・・」
この日、絃子は播磨に弁当を作っていかなかった。
「播磨、昼にしよう」
美琴が昼に誘ってくる。
「周防か・・・飯がないんだ」
「安心しろって、一緒に屋上で食べよう」
播磨の右腕をつかんで引っ張っていく美琴。
「お・おい・・・」
「皆で仲良くなら良いんだろ?だから行こうって」
「ま・まあ、それなら・・・」
播磨はこの言葉を後々激しく後悔する。
「ほら、播磨君。急いで」
左腕をつかむ愛理。
播磨は二人に引きずられる形で教室を出る。
廊下に出るとすぐにララと遭遇する。
「ハリマ、一緒に・・・」
「飯なら屋上だそうだ・・・」
「ソウカ・・・」

そして屋上に到着する一行。何故か五分もしないうちに八雲・妙・絃子の順でやってきて、『お昼だよ・全員集合』状態になっていた。
一見楽しそうに火花を散らしながら播磨にお昼を食べさせていく女性達。(いわゆる、あーんってやつ)
(・・・・・・料理の味がしねえよ・・・)
播磨はこの状況を楽しんでいなかった。むしろ脅えていた。何か有ると・・・
そしてその当たってほしくない予感は食事が終わった頃にやってきた・・・
前振りも無くいきなり晶が
「播磨君・・・出来たの」
ゆっくりだがハッキリとした口調でそう言ったのだった。
場の空気が凍りつく
「アノ・・・イマナント・・・・・・」
「だから“アレ”が出来たの」
再びハッキリとそう言ったのだった。
男女間でアレと言えばアレであろうが、播磨にはそんな記憶は一切無かった。
(に・睨まれてる。ヤバイ、思い出さないと殺される・・・)
「ヒドイわ播磨君。私に頼んだのはあなたのほうからなのに。だから私、徹夜までして必死に・・・」
今の晶のセリフで場の空気がさらに緊迫。もとい殺気づく。
「ハリマ、コレはどう言う事ダ?」
(ヤバイ・・・マジで思い出さないと大変な事になる・・・)
もうすでになっている。
「ヒドイです播磨さん。私に男にしてくれって言ったのに・・・」
なんと八雲が涙目でとんでもない事を言い出した。
(な・妹さんまで・・・なんでこんな時に。そ・それよりもヤバイ、高野まで睨んでるよ・・・)
「それに、俺“も”愛してるとか、幸せにするとも言われました・・・それに二人で温かい家庭を作ろうとも・・・」
八雲の連続攻撃が決まる。
(・・・た・確かに言った覚えはあるがそれは・・・く・皆に漫画の事を言うしかねえか。じゃないと命が・・・)
やはり命が大事な播磨。
「ま・待ってくれ!俺の話を聞いてくれ。確かに妹さんにそういう事を言った覚えはあるが漫画の事で・・・・・・」
土下座して、漫画の事を洗いざらい話す播磨。

「・・・・・・と言う事なんだ。信じてくれ!」
「・・・、そうなのかね?塚本君」
「・・・ハイ」
少なくとも殺気よりは空気が和んだが、まだ殺気は止んでいない。
「でも・・・晶のことはどう説明するの?」
「ちょっと待ってくれ。今思い出すから・・・」
(な・何だ?俺が高野に・・・・・・ん?待てよ・・・思い出した、ガレキだ)
「思い出したぜ。アレはガレキのことだな?」
「・・・ええ」
流石は高野晶ということか、たかがガレキ一つでココまで皆を揺さぶるとは・・・
こうして恐怖の(播磨にとって)『お昼だよ・全員集合』の時間は終わった。

放課後、今日から文化祭の演技の練習がスタートする予定だった。
「なー、播磨。練習だけど・・・」
「悪いけど、今日は出ない。じゃあ、そう言う事だ」
それだけ言って教室を出て行く播磨。
実際に播磨は集中できるような状態ではなかった。まだ、昼の衝撃から立ち直ってないのであった。

そして夜。部活が終わったララが校門に差し掛かると、あの六人が話し合っていた。
「何カ合ったのカ?」
「うむ、拳児君が帰ってこないのだよ。それで電話をしてみたらまだ学校に居るらしいと聞いたので集まったんだ」
「デモ、何デ学校何ダ?」
「それが、まだハリオの靴が下駄箱にあったの。私も簡単に捜したけど・・・」
「屋上にも居ないんです・・・」
「はやく捜さないと、何か遭ったのかもしれないし・・・」
「私モ手伝オウ」
「なあ、どうせだから最初に捕まえた奴が播磨とデートできるってのはどうだ?」
美琴の意見に全員が賛成する。

少し時を戻して播磨の視点にしてみよう。
播磨は今まで屋上で寝ていた。しかし、それならどうして見つからなかったのかと言うと・・・屋上に行く際のドアの上部分。ようするに上がって来る階段の屋根部分で寝ていたのだった。
「・・・結局サボっちまったな。皆怒ってるかな・・・ん?あいつら。何してんだ?」
校門付近でのやり取りを屋上から眺める播磨。
「アレ・・・こっちに来た。・・・!俺の名前を呼んでる。まさか、皆して怒ってるんじゃ・・・ヤバイ。とにかく逃げる!」
屋上を後にする播磨。
こうして、播磨を心配して(とデートの為に)捜す七人の鬼と、怒られると思って逃げる一人のターゲットによる変則鬼ごっこがスタートした。

夜の学校での異例とも言える鬼ごっこがスタートして。
(く・ヤバイ。今見つかったら殺される。どうにかして逃げきらねえと・・・)
播磨は見つかったら殺されると思っている。

(・・・誰かいる。アレは周防・・・アイツはヤバイ。絶対殺される)
むしろ美琴は安全なほうだろう。(多分)
「播磨ぁ、居るなら返事してくれ」
(返事なんて出来るわけねえだろ。く・・・どこかでやり過ごさなきゃな。適当な教室に入るぞ)
一番近い教室に入る播磨。
(どこに隠れる・・・教卓の下・・・は分かりやすい。そうだ、掃除用ロッカーなら誰も気付くまい)
ロッカーの中に入る(よく入ったな)播磨。
「ん・・・いま、そこの教室に誰か居た気が・・・」
「どうしたの?美琴」
「あ・高野。さっき誰かがそこの教室に入った気がしたんだけど・・・」
「じゃあ、前と後ろから一緒に入ってみましょう」
前から美琴。後ろから晶が同時に教室に入って来る。
(ヤ・ヤバイ・・・見つかる・・・)
「播磨、いるか?」
「・・・いないみたいね」
「そうだな、教卓の下以外に隠れるところなんて無いし」
(何とかバレずにすみそうか・・・)
教室を出て行く二人。

(・・・・・・行ったな。さて、俺も・・・!)
播磨がロッカーから出ようとした時に晶が教室に戻ってきた。
「・・・居ないわね」
再び教室を出て行く晶。
(あ・危なかった・・・・・・)

三分ほどロッカーの中で黙っている播磨。
(もう大丈夫か・・・)
慎重にロッカーから出て教室のドアまで進む播磨。
(・・・・・・よし、誰の足音も聞こえねえ)
慎重に教室を出る播磨。
(どっちが安全だろうか・・・左だ!)
自分の直感を信じて左に慎重に進む。

(・・・何とか階段までは無事に着いたが・・・降りられるか?)
慎重に階段を降りる播磨。
(な・何とか三階に着いた。このまま降りる・・・!)
下から誰かが上がって来る。
「播磨さん・・・どこにいるんでしょうか?」
「それは私が知りたいわ。でも本当にドコかしら?」
(く・・・下から来るか・・・仕方ねえ、そこの教室に入る)
またまた一番近い教室に入る播磨。

(なんだココは。ダンボールだらけだな・・・ってここ2−Cの教室だな。・・・こっち来た!どこに・・・これしかねえ)
ダンボールの中に身を潜める(よく入ったな)播磨。

「ねえ、今ここから物音しなかった?」
「はい・・・聞こえました」
愛理と八雲が2−Cに入って来る。
(頼む・・・・・・)
「ねえ、何か有った?」
「何も無いです・・・」
「そうよね、気のせいよね・・・」
教室を出て行く二人。
(行ったか、でもまだ油断は出来ねえ・・・・・・)
三分ほどダンボールの中で耐える播磨。
(・・・大丈夫だな。そうだ、これを使おう)
ダンボールをもって移動を始める播磨。(メタル○ア?)

(・・・そこの階段は危険なような気がする。向こうのを使うか・・・)
先ほど使った階段を避けて移動を開始する播磨。
(・・・・・・ア・アレは・・・く・どこかダンボールの置いてても不自然じゃないところは・・・そこしかねえ!)
ゴミ箱の横にダンボールを被って隠れる播磨。
「ハリオ、ドコなの?」
「姉ヶ崎先生、ここに拳児君は居ないと思いますが・・・」
「絶対居ます!」
「何を根拠に・・・」
「愛の力です。二人は見えない糸で・・・」
「繋がってません。拳児君は私と・・・」
「結ばれません」
なにやら違う方向に熱くなる二人。
「だいたい、モデルガンでパンパン撃つのはどうかと思いますよ」
(そうそう、アレは痛いんだ)
「そういう姉ヶ崎先生は拳児君の原稿に二条先生のファンと書いたそうじゃないですか」
(ああ、アレはショックだった)
二人の口喧嘩は三分ほど続いた。

「・・・ここで私たちが争ってても拳児君は見つからない」
「そうですね、ここは一時休戦ということで」
向こう側に行ってしまう二人。
(よし、何とかやり過ごした・・・よし、階段を降りる・・・!)
下の階段からララが上ってくる。
「ハリマ・・・一体ドコニ・・・見つけたら・・・」
(見つけたらの後が聞こえなかった・・・まさかボコボコにされる?と・とにかくどこかに隠れないと・・・お・あんなところにダンボールの山が)
ダンボールの山に紛れ込む播磨。
ララがなかなかその場から動かないうちにどんどん人が集まってきて全員が揃う。
どうやら播磨は集合場所の近くに隠れてしまったらしい。

「ねえ、本当にどこにもいないわよ」
「ああ、これで全部捜したろ?」
「あ・あの、靴は・・・」
「まだ有ったわ」
「拳児君は一体何処に・・・」
「ハリオ、どこかでおなか空かせてるんじゃ・・・」
「・・・モウ一回捜ソウ」
ララの提案に全員が賛成したその直後。
ぐーぎゅるるるるる。
誰か(播磨)のおなかの音が鳴った。
(しまったぁぁぁぁぁぁ!!)
「ねえ、今の誰?もしかして・・・美琴?」
「んな分けないだろ?大体もっと遠くから聞こえてきたんだし・・・」
「アレ・・・怪しいですね」
「そうね、誰が隠れてるのかしら?」
「全く、今私たちは忙しいのに」
「本当です。ぱっぱと済ませましょう」
「アア、そうダナ、行くゾスオウ」
「おう、任せろ」
不審者が隠れてると思ってやる気満々の二人。しかし播磨は。
(な・やっぱり俺をボコボコにする気だったんだ・・・く・どうする)
美琴とララが播磨のダンボールのすぐ近くに来る。
「さあ、覚悟は出来てるだろうな?」
「全くダ、今私は機嫌ガ悪イ」
指をバキバキと鳴らす二人。
(・・・よし、俺も漢だ。ここは潔く・・・・・・逃げる)
播磨拳児男らしくない。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
ダンボールから飛び出す播磨。そして一目散に逃走を開始する。
それを播磨と確認した女性達は走って追いかける。
(お・追ってきた。だが、逃げ切る!!)

自分でもどこを走ったか良く覚えていない。とりあえず目の前にあった扉を開けて鍵を閉めた。
「はあ・はあ・はあ・・・も・もう来ないだろ・・・・・・!」
アレかが播磨の肩を叩いてきたのだ。
そして恐る恐る振り向く播磨。そこには・・・
「アラ?どうしたの播磨君。こんな所に」
どうやら播磨が入った教室は美術室のようであった。
「そ・その・・・追われてて」
「・・・絃子先輩達に?」
「はい・・・」
「でもどうして追われてるの?」
「それは・・・」
自分が今日の練習をサボった事。その原因となった昼の出来事。そして先ほどのセリフを全て葉子に話す播磨。

「・・・と言う訳ッス」
「それは逃げたくもなるわね・・・これからどうするの?このまま帰ってもなんだし・・・家に来る?」
「え・・・でも迷惑じゃ・・・」
「そんな事気にしなくていいのよ。どう?」
「お願いします」
「じゃあ、どうやって外に出よう・・・そうだ、私のサンダルを貸してあげるからそれでそこの窓から駐車場に行って待ってて」
「どうも・・・」
葉子の提案どおりに窓から駐車場へと向かう播磨。
そして五分ほどして葉子がやってくる。


告白編と逃走編です。
前はココまで投稿していたので次からは一応新作になります。

Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.9 )
日時: 2005/09/26 23:48
名前: ACE

ここで視点を葉子にしてみよう。
駐車場の自分の車に近づくとしゃがんで待っている播磨が居た。
「ゴメンね、待たせて」
「いえ、これくらい」
「ふふ、じゃあ行きましょうか」
車に乗り込む二人。

二人車の中にて
「すいません、本当に」
「いいのよ別に」
「いや、何てお礼を言ったらいいか・・・」
「気にしないで。それよりも播磨君は誰が一番好きなの?」
「な・何を・・・」
「で・誰なの?」
「その・・・自分でも良く分からないんだ・・・自分でも最低だと思うけどさ・・・」
「まあ、それは播磨君のせいじゃないよ」
「でも・・・普通じゃないッスよ、同時に何人も好きになるって」
「そう、誰が一番大切なのか分からないのね?」
(私にもチャンスがあるかもね・・・)
「はい・・・」
「うーん、まあ・時間はまだ沢山あるんだから。ゆっくり考えていけばいいよ」
「どうも・・・」
何か気まずくなり、結局家に着くまで一言も会話は無かった。

「どうぞ、少し散らかってるけど」
「お邪魔します」
葉子邸に入る播磨。
「晩御飯は・・・」
ぐぅーぎゅるるる
播磨のおなかの音が鳴る。
「まだみたいね」
「・・・そうッス」
「じゃあ、今作るから少し待っててね」

手際よく十分ほどで晩御飯を食卓に並べ終える。
「凄いッスね」
「昨日の残り物が殆どだから・・・さあ、食べましょう」
「いただきます!」
ものすごい勢いで食べ始める播磨。
(凄い食べっぷりね、惚れ惚れしちゃうわ)
「美味いッス!」
「そう?ありがとう。でも毎日美味しいお昼を食べてるでしょ?」
「今日はそれ所じゃ無くて・・・」
「そんなに緊張してたの?」
「ええ・・・」
「そう・・・じゃあ、お酒飲もうか」
「いいッスね!」
酒盛りを始める二人。

酒盛りが始まりしばらく経つ。
「・・・そうだ、酔っちゃう前にお風呂に入ったら?」
「分かりました。じゃあ、お先に失礼します」
風呂場に向かう播磨。
播磨が風呂場に入った直後に携帯に電話がかかる。
「誰かしら・・・絃子先輩か」
電話の相手は絃子だった。

「もしもし、どうしたんですか?」
「うう・・・実は拳児君が帰ってこないんだ・・・」
すでに酔い始めている様子の絃子。
「大丈夫ですか?それよりも帰ってこない心当たりは有りますか?」
「何も・・・無い・・・」
「たとえば怒ったとか・・・」
「いや・・・心配になって皆で学校中を捜したんだが見つからなくて・・・」
(怒ってたんじゃなかったんだ・・・)
「・・・葉子?」
「ご・ごめんなさい」
「それに、一番最初に彼を見つけたらデートまで出来たのに・・・」
聞いてもいないのにぺらぺら話し始める絃子。
(へえ、そんな特典があったんだ・・・って事は私がその権利があるって事ね)
「ま・まあ、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられるか・・・拳児君が・・・帰ってこないんだぞ?」
「ま・まあ、彼ももう子供じゃないんですから一日くらい帰ってこなくても心配ないですって」
「私が耐えられない・・・葉子、今夜一晩泊めてくれ・・・」
「それはちょっと・・・」
「どうしてだ?頼む・・・葉子しか頼れないんだ・・・」
(う・うーん、どうしよう・・・彼とあわせるのはマズイと思うんだけど・・・絃子先輩も心配だし・・・・・・)
「・・・分かりました、お酒を飲んでるんだから歩いてゆっくり来て下さいよ?」
「ありがとう・・・葉子」
電話が切れる。

(結局呼んじゃったな・・・・・・でもどうして私は躊躇ったのかな・・・まさか私も彼の事が・・・)
播磨が風呂場から出てくる。
「そこにあったタオル使わせてもらいました」
「ええ、いいのよ」
(・・・やっぱりいい体してるわね・・・それに顔も結構私好みかもしれないし、優しいし・・・・・・)
「あの・・・葉子さん?何か俺の顔についてますか」
どうやらじっと播磨のことを見つめていたらしい。
(い・いやだ・・・私ったら・・・)
自分でも顔が真っ赤になったのが分かった。
「大丈夫ッスか?顔がなんだか赤いけど・・・」
「う・ううん、何でも無いの大丈夫だから・・・」
「でも・・・」
「本当に大丈夫だから。でも何でそんなに心配してくれるの?」
「・・・心配するのに理由は要らないと思う・・・・・・変ッスか?」
「・・・そうだね、その通りだよね」
(多分この優しさが皆好きなのね・・・・・・私も・・・)
「ねえ、播磨君・・・ちょっとこっちに来て」
言われた通りに葉子のそばによってくる播磨。
「何スか?」
「・・・・・・私のことどう思うかな?」
「どうって・・・」
「私は・・・・・・君の事が好きかな・・・男の人として」
「も・もう酔ったんですか?」
「酔ってないわ。私は本気・・・」
播磨に近づく葉子。
「・・・の・飲みましょう!」
地下買うのビールに手を伸ばそうとする播磨。
「播磨君!」
播磨を押し倒す葉子。
「ねえ、答えて・・・私のことどう思う?異性として・・・」
「だ・ダメですって・・・」
「ねえ、どうなの?」
播磨の顔に顔を近づける葉子。
「私は君にキスだって出来るよ?」
「だ・ダメですって・・・」
二人の唇が近づく。
そして触れるか触れないかというところで・・・
ピンポーン
絃子が来たようだった。
「だ・誰か来ましたよ・・・」
そう言って葉子を押しのける播磨。
(もう・・・絃子先輩のせいで・・・・・・)
とりあえず心の中で絃子に愚痴る葉子。

玄関のドアを開ける。
「いらっしゃい、ずいぶんと早かったですね」
「どうした?葉子。何だか顔が引きつってるぞ?」
「何でもないですよ、上がってください。先客が居ますけど」
(はあ、ついてなかったな・・・・・・)

「誰だ?先客・・・・・・拳児君?」
「げっ、絃子・・・」
「どうして君がココにいるのかね?」
「ま・まさか客って絃子・・・」
「拳児君・・・・・・」
なにやら物凄いオーラを発する絃子。
「ス・スマン。俺が悪かった!許してくれ」
土下座して誤る播磨。
それに無言で近づく絃子。
「本当にスマン絃子・・・絃子さん」
播磨の目の前に到着する絃子。
「拳児君・・・・・・」
「すいません・・・許してください絃子さん」
「顔を上げたまえ・・・」
絃子に言われた通りに恐る恐る顔を上げる播磨。
「全く・・・全く君って奴は・・・」
「ほ・本当にゴメン絃子さ・・・ん?」
播磨に抱きつく絃子。
「私がどれだけ君の事を心配したか分かるかね?」
「怒ってないのか?」
「何で私が君を怒るんだ?」
「だって、さっき学校で・・・」
「アレは・・・君の事が心配で捜していたんだ・・・」
「だ・だって、ダンボールのところで・・・アレはどう考えてもボコボコにする気満々だった・・・」
「それは誰か不審者だと思ったからで、別に君をそうするつもりは全く無かったよ・・・」
「じ・じゃあ、もしかして俺の勘違いで・・・」
「ああそうだよ」
播磨から離れる絃子。

「それはそうと・・・葉子?これはどういうことかね・・・」
絃子の怒りの矛先が葉子に向けられる。
「だって先輩、何も聞かなかったじゃないですか・・・」
「た・確かにそうかも知れないが・・・知ってたら教えるだろう?普通」
「でも彼の逃げた理由を聞いてたから・・・」
「理由?何が理由なのだね・・・拳児君」
「そ・それは・・・」
「私が話しますよ。今日のお昼・・・そうとう緊迫した空気だったみたいですね」
「そ・それは・・・」
「彼、それが恐くて逃げたんですよ。だから練習もサボって・・・」
「だ・だからって、逃げる事は・・・」
「だって、同じ日に名前を呼ばれて捜してたら怒られるって思っても何も不思議じゃないですよ。だから、彼を責めるのはダメですよ・・・」
「・・・分かったよ。拳児君、本当にすまない」
「いや・・・分かってくれればいいんだよ」
「ありがとう・・・そうだ、他の人にもちゃんと後で連絡するんだよ。皆心配してるんだ」
「ああ、分かってるさ」
どうやら解決したようである。
「・・・さて、お二人共今日はどうします?どうせだから三人で飲みましょうよ」
「・・・それもいいな」
「そうだな」
三人で飲む事が決定した。

「じゃあ、乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯」
一気にグラスの中身を飲み干す三人。
「・・・ふう、やっぱりお酒は暗い気分で飲むものじゃないな」
「ふふ、そうですね」
「・・・・・・」
「どうかしたのかね?拳児君。ボーっとして」
「・・・ちょっと考え事してた」
「何を考えていたんだね?」
「・・・・・・それは言えない」
(きっとさっきの事ね、彼は私のことをどう思ってるかしら・・・)
少し遅れたかも知れないが葉子の恋が始まった。



葉子の恋編でした。次回は、播磨拳児・衝撃のファーストキス編を予定しております。
いつも読んで頂いてありがとうございます。
またまた次回にクイズを
播磨のファーストキスの相手は誰でしょう?
ヒントは・・・一度以上出場しているです。
正解者から抽選でリクエストを受け付けたいと思います。
今回は簡単だけど難しい問題だと思うのですが皆さんの参加を待っております。

私は心底意地悪ですので・・・・・・。


Re: HARIMA“World”(播磨メインと女性達) ( No.10 )
日時: 2005/09/26 23:49
名前: ACE

またまた播磨に視点を戻してみよう。
時間は先ほどから殆どたってはいない。
「…そうだ、みんなにメールで謝らないと」
「なんで誤るのにメールなのかね?」
「…電話だとかける順番でまた喧嘩になりそうだからよ」
「ふむ、それもそうか…」
メールの内容は
『みんなにはずいぶんと心配をかけたようですまなかった。今日の昼のことで頭がいっぱいで何も考えられなかったんだ。その事で怒られると思って学校ではつい逃げちまった。もし許されるのならば自分勝手だと思うがこのメールに返事を出さないで明日何も言わずに今まで通りに接してほしい』
という簡単な内容のメールを全員に送った播磨。(いつの間にメルアド交換したんだ?って突っ込みは無しで)
「ずいぶんと変わった内容だね」
「いや…こうしないと絶対喧嘩になると思ったから…」
播磨少しは学習した。
「さてと、飲もうぜ!」

三人の宴会が始まり三時間ほど経過する。
絃子と葉子はすでに酔いつぶれていた。
ちなみにこの間一度も播磨の携帯はならなかった。
「……なんだよ、もう十二時過ぎてるじゃねえか。二人とも、こんなところで寝てると風邪引くぞ」
二人をゆすってみるが一向に起きる様子がない。
「まったく、仕方ねえ、ベッドまで運ぶか。でもどっちから…葉子さんからだな、ここは葉子さんの部屋だし」
葉子を抱きかかえる播磨。
「ん…播磨く・ん…」
「どんな夢を見てるんだか…」
きっといい夢であろう。
起こさないように慎重にベッドまで運んで着いたところでゆっくりと降ろす。
「さて、次は…と」
絃子の側まで寄ってゆっくりと抱き上げる播磨。
「こうして寝てると…ほんとに子供みたいだな。もう少し普段からこんな風に笑ってればいいんだけどな…」
「拳児君はその方がいいかい?」
「起きてたのか…」
どうやら抱き上げた際の揺れで絃子を起こしてしまったらしい。
「で・どうなのだい?」
「ずっとニコニコしてろとは言わないが、いっつもキツイ顔ってのもどうかと思うぜ」
「そうか…」
「ま・気にするな・それが絃子の魅力でもあるんだし」
何気に殺し文句。
「…ありがとう」
「葉子さんと同じベッドでいいよな?」
「拳児君は…」
「俺はソファーだ、男だしな」
そういいながら絃子をゆっくりと葉子の隣に降ろす播磨。
「お休み、拳児君」
「ああ、おやすみ」
そう言ってリビングに戻る播磨。

一人でゆっくりと飲みなおす播磨。
「ふう、やっと一人で飲める。しかし、葉子さんにまで告白されるなんて…俺はいったいどうしたらいいんだよ…ハア…」
播磨の夜は終わらない。

「……明るい、今・何時だ?」
時計の針は六時半を指していた。どうやら考えているうちに寝ていたらしい。
「二人を起しに行かないと」
まだ頭がはっきりしない状態でフラフラと葉子たちのいる部屋の前まで進む播磨。
「おーい、時間だ起きてくれ」
ノックをしながら呼んでみるが中から反応は返ってこない。
「…全く、入るからな」
部屋に入って二人の眠るベッドの前まで進む播磨。
「二人とも、起きてくれ・そろそろ準備を始めないと学校に遅れるぞ」
しかし二人とも全く起きる様子がない。
「起きろ、早くしろって」
何度呼んでもうーんと唸るだけで起きない二人。
「く…どうすればいい。なにかいい手は……ない」
とくにいい考えの浮かばないままとりあえず耳元で叫ぼうと二人に顔を近づけると、ちょうどその時に絃子が目を開ける。
「…拳児君?」
「イ・イヤ…俺はただ起そうと…」
全てを言い切る前に絃子によってベッドに引きずり込まれる。
「うおっ?な・何を…」
「何も言わなくてもいいよ。その気になってくれただけでも…」
「何です?こんな朝から」
どうやら今の衝撃で目が覚めたようだ。
「なんだ葉子か…って、何で私の部屋に葉子が…」
「先輩…ここは私の部屋ですよ」
「ま・待ってくれ……思い出したよ」
絃子が葉子と話しをしているうちに脱出をした播磨は
「と・とにかく、急がないと二人とも遅れるぞ」
それだけ行ってリビングに逃走する播磨。
二人とも酒を飲んだままの格好で寝ていたので朝の準備に多少のトラブルはあったが特に何もなく昼休みを迎えた。

「もう昼か…」
「ねぇ、播磨君…」
「悪いけど、今日だけそっとしておいてくれ…」
それだけ言って教室を出て行く播磨。

「……どうすればみんな仲良くしてくれるんだよ…イヤ、俺がハッキリしないから悪いのか」
そんな事を考えながら水飲み場へ向かう播磨。
そして、ちょうど角を曲がった瞬間すぐ前にハリーが全力でこちらに向かって走っていた。
「…ハリー?」
「ナ・ハリマ?」
ハリーが止まれるはずもなく二人は激突する。
(ッテー、ハリーの野郎……何か口に変な感触が……何ぃ!?)
ハリーが播磨を押し倒す形となってキスをしていた。
このとき何やら物音がしたが今の二人は気づかない。
ハリーを突き飛ばして
「テ・テメェ…何しやがる」
「ソレハコチラの台詞ダ」
立ち上がってにらみ合う二人
「テメーを倒す前にまずやることがある」
「同感ダ…」
水飲み場へダッシュする二人。
そして、これでもかという位何度も口を洗う。
「…さて、ケリをつけようか」
「望ム所ダ」

ファイティングポーズをとって対峙する二人。
「いつかはテメーとケリをつけようと思ってたんだ。名前も被ってるしな!」
「フ…私ニハ勝てナイ」
「言ってろ!行くぞ。奥義・播拳龍襲(ハリケーンドラゴン)!!」
「フ…当たらんヨ」
播拳龍襲を全て避けるハリー
「な…」
「今度ハ私カラ行くゾ」
超高速ミドルキックを放つハリー
「かかったな!新奥義・龍襲播拳(ドラゴンハリケーン)」
ハリーの足を取って体ごと回転する播磨。(ようするにドラゴンスクリューの回転数が増したもの)
「ふん、これでテメーの足は潰させてもらったぜ」
見事に龍襲播拳が決まったため、膝を押さえながらゆっくりと立ち上がるハリー
「マダダ…マダ終わらんヨ」

本来ならばハリーのほうが早いはずなのだが足を痛めている為に、差が全くと言っていいほど無くなったためお互いの攻撃はほぼ全て当たっていた。
そして死闘がはじめって五分ほど経つ
「ハア・ハア…ハリーもなかなかやるな」
「そちらモナ…」
お互いにもう殴りあう理由はなかった。
「ま・お互いに運がなかったんだよ」
「そうダナ…」
暑い握手を交わす二人。
どうやら拳で語り合ううちに分かり合えたらしい。



どうも、ずいぶんと更新が遅れてすいませんでした。
読んでもらえばお分かりの通りに正解はハリーです。
タイトルにあえて播磨拳児と入れてあったのが隠れヒントでした。
次回はヌード事件2編を予定しております。
意見・感想待っています。

 


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