Began to plan “ZERO”(播磨、晶、天満、美琴、愛理、サラ)
日時: 2006/03/02 04:17
名前: くらんきー




   Began to plan “ZERO”



 ぱちり。

「・・・・・・・・・」

 今は午前6時半。私はいつも通りの時間に目を覚ます。

 最近、秋も深まってきた。もうすぐ冬到来といったところかしら。
 毎朝私は、眠気を覚ますのに窓を半分開ける。
 何故、半分? それは私が半分が好きだから。他に深い意味はないわ。


 ガラ・・・


 そして、なんとなく。ただ、なんとなく思った。


「今日は・・・傘が要りそうね・・・」


 雨が降りそうだと。

 別にツバメが低空飛行していた訳でも、緑色の雷様が住んでいそうな雲があったわけでもない。
 更にニュースの天気予報を見てみると、今日の降水確率は10%。
 空を見ても薄っすらと雲がかかっている程度。普通なら傘なんて必要はない。
 でも私は、天気の『予報』なんてものよりも、自分の『カン』の方を信じている。
 自分で言うのもなんだけど、私の『野生のカン』の信頼度は・・・ ほぼ、“9割9分10厘”



 ―――9割9分10厘。つまり100%。



 まあ、そうとも言うわね。ちなみにテストの選択問題で間違えた事は1度もないわ。


 で・・・ そんな私の『カン』が言っている。
 今日は何かが起こりそうだと・・・
 いい事か悪い事かまでは分からないけどね。


 ―――PM8:00、通学途中―――


「おっはよ〜♪ 晶ちゃ〜ん!」

 声の主に反応する私。この声は天満ね。カンを発動するまでもなく、条件反射的に分かる。
 この娘は塚本 天満。私のクラスメート。そして取り分け仲のいい友達。・・・親友ってやつね。

「おはよう。珍しく早いわね、天満」

 そして、私が・・・ 私のカンを働かせても行動を読めない人物の一人でもある。
 まあ実際は、もう数人いるんだけど。

「ふっふっふ〜〜♪ 今日は日直なの!」
「でも天満。あなた、今日は日直じゃないわよ」
「そーなんだけどね〜〜♪ えへへ〜〜」

 心なしか彼女のトレードマークの髪の毛、通称『ピコピコ』が いつもの3倍速で稼動している。
 って事は・・・ なるほど。読めたわ。

「烏丸君が日直だからね? 彼が早く来てるかも知れないから、一緒にいる時間を長くしようとして早起きしてきた訳だ」

「えええぇぇ〜〜〜!! あ、晶ちゃんどうして分かったの〜〜!!?」
「・・・ヒミツ」



 ―――高野 晶。脳内コンピューターは10GHz。



 ・・・って訳で、私の『カン』 『情報量』 『打算速度』 で分からないものなんて、ほとんど無かったりする・・・


 はずなんだけど・・・


 やっぱりこの子は例外ね。イキナリ予想もつかない展開に持っていっちゃて。

「ところで天満?」
「?? なーに? 晶ちゃん?」

「そのヤカンは何?」
「ほへ?? ヤカン?」

 自分の持ってるものも気が付かなかったのかしら?
 ホントに知らないみたいにキョロキョロしながら探してるけど・・・


「「・・・・・・」」


 うーん。視線がヤカンに止まった瞬間、見事に時間が止まった。面白い。

「えええぇああーーーー!!」
「・・・・・・」

 今、気付いたみたいね。天満。 ・・・で、よく見ると、鞄を持ってないし。
 鞄と間違えたのかしら? ・・・どうやったら?



 ―――塚本 天満、おっちょこちょい。



「どうしよ〜・・・ 晶ちゃん。鞄とヤカン、間違えちゃったよ〜・・・」
「でも『ん』の、1文字しか合ってないわよ?」

「そーじゃなくてぇ!」
「形も似てないし」
「そーなんだけど、間違えちゃったんだよぅ〜・・・」

 って。「どうしよ〜」って言われても、『取りに帰る』か『このまま行く』の2通りしか方法がない。
 私としては『このまま行く』の方が好ましいんだけど。 ・・・面白いから。

 とか考えてる間に・・・あらら。天満、涙目になっちゃってるわね。
 両手でヤカン握り締めて、目を潤ませながらピコピコが下がっていく天満。ちょっとカワイイ。


 パシャ!


「???」

 ・・・ちょっとカワイイから、取りあえず1枚。
 朝イチから、潤んだ瞳でヤカンを握り締める天満。播磨君に735円(税込)で買ってもらおう。

「じゃあ、取りに帰る? 付いてってあげるから」
「でも・・・ 取りに帰って遅刻したら、怒られちゃうよね?」
「気配を消して、こっそり窓から入れば大丈夫よ」



 ―――普通の人はそんな事出来ません。



「ブツブツ う〜ん。取りに帰ったら怒られるし、このままでも勿論、怒られる・・・ ブツブツ」
「・・・・・・・・・」

 天満、なにやら考え込んでるわね。 時間、無くなるのに。いいのかしら?

「ブツブツ ・・・・・・が・・・・・・で、うーん・・・ ブツブツ」
「天満?」

「・・・学校行こっか。晶ちゃん」
「・・・・・・鞄はいいの?」

 私としては、願ったりな事なんだけど。
 留年の危機を迎えるかも知れない親友を、勉強道具一切無しで授業に臨ませるのは流石に・・・ね。

「どっちにしても怒られるんだったら、烏丸君がいる今、行くしかないのよ!」
「・・・・・・ま、いっか」

 天満、幸せそうだし。満面の笑みで「学校行こっか」って言われたら行くしかない。



 面白いし。



 ―――2−C教室―――


 うーん、いない。
 見事なまでに烏丸君がいない。

「が〜〜〜ん・・・  烏丸君がいない・・・」
「・・・そうね」

 それにしても、『が〜〜〜ん』って口に出して言う人って珍しいわね。
 ちなみに天満の好きな男の子、烏丸 大路。彼もまた私が行動を読めない一人だったりする。

「はああぁぁ〜〜〜・・・ 烏丸君がいないんだったら、鞄取ってくればよかった・・・」

 天満は大きい溜息を吐くと、ピコピコの位置を『4時40分』の位置に合わせてる。
 テンションによって髪型が変わるっていうのは知ってたけど、いちいち合わせなくてもいいと思うんだけど。

「でも考えようによっては、鞄とヤカンを間違えるなんていう、恥ずかしいところを見られなくて良かったんじゃない?」

 ぴくっ。

「そう! それよ、晶ちゃん! ようは気の持ちよう一つだもんね」

 天満のピコピコが知らない間に元に戻ってるし。にしても、まず最初に髪の毛が反応するんだ。

「ヤカンは気から っていう諺もあるくらいだしね♪」



 ―――そんなものは、ない。



「病よ。天満」
「そうそう。それ!」


 明るい、太陽みたいな笑顔ね・・・ ちょっと彼女が羨ましかったりする。
 私じゃ、あんな顔は出来そうもないから。

 あなたは笑ってる時の顔が一番似合うわよ? 天満。
 播磨君はきっと、あなたのそんなところに惹かれたのね。分からなくもないわ。
 まあ、そのお陰で複雑な思いをしている人物もいるけど。


 ガラ・・・


「この子とか」
「晶・・・朝っぱらから、いきなりワケ分かんない事言わないでもらえるかしら・・・」

「あ、愛理ちゃん。おっはよー♪」


 愛理は否定してるけど、間違いなく播磨君LOVE・・・  って言うかハリケーン・ラヴ?
 まあ、ツンデレだから素直じゃないけど。

 播磨君は天満の事が好きだから、愛理に全く興味なしだし。
 で、愛理は愛理で 自分に興味なし・・・みたいな態度をとられて、自分からアプローチかけるなんてしないだろうし。
 でも心のどこかでは・・・ 「私・・・実はヒゲの事・・・」 ・・・だろうし。


 ・・・はあ。


「どうしたものかしらね?」
「だから、さっきから何なのよ!?」
「おはよう。愛理」
「話題転換が無理矢理すぎるわよ!」

 流石は愛理。ツッコミのキレはいいわね。
 ホントはこんな表情見れるのって、私と天満、美琴さんくらい。

 やっぱり愛理にとって特別な存在なのね。播磨君。

 ・・・その代償として使いっパシリさせられてるワケだけど、
 そんな素直じゃない愛理を傍から見てるのは面白かったりする。


       ◇       ◇       ◇

 ―――放課後―――

「なんだか・・・ 雨、降りそうね・・・」
「おいおい・・・ 今日、雨降るなんて言ってなかったぞ?」
「でも、すごい雲だよ? ・・・あ、降ってきた」

 HRが終わって、いつものように4人が集まる。
 そこで窓の外を見た愛理がそんな事を話題に取り上げた訳だけど、私は別に驚かない。
 今朝から予感していた通りだし。

「傘いる?」

「え? 晶、傘持ってるの?」
「モチのロン」

「・・・何で、持ってんだ?」
「なんとなく」

 何でって言われても、「なんとなく」としか言いようが無い。でも、美琴さんも鋭いところ突くわね。
 流石は『D』 ・・・最近2−Dに、引き抜きかけられてるって噂も・・・あるとかないとか。
 美琴株、急上昇中。 『D』は『D』を呼ぶ・・・と言ったところね。



 ―――違うだろ。



 それはともかく、傘は部室にある。ってワケで4人で茶道部へ向かう事にした。


 ―――茶道部部室―――


 ココは私の所属する茶道部の部室。純和風という訳ではないけど、茶道に必要なものは勿論
 種類豊富なコーヒー豆から茶葉の他に、座布団や和服。果ては怪しい薬品まで・・・



 ・・・・・・・・・・・・・・・無いわよ。



「「「お邪魔しまーす」」」
「遠慮しないで。傘、そこにあるでしょ?」

「お、あった・・・・・・けど」
「100本くらいあるわね・・・」

 うーん、結構鋭い。しかも愛理と美琴さん、別段 俯いてもないハズなのに目元が影で見えない。
 って事は2人とも、あの文字に気付いたみたいね・・・

「晶ちゃん、ありがと〜!」

 本当はこの倍くらいあったんだけど・・・ 持っていったのはサラか。

「なあ、高野・・・ この傘立てに書いてある文字って・・・」
「・・・・・・」
「商売用って、やっぱりアレか?」

 そう。アレよ。

「あなた達は無料でいいわよ」
「・・・・・・ありがとうございます」


 ガラッ・・・


「あら? 先輩方、こんにちは♪」
「お邪魔してるよ」

 私との話を打ち切って、美琴さんがぎこちない笑顔を浮かべながら、部室に入ってきたサラと挨拶を交わしている。

「先輩、傘、ありがとうございます。これで皆、濡れなくて済みます」
「あの・・・な、サラちゃん・・・」
「困っている人を助ける。なんて素晴らしいことなんでしょう・・・ ね♪ 先輩!」



 ―――サラ・アディエマス、今日は白い。 ・・・のか?



 (言えない、こんな純真な子に・・・ この傘が有料商品だなんて・・・)

 ・・・とか考えてるっぽい。 涙ぐんで拳を握り締めなくてもいいのに。失礼ね、美琴さん。

「部長。これ、今日の売り上げです」
「ご苦労様。 ・・・ハイ、バイト代よ」
「ありがとうございますー♪」



 ―――時、既に遅し。サラ、既に黒し。



「おんぷ。 ・・・じゃねーだろ! シスター!」

 ビシッ!

 美琴さん、日に日にツッコミレベルが上がっていってるわね。
 何もない空間にツッコミを入れたはずなのに音が鳴るとは、美琴さんの平手裏拳が音速を超えた証。
 レベル99も近いわよ。美琴さん。

「あーあ・・・ 何か疲れちまった・・・ アタシもう帰るわ。 傘、ありがとな」
「じゃあ、私達も帰ろっか? 愛理ちゃん?」
「そうね。 晶、あんまりアコギな事しちゃダメよ」

「失礼な。 取引はフェアに行っているわ」

 手持ちがない生徒でも気軽に利用できるように、後払い制度も実施。
 利息も『トイチ』というリーズナブルなものになってるし、
 返済期限が過ぎると、黒服の怖い人が家まで催促に行ってくれる(出張費別)という制度まで。

 最早、完璧と言うしか・・・



 ―――人、それをアコギと言う。



「じゃあね、晶」
「晶ちゃん、ばいばーい!」
「んじゃ、また明日」

「ええ、また明日」

 皆、帰っちゃった。さて、そろそろ商売開始といこうかしらね。
 2−C美女の写真つきで、2000円辺りから男子中心に・・・


       ◇       ◇       ◇

 ―――帰り道―――


 ザー・・・


 今日はいつもより売り上げが良かったわ。写真の方が売れたっていうのもあるけど・・・
 今日に限ってバイトが休みなのは、やっぱり日頃の行いがいいからね。

 あれ?

「・・・・・・」

 あれは・・・

 前方に行動が読めない人物、その3 播磨君発見。まあ彼の場合、烏丸君と違ってある程度行動が読める。
 彼の行動を毎日観察している人物から、情報を得ているというのもあるけど・・・
 基本的に彼は単純、目標に向かって一直線。その目標が天満だっていうんだから
 その習性を利用して行動を扇動できるし、彼が何を考えているかは大体分かる・・・けど、問題が一つ。


 播磨君はバカ。


 その行動を完璧に読み切ったと思っても、読みを上回る程の思考回路は侮れない。いい意味でも悪い意味でも。
 私の「読み」 「カン」が当たってるか外れてるかを確かめるのも楽しみの一つかな。


 ・・・傘を持ってるわね。前に、傘を持って帰るのを忘れて、偶然今日持ってた吉田山君から奪った。ってとこかしら。


「播磨君」
「あん?」

 『魔王』と呼ばれた播磨君も、私の完璧に消された気配は察知できなかったみたい。

「・・・ドコだ? 誰だ!?」

 ・・・気配、消しすぎたわね。

「ココよ」
「うおっ!!」

 ナイスリアクション、播磨君。一瞬にして後ろに飛びのいて距離を取るとは・・・流石は魔王。
でも・・・

「あ」
「?」

 パッパーー

 ガスッ!

「げはっ!?」
「後ろ。危ないわよ」


「・・・お・・・遅・・・ぇ・・・・・・」


 もの凄い轢かれ方をして、痙攣し始めてる播磨君。
 矢神坂をノーブレーキで駆け下りてきたバイクに轢かれたくらいで、魔王と呼ばれた男が情けない。



 ―――いや、それが普通だ。



「今のバイク、結構速かったと思うんだけどな」
「オメーの警告が遅いっつってんだ!」

 あ、復活した。 自己再生能力、高し・・・ と思ったら、もの凄く膝が笑ってるわね。
 ついでに言えば、轢かれた瞬間サングラスから目が飛び出てたと思ったら、サングラスに異常なし。
 あのサングラス・・・ちょっと欲しい。

 溜息をつきながら歩いていく播磨君。
 なるほど、天満以外の女の子には冷たいわね。八雲は例外かも知れないけど。


 てくてく・・・


「って! 何で付いて来てんだよ、中野!?」
「高野よ」
「細けー事は気にすんな」
「じゃあ そのセリフ、そのまま返すわ」

 そこまで言うと、舌打ちして諦めたように再び歩き出す播磨君。どこかで撒くつもりね。
 余程、刑部先生と同居している事実を知られるのが嫌と見るわ。・・・もう知ってるんだけど。

「!?」

 路地裏の一つを見つけて急に走り出した。私はそんな事じゃ撒けないわよ・・・


 ―――路地裏―――


 いた。 けど・・・

「子猫?」
「捨て猫みてーだな」

 白い猫と黒い猫、1匹ずつ。飼えなくなったら捨てるなんて、酷い事するわね。
 う〜ん、どうしよう。

「サラに飼ってもらうのはどう?」
「・・・誰だ? それ?」
「茶道部のサラ・アディエマスよ。八雲といつも一緒にいる、金髪の・・・」

 サラの名前も覚えてなかったのね。って言うか、
 私の名前も覚えてないのにサラの名前をフルネームで知っていたら、ある意味ショックだけど。

「アイツ、飼えるのか?」
「さあ」
「んだよ! それ!」

「じゃあリアル動物占いで巷に名を馳せた、『黒の目』としてはどうしたらいいと思う?」

 ぴくっ

「・・・何のことだ?」
「これの事」

 えーと、確かココに。 あった、『黒の目』激写写真。
 写真を見ると同時に、再び両目がサングラスを突き破る。・・・やっぱり欲しい。

 カタカタ・・・

「ア、アノー・・・ コノ シャシンッテ・・・」
「天満には見せてないから、大丈夫よ」
「そ、そうか・・・ ふ〜・・・」

 私が天満への想いを知ってる事についてはスルーなんだ。
 ま、いいか。 面白いし。

「ま、なんだ。 こいつらは俺の友人に預けるぜ。信頼できる人物だから大丈夫だ」
「誰? それ?」
「それはな・・・」

 ・・・播磨君に、信頼できる友人か。 八雲かしら?

「ここら一帯を縄張りにしてる、猫の「人物じゃないでしょ、それは」

 こんな感じ。私の考えの上を行くバカ。

「いいだろーが! 別に!」
「まあ、こわい」
「・・・えらく棒読みだな。おい」
「それ程でも」
「褒めてねえ」

 知ってるわよ、それくらい。

「って事で、コイツらは任せな。 ・・・だから、そろそろ傘させ」
「え?」

 あ。

 そういえば、さっきから播磨君と2匹の子猫に傘をさしたまま。
 ちなみに播磨君の・・・もとい、吉田山君の傘は、さっきバイクに轢かれた時に昇天している。

「播磨君は? 風邪引くでしょ?」
「あん? 知らねーのか、オメーは?」

 む? 失礼な。 この私に知らない事なんて・・・


「バカは風邪引かねーんだよ!」


「・・・プッ・・・ふふっ。 そうね・・・」


「ちったー否定しろよ」
「バカなんでしょ。 自分で言うくらい」

「・・・ちっ! じゃーな、中野!」
「・・・高野だって」


 ・・・一瞬、素で笑ってしまった・・・


 愛理が惹かれるわけだ。他の人にはない何かがあるのね。播磨君には。

 そういえば・・・

 ・・・もし、播磨君が天満に告白したら? まあ、フラレるでしょうね。
 じゃあ、フラレたら? ・・・学校を辞める。可能性大。
 こんな『カン』なんて外れればいいんだけど。 経験から言ってこんなもの程よく当たる。

 この背中が、このまま消えて・・・

「・・・播磨君!」
「あん? まだ何かあんのか?」

 何でもない。只なんとなく、なんとなく今 呼び止めないと本当に居なくなってしまうような気がしただけ・・・

「・・・・・・そのサングラス頂戴」
「・・・ダメ」
「ケチ」

 でも、繋ぎ止めた。・・・ような気がする。 私の『カン』がそう言っているんだから・・・

「いきなりワケ分かんねーよ!」
「ゴメンゴメン。じゃ、『また』ね」
「? おう」

 この『カン』だけは外せない。彼がいなくなると面白くなくなるし。なにより・・・
 播磨 拳児という人物がいなくなると悲しむ人物がいる。
 そしてそれは私の大切な人達・・・

 それだけは止める。なんとしても。

 それには真剣に計画を作る必要がありそうね・・・
 ドコまで彼のバカさに太刀打ちできるか分からないけど。やるしかない。

 成功率は50%&50%(フィフティ・フィフティ)といったところか・・・

 バイトも暫く休みを貰おう。
 はぁ・・・ 私が、優先順位 1番のバイトよりも優先しようとするなんてね・・・

 私も彼に惹かれているのかしら? ・・・なワケないか。

 でも播磨君。



「女スパイと幸せに暮らすのもアリかもね・・・」



 ・・・って、冗談よ。



終わり・・・


〜おまけ〜


 晶の机の上にノートが一冊。そこには細かく計画内容が書かれていた。
 その内容とは、播磨 拳児の留年阻止の計画・・・

「優先順位 0番か。 じゃあ、この計画は・・・」

 ポツリと独り言を呟くと晶は、ノートの表表紙にマジックでこう書いた。


 “ゼロ”計画・・・と。



戻り