ある晴れた日曜日に(花井×美琴)
日時: 2006/07/06 19:31
名前: KATA(KK)

初めまして、カタです。

「ある晴れた日曜日」

花井と周防、幼馴染コンビの話です。
諦めが悪いーとか、無駄な足掻きだーかと言わず見てってください 

ではでは。

 

  ある晴れた日曜日に(花井×美琴) ( No.1 )
日時: 2006/07/31 01:15
名前: KATA(KK)

 
 ある晴れた日曜日。

 あたしとアイツは幼馴染で。
 二人で珍しく、散歩なんてことを。

 あたしは、少し照れくさく、アイツはそんなこと知ったこっちゃ無い。
 理不尽だけど、そんなアイツがズルイと思う。



「ある晴れた日曜日に」


 親父に頼まれて組の蔵を掃除していると、祭りのときの売れ残りのおもちゃを見つけた。

 ――ゴム巻き飛行機。

 どうやって飛ばすんだっけって話をしているうちに、河原へいって飛ばしてみようって事に。
 なかば、あたしがアイツを強引に連れ出した形になったんだけど、アイツも、懐かしいなあなんて、結構まんざらでもない様子。

 河原までの道のり、久しぶりに色々話が出来た。
 お互い、忙しくってこんな機会もめっきり減ってきて。
 将来のことも、真剣に考えなきゃならない時期になってきている。

 真剣な顔で、そんな事を語るアイツに、思わずドキッとしてしまう。

 あたし達の目の前を元気に子供たちが駆けていく。

 アイツが柄にも無いことを言う。

「僕たちにもあんな時期があったんだな」

 そう。そして、あたし達は大人になる。


 夏も近づく八十八夜。野にも山にも若葉が繁る。


 そうだ、大人になってしまう前に、アイツに伝えたいことあったんだ。




  Re: ある晴れた日曜日に(花井×美琴) ( No.2 )
日時: 2006/07/31 01:05
名前: KATA(KK)

 
 本日は晴天なり。まさに飛行機、飛ばし日和。

 なんてね。

 河原に着くと、草の上に寝転ぶ。
 う〜ん。草の匂い、良いねえ。

 アイツは腰を下すと、もって来た飛行機を組み立て始める。
 ゴミはちゃんと袋の中に。真面目なアイツに抜かりはなし。

 こういうとこ、変わんねーな。

 きっと、これから何十年経っても、きっと変わんねーんだろうな。


 あたしもアイツもいろんなところが変わった。
 あたしらの場合は、成長したって言うほうが正しいのかな。

 アイツも泣きべそをかくような事はなくなったし、あたしも少しは女らしくなったと思う。
 アイツはあたしのこと女らしくないっていつも言ってるけど。

 あたし達だけじゃない、周りある色んな物も刻一刻と変化している。
 近所にあった田んぼの数もずいぶんと減ったように思う。
 親父も最近、俺も年かなあなんてぼやいてた事もあった。

 だからだろうか、ホッとする。

 アイツを見てると。あたしとアイツの間だけには、変わらない、いつまでも変わらない何かがあるんだって。

 何って聞かれれば答えるのは難しいけど。

 確かにある。そこにはある。

 アイツの前では、あたしはあたしのままで居られる。



「よし。出来たぞ周防」
 そう言って、完成したものを差し出す。

「へぇ、なかなかのもんだな」

「まあ、この花井春樹にかかればこれくらいのもの」
 相変わらずの自信たっぷりな物言い。

「分かったから、さっさと飛ばしてみろよ。ほれ」
 こういうところも、変わんないのかねえ。
 あたしは少しは変わったほうがいいと思うんだけども。

「うむ」

 クリ、クリ、クリ――
 プロペラを回してゴムを巻く。


 雲はのんびり空を流れて。



  Re: ある晴れた日曜日に(花井×美琴) ( No.3 )
日時: 2006/07/31 01:10
名前: KATA(KK)

 
 一度目は上手くいかなかった。

 アイツの手から勢いよく飛び立ったかと思えば、いっきに急降下。そのまま墜落してしまった。
 まったく、誰かさんみたい。

「おかしいなあ。何故だ」
 その誰かさんは説明書と格闘中。

 な〜に、本気になってんだか。まったく子供みたいに。
 こういうところも変わんねー。

「なぁ、花井」

「うん。なんだ」

 雲は変わらずのんびり空を流れている。


 あぁ、うぅ、あたしは今、なんて事を言おうとしているんだ。
「あのさ、あの、えっとな」

「うん?」

 ええい、周防美琴ここで言わなきゃ女が廃るって。

「だから、あのな。前に、そう丁度文化祭の頃、あたし言ってたよな、どっちが先にその、こ、恋人が出来るか競争だって」

「………」

 ったく、なんか言えよバカ花井。

「だから、要するにだ。その競争ってやつをさ、引き分けにしないか。つ、つまりその、なんだ、あたし達付き合わないかって事」

「………」

「ああっ、もう、だからあたしは花井のことが………、ってお前!」

 見るとアイツ、飛行機つつくのに夢中になってて、
「なんだ、周防」
 あたしの言ったこと何にも聞いてない。

 あたしの、一世一代の。

「バカ!知らねえよ、もう」
 花井のバカ。バカ、バカ、バカ、バカ。

 いつもそう、大事な時に、ここって時に、アイツは。
 ああ、忘れてた、アイツのこういうとこ。

「………」

 何にも言わない、アイツ。

 恥ずかしいやら、腹が立つやらで。
 なにやってんだろ、あたし。

 あいつに背を向けうな垂れるあたし。

 ほんと、なにやってんだろ。


 やわらかい風が、あたし達をそっと撫でてゆく。




  Re: ある晴れた日曜日に(花井×美琴) ( No.4 )
日時: 2006/07/31 01:13
名前: KATA(KK)


「なぁ、周防」


 不意に掛けてくるアイツ声が妙に優しくて、思わず涙が出そうになる。

 あたしが答えなくてもアイツはそのまま言葉を続ける。

「お前がさっき言っていた提案」
 そう言いながら立ち上がる。

 それって、まさか。
 驚いて思わずアイツ方に振り向く。

「僕も賛同しよう」

 それって。

 あたしの体は、そのまま固まってしまう。

「僕は、周防、お前のことが好きだ」

 その言葉とともに、アイツの手から飛行機が勢いよく飛び立つ。

 そしてあたしの体は軽くなり、気付いたらアイツにラリアットをかましてた。

「おまえー、聞いてたんじゃないかあたしの話」
「いたっ、痛い、止めてくれ、すまなかった。でも、僕だって聞いてないとは言ってないじゃないか」

 知るもんかそんな事。あたしをこんな気持ちにさせといて。

「問答無用!」



 そんな二人を尻目に飛行機はどこまでも飛んで行く。
 二人が生きてきたように。これから二人が生きてゆくように。

 どこまでも、どこまでも。

 いつまでも変わらない風に乗って。


 ある晴れた日曜日に。





                               〜fin〜
  Re: ある晴れた日曜日に(花井×美琴) ( No.5 )
日時: 2006/07/06 20:38
名前: KATA(KK)

以上です。

短い文章でしたがいかがだったでしょうか。

幼馴染な二人が書けたらと思いながら、最後は無理やり二人をくっつけてしまう自分。

これからも精進せねば。

最初の書き込みタイトル間違えてたみたい。
正しくは「ある晴れた日曜日に」です。

では

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