HE WAS GOD HYPER ONIGI RE−MIX
日時: 2005/11/17 00:53
名前: くらんきー

《前書き》
 この物語は、S3で書いていたHE WAS GODの別バージョンエンディングです。HE WAS GODで言うと晶に漫画を見せた後、ミコ斗の拳のちょっと前くらいの時間設定です。
 HE WAS GODを読んでない方でも話が分かるように書くつもりですので、見てやってもらえれば嬉しいです。

*このSS内で―――(・・・)の様な書き方をしている場面がありますが、この場合の(・・・)は『柱ツッコミ』のようなものです。

 ちなみに―――(・・・)―――の様な場合、(・・・)は時間や場所を表しています。






HE WAS GOD 〜HYPER ONIGI RE−MIX〜



「あなたは・・・・・男の人・・・好き・・・?」



 ・・・解らない・・・



 これは自称、幽霊の女の子からの質問。・・・そして・・・今日、同じ質問を高野先輩からされた。・・・『男の子』の部分が『播磨さん』に換わってたけど・・・

 そう見えるのかな・・・?私が・・・播磨さんのこと・・・・・好きだって・・・
 姉さんも、サラも、私と播磨さんが付き合ってるって思ってるし・・・
 ・・・あれ?でも高野先輩、私と播磨さんが付き合ってないのを知ってるかのような質問の仕方だったな・・・
 知ってるのかな?先輩、何でも知ってそうだから・・・
 播磨さんは・・・迷惑だろうな・・・だって・・・・・播磨さんの好きな人は・・・・・


「八雲!お鍋が!火止めて!」
「え?・・・・・あ!(やっちゃった・・・)」

 鍋が溢れそうなのに気付き天満が声をかけたが、八雲が気付いた時にはもう鍋が溢れていた。

「・・・だいじょうぶかな?」
 晩御飯を作り直す必要があるかどうか心配な八雲。それでも恐らく、天満の料理よりは美味しいのだろう。

「八雲、今日はちょっといつもと違うメニューにしようよ!」

「え?」

 (八雲、元気ないなあ。楽しいことしたら元気になるよね!)
「前みたいにね、私が書いたものを入れるのよ」

 そう言って楽しそうに天満が何やら書き始めた。

「・・・うん(姉さん・・・)」

「さあ、どっちだ?」
 (右手に ナタデココ。左手に おはぎだぞ)

「右手に持ってる方・・・」

 姉さん、また変な物ばかり・・・前はたまたま右手と左手 間違えてたけど、そう何回も間違えないよね。
 そう考えて疑わない八雲が、天満の右手から渡された紙を受取る。・・・と、そこには・・・

「姉さん・・・今、素で間違えたでしょ・・・?」

 おはぎと書かれた紙を持つ八雲が抗議の声をあげる。心が読めるのを知っていて裏をかいているのかと思わせるほどだ。やはり姉、天満は彼女にとって侮れない存在である。

「ちっがうも〜ん♪」



 ―――塚本 天満、甘いもの好き。



「・・・じゃあ、おはぎ入れるよ?シチューに・・・」

 変な匂いがする鍋と格闘しながら八雲は思う。やっぱり姉さんが一番・・・と。




 ―――翌日―――


「おはよう、八雲!」
 元気いっぱいに挨拶しながら金髪の少女が駆け寄ってくる。彼女は八雲の親友のサラ・アディエマスだ。

「おはよう、サラ」
「・・・どうしたの?八雲、元気ないね」
「え?」

 笑顔だった親友の顔が少し曇る。天満より、いや、普通の人よりも感情を顔に表すことの少ない八雲だが、見る人間が見れば彼女がいつもより元気がないことが分かる。姉である天満もそうだし、親友であるサラもそうだ。サラは心配そうに声をかけてきた。

「・・・ううん。なんでもないよ、サラ」

 まだ昨日の事を引きずってるのかも知れない。幽霊の女の子に質問されて以来、何度か頭をよぎる事はあった。高野先輩に同じ質問をされたから余計なのかな?
 私は男の人と普通に話せる。ううん、違う。“あの人”とは普通に話せる。私は“あの人”の事をどう思ってるんだろう?
 気が付くとそんな事を考えている。姉さんにもサラにも心配をかけたくないのに・・・

「そう?(う〜んやっぱり元気ないなあ。何か八雲が元気になりそうなこと無いかなあ?・・・・・って、ん?あれは・・・)」

 色々考えていたサラだが、ふと目をやると一人の人物が目に映る。
 その人物は、元ヒゲ、元ハゲ、元漁師の高校生。ついでに言うと、ちっさな頃から悪ガキで、十五で魔王と呼ばれた人物・・・まあそのような履歴を持つ高校生はこの人物を除いて他にいないだろう。

「播磨センパ〜イ!」

 彼の名は播磨 拳児と言った。

「ん?」

 偶然近くを通りかかった播磨に、サラがカバンを持っている方と逆の手をブンブンと振って話しかける。

「おはようございます。先輩!」
「おはようございます・・・播磨さん」

「よう、妹さんと、その友達」
「サラです!ちゃんと覚えて下さいよ!」

 何度も会った事があるのに未だ名前を覚えてない播磨に、サラは ぷうっと頬を膨らませて見せる。

「ワ、ワリィ・・・覚えとくぜ。名字は何だ?」

 自分の親友である八雲の親友なのだ。今の呼び方はマズかったか・・・と思った播磨は脳を最大限に働かせ、サラの名前を覚えようとする。

「(名字?ファミリーネームの事ね?)アディエマスです。覚えてくれました?」
「ああ、ちゃんと覚えたぜ!名字が阿出増で名前が沙羅だな?」

 因みにこの男、サラは日本人、もしくはハーフだと思っている。自分のクラスにも似たようなのがいるし珍しくも何ともねえぜ!・・・などと思っている播磨は、サラの名前を脳内で勝手に『阿出増 沙羅』と漢字変換していた。



 ―――播磨 拳児、バカ。確認。



「・・・微妙に発音が違いますけど・・・まあ、そんなことよりですね」

 何だか違和感を感じたサラだったがそのまま続けた。

「播磨先輩、今日 八雲、何だか元気ないと思いません?」
「サ、サラ!」

「え?」

 思わずサラの制服の左肘の辺りを掴んで、サラを呼び止める八雲。心なしか顔が赤いのは気のせいでは無いだろう。
 その様子を見ていた播磨は、いつもと変わんねえと思うんだが・・・と思っていたが、ふとさっきの事を思い出す。

 そういや さっきまで妹さん元気なかったような・・・何と言うか、いつもより表情が輝いてなかったっつーか・・・天満ちゃん程じゃないが、普段の妹さんはもっとイキイキしてたっつーか・・・

「そういや さっきまでは元気無かったよな、妹さん」
「え?い、いえ、そんなことは・・・」

「ですよねぇ?そこで先輩にお願いしたいことがあるんですよ。八雲を元気にする為に」

 ・・・妹さんが元気がない・・・天満ちゃんと喧嘩でもしたのか?・・・いや、んなこたー考えられねえ!・・・となると・・・・・
 ・・・ハッ!ま、まさか!! いや、それしか考えられねえ!!

「分かったぜ!」
「「え?」」


 まだ何も言ってないんですけど・・・


「妹さんにそんな顔は似合わねえ!俺が笑顔に変えてみせるぜ!」
「は、播磨さん?」
「流石、先輩!(彼女想いの彼でよかったね八雲!)」

「フッ・・・当然だぜ。俺の義妹さんだからな・・・」
「あ、あの・・・?」
「よかったね!八雲!」

 サラは限りなく嬉しそうだし、八雲は真っ赤で 頭から湯気が出ていたとか出ていなかったとか・・・
 そして二人は気付いていない(当然だが)。播磨の言葉に微妙な違いがあることを・・・
 そう、「妹さん」から「義妹さん」になっている。因みに播磨の脳内では・・・

 妹さんがあそこまで沈んでいるとは・・・考えられる理由は一つしかねえ!どうせメガネが正々堂々とストーカー行為をして妹さんを困らせたに違ぇねえ!・・・俺の将来の義妹に・・・許せん!!

 ・・・てな具合だったりする。
 って言うか そんな誤解を招くような事ばっかり言ってるから 色々なフラグが立つのだということに彼は気付かない・・・

「まあ任せな!あのメガネは明日から病院生活だぜ!」
「「は?」」

 播磨の見当違いな返答に顔を見合わせる二人。



 ―――播磨 拳児、勘違いは一年中。



「あ、あの・・・播磨さん?」
「妹さん、気にするこた無いぜ。俺もそろそろアイツとは決着を付けないといけねぇ って思ってたからな」

「播磨さん、それは違・・・」
「じゃあ、それは又の機会にお願いします」
「サ、サラ!?」



 ―――サラ・アディエマス、高校一年生。ちょっと黒い。



「もう!先輩、私が言いたかったのはですね・・・」

 そこまで言ってから一つ間を置き、大きく息を吸う。そして・・・

「八雲が元気ないので 彼氏である播磨先輩は八雲を元気付けるために 二人で仲良く登校する義務があるんです。じゃあ、私は邪魔みたいなのでお先に失礼しますねー!」

 勢いよくそこまで喋ったかと思うとダッシュで走り去ってしまうサラ。その際、「ちゃんと遠回りしてくるんですよー!」と言っていたのは間違いではないはず。

「サ、サラ!」

 顔を真っ赤にして中途半端な所まで挙げた手を空中に止めたまま、サラが見えなくなるまでその姿勢でいる八雲。
 そして、恐る恐る播磨の方を覗き見る。

「ス、スミマセン!播磨さん!」
「妹さんが謝ることじゃねーだろ」

 まるで自分が悪いことをしたかのように謝る八雲を播磨が止める。

「それにしても、塚本か・・・アイツは・・・」
「・・・播磨さんも思いますか?何だか似てるところありますよね?(私を心配してくれている所なんかも・・・)」

 サラが走り去った方を見つめ、クスリと笑う八雲。

「じゃ、行くか?(妹さん、元気出たじゃねーか)」
「は、はい!」

 その時、私は確かに笑っていた。その気持ちの正体に気付かずに、私は播磨さんの横を歩き出す。


続く・・・


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