結末(播磨etc)
日時: 2005/09/07 21:20
名前: ACE

皆さんお久しぶりです(覚えてる人かな?)ダメ人間代表のACEです。
今回は、このS3’がS3に変わって本格的な活動を始めるのを見て書きました。
自分にはめずらしく短めに終わると思うので、いやでなければ最後までお付き合いください。では
なお登場人物がはっきりしないのはすいません…




プロローグ:夢


「起きて、アナタ!」
誰かが播磨の肩を大きく揺らす。
(んだよ、せっかく人がいい気持ちで寝てんのに)
起きる気配のない播磨を無視して声はなお続く。
「ねぇ起きてよ拳児。早くしないと時間になるよ」
(何の時間だよ。俺は眠いんだっての)
やはり起きる気配のない播磨。それでも声はお構いなく続き、播磨の揺れもどんどん大きくなる。
(…この声どっかで…!ま、まさかな…そんなハズねぇよな)
声の主に見当のついた播磨であるが、それは播磨にとってはまずありえないことであった。
事実を確認するためにも播磨は恐る恐る目を開ける。するとそこには…
「…て、天満ちゃん?」
パジャマ姿の天満がすぐ目の前にいた。
「おはようアナタ」
目の前の天満は播磨のことを何のためらいもなくアナタと呼んでいる。
「て…じゃなくて、塚本。どうして塚本がここにいるんだ?」
天満は一瞬驚いたような顔をするが、すぐに笑顔にもどり、
「どうしたの?アナタ。そんな昔の呼び方して、いつもみたいに名前で呼んでよ」
「ア、アナタ?そ、それにいつもって…」
慌てる播磨を見た天満はふふっと笑い、
「まだ寝呆けてるのね。ねぇ、いつもの」
そう言って目を閉じる天満。
(い、いつものって…ま、まさかキス?って何でこんなに話が進んでるんだ?ええい、考えるな。目の前の天満ちゃんが俺のキスを待ってる。それでいいじゃねえか!)
播磨も目を閉じてゆっくりと天満の顔に顔を近付ける。
二人の唇がふれるかふれないかというその時に播磨の頬に激しい衝撃が走り再び眠りにつく播磨。



「…君、…児君」
(んだよ…も、もしかしてこの状況はさっきの続きか?)
播磨を呼ぶ声や呼び方が変わったのも全く気付かず、播磨は目を瞑ったまま、声の主に抱きつこうと一気に飛び上がるが、顔面を容赦なく殴られて再びベッドのうえに寝転がる。
今の衝撃で完全に目が覚めた播磨は目を開ける。
するとそこには鬼の形相をした絃子が立っていた。
普通の人ならこの雰囲気で状況を察知するのであろうがそこは播磨。なんのためらいもなく、
「何だ。絃子か」
絃子は顔を引きつらせながらも笑顔で、どこからともなくモデルガンを取出しセーフティを解除する。
「…」
「イ、イトコサン?ドウシタノデショウカ」
片言になった播磨のことを無視して絃子は手に持ったモデルガンの照準を播磨に合わせる。
「ア、アノ…イトコサン?」
「なに、心配しなくていい。また眠りにつくだけなのだから」
そう言って絃子は何度も何度もトリガーを引いた。弾が切れても別のマガジンに取り替えて何発も播磨にプラスチックの弾を打ち込んだ。
10分後、弾を撃ち尽くした絃子は本来の目的も忘れ満足そうに播磨の部屋から出ていった。
一方部屋の主の播磨は、ベッドの上で全身の至る所からぷすぷすと煙をあげながら気絶していた。
もちろん学校に遅刻したのは言うまでもあるまい…





1話:告白。

同日昼休み。
播磨は机に伏しながら朝の夢のことについて考えていた。
(やっぱりあの夢は俺の願望なんだよな。でも、ああなるためには烏丸に勝たないといけない…俺は一体どうすればいいんだ?)
クラスの他の面々はお昼を食べているのに、播磨は一人机に突っ伏してあーでもないこーでもないと先程からぶつぶつ呟いている。
播磨の呟きが聞こえなくなったと思うと播磨は勢い良く立ち上がる。
大きな音がしたので皆が播磨に注目する。しかし播磨はそれを気にする事無く天満の席に向かってゆっくりと歩いて天満の真横に立つ。
いつもの面々で昼食を取っていた天満だが、播磨が自分の隣にやってきたので播磨のことを見上げる。
「塚本、大事な話があるんだ。放課後に屋上にきてくれねえか?」
「もちろんいいよ!」
(天満ちゃん、やっぱり気付いてるかな…)
(播磨君、とうとう八雲のことを話してくれるんだね)
気付いていなかった…
播磨はそれだけ告げると、そのまま教室を出ていった。

「播磨の奴、どんな話なんだろうな?」
内容が気になるのか、美琴が弁当を置いて話し始める。
「どうせろくでもないことなんじゃない?」
それに比べて妙に機嫌の悪い愛理。そんな愛理を見た晶は、
「嫉妬?」
晶の一言に愛理は机をバンと叩いて、
「そんな事ないわよ!」
大きな音に皆が愛理に視線を集める。愛理は顔を真っ赤にしてしゅんと小さくなる。
「あ、晶が悪いんだからね」
「はいはい」
「皆、着いてきたらダメだからね。播磨君は私に話があるんだから。それにちゃんと明日話してあげるから」
「ちゃんとだぞ」
「わかってるって美コちゃん」

昼休みに播磨が戻ってくることはなかった…





そして問題の放課後、屋上。
午後の授業をさぼって覚悟を決めた播磨はいち早く屋上で天満のことを待っていた。
午後の授業が終わって待つこと30分。床に寝転がり天満のことを待っている播磨。
扉が開く音がしたのでそこに目をやると天満が屋上に来たようであった。
播磨は慌てて立ち上がり天満に声をかける。
「す、すまねぇな。こんな時間に呼び出して」
「ううん、気にしないで。それで話って何かな?」
(とうとうこの時がきたな。よし、やるしかねぇ!!)
「あ、あのよぉ…俺の話を最後まで聞いてほしい」
そう言ってサングラスを外す播磨。
「この顔に見覚えはないか?」
「え?海に行ったときに一回見たよ」
播磨は大きく息を吸うと覚悟を決めて、
「いや、もっと前に一度見てるハズだ」
「えっ?いつ会ったの?ヒントはヒント」
「2年前の冬の路地裏の不良…」
うーんと考える天満だが思い出せないようで、さらにヒントを欲しがり、
「…背中の傷」
天満は何かを思い出したようである。
「ま、まさか…あの時の変態さん?でも…播磨君があの時の変態さんなはずないよね?」
播磨は首を横に振り、
「いや、俺があの時の変態さんだ。でも、アレは事故だったんだ」
播磨はあの時にあったことを包み隠さずすべて話した。もちろん自分の気持ちを含めて、
「…って事なんだ。だから妹さんのことは全部誤解なんだ。俺には…俺には天満ちゃんしか見えてねぇんだ!」
播磨の告白に対し、天満は顔を下に向けて、
「ご、ごめんね。私ずっとひどい事してたんだね。そ、それと私…」
謝ろうと顔を上げる天満だが、播磨は天満と目が合うと、
「分かってる。ダメだって事も分かってたから気にするな」
「播磨君…」
「そんな顔するな、俺まで悲しくなる。さて、これで明日から学校にくる意味が無くなったな」
そう言って力なく笑う播磨。
「ダメだよ!」
天満の大きな声に驚いて天満の方を見る播磨。
「塚…本?」
「ダメだよ。明日からも学校に来ないと。私たち友達でしょ?」
「いや、だけどな…」
「いいわけはダメ!明日からも来てくれなかったら私毎日泣くからね」
天満の気迫に押された播磨はふっと笑うと、
「…ああ、分かった。でも今は一人にしてくれ、これでも一応フラれたんだ」
笑顔でこう答えた播磨を見た天満はにっこりと笑って、
「うん。また明日」
そう言って屋上から去っていくのであった。










後書き
自分が書いたにしてはめずらしく真面目な雰囲気なような気がしますが、自分が書くのでほのぼのと言うことで…

復帰一回目にもかかわらず、いきなり問題を出したいと思います。
播磨とくっつくのは誰?
ヒントは本編の単行本3巻までに播磨と接触が合った人です。

皆さんの、意見・感想・答えを待っています。

 

Re: 結末(播磨etc) ( No.1 )
日時: 2005/09/11 21:27
名前: ACE

2話:沢近愛理。



播磨と天満が屋上で別れてから約10分後、2−Cに続く廊下を歩く愛理の姿があった。


べ、別に髭と天満が何を話してたって気になるわけ無いじゃない。
そうよ! 私が今から教室に戻るのは忘れ物をしたからで、本当に髭は関係ないんだから!
愛理は自分に言い聞かせながら2−C教室に早歩きで向かっていた。
教室前に着いた愛理は扉を勢い良く開けて中を見渡すが、誰かがいる気配はとくに感じなかった。
ま、まあ髭がいるわけ無いのよ。そ、そう。忘れ物取りにきたんだった…
本来の目的を思い出した愛理は自分の席に向かって机の中を探して目的の物を手にする。
そして何気なく播磨の席を見ると…
「ヒッ!?」
さっきは気付かなかった黒い何かが確かにそこにいたのである。
「な、何なの?」
一瞬逃げ出そうと思った愛理だが、恐怖心よりも好奇心が勝ったのでもっと寄ってみることにした。
その何かに近づくにつれてだんだんと姿がはっきりしていき、
えっと…よく見たらウチの制服じゃない。って言うか、アレは髭!?
最初何かに見えたその物体はよくよく見ると播磨であった。
「ねぇ、ここで何してるの?」
「…」
な、何よ。無視すること無いじゃない…
「チョット!? 聞いてるの?」
「……」
いくら愛理が話し掛けても反応しない播磨。
いい加減頭にきた愛理は播磨の肩を思いっきりつかむ。
肩を掴まれた播磨はようやく気付いたようで顔をむくっと上げて、
「…何だお嬢か」
「何だって何よ。さっきから呼んでるのに無視して…」
そ、そうよ。髭が悪いのであって私は何も悪くないんだから…
「…悪いな、別に無視はしてない。ただ気付かなかっただけで…」
「それよりもこんな所で何してるのよ?」
「別に何もしてねぇよ」
何も答える気の無い播磨にムッときた愛理は文句を言ってやろうと思ったが、播磨が泣いていたので止めた。
「な、泣いてるの?」
「な、泣いてねぇよ!」
播磨は愛理に背を向けて目を擦る仕草をする。
「ね、ねぇ…何があったの?」
「別にお前には関係ねぇよ」
「そうかもしれないけど…話せば少しは楽になるかも…」
「話したくねぇんだ。一人にしてくれないか?」
そっか…私には話したくないのか。播磨君、私のこと嫌ってるのかしら?いや、嫌われてるわね。だっていつもあんな事してるんだもの…
「やっぱり播磨君は私の事嫌い?」
「やっぱりって何だよ。別にお嬢の事なんて好きでも嫌いでもねぇよ」
事なんて…か。でも嫌われてないだけましよね。
「じゃあいつも喧嘩になるのは何でよ?」
「いや、いつもお嬢の方からつっかかってくるじゃねえか」
「そ、そう?」
た、確かに思い返してみれば…
「ってかお嬢が俺のこと嫌ってるんだろ」
嫌い? 私が髭のことを? そんな事無い。むしろ好…って! 私は何を考えてるのよ。普通よ、普通!
「別に嫌ってなんかないわよ」
「そうか…」
で、でも播磨君はどうしてあんなに落ち込んでたのかしら?お昼までは普通だったから…放課後に天満と何かあったのね。
だれもが簡単に辿り着くであろう答えに辿り着いた愛理はその疑問を口にだしてみる。
「ねぇ、天満とは何があったの?」
天満の単語に異常な反応を示した播磨は驚いた顔で愛理の方をみて、
「な、何でソレ? さ、さてはお嬢もエスパーだな?」
「…意味分からない事言って。少し考えれば誰だって分かるわよ。それよりも何があったの?」
「それは…言えねえ」
な、何なの? 本当に天満と何かあったとしか…それにこの落ち込みよう、ただ事じゃないわよね。
「ねぇ播磨君。話せば少しは楽になると思うの。だから…」
「お嬢ってけっこう優しいんだな。でも、やっぱり話せねえ」
そっか…話してくれないんだ。
考え事をする愛理の顔をまじまじと見た播磨は不意に、
「でも、お嬢ってよくよく見たら綺麗だよな」
「!?!?」
播磨のいきなりの発言に顔を真っ赤にする愛理。
「普段は意識してなかったけど、よく見ると綺麗な顔してるよな。それならモテるのも頷ける」
播磨君が…私のことを綺麗って…
「な、何を当たり前の事言ってるのよ。ほら、帰るわよ!」
播磨を引っ張り無理矢理立たせてそのまま歩きだす愛理。
「お、お嬢?」
「いいから。綺麗な私と一緒なんだから、いいでしょ?」
播磨は愛理には基本的に逆らえないのでおとなしく着いていく。



二人が校門を出たところで愛理が播磨の腕に抱きつく。
「お、お嬢!?」
「こうすれば逃げられないでしょ?」
「べ、別に逃げねえからヤメロ…」
顔を真っ赤にして振りほどこうとする播磨だが、愛理は離す気が無いらしく全然離れない。
「あ、暴れないでよ…それとも私が相手じゃイヤだって言うの?」
バックに数匹の大蛇をちらつかせながら睨み付ける愛理。
普段の播磨なら無条件で降伏するのであるが、今日の播磨は違った。
「だ、だってこれじゃあパッと見恋人だぜ!?」
「大丈夫よ。知ってる人が見たら私がアナタを無理矢理引っ張ってるようにしか見えないから」
確かに愛理の顔が怒っていて、播磨がいやそうな顔をしていればそう見えなくもないが、今の二人の顔は真っ赤であった。それに心なしか愛理の顔が嬉しそうに見えるのは気のせいではない。
これでは誰が見てもラブラブカップルにしか見えない。
「分かったらさっさと歩く!」
結局二人はそれ以降話しもせずにただ歩き続けたのだった。


別れ道に到達したところでようやく愛理は播磨の腕を解放する。
「じゃあまた明日ね」
「ああ…」
軽く返事をした播磨はそのままとぼとぼと歩いていった。
播磨の後ろ姿をただ眺めている愛理。するといきなり背後から、
「愛理」
「!! …って、晶?」
いつのまにか愛理の後ろに居た播磨。その手にはデジカメが、
「ねぇ、この写真だけど買う気は無い?」
そう言って晶が見せた画像は愛理が播磨の腕に顔を真っ赤に嬉しそうに抱きついている写真であった。
「データ付きで1万円でどう?」
「ど、どうしてこんな真正面の写真が…」
「別にそこは気にしないで。それよりも買うの?」
「な、何で私が…」
「そう。それじゃあこの写真は明日学校でみんなに売ることにするわ」
「ダ、ダメ!! 写真ってその一枚だけ?」
「いえ、他にもあるわよ。買うの?」
「か、買うから他の人には売らないでよ?」
「ええ」

結局晶がどうやって正面からとったかは不明だが愛理はしぶしぶ1万円を支払ったのだった…


続く。
Re: 結末(播磨etc) ( No.2 )
日時: 2006/04/09 00:22
名前: ACE

3話:周防美琴


周防美琴は道場の練習を終えるといつものように道着からジャージ姿に着替え、日課のランニングへと出発した。
ランニングの終わり際に水分補給も兼ねて帰り道にある公園に寄ることにした。

公園に立ち寄り水分補給を済ませた彼女はふと自分の後ろ―ブランコのあるほうに人の気配を感じ、振り向く。
そこには公園にいるのに相応しくない大男がポツーンとブランコに下を向いて座っていた。
「アレ? アイツ…どっかで見たこと有るような気が…」
ブランコに座っている―と言うよりはしなだれている男が美琴の視線に気づいたのかその大男が顔を上げる。
「なんだ周防か」
大男は顔を見るなり美琴の名前を呼ぶ。
「何であたしの名前を……って、播磨ぁ!?」
播磨の素顔を知らない美琴は素顔の播磨を見て驚くのであるが、当の播磨はどうして驚かれているのかも分かっていないようで不思議そうな顔をしていた。
「何だよ、人の顔を見てそんな大声上げて。近所迷惑だぞ」
「お前、本当に播磨なのか?」
サングラスを掛けた顔しか知らない相手が素顔で目の前にいる。
しかも美琴は播磨がサングラスをしている理由がどうしても素顔を見られたくないからだと思っていたのに、こんなにあっさりと素顔が拝めるとは思っていなかったのである。
「だって…いつもはサングラスしてるじゃないか」
「ああ、アレね。もう意味が無いから外したんだ」
大男―播磨はそう言うと再び下を向く。
「な、なあ。何かあったのか? あたしでよければ相談に乗るぞ?」
「別に。何もねえよ」
これまで美琴と播磨は特に親しい仲でも何かあったわけでもなかったが、美琴はまだあの時―神様の時のお礼をしていなかったのでその恩を返したいとずっと思っていた。
「何でも言ってくれよ。あたしに出来る限りの協力するからさ」
「協力も何も本当に何も無かったんだ。何も…」
何も無いと言う割には播磨の非常に元気の無い様子に美琴はため息を吐くと播磨の座っている隣のブランコに座る。
「周防、何で隣に座るんだ?」
「播磨の落ち込んでる顔を見たら放って置けなくてな」
「こんな時間に大丈夫なのか? 両親が心配するだろ」
美琴のことを心配する播磨の言動が美琴には可笑しくて笑ってしまう。
「まさか播磨に心配されるなんてな。そういう播磨は大丈夫なのか?」
「絃子は俺の心配なんてしねえよ」
「従姉妹? 播磨は従姉妹の人と暮らしてるのか?」
美琴の当たり前にも思える質問に播磨は非常に慌てる。
「お、俺は従姉妹と一緒に住んでなんかねえ!!」
「今更誤魔化したって遅いって。ほら…」
美琴はそう言って立ち上がり、播磨の腕を掴む。
「な、何すんだ!」
美琴の行動に驚いた播磨は大きな声を上げるが、美琴は気にした様子も無くそのまま播磨を立ち上がらせる。
「いいから帰るぞ。あたしも行って一緒に謝ってやるから」
どうやら美琴は播磨が一緒に暮らしている従姉妹と喧嘩して帰りたくないと勘違いしたらしい。
しかし実際には播磨は絃子と喧嘩をすることはないのであるが美琴がそんなことを知るはずもなく。
「ほら、行くぞ」
「いいって! 俺は別に従姉妹と喧嘩したわけじゃねぇ」
播磨はそう言って美琴の腕を振りほどくと再びブランコに座る。

美琴は播磨の反応を見て他の理由を探してみた。
そうしたら播磨が放課後に天満と話をしていたはずであることを思い出す。
「なぁ、もしかして放課後に塚本と何かあったのか?」
状況さえ分かっていれば誰でも辿り着けるであろう答えを言われて慌てふためく播磨。
「お、お前もエスパーなのか?」
播磨のエスパー発言の意味が分からない美琴は怪訝な顔をして首をかしげる。
「何わけ分からないこと言ってるんだ。お前が昼休みに塚本を呼び出したときにあたしは塚本の隣に居たんだぞ?」
「そ、そう言えば…」
「なぁ、一体何があったんだ?」
「そ、それは言えねえ」
「播磨、家に帰りたくなくなるくらい大きな出来事があったんだろ? あたしに話せば少しは楽になると思うから…話してみろよ。なぁ?」
美琴の言葉は半分は本当だが、もう半分は天満と播磨の間に何があったのか知りたいという好奇心から来ていた。
「播磨、少しはあたしを信用しろ」
そう言って美琴は播磨の肩に手を置くが、播磨は話したくないようで視線をそらす。
「しかしだな…」
播磨の反応に痺れを切らした美琴は肩に掛けてある手の力を強くする。
「あたしを信用しろ」
「だから…」
答えようとしない播磨に、美琴は少々腹が立ってさらに手の力を強める。
「あ、た、し、を信用しろ」
美琴の凄まじい気迫にさすがの播磨もびびったのか、首を縦に激しく振る。
「わ、分かったから放してくれ」
「放してやるけど、逃げたりしたら…」
播磨は先ほどよりも激しく首を縦に振る。
美琴は播磨の反応にやっと満足したのか、播磨を解放すると再び播磨の隣のブランコに座る。


「で、塚本との間になにがあったんだ?」
「本当に話すのか? やっぱり…」
播磨がそう言うと美琴が播磨を無言で睨み付ける。
「は、話すから…」
どうやら播磨はとことん女性には弱いようである。
「実はさ…俺、塚本…ああ妹さんじゃねぇぞ。塚本に告白したんだ」
美琴は驚いたものの声を出さずに播磨の話を聞き続ける。





10分後、播磨は今までの経緯(都合の悪い部分はやや省略して)を説明し終える。
美琴は播磨の話を聞きながら状況を冷静に整理していた。
「要するにお前と八雲ちゃんは付き合ってないんだな?」
「ああ、そうだ」
「それで、たびたび一緒に行動してたのは手伝いをしてもらっていたから…って何の手伝いだ?」
播磨は聞かれたくないことを聞かれて嫌そうな顔をする。
「誰にも言わないから…話す約束だろ?」
「そ、その…塚本に告白するために漫画描いてたんだ。それを妹さんに手伝ってもらっていたんだ。格好悪いだろ? 好きな女に告白するのに漫画描くだなんて」
そう言って力なく笑う播磨。
しかし美琴は真剣な表情を崩すことなく、自分のことを話し出す。
「あたしはそんなことはないと思うな。夏休み前にさ、播磨が神様やってた時に聞いたかもしれないけどさ…あたし、好きな人居たんだ」
「な、何のことだ!?」
必死に否定する播磨だが美琴は気にするなと言って播磨を制すると話を続ける。
「誤魔化さなくてもいいよ。あたしは播磨に感謝してたんだ。それで花火大会の時にさ、好きだった先輩がこっちに帰ってくるって事になって会いに行ってきたんだ。そしたらどうなったと思う?」
「いや」
「その先輩に彼女が居たんだよ。それもすごく可愛い人でさ、あたしなんかじゃ比べ物にならないくらい。それでそのまま何もいわないで笑って帰ってきたよ」
そう言って力なく笑う美琴。
「あたしはさ、これといって可愛いわけでもきれいなわけでもないからさ…」
「少なくても俺はそんなことはないと思う。人の魅力なんて外見だけじゃ決まらねぇんだ。それに周防は神様に願い事するって言う女らしい可愛い一面もあったことだしな」
そう言って播磨はにやりと笑うとブランコから立ち上がる。
「何だって!?」
美琴もブランコから立ち上がり、拳を顔の前で握って怒る動作をすると、播磨は笑って美琴から離れる。
「はは、悪い悪い。ついな…でも、大分楽になった」
「そうか、それはよかった」
「じゃあ俺は帰るな」
「明日からもちゃんと学校に来るよな?」
「ああ。塚本とも約束したし…今周防とも約束したからな」
播磨はそう言うと走って公園から出て行く。



美琴は走り去っていく播磨の後姿をただ黙って見つめ、播磨の姿が見えなくなったのを確認すると再びブランコに座る。
「播磨か、初めてじっくりと話したけどいいやつだな。アレなら沢近の気持ちもよーく分かるな…って!! あたしは何を考えてるんだ。でもな…」
その時、美琴は誰かの気配を感じたので、気配を感じた方を向いて立ち上がる。
「居るのは分かってるんだ。おとなしく出てきな」
美琴が向いた方向からデジカメを構えた晶が出てくる。
「さすがは美琴さんね。ちょっと油断しすぎたかしら」
美琴は出てきた相手が晶とあってか、一気に緊張が解けたようで再びブランコに座る。
晶はそのまま美琴のほうに歩いてくる。
「隣いい?」
「どうぞ」
晶は美琴の隣のブランコに座る。
「何してたんだ?」
美琴の質問に対して晶は無言でデジカメの撮影映像を美琴に見せる。
そこには美琴が播磨と非常に楽しそうに話しているところが写っていた。
「な…何撮ってんだ!」
「素顔の播磨君と、他の人には見せないような笑顔で会話する二人のアップ写真。他には播磨君の素顔のアップ。その他色々…」
晶の淡々とした説明に美琴は大きなため息を吐く。
「なぁ、何が目的なんだ?」
「フルセットで4000円でどう?」
「…」
「今買えば他に流出することはないけど…」
「3500円」
「仕方ないわね。その代わり…美琴さんの写真を何枚か売らせてもらっても良い?」
「分かった。売っていいから3000円で売ってくれ」
「まぁ、いいわ」



待って下さっていたいた方々へ…更新遅れてすいません。これからは前作ほどではないにしろ今までよりはこまめに更新できると思うので付き合ってやってください。ではでは

 

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