はなはり(播磨、花井)
日時: 2006/02/12 20:23
名前: あろ

 初めまして、あろと申します。
バカバカしい内容なので頭空っぽで読んでやってください。


『はなはり その1』

 夕闇せまる矢神神社の境内で。
今日も始まる男の戦い。

「播磨あぁぁぁぁ!」
「かかってこいやぁぁ、メガネえぇぇぇ!」

 誤解が誤解をよんで、懲りずに戦うバカ二人。
お互い、些細な勘違い。
力果てるまで、互いの拳をぶつけ合うはずであった………が。

 ゴチィィィン!

 その音が矢神神社に響き渡ると、木々がざわめき、鳥達が一斉に飛び立った。
残されたのは、播磨拳児と花井春樹。
二人は殺虫剤を吹きかけられた昆虫のような格好で、境内に倒れ付していた。
二人の頭には大きなこぶが。

「つッ………くっそぉ、この石頭が。いってー、こぶになってやがる」

 五分後、最初に起き上がったのは播磨であった。
頭のこぶを恐る恐る触りながら、足元に倒れている“播磨”を見下ろした。

「………あれ?」

 やけに視界がはっきりしている。
互いのヘッドバッドの拍子にサングラスが外れちまったのか?
そう思いながら目元に手をやれば、ちゃんとメガネをかけているではないか。

「………メガネ? なんで俺がメガネなんか………うお!」

 サングラスを外したつもりが、いきなり視界がぼやける。輪郭がぼやけて、とてもではないが辺りの視認などできそうもない。
慌ててメガネをつけた。

「わけがわからん」

「う、ううう、播磨め、この僕の頭突きを頭突きで受け返すとは。やるではないか! だが、この花井春樹、このままで終わる男ではない! うおおおお、立て花井春樹!」

 無駄に熱く叫びながら、花井は立ち上がった。
そう、播磨拳児の身体が、である。

「………は?」
「………あれ?」

 お互いの顔を凝視し、二人は同時に叫び声をあげた。

「なんで俺(僕)が目の前にー!!?」

※以下、播磨(中は花井)、花井(中は播磨)でお送りします。


「で、どうやって元に戻るんだよ」

 缶コーヒーを飲みながら心を落ち着けた花井(播磨)が、鋭い目つきで播磨(花井)を見据える。
 異常事態に気づいた直後はさすがの二人もパニックに陥り、とりあえず全裸になりお互いの身体を確かめあい、その後何故か殴り合いをかましつつも(男の自尊心を刺激してしまったらしい)、矢神神社の神主さんが姿を見せたために、もう一度服を着て、とりあえずは近くの公園に移動した。
 
「そんなこと僕にわかるはずがないだろう。勉強は人一倍できるが、こういった非常識な類に関してはまるで不得手だ。君の方が得意そうじゃないか」
「んなこと言ったってなぁ、人間の中身が入れ替わるなんてマンガみたいなこと、どうやって対処したらいいんだよ」
「とはいえ、このままというわけにもいくまい。色々と不都合が生じるじゃないか!」
「もう一回、頭突きをすれば元に戻るんじゃねーか?!」
「それは僕も考えた。危険だと判断したが………よし、物は試しだ、やってみるか」

 そういいながら、二人のバカは互いの腕を掴みながら顔を近づけていく。

「覚悟はいいな?」
「おお」

 ドサッ

「ドサ?」

 二人がその音に仲良く振り返ると、バッグを落として、顔を真っ赤にしている結城つむぎの姿があった。

「結城くんではないか。どうし――」
「あ、あの、お邪魔しましたあ!」

 電光石火、つむぎはカバンを拾い上げると、かわいいお下げ髪をひるがえらせて、走り去っていった。

「………なんだありゃあ?」
「うーむ、なにやら誤解されたかもしれんな」
「なにが。つーか、誰だありゃ」
「まあいい。彼女には後で説明すればいいだろう。それより播磨、本当に覚悟はいいんだな」
「おお、さっさとしやがれ」
「よし………ふぅ、行くぞ!」
「うおおおおお!」

 ドテチィィィン!!

「ぐおおおお!」
「ぐはあああ!」

 もんどりうって涙目のまま、お互いの顔を見るも、やはり自分の顔。元に戻ってはいなかった。

「くそ、もう一度だ!」
「おお! こいやぁぁぁ!」

 グルタミィィィン!

「ぬおおおお!」
「まだ駄目なのかああああ!」

 グァラゴワガキィィン!!

「げはああ!」
「ぶほぉ!」

 以下十発ほど続く。

「………ぐ、ぐうううう」
「こ、これは………元に戻る前に死んでしまうかもしれん………」

 よくみれば辺りはすっかり夜も更けていた。

「仕方ない。今日はこのままお互いの家に帰って出直しだ。もしかして一晩寝れば治っているかもしれん」
「んだ、その風邪ひいたみてーな軽さはよ―――つーか、帰るだと! 俺がメガネの家にか!」
「当たり前だろう。いきなり僕の家にこんなサングラスの男が「ただいまー」なんて帰ってきたら、同門のみんなに袋叩きにあう」
「野宿すりゃあいいだろーが。おりゃあ、その辺で寝てっからよ」
「駄目だ! 僕は道場での稽古がある。毎日の日課だ、欠かすわけにはいかん。それに勉強もしなければならない」
「………ちょっと待て。それはつまり、俺がメガネの家に帰ってやれってことなのか?」
「不本意だがな。いきなり失踪して迷惑をかけたくない。なに、稽古といっても、道場での練習と自主練を3時間程で済ませれば問題なかろう」
「何で俺が、んなことやらなきゃいけねーんだよ。俺が稽古したって意味ねーだろうが」
「だが身体は僕のものだ。鍛錬を欠かしてもらっては困る」
「ちっ わかったよ」

 舌打ちをする花井(播磨)。だがここで言い争っている場合ではない。適当に相槌をうちながら(ぜってー稽古なんざするか)と心に誓う花井(播磨)であった。

「ところで播磨の家はどうなんだ」
「………いいか。余計なことはするな。今日はメシの当番だから、適当にメシを用意して食って寝ろ。部屋から出るな。何があっても、外からどんな物音がしても、布団かぶって寝ちまえ」
「こ、怖いな。いったいどんな生活環境なんだ君は」
「それから、机の中はぜったいに開けるなよ(漫画の原稿だけはみせらんねえ)」
「はっはっは、そんなことするわけがないだろう。僕を見損なうな」
(ふ、おおかた好きな子の写真でも入ってるのだろう………はっ もしも八雲くんの写真だったら……ぐぬぬぬ!)
「おい、きいてんのか。俺もおまえの部屋はいじらねえから安心しろ。変なもんあったら初めに言っとけ」
「はっ、それこそ愚問。僕の部屋にはやましいものなど……はぅ!(そういえば西本から没収したアレがああああ)」

 こうして、不意なことから入れ替わってしまった二人のバカだったが、とりあえずは様子をみて、明日また検討するという結論のもと、帰路についたのだった。(続く)


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