おまけ話とあとがきです。 ( No.4 )
日時: 2005/10/05 18:35
名前: ウエスト

おまけ話:看病しましょ♪(播磨、絃子、妙、八雲、愛理)





学校で大惨事が起こってるころ、播磨は自分の部屋で大人しく寝ていた。
昨日、看病していた絃子の風邪がうつったようだ。それプラス昨日は眠れなかったので、睡眠不足も加わり起きていられない状況なのだ。
絃子が学校へといった後、播磨はすぐに薬を飲んで眠りについた。
―それから5時間後、時計は午後二時を指していた。播磨が目を覚ました。

「くぁ……。う〜ん、よく寝た〜。昨日は慣れねぇことしたせいか体がだりぃんだよなぁ。おまけに絃子の風邪がうつったおかげで頭痛ぇし……」
「でもまぁ、朝に比べりゃずいぶんマシだな。腹も減ったし、適当につまんでおくか」

眠りから覚めた播磨がまずした事は腹ごしらえだった。サングラスをつけることではない。
今日は誰もいないと思ってサングラスをつけていないのだ。
腹ごしらえといっても自炊能力はかなり低い播磨。米が炊いていないことに気付き、カップ麺で済ませようと思ったその時だった。

ガチャ。
「ただいまー。拳児くん、起きてるかい?」
「お邪魔しまーす。ハリオー、大丈夫?」
(ん?絃子のやつ、もう帰ってきたのか?まだ授業中だよな……。それにもう一人いるのは気のせいか?)
「何だ、起きてるじゃないか。ただいまの一言くらい言ってくれてもいいじゃないか」
「ハリオ、動いても平気?まだ寝てた方がいいわ。無理すると治るものも治らないわよ?」
「……ちょっと待て。まだ学校が終わってねーのに何で絃子が帰ってくるんだ?それにお姉さんまで一緒になって……」

播磨は驚いていた。まだ学校が終わってもいないのに絃子が帰ってきたことに。
それ以上に不可解なのは一緒にいる人間が葉子ではなく妙だったことだ。
普段ではお目にかかれない光景に播磨は少し混乱していた。

「絃子さん、ハリオにお粥作ってあげたいんですけど、お米はどこですか?」
「そうか、妙は初めてだったね。米ならシンクの下にあるからそれを使ってくれ」
「分かりました。じゃあ、お米を洗って炊飯器のスイッチを入れたらハリオの部屋に行きますから、絃子さんはハリオのことをお願いします」
「ああ。さあ、拳児くんは大人しく部屋に戻ろうか」

段取り良く、絃子と妙は播磨の看病の準備を進めた。播磨の意志は一切無視して……





自分の部屋に戻ってきた播磨は、今の状況の説明を絃子に求めた。

「おい絃子、これは一体どーゆーつもりだ?それに何でお姉さんまで一緒にいるんだ?」
「どーゆーつもりと言われてもだな、ただ単に拳児くんの看病に戻ってきただけだよ。そんなに可笑しなことかい?」
「じょ、じょ、冗談じゃねー!絃子が看病??また俺をからかって、さらに悪化させる気だろ!」
「拳児くん、私はそんなつもりは……」
「いいから余計なことしなくていーから、さっさと「ガチャ」出て……いってくれねーか?」

絃子の看病の申し出を激しい態度で断っている所に、お粥の準備を済ませてきた妙が入って来た。
普段、滅多に使わないエプロンを着用して。
播磨に拒絶されたことがショックだった絃子は、言われたとおり出て行こうとした。
しかしそれを止めたのは妙だった。

「絃子さん、待ってください。……ハリオ」
「な、何すか?」
パァン!

播磨は咄嗟に左頬を押さえていたが、状況はいまいち掴みきれていなかった。
それはただ見ていた絃子も同様だった。というよりは理解できなかったのだろう。あの大人しそうな妙が、人を叩いている光景が。
妙は播磨の目を見て、説教を始めた。

「ハリオ、どうして出て行けなんて言ったの?絃子さんに失礼でしょ」
「いや、でも、絃子のやつ、前に俺が風邪を引いた時に散々からかってさらに病状を悪化させたんだぜ?」
「だからって、ハリオは絃子さんが同じことするように見えるの?」
「いいよ、妙。私がいなくなったほうが拳児くんが楽になるならそれに越したことはない。だから大人しく……」
「ダメです。絃子さんはハリオの看病がしたい一心で帰ってきたじゃないですか?だったらそんなことは言わないで下さい。素直になりましょ?」
「……うん」

出て行こうとした絃子の引止めに成功した妙。
そのやり取りを見ていた播磨は、いつもとは全く立場の違う光景に呆然としていた。
再び妙は、播磨のほうへと向き直り、話を再開した。

「いい、ハリオ。絃子さんはハリオのことが本当に心配で帰ってきたの。だからそんな風に人を拒絶するようなことは言っちゃダメ」
「…………」
「人の好意は素直に受け取っておくもの。それがハリオのことを愛してくれる人なら尚更、ね♪」
「た、た、妙!!何もそこまで言ってくれなくても、いつか私から言うつもりだったのに……」
「すみません、つい勢いで。あ、そろそろお粥の出来上がる時間だから、持ってきますね。ハリオ、ちゃんと謝るのよ、いい?」
「……お、おぅ?」
「しっかりして。あとで鶏肉の入った和風ダシの効いてるお粥、持ってきてあげるから」

妙は播磨の部屋を出て行った。取り残されたのは、播磨と絃子の2人。
お互いに妙の言葉が効いてるのか、何を話していいか分からなくなっていた。
沈黙を破ったのは播磨のほうだった。

「すまなかったな、絃子。その、なんだ、お前のこと邪魔者扱いして追い出そうとして」
「いいよ。気にしないと言ったら嘘になるけど、前科があるからね。こちらこそすまなかった」
「バ、バカ!お前が謝ることじゃねーだろ!悪いのは俺なんだぞ!」
「確かにそうだね。よし、思う存分謝りたまえ」
「……って調子にのんな!全くよー。でもまぁ、ようやく絃子らしくなってきたな」
「フフッ。自分でもよく分かるよ。それよりさっき妙が言ってたことなんだが……」

ようやく、いつも通りの関係に戻った播磨と絃子。気持ちはとても晴れやかだった。
それに乗じて、絃子は播磨に自分の本当の気持ち、即ち愛の告白をしようとしていた。若干、勢い任せの感はあるが……
播磨も何かを察してか、真剣な表情になった。
表情は真剣そのものだったが、今の播磨と絃子の距離はとても近く、表情を取り繕うのが精一杯の状態だった。

「お、おぅ」
「私の言葉で言わせてもらうよ。拳児くん、私はずっと昔から君のことが……」
ガチャ。

しかし、告白は外からの来訪者によって遮られることになった。
播磨も絃子もお互いに、ホッとしていた。播磨は何も言われなかったことに、絃子は勢いに任せて告白せずに済んだことを……





絃子がその場のムードに流され告白しようとした時に入って来たのは妙だった。手には播磨に食べさせようとしたお粥、水、お茶、薬が乗ったお盆を持って。
慌てて離れる絃子を見て、少し残念に思いながらも仲直りできたのを確認してホッとしていた。
その光景を後ろに控えてる2名に見られないようにブロックしていた。
妙はお盆を机の上に置いた。播磨はベッドから降りて、床に座った。

「絃子さん、お客さんです。部屋に入れてもいいですよね?」
「客?別に構わないけど。一体誰だい?……君たちは」
「ん?何だ、妹さん……ゲッ!お嬢!!」

妙の後ろについて来ていた2人とは塚本八雲と沢近愛理だった。
絃子は、驚きながらも播磨の見舞いに来てくれる生徒がいることが嬉しい反面、何かと噂の立っている2人なので、不安も持っていた。
播磨は八雲が来たことには不満は無かった。が、愛理の顔を見た途端に、ついつい嫌そうな顔をしてしまった。
そんな顔をされて黙っている愛理ではなく、いきなり播磨の顔面に向かって膝蹴りをプレゼントした。

ガスッ!
「ブッ!!……やい、お嬢!いきなり何しやがる!」
「アンタが悪いんでしょ!人の顔を見るなり露骨に嫌そうにして!」
「い、いやそれはあれだ、ほら、条件反射?」
ベキッ!ゲシッ!ボクッ!
「尚更悪いでしょーが!何よ、せっかく人が心配して来てやったのに……」
「ああ?心配だぁ?だったら……」

播磨はそこで言葉を切った。先程の妙の言葉を思い返していた。
絃子の時のようにならないように、気持ちを落ち着かせて愛理に向き直った。

「ありがとな、お嬢。わざわざ来てもらって」
「な、何よ、ヒゲがお礼言うなんて珍しいわね。それより明後日には出られるの?」
「明後日?明日の間違いではないのかね?」

愛理の「明後日」という言葉に反応したのは播磨ではなく、絃子だった。
その言葉の意味を答えたのは八雲だった。

「えっと、実は今日、学校で笹倉先生が血まみれになって倒れているのを保健室で発見されたそうです。そのまま、病院へ運ばれたみたいで……」
「でもそれじゃあ、説明になってないじゃないか」
「それと関係してるかどうかは分かりませんけど、校舎のあちこちで破壊の跡が見られてるんです」
「……破壊、ねぇ」
「カーテンが切り裂かれてたり、ドアが使い物にならないくらい壊されてたり、生徒や先生も怪我を負ってるとかで大変なんです」
「それで明日が急遽、休校という形をとったわけです。ひょっとしたら犯人がまだ隠れてるかもしれませんから」
「それであなた達2人も早めに帰ることが出来て、ハリオのお見舞いに来たというわけね」
「はい」

絃子もまさか、葉子との鬼ごっこのおかげで休校になるとは夢にも思っていなかったのか、内心ではかなり驚いていた。
大事になりすぎたので、本当のことは言えなかった。
そこで気になったことを八雲、愛理、妙に聞いて来た。

「じゃあひょっとしてみんな、今日はここに泊まって行って、拳児くんの看病をする気なのかい?妙はいいとして、塚本君に沢近君は大丈夫なのか?」
「ええ、姉さんには言っておきました。沢近先輩も一緒にいるって分かったら安心してくれました」
「では沢近君も?」
「ええ、天満にも八雲のこと任されましたし、それに取り立てて用事も無いですから、ヒゲの面倒を見てやろうかと思いまして」
「見てやろうじゃなくて、見てあげたいの間違いでしょ?」

愛理の返事に茶々を入れてきたのは妙だった。
素直じゃない愛理を見て、からかってやろうとイタズラ心が働いたのだ。

「な、何言ってるんですか!ただ私は……」
「素直になりなさい。公表したくないなら私にだけでも教えてくれないかしら?」
「…………」
「そう。素直ね。いい傾向ね♪」
「さて拳児くん、あとは君次第だよ。泊まって行ってもらうか、それとも今すぐ帰ってもらうか、一つ選んでくれ」
(選べって言われてもなぁ。天満ちゃんがいねーんじゃ意味ねーしなー。ここはお姉さんを見習って……)

妙を見習って正直に話し、帰ってもらおうとしていた播磨。
しかし、その決心は八雲のおかげで簡単に揺らぐこととなった。

「播磨さん、もしご迷惑なら今すぐにでも帰りますから。播磨さんの本当の気持ちを聞かせてください」
「……妹さん、迷惑なんかじゃねーって。いいぜ、別に。どうせ、言っても聞かねーだろ?」
「……はい!ありがとうございます」
「決定ね。ハリオの部屋でお泊りなんて嬉しいな♪」
「妙、残念ながら私の部屋で寝てもらうから。塚本君も沢近君もいいかね?」
「「はい」」
「しかし、播磨君もスケベね。学校の中でもトップクラスの美女をはべらせて一日を過ごそうなんて。清々しいまでの正直者ね」
「播磨さんはそんな人じゃありません。私たちが好きでしていることです」
「そう。ならタイトルは『ドキッ!美女4人の心尽くしの看病物語』って所かしら?」
「……君はいつからここにいたんだね、高野君」

途中からさり気なく会話に参加していたのは高野晶だった。
面白いことやトラブルが大好物な晶は、八雲と愛理の2人を見てトラブルの匂いを察知して、後をつけていた。
2人より少し遅れてマンションに入った晶は、色々な所を物色していた。
物色し終わった所、お泊りに関して話してるのを見て、記録に残そうとビデオカメラを回していた。
ビデオカメラに記憶を残し、逃げの準備も万端、早速この場を離れることにした。

「じゃあ私はこれで。播磨君、Hなことはしないでね。私のビデオカメラが回っていないうちは」
「回っててもしねーよ!」

こうして晶はその場をあとにした。
あまりにスッキリした別れ方なので、愛理も絃子も晶の引止めをするのをすっかり忘れていた。
気づいた時には既に遅く、晶は何一つ証拠を残さずにその場から消えた。

「さて拳児くん、今から君を看病するから大人しくしてるんだぞ?」
「あーあ、お粥が冷めちゃった。待っててハリオ。今から温め直すから」
「播磨さん、熱は大丈夫ですか?暖かくしてしっかり睡眠を取って下さいね」
「ほらヒゲ、その服、汗でグッショリだから新しいのに着替えなさい!」

4者4様、看病の仕方は違っていた。
ただ4人が同じものがあるとすれば、播磨を心配する気持ちだろう。
播磨は今回だけは素直に、看病を受け入れることにした。

(どーせなら天満ちゃんにも看病してもらいてーな。……ってこと言ったら間違いなく殺されるだろうな、俺)

本心は心の奥底に隠すことにした。4名の播磨に向けられてる気持ちが何となく理解できたから。
それに何より、死にたくはなかった播磨。今回のことはこれからも活かされていくだろう、多分。





なお今回のことは後日、晶によってばらされることになった。
これが切っ掛けで絃子、妙、八雲、愛理が播磨に対してアプローチすることとなる。
その後、天満に修復不可能までに誤解された播磨が東奔西走することになるが、それはまた別の話。





【終わり】





<あとがき>
おまけどころじゃなかったですね…(汗
本編の方は葉子さんの扱いがかなり酷いものになってしまいました、葉子さんファンの方、ごめんなさい。
もっと策士らしくしたかったんですけど上手く行きませんでした。
妙さん、まともすぎでしょうか?そう書きたかったのでまともと思われたら嬉しいですね♪
絃子さんは可愛く、恐く、知的(?)なイメージがあるので苦労しました。
もっと上手く纏められたら良かった…(涙





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